オドントグロッサム

この世界には能力を持つ者たちがいた。
彼らは人類に多大な貢献をし、称賛の声を沢山貰った。
しかしある時、そんなものでは満足出来ない者達が現れる。
人は彼らをデビルブレイクと呼ぶ。

それに対抗するため彼らと同じ能力を持った者達が通う学校がある。
その中の一人ワイアットは仲間と共にデビルブレイクに立ち向かう。
─────────────────────
1


「やっと…。」

その声と共に船が港についた。

田舎から出てきた僕には都会と言われる場所が分からなかった。

だから、僕はこれからどんな事が起きるのだろうと胸をワクワクさせていた。

「そこの少年よ。」

右の方から自分を呼ぶ声が聞こえ僕は振り返った。

そこにはおじさんが椅子に座ってこちらの方を見ている。

「あの、何ですか?」

「君ここ初めてだろう?知らないと大変な事沢山あるだろうからここを案内してあげよう。」

「えっ、いいんですか⁉ありがとうございます!」

「あぁ、いいよ。ついて来なさい。」

おじさんは頷き、立ち上がった。


僕はこの国に来て初めて会った人がとても優しい人で嬉しかった。

案内してもらっている途中いろいろな事を聞く。

「ここにはな。特別な力を持った能力者がいる。」

「おじさん、僕をからかってるんですか?」

おじさんのその突拍子も無い言葉に僕は笑みがこぼれた。

「いや、本当にいる。私が見せてやろう。」

おじさんはそう言うと、手のひらを僕の方に向けた。

「何もないだろう。」

「えぇ。そうで…」

手のひらを目を凝らして見ると何かがうっすら見える。

ライターだ。

「こ、これは!」

僕は開いた口が塞がらなかった。

「実は私もそうなんだよ。」

おじさんの話は続いた。

「世間は私達の事をインコンプリートパーソンと呼んでいる。」
「そう呼ばれるのには理由があってね。私達は概して致命的な欠点を持っているんだ。」

「へぇー。」

「あとこれはとても重要な事なんだがね、インコンプリートパーソンの中には自分の力を悪用する奴らがいる。デビルブレイクの奴らだ。」
「私の娘は彼らによって殺されてしまった。だから私は、こんな事(悲劇)がもう二度と起こらないようここへ初めて来た人間にいろいろな事を話しているんだよ。」

「そうだったんですか!ありがとうございます。」

「ところでおじさんの能力って何ですか?」

「あぁ、話していなかったね。私のは人に親切にすれば能力が使えるというものだよ。」
「ちなみに、能力というのは親切した回数でどんなものでも使えるようになる。」

「それって凄すぎませんか⁉」


ドンッ

僕はおじさんの話に夢中で前から人が来るのを気づかなかった。

「不注意ですみませ…。」 

僕は急に声が出なくなった。

僕を包み込む大きな大きな影。それを見た瞬間呼吸が荒くなった。

恐る恐る前を向いてみるととても大きな壁のような男が仁王立ちしている。

強靭な肉体に3メートルはあるであろう身長。

「ひっ、化物!」

それを見た僕は恐ろしさのあまり心に思った事が声に出てしまった。


「小僧、俺に近づくと死ぬぞ。」

彼は自分と違う方向を見てそう言った。

「ひゃい、立ち去ります。」

そう言ったはいいものの腰が抜けて動けない。

「おじさん、助けて!」

「あぁ、分かった!」

そう言いおじさんは肩を貸してくれた。


大男はそのおじさんの声を聞いて
「その声何処かで聞いた覚えがあるなぁ」「確か…」
と呟く。

その時おじさんは小声で僕に「奴の言う事は全て嘘だ」と言った。

そして小走りで僕を抱えその場からすぐさま立ち去った。


「どうしたんですか、そんなに急いで?さっきの人ってそんなに悪い人なんですか?」

「奴の名はサミュエル、世界最強の男になるために目を失ったネクストパーソンだ。」

「何ですか、それ?」

「インコンプリートパーソンは通常、生まれた時に既になっているもんなんだけどな、ネクストパーソンは自力で能力をみにつけた者の事を言う。」

「えっ、じゃあ僕もネクストパーソンとか言うやつになれますか?」

「無理だろう、やつは特別なんだ。」

「へぇー。おじさんも凄い能力がありますよね?欠点とかないように見えますけど。」

「私もあるよ、隠しても隠しても現れる程に大きなもんがなぁ。」
 
「そうですか。」

僕は聞いては悪いと思い、その事についてこれ以上聞かなかった。


「他に何か聞きたい事はあるかね?知りたければ学校等案内するが」

「ありがとうございます。でも、もう大丈夫です。」

「あっ、最後におじさんの名前を教えてください。今日親切にしてもらった事のお礼がしたいので。」

「私の名前はバーベナ。お礼はいいさ、もう貰っているからね。」


おじさんの言葉の意味がその時の僕にはよく分からなかった─

2

学校で少年が廊下を走っている。

「ワイアット君そんなに急いでどうしたの?」

「やぁ、エレットラちゃん。実はね、先生に学校の外に行く許可をもらったんだよ。君も行く?」

「ゴメンね。私ってドジだからお外は駄目なの…」

この子の能力は怪我を治す事ができる女の子。

僕もよく癒やされている。

「そう、それじゃあ!」

そういい僕は友達を誘いにまた走り出した。



ドンッ

肩がぶつかった。

「ごめん、デーヴ。急いでるからじゃあ」

そう言い少年はそのまま走っていく。

デーヴは近くにいた友達に立たせてもらう。

「デーヴさん、大丈夫ですか?」

「あぁ、ワイアットはどうした?」

「もういなくなりましたよ。」

「あいつ…気に入らないな。無能力者のくせに」

「えぇ、このままにしておくとまた付け上がりますよ」

「そうか…ならあいつにはちょっと痛い目にあわせないといけないな。」




「やぁ、ネイハム君これから外行くんだけどどうかな。」

「うぅ。わりぃ。朝からずっと俺の悪口を言う声が聞こえてきて…ナーバスなんだ…」

「そうなんだ…。あの人とだけじゃあ心細いから、誰か他の人と一緒に行きたかったんだけどな。」

「あぁ、あの先生か」

「うん、そうだよ。」

僕はそう言いそっとため息をはいた。




「話は聞かせてもらったぜ!俺も行かせろよ!」

僕は声のする方に目線を向けた。

「ポールじゃないか、一緒に来てくれるのかい⁉ありがとう。」

この子は能力を使うたびに痩せていってしまう。能力はまだ分かっていない。

女の子が少し離れたところで僕に話しかけてきた。

「あの!私も連れてって欲しいのだけれど。でもっ!べ、別にあなた達と行きたい訳じゃないんだからね!勘違いしないでねっ!」


「それじゃあ行こう、ポール」

「あぁ、久しぶりに学校の外楽しみだな。」

2人はそう言い監督する先生の元へ向かう。


「私がお願いするのはおかしかったわね。本当だったらあなた達が…っていない!。待ちなさいよ!」

女の子はそう言い二人後ろをついていった。


「タイアド先生この3人です。」

「えぇ、では行きましょうか。」

先生は息を荒くしながらそう言った。

ポールは小声でワイアットに話しかけた。
「あの先生大丈夫かよ。なんにもしてないのにもう疲れてるぜ。」

「まぁまぁ、きっと大丈夫だよ。」



「外だ!」

僕は久しぶりの外でテンションが上がる。

「おいおい、元気過ぎないか」

ポールは呆れながらそう言った。

「だってさ、僕ここに来てから一度もみてないんだよ。」

「そうか。でもいい場所じゃないぜ学校の外は、悪いやつ一杯いるしな。」

「それじゃあなんでポールは来たいと思ったんだい?」

「ちょっと用があってな…」

そう言いポールは何処か遠くを見つめていた。

「僕もしなければならない事があるんだ。」

「えっ、何だよ。」

「実はね、この学校入る前お父さんと二人で暮らしてたんだ。」

「でも…」

そう言いワイアットは昔の事を振り返る。



僕のお父さんはとても優しい人だった。

いつもニコニコしながら僕の話を聞いてくれる。

「お父さん何でいつも笑っているの?」

と聞くと「幸せだからさ。」と応えてくれる。

ある日のこと、父さんはボロボロで家に帰ってきた。

「お父さん、どうしたの⁉」

「いや、何でもないよ。」

父さんはそう言いいつものように僕をみてニコニコしている。

そんなはずある訳ないじゃないか。そう思った僕は外に出掛ける時コッソリと父さんについていった。


尾行中僕は父さんを見失う。

「父さん、何処?」

僕は泣きながらお父さんを探した。

でも、中々見つからなかった。


それで僕はもう諦めて帰ろうとした時、父さんの後ろ姿が見えたんだ。

「父さん!」

僕はそう言いお父さんの元へ駆け寄ろうとした。

でも…

「来てはだめだ!」

父さんのまわりを見てみると悪そうな男達が一杯いる。

「あいつ、お前の子供か?」

その中の一人が笑いながら父さんに話しかけた。

「何でもしますから、息子にだけは手を出さないでください。」

父さんは膝を地面につきながら、必死に男の足を掴み懇願する。

「うるせー!」

そう言い男が父さんを蹴った。

僕は怒りが込み上げ、叫んだ。

「やめろーー!父さんをいじめるな!」

そこで、僕の意識はなくなった。


目を覚ますと、僕は家にいた。

あれは夢だったのか。

そう思いその時の僕はホッとした。

でも、その日以来お父さんが家に帰ってくる事は一度もなかった。


それから数年後

「父さん、言ってくるね。」

僕は家の前でそう言い旅にでた─


と言うことなんだよ。

僕はポールに昔の事を話し終えた。

「そうだったのか…大変だったな。でもそれって結局夢だったのか?」

「さぁ、分からないよ。でも僕にとっては重要な事だと思うんだ。」

「そうか…。」

ワイアットは雰囲気を変えるため、思い出したように
言った。


「そういえば、先生とアルビーナさんどうしたんだっけ?」


僕はそう言い後ろを向くと、一緒についてきた女の子(アルビーナ)とタイアド先生が話しているのが見えた。

「それでね、それでね。ワイアット君ったらヒドいのよっ。私の事を無視したの!」

「あぁ。」

先生は倒れそうな勢いで頷く。

「ゴメン、ゴメン。君が可愛くてつい意地悪をしたくなったのさ。」

僕は二人の方に近づきながら決め顔をかまし、言った。

「そ、そんな事を言われても、別に全然嬉しくないんだからねっ!」

彼女は頬を赤くしながら言った。

「そんな事言わないでよ~。」

「フン、もう知らないっ。」



そんなこんなしているうちに僕達は町についた。

「ようやく到着かぁ。で、先生ここで自由行動でいいかな?」

ポールは先生に詰め寄った。

「い、いや駄目ですよ。」

先生は今にも息絶えそうなか細い声で言った。

「それにしても先生大丈夫ですか?」

僕は心配そうに見つめる。

しかし、先生は

「大丈夫さ。私は君達の先生だからね。」

「でも、そう見えませんよ!」


「心配してくれてありがとうワイアット君、
君に一つだけ伝えたい事があるんだ。」

「何ですか?」

「私は能力のためこのような体になってしまった。
とても辛く、苦しくてこんなものなくなってしまったらいいのにと今でも思うよ。」

「でもね、今思い返せば辛いことばかりじゃなかった。私の伝えたい事はね、どんなに辛いことが起こってもくじけては駄目だ、頑張っていればきっと必ずいい事が起こる。だから信じて待つんだ。」  

「これは優しい君にだから伝えたことだよ。」

そう言い残し先生は倒れた。

「どうしたんですか?センセイッ、センセー!」


その後先生は病院に運ばれる。

医者の話では貧血らしい。

「良かったー。死んでしまっていたらどうしようかと思ったよ。」

僕はホッとする。

「でもさ、あんなやつが学校の先生になれるなんてあの学校おかしいよな。」

ポールは迷惑そうな顔で言った。

「そんな事ないよ、あの人はいい人だからね。」

そして僕は遠くの方を見つめる。


「ねぇねぇ、アンタ達これからどうするの?」

アルビーナさんが不安そうに聞いてきた。

「先生いないと外出してはいけない~とかカテリーナ先生(校長)は言ってたけど、自由行動でいいんじゃない?」

「そうだな、タイアド先生待ってた事にして遊びに行こう!」

ポールは無邪気に微笑んだ。

「ポール、君はそのためについてきたのかい?」

「いいや。ある男に会いたくて来たんだ。」

「そういえば、アルビーナさんはどうしてだい?」

「私はね…実は…」

アルビーナは深刻な顔をし立ち止まる。

しかし2人はそのままどんどん前へ進んで行った。

「本当は言いたくなかったんだけどね…。って、待ちなさいよ!」

アルビーナは2人の後を追いかける。

「ごめんごめん、で何の話だったっけ?」

「一緒に行きたいって言った理由よ!」

「実はね、突然両親と連絡が取れなくなったの。」

「何があったんだい?」

「それは分からないのだけれど、連絡をとれていた時はしつこく宗教の勧誘を受けていたみたいだから…きっとその宗教に関係があるのだと思うのよ。」

「何か大変そうだね…。そこが何処にあるか場所分かる?」

「それが…分からないのよ。」

「それじゃあ、残念だけど…。」

アルビーナは笑顔で応えた。

「ゴメンね、こんな話をしてしまって。」

そう言った彼女の顔はどこか寂しそうだった。

「やっぱり君は可愛いなぁ。」

「何よっ…」

僕はそっと彼女を抱き締めた。

「大丈夫、きっと僕が何とかしてみるから、君は心配しないで。」

「あなたって人は…」

アルビーナは頬を赤く染める。

それを見たポールが「ヒューヒュー。カップル誕生かなー?」

「あっ、ごめん。」

僕は彼女から離れる。

「いいのよ、嬉しかったから。」

彼女はそうつぶやいた。

「えっ、何?」

「何でもないっ、行きましょ!」



若者2人が話をしている。

「昨日恐喝したんだけど、その相手が大人のくせに『許して下さい。』とか言ってビクビク震えて泣いてやがったの。」

「そいつダセぇ。」

そう言い二人は笑った。

ドンッ

何かにぶつかる。

「いててっ…。おっさん、前ちゃんと見て歩けよ!」

「おいっ、そいつ…。」

もう一人の若者の声が震えていた。

「どうしたってんだよ。」

その男の方を見上げてみると、

「おっ、お前はっ…」

急激に体が震えだした。



「おいっ、あれ何だ。」

僕はポールが指した指の方を見ると、そこには大男の前で腰を抜かし震えている青年達が。

その人達が襲われていると思った僕はすかさず走り出した。

「やめろー!」

そして、その大男の前に立つ。



「助けてくれっ。殺されちまうよ!」

男達は涙を流しながらさながらわらにもすがる思いで僕に助けを求める。

「分かってる。」

すると、男は話しかけてきた。

「不注意、すまなかった。いかんせん、目が見えないものでな…。」

そう言い男は背を向けた。


「ワイアット!大丈夫だったか?」

ポールとアルビーナが遅れて到着した。

「あいつ…もしかして!」

ポールは大男の後ろ姿を見つめる。


大男が立ち止まり、振り返った。

「ワイアット、いるのか⁉」

男はそう言い何かをつぶやく。



「あいつ、サミュエルだよ!」

ポールは思いついたように言った。

「サミュエルって要注意人物にされてる人?」

「あぁ、俺はこの人を見たいがために付いてきたんだ。」

「そんな事のためだったのか…」

僕は呆れて何も言えなかった。



サミュエルが口を開く

「ワイアット、そうワイアットだ。あの男が最後に言い残した言葉は。」

「なんの事だ!」

「お前の親の名前を言ってみろ。」

「お父さんの名前はリネームだ!」

「そう、そいつだよ。昔あの世へ送ってやった。」

「何だって⁉」

僕は地面に膝をつけた。

「あの、いつも優しかった父さんが…。どうして」

「弱いくせに俺に反抗してきたからだよ。
死ぬ間際何度も言ってたぜ。『ワイアット君…、ワイアット君…』ってなぁ。」

「やめなさいよ!」

アルビーナが僕の前に立つ。

「何もしやしねぇよ。ワイアット、お前にこれを伝えられたからなぁ。」

そう言いサミュエルはその場を立ち去る。

その間際何かをつぶやく。

「ワイアット君、ゴメンよ…」


「カッコいいっ、あれがサミュエルか!」

ポールは目を輝かせながら男の後ろ姿を見つめる。

「ポール、そんな事よりちょっとはワイアットの心配をしなさいよ…。」

そして僕は2人に運ばれながら学校に戻った。

3


 僕は父さんと出かけている途中母親と楽しそうに会話をしている子供を見た。

「お母さん、お散歩楽しいね」

「えぇ、そうね。」


僕は父さんを見つめる。

「どうして、僕にはお母さんがいないの?」

すると、父さんは悲しそうな表情を浮かべ僕に一言。

「ゴメンね。」

そんな顔しないでよ。

僕はそう思った、だが声が出ない。

次の瞬間サミュエルが現れる。

「父さんはどこへ言ったの?」

僕は彼にそう問いかけると彼は

「俺が殺したんだ。」

僕の目には涙が、

「ウソ、ウソだよ。だって、さっきまで一緒にいたんだもん!」

「それはお前の夢だ」

そう言い男は高笑いをする。


「ウソ、ウソだーーっ。」

僕は叫び続けた─



「うぅ…」

僕の手に生温かい感触、そして近くから声がする。

「大丈夫、大丈夫よ。」

目を開けると、そこには少女が椅子に腰をかけて僕の手をふれながらこちらをジッと見つめている。

「目が覚めたのね、良かった。」

彼女は安心したように微笑んだ。

「エレットラちゃん…」

僕は天にもめされたような気持ちになった。

「看病してくれて、ありがとう。僕を安心させるためにずっと手を握っていてくれたんだよね。」

「いいのよ、これは私の仕事だから。じゃあ、私そろそろ行くわね。」

僕は顔を赤くしながら言った。

「いや、もうちょっとこのままで居たいなぁ。」

「駄目よ…」

エレットラは目線をそらす。

「どうして?」

「皆に付き合ってると勘違いされたら恥ずかしいんですもの…。」

ドンッ

ドアをこじ開ける音に目がいく。

「なっ、なんだぁ?」

「ワイアット、貴様っ。エレットラさんに何をしている!」

「何もしてないよ。」

「嘘をつくな、その手はなんだっ!」

「手が痛くてねぇ。治してもらってたんだよ。っていうか、君誰だっけ?」

「友達の顔もおぼえていないのか、この薄情者めっ!」

「いや、知らないよ。」


「昔なっただろう!」
「あれは一年前の事─」

僕はいつものようにエレットラさんの魅力に目を奪われていた。

「やぁ、彼女はいつ見ても癒やされますなぁ。」

そんな事をつぶやきながら彼女のあとをついていったんだ。

すると、自分の他に彼女を見つめる視線を感じた。

「おい、貴様っ。何をしている!」

「いや~、バレちゃったか~。実はね、僕彼女の事が好きなんだー。」

「へぇ、君も好きなのか。」

「風にかかった時とかだれそれ構わず看病してくれるところとかいいよねぇー」

「あぁ、いいなぁ。僕ら気が合うみたいだから友達にならないか!僕の名前はリアトリス─」





「それが、僕らの出会いだった。」

「うーん、そんな事あったような、なかったような…」

「あっ、そうだ!」

僕は思いついたように言った。

「そういえば一年前、エレットラさんは誰かの視線がするって怯えてた。」

「だから僕はその時、彼女に頼まれて見張ってたんだよ。でも結局犯人は見つからなかったんだ…。その犯人は君だったのかぁ!」

「いや、違う、そんな訳ないだろ!僕は護衛だ!
そんな事より、校長先生がお前の事呼んでたぞ。」

「そんな嘘ついちゃって…。君は嘘が下手だなぁ。」

「本当よ、あなたが目を覚ましたら来なさいって伝えてって。」

エレットラさんが真剣な表情で僕を見つめる。

「本当⁉それは、まずい!早く行かなきゃあ」




そして、僕は校長先生の部屋についた。

中に入るとポールとアルビーナがいた。

「遅かったじゃない。」

「あぁ、ゴメンゴメン」


奥には仏頂面のカテリーナ先生がいた。

「3人共集まりましたね。」

「話って何でしょうか?」

「昨日の事です。何故あなた達は病院に留まらず、外に出たのですか!私はあれ程言いましたよね。外は無法者共がうろついていて危ないと!私が言った事は全て完璧にこなしなさい!」

先生の説教はそれから30分続いた。

「ポールさんとアルビーナさんはもう、戻ってよろしい。」

「えっ、僕は?」

「あなたにはお話があります。」

二人が退出した。

カテリーナ先生は僕に近づき頭をなで微笑んだ。

「さっき、言ったことは全てあなただけ本当は守らなくていいんですよ。」

「ひいきは不味いんじゃないですか?」

僕は不安そうな表情で見つめる。

「そんな事は大丈夫です。」

「何で、先生は僕といる時だけいつも優しいんですか?」

「あなたが特別な存在だからと、今は言っておきましょう。」

「特別?僕にはここの生徒みたいに能力なんてありませんよ」

「そんな事は今は考えなくていいんです。いつかあなたも知る時が来るでしょうから─」

「明日病院にいるタイアド先生を連れ帰って来なさい。」

「はい、分かりました。」

「さぁ。あなたも、もう戻りなさい。」

「はい、ありがとうございました。」

僕はお辞儀をして部屋から退出した。


ドアの外に誰かいた。

「デーヴじゃないか!君はこんなところで何をしているんだい⁉」

「ワイアット、お前を待っていたんだよ。」

彼は僕の耳元に寄る。

「お前の父親、死んだらしいじゃないか。」

「うっ…うん。そうらしい…」

「無能力者の癖に調子に乗ってるからだ!
ざまぁねぇな。」

彼はそう言い鼻で笑った。



僕は友達のネイハムのところへ行った。

彼は頭を抱えて苦しんでいる。

「大丈夫かな?」

「あぁ…ギリギリ。」

「そういえば君って念写が出来るんだったよね。やって見せてよ」

「うん、出来るけど…。」

彼はそう言うと紙を取り出し何かを念じ始めた。

「よし…出来たよ。」

僕はその紙をもらった。

「何か書いてあるよ。読んでいい?」

「あぁ…どうぞ。」

「シスコ…」

そう言いかけた時だった

「もうやめてくれ。友達にそれを言われるのは流石に辛い…」

「シスコンの事?シスコンってなんだい?」

彼は呆れた口調で言った。

「あぁ、何で言っちゃったんだよ…。」

「君がこの言葉を念じたんだろう?知られてマズイことなら念じなければ良かったのに。」

「いや、俺は違うことを念じようとしたんだよ、でも自分の中に潜む強大な敵“ケイジバン”が…」

「何それ?まぁいいや。明日また出かけるんだけど君もどうかな?」

「いいよ…気分転換になるだろうからな。」

「私も連れていきなさいっ!」

ドアの向こうから声が聞こえてきた。

僕達はドアを見る。

「誰っ?」

「私よっ私っ。」

ドンッ

ドアが開いた。

「何だぁ、アルビーナちゃんかぁ…」

「何よっ!悪いの?」

「別にいいけどさぁ…」

「その言い方腹が立つわねぇ!」




夜のこと、

「ワイアット君大丈夫だろうか…」

私は一人病院の寝室でそうつぶやくと昔の事を考えた。

それは治安が悪くなり始めた頃のこと─


「シスター最近犯罪がめっぽう増えてきていますね…。」

辺り一体には死にかけの人々が

「大丈夫?」

少年に話しかける。

「うぅ、誰か…た…す…けて」


「こんな事に巻き込まれなければきっと、素晴らしい人生を送っていたでしょうに…やはり、デビルブレイクと呼ばれている方達が原因ですか?」

「はい。かわいそうですが、我々にはどうする事も出来ません…」

「いえ、そんな事はありません、私の能力があれば子供たちだけは救う事が出来ます!」

「しかし、あなたの能力は…」

「その事なら大丈夫です。私達で学校…いえ保護所を設立するんです。」

「いい考えだとは思いますが、神父様はどう思いになられるでしょうか…」



「それは、とてもいい考えですね。」

神父は微笑んだ。

「それでは、神父様も…」

「いいえ、私はここを離れる訳にはいかないのです。一人の聖職者としてね…。きっと大丈夫です。私がいなくても、あなた方ならば。」



「神父様はどうなさっているだろうか…。それに、彼の事も心配だ…。まぁ、今は…。
そこにいるのは分かっている出てきなさい。」

ドアの方に話しかける。

「ふっふっふっ、バレてしまいましたか。」

「君は…⁉」




「おはよう!ちょっと早いかもしれないけどもう出発しよう。」

「早すぎるよ…。俺ロングスリーパーだから、毎日10時間くらい寝ないと調子出ないんだ…」

ネイハムは何かに気づいたように僕を見る。

「赤ちゃんみたいだって⁉」

「いや、そんな事一言も言ってないよ…。」

「あぁ、そうか…。わるいな…。俺の脳内ネットワークがそう言っていたんだ。」

「よく分からないけど、例のケイジバンっていう謎の組織の事?」

「あぁ、そうさ!俺の中の脳内掲示板が…」

「もういいよ。さっさと行こう!」

僕の部屋のドアが開く。

「あなた達、待ちなさいっ!私をおいて行くつもり?」

「いや、そんなつもりはなかったんだけどね。何か二人で行きたいなーって。」

「やっぱり、おいて行くつもりだったんじゃないっ!あなた達は子供よっ。私のような“大人”がついていないと駄目でしょっ!」

「いや、君ぼくらと同い年じゃないか…」

「精神的な意味の大人よっ!幼稚なあなた達にかまってあげてるんだから感謝なさいっ!」


「ワイアット早く行こうぜ…。こんなことしてたんじゃ日が暮れちまうからさ…。」

「うん、分かったよ。僕達と一緒にいても疲れるだけだと思うからアルビーナちゃんはお留守番で!じゃあ!」

「行くって言っているでしょっ!あなた母性本能しらないの?」



「居なかったね、タイアド先生…。」

「病院の人の話では昨日までは居たらしいけど…」

「あの学校に戻るのが嫌になって逃げ出したんじゃないのっ?」

「まぁ、いろいろあるかもしれないけど。とりあえず学校戻っていなかったこと伝えようよ。」


「ねぇ。君達、タイアドって人知っている?」

僕達は声の方に目を向けた。

「あぁ、僕達の先生だ。」

「うーん、残念賞っ!タイアドは君達のところには二度と戻りませ~ん。」

「なっ、何なんだ君は⁉」

「俺か?俺は新興宗教セオドア教信者の一人アジサイだ。」

「セオドア教?何だそりゃぁ。」

「ジャレッド様が作られた素晴らしい宗教さ。まぁ、お前は知っても意味がないんだけどなぁ、クズ無能力者さんよぉ。」

「なっ、何でそれをっ⁉」

僕は動揺した。

「感だ。じゃあな、恨むなら能力のない自分を恨め。」

アジサイは僕を見てニコリと笑う。


「ワイアット⁉」

「さっきまで近くにいたのに…どうして?」


「ふっ、そいつは俺の能力さ。アイツはこの世から完全に消滅したんだよ。」

「何だってぇー⁉」

「この世から出来損ないを廃除出来るんだぜ。最高だろ?」

「そんな事をして許されると思っているのっ?」

「あぁ、そうだ。何をしても許される宗教それがセオドア教だからなぁ。じゃあな、また縁があったら会おうアルストロメリア学校のボウズたち。」

「待ちなさい!その宗教…セオドア教の信者の中に私の父…カーソンはいる?」

「さぁ、どうだろうなぁ。お嬢さん。知りたければ入信することだ。」

「そんなの、嫌に決まっているでしょっ!」

アルビーナは終わったような表情をしているネイハムを見つめる。

「ワイアットがいなくなって辛いのは分かるんだけどっ…。」

「いや、違うんだ…。明日からボッチだと思うと…」

「アンタって最低ね…。」

「君も不特定多数の人間と同じ事を言うのか?」

「何よ…それ?」



「あれ、僕何をしていたんだっけ?」

目を開けるとそこは一面真っ白な世界。

僕は頭を抱え座り込む。

「どこなんだよー、ここはー!」

「おやおや、客人かね。」

僕は声の方に目を向けた。

「オジサン、誰?ここはどこ?」

「私も分からないよ。以前はよく探索をしていたんだがね…。」

「そうなんだぁ、どうやったら出れるの?」

「それが分かればここに私はいないさ。」

僕は頭を抱える。

「じゃあ、どうすればいいの…」

「君はどうして(どうやって)ここに来たのかい?」
 
「知らないよ。友達とお出かけしてたらイキナリ…」

「そうか…。」

オジサンは少し考え込む。

「少し昔話に付き合ってくれないか?」

「どんなー?」

「ある男の話さ。」

「僕は早くここから出たいんだけど…」

「長くはしない。」

「昔5つの勢力が争っていた。それが原因で、人々は腐敗しきっていた。だが、ある時周りの者の事を考えないその者達に憤りを隠せなかったのか、一人の男が立ち上がる。彼は何の力も持っていない貧弱な者だったが、悪魔と契約し剛魔の力を手に入れその地に平和を取り戻した。」

「それで、それでー?」

「皆彼に感謝した。だが、予言者を自称する者達が現れ『その力が後に最悪をもたらす。』と告げる。その予言者達は皆に信頼されていたのか、皆彼を嫌悪し、要注意人物としてその国から追放したのだ。」

「…」

「追放された彼にはどこに行くあてがなかった。いや、行けなかったが正しいだろう。悪魔との契約が原因でな。悲しいことに彼は大切に思っていた人物と、もう会うことが出来なかった。」

「そうなんだぁ。それで、この話は大切なことなのー?」

「あぁ、多分な。」

「あいまいだねぇー。」

「ところで、君はインコンプリートパーソンについてどう思う?」

「よく分からないよ。だって、僕能力ないもん。」

「そうか…。私もそうなのだが、能力は何故限られた人間に与えられたのだろうな?いや、能力は皆初めから持っているのかもしれない。才能と呼ばれる欲しがっても中々手に入らないものがな。人は何かしらの欠点を必ず持っている。それがけん著にでているだけなのだ。人よりも人らしい、それこそが我々インコンプリートパーソンなのだと思っているよ。」

「オジさーん、何か一人で盛り上がらないでよー。」

「すまない。能力がないというのは素晴らしい。君はこれから何にでもなろうと思えばなれるということだからな。ネクストパーソンを知っているかい?彼らは代償と引き換えに能力を手に入れた。それを目指すといい。いやもうなっているか…」

「僕、別に能力が欲しいなんて言ってないよ。」

「そうだったか。ところで、ここに来る前に本当に誰とも会わなかったのかい?」

「あー、確かアジサイって人と会った。」

「あの男か…」

「オジさん知ってるの?」

「いや、気にしないでくれ。」

「うん。」

「君はとても運が良いな、私のところに来なければ永遠に消滅していただろう。当初は私と同じく禁忌を犯した者だと思っていた…。最後に名前を聞かせてくれないか?」

「最後って?まぁ、いいや。僕の名前はワイアットだよ。」

「何っ⁉」

オジサンは不敵な笑みをうかべた。

「そうか、そうか。君がか!」

「どうしたの?オジさん。」

「何でもない。私の名前はエーブラハムだ。忘れていい。じゃあな。」

エーブラハムは僕の頭をなでた。

それと同時に僕の視界が段々暗くなる。

「オジさんどういうこと…?」


「フッハハハ、外界はそんな事になっているとはなぁ。戻るのが、楽しみだ。オースティンよ、任せたぞ。」


目を開けると僕のそばにはアルビーナがいた。

「もうっ、今までどこ行ってたのよっ!」

「心配しててくれたのかい?」

「当たり前でしょっ!私はあなたの保護者なんだからっ。」

「引っ張るなぁ…。」

「あぁ、良かったぁ。ボッチにならなくて!」

ネイハムがホッとした表情で僕を見る。

「アンタってやっぱり最低ねっ。」

「いやー、それ程でもないよ~。そんな事よりもう帰ろうぜー。」



4

「おっはよー、今日もいい朝だねー。何かいいことありそー!」

僕は部屋で一人元気に目覚めた。

そしていつものように友達の部屋へ向かう。


その途中、僕の方をチラチラと見る視線を感じた。

「君達、どうしたんだい?」

しかし、返事はかえってこない。

「もぉー、なんなんだよー。」


「でさー、ここに来る途中すれ違う人達全員僕をジロジロ見てきたんだよ。」

ネイハムはニヤケながら頷いた。

「いやー、それは残念だったねー!」

「なんで君はそんなに嬉しそうなの?」

「いやー、なんでだろうねぇ。自分とおんなじ思いを共有出来る仲間ができたからかなー?」

「君の言うことはよく分からないよ…」

僕はネイハムと校内を歩く。

「すっごく強いヒーローがいてさー、とってもカッコいいんだぜー。」

「へー、ヒーローなんているんだー。」

「あぁ、一度見に行ってみる?」

「君がそんなに言うなら行ってみたいなぁ。」


僕は前からくる少女に目を奪われる。

「エレットラちゃん、おっはよー!」

「キャアアアー」

エレットラは僕を見て悲鳴を上げ逃げていった。

「おいおい…どういう事だよ」

僕は涙目になりながらうつむいた。

「ハッハッハ、こんな事もあるって!」

ネイハムはニヤケながら僕の背中を叩く。

「不完全燃焼…。これから僕は何に希望をもって生きて行けばいいんだー!」

「おいおい、ちょっと落ち込みすぎだぜ。元気だせよ。なっ!」

「なんで君はそんなに嬉しそうなんだい…?もしかして、理由知ってるの⁉」

「いやぁ、知らりんちょんだ。」

「なんだよ…それ?」


「あなた、なんて事するのよ!」

僕は声の方に目をやった。

「君はエレットラちゃんの友達のアンナさん!なんの用?もしかして僕に一目ぼれしちゃったの?僕って罪な男だなぁ。でも、ゴメンね。僕にはエレットラちゃんって心に決めた人がいるんだ!だから君とは付き合えない…本当ゴメンね。」

「おいおい…お前いつからナルシになったんたよ…。イメチェン的な?それに、さっきまで元気なかったのにもう立ち直ったのかよ…」

ネイハムがすかさずツッコミを入れた。

「そんな訳ないでしょ!噂で聞いたのよ。」

「噂?何?」

「ワイアット君がね、深夜にエレットラの部屋に毎日一時間そい寝しに行ってるとか、彼女を隠し撮りした写真を隠れて毎日かかさずほおずりして笑ってるらしいって。」

「そっ、そんなこと僕がする訳ないじゃないか~。」

「怪しい…。アルビーナが皆の前で言ってたのだけど、ワイアットが急に抱きついてきて『かわいいやつめっ、一緒にミルフィーユをつくらないか?』と言ってきたって。口説き文句がそれって…最低ね。他にもあるのだけど」

「僕は無罪だー!もう許してよー。」

「分かったわ。もう、エレットラに近づかないでね。」

「えっ⁉」

僕は地面にひざをつく。

「そんなぁ、あんまりだー。」

「まぁまぁ、そんなにへこたれるなって。明日があるさ!人の噂も365日っていうだろ!」

僕の肩に手をのせる。

「いや、75日だよ…」

僕は小声でつぶやく。



「あっ、ワイアットのやつがいましたよ。」

「あぁ、分かってる。」

少年達が僕の周りを囲む。


「デーヴ何かよう?」
 
僕は重い腰を上げた。

「ワイアット君、聞いたよぉ。エレットラさんにつきまとって最低な事をしているらしいじゃないかぁ!」

顔を寄せる。

「汚物はさっさとここから立ち去れ。」

「もしかして、君が…?いや、何でもないよ。疑ってゴメン。」

僕は背を向けた。

「そうだとしたらどうする?」

「何もしないよ。今までのこと全部忘れるから僕達友達になれないかな?」
 
デーヴはお腹を抱えながら笑う。

「おっ、お前大丈夫かぁ?」  

「僕は皆と仲良くしたいんだよ。」

「お前となんて天地がひっくり返っても嫌だね。それと、さっさとこの学校から出ていく事をオススメするぜ。さもなくば…分かってるな?行くぞお前ら」

デーヴは去っていった。



「ドンマイ、ドンマイ。こんな事もあるって!」

「ネイハム君…思ってたんだけど、もしかして知ってた?」

「あっ、いやぁ。」

「誤魔化さなくても分かっているよ!」

「悪いなぁ。俺の気持ち分かってくれる人が出来ると思ったら、何かちょっと言えなくて…」

「何だよ…それっ。」



「ソフィア先生、あの男はいなかったらしいですよ。」

「それはいたいですね…。これからどうなることでしょう?」

「もし、敵にまわっていたら、そうでなくてもここはスグに潰されてしまうでしょう。彼は要でしたからね…。」

「では、子供達の安全を考えなくては…。以前のような事がおこる前に。」



「エレットラ大丈夫?」

アンナが近くに寄る。

「えぇ。大丈夫よ…。でも、彼に悪いことをしてしまったわ。そんな事する人ではないのに…。」

「いいえ、アイツはするわよっ!さっき話してきて分かったわっ。」

「でも…私にはよく優しくしてくれたよ。」

「やましい気持ちがあるから優しくするのよ!アナタ、優しくされたら誰にでもホイホイついていくんじゃないでしょうね?気をつけなさい!」

「それでも…昔ね…」

私は昔イヤな事されていたの。

少年達が少女を囲む。

「エレットラはトロいなぁ。」

「ごっ、ゴメンね。グラジオラス君…」

「また謝ったぜこいつぅ。」

「ハッハッハ。」

「キズを治す能力って能力ないのと変わんねぇじゃん。」

「しょっぼいなぁ!」

私は今にも泣きそうになっている時

彼が現れたの。

「君達そんな事はやめようよ!」

「何だぁ?お前。」

「こいつ、最近入った無能力者のやつだぜ。」

「無能力者同士仲良くやってるってかぁ。」

「僕はどうなってもいい、だから、もう彼女に手を出さないでくれ。」

「へっへっへ。な~んもないくせに言うじゃないか。本当にどうなっても…か?」

「あぁ。」

「こいつを入院させるまでボコボコにしてやれ!」

私はスグに近くにいた先生を呼んだの。


「アナタ達何をしているんですか!」

「ゲッ。ソフィア先生だっ…逃げろ。」


「大丈夫でしたか?ワイアットさん」

「はい、なんとか。」

この男の子ワイアット君って言うのね。

それで、私は勇気を振りしぼって話しかけたの。

「あのっ。ワイアット君、助けてくれてありがとう。」

「いやぁ、どういたしまして。」

「どうして、私なんかを助けてくれたの?」

「いなくなったお父さんが言っていたんだ、困っている人がいたら助けてあげられるような強い大人になりなさいってね。でもこんなにボロボロじゃあ助けたことにならない…かな?」

彼は笑いながら言った。

「ゴメンね…私のせいで。」

「そんなにかなしい顔しないで。僕は君の笑顔が見たくて勇気を出したんだ。だから君にはずっと笑っていて欲しい。」

「ありがとうっ、ありがとう。ワイアット君」

「君、名前はなんて言うの?」

「私は─」



「そんな事があったのよ。だから…」

「そう…。ならアナタの好きになさい。」

「うん、ありがとう。アンナちゃん!」



「ヒーローってどんなことしてんの?」

「悪いやつを倒すんだ!スゲぇぜ!」

「悪いやつって?」

「デビルブレイクのやつらさ。」

「デビルブレイクって?」

「先生が言ってたじゃないか!」

「そんなの覚えてないよ…」

「昔5つの勢力が戦争していたんだ。そいつ等は暴虐武人な行動を…」

「暴虐武人って何?」

「とにかく悪人って事だよ。」

「で、君は何で好きになったの?」

「質問攻めか…。俺はあおられキャラだけどマゾじゃないんだぞ…」

「あぁ、わるいわるい。」

「それでー、なんでファンになったかだったよな?それはさぁ、あるヒーローがキッカケなんだよ。」

「あるヒーロー?」

「うん。その名も炎上マン。名前の通り炎を使うんだぜ。ほら、言ってる間に」


「今日も皆をモエさせてやるぜ!」

「ややっ、お前は!活躍するとネット上で炎上すると噂の…」

「余計な事は言わなくていいぜ!お前はゼラニウム団の首領だな?」

「なっ、なぜバレた⁉」

「服にデカデカとそう書いてあるではないか!」

「バッ、バレては仕方がないっ!お前には消えてもらう!」

「やれるものならやってみるがいい!」

敵が走っておそいかかってくる。

「キャー、カッコいい!頑張ってー!炎上マーン!」

外野が騒ぐ。

「皆見ていてくれ!」

そう言いウィンクをかます

ネットフレィムゥゥッ!

「ギャアァァァッ…!」

敵がクロコゲになった。

そして炎上マンは外野の方を見る

「今日もどこかでモエている。君達サラダバー!」


「どうだった?いいだろう?」

「マンマじゃないか…てか、あれ犯罪じゃないの?」

「警察いないからいいんだよー!」

「無法地帯かよ…。」



「今日も活躍仕舞いか…。」

私は遠く空を見上げる。

「君が活躍するために設立した会社だったんだけどね。」

「この欠点がなければ誰かを救う事なんて容易だったんですがね。」

「克服は出来ないものなのか?」

「えぇ、何度もしようとしましたよ。でも…中々出来ないものなんです。」

「うむ。そうか…。」

「スミマセンね。いつも愚痴にのってもらっちゃって。」

「いや、いいんだよ。おや、ジャーマンアイリス君が帰ってきたようだよ。」

「出来ることなら私も彼のような能力が欲しかった。こんなあってもなくても変わらないようなもの…」

「いいや、私は知っているよ。昔…もらったからね。」


「帰りました!炎上マンことジャーマンアイリスです!」

「今日の活躍いつにも増して凄かったですよ!」

炎上マンの元へ集まる。

「いやぁ、当然さ~。毎日昨日の自分を超えるって気持ちでやってるからねぇ。」

彼はおどけた表情で話す。



私は彼のところへ寄った。

「いつ見ても強いなぁ。」

「カルロスさんか、いつも出番奪っちゃって悪いねぇ。」

「いやいや、ヒーローのくせに何も出来ない私が悪いんだ。」

「人前にでると本気が出せないだったか?」

「あぁ。いい年して情けないことだがね。」

「やはり欠点と言うものは中々なおせないよな。」

「君もそうなのか?」

「あぁ、克服しようと思っている、だが中々な。ちょいと昔話に付き合ってくれ。」

「俺はな、生まれた時から炎を自由自在に使える能力者だった。確か10歳くらいの頃だったかな?その時の同級生がインターネット上で俺の名前を見つけたって言っていた。俺はスグにエゴサーチした。すると声も出ないほど多くのスレを見る。そこに書かれる暴言の数々に俺は怖くて能力を使う事が出来なくなった。ちなみに、言っていなかったと思うが能力を使うとネット上で炎上するのが俺の欠点だ。」

「そこからどうやって立ち直ったんだい?」

「困っている人がいた。ただそれだけだ。」

「君らしいじゃないか。」

「一番大事なのはその状況で自分の出来る精一杯の事をやることだと思っている。今でも辛いさ。でも、俺の事を応援してくれている方々がいる。それだけで心の支えになるんだよ。」

「そうか…。私も自分にできることを探してみるとするよ。」

「あぁ、これから一緒に頑張って行こうぜ。」





「き~めたっ!新しい恋を探してみる!」

ネイハムとの帰り道僕は決意した。

「おぉ、そうかぁ。きっといい人が見つかるって。」

「そんなの当たり前の助さっ!」


そして、学校についた。

「ワイアットく~ん!」

僕を呼ぶ声に振り返る。

「あっ、エレットラちゃんじゃないか!」

「朝はゴメンね…。噂に惑わされて…。ワイアット君はそんな事する人じゃないのに…。」

「いやぁ!全然大丈夫だよー!」

僕のテンションが上がる。

「さっきまで新しい恋を探すって言っていたのに…」

「いやー!ネイハム君、君は何を言っているのかなー?ゴメンねぇ、エレットラちゃん。ネイハム君ちょっとおかしくなっちゃったらしいんだ。」

「おいおい…」

ネイハムが呆れた表情で僕を見る。

「それにしてもどうして謝ろうと思ったの?僕のことなーんとも思っていないんじゃないの?」

「だって…私ワイアット君のこと嫌いじゃないもの…」

「聞いた、今?僕求婚されちゃったよ」

小声でネイハムに語りかける。

「どう飛やくしたらその結論に至るんだよ」

ネイハムが即座にツッコむ。


「ワイアット!貴様ッ!」

「君、誰だっけ?」

リアトリスだ!忘れるな!」

「そうだ、そうだ。どうしたの?」

「聞いたぞ!エレットラさんに最低な行為をしていると!」

そして、エレットラの方を見た。

「エレットラさんそいつから離れてください!こいつ何をするか分かったもんじゃありませんから!」

「あぁ、あれね。もう解決しちゃったよ。」

僕等は笑った。

「ハッ?どういうことだよ!」




「私は一人で祈り続けていた。神が降臨なされることを信じ。」

「それは報われた!彼は私の数々の、奇跡をおこしになったのだ!力なきものに力をあたえ、絶望するものに希望をあたえた、そう彼こそが─」


「おー、やってるね。」

アジサイ、遅かったじゃないの。何をしていたの?」

「ちょいと能力ないクズを消してたんだ。」

「アンタ、勝手な行動ばかりとるのね。セオドア教が無法者の集まりだと勘違いされたらどうするつもりなの!」

「いらないもんはゴミ箱にポイとすんのは常識だろ?それに、セオドア教の神と崇められているやつはただの人間だ。だから必ず許される。許さないと言うのならばそいつを消すだけだ。」

「なんで知っているの?」

「会ったことがあるんだ、やつになぁ。最近はバッタリと見なくなったがな。」

「アンタは本当にこの宗教を信仰しているの…。」

「あぁ、しているぜ。この信仰心があの男、オースティンによりつくられたものでなければなぁ。」



「私は今宵神からのお告げがくだった!神はある能力者を探せと命ぜられたのだ!さぁ、信仰する子らよ。はじめての仕事に取り掛かろうではないか!」

5


「やぁ、話ってなにかな?」

エレットラがモジモジしながらこちらをうかがう。

「じっ、実はねっ。最初あった時からずっとワイアット君の事好きだったの!」

「そうだったのか!実はね僕もなんだよ。」

僕はそう言い彼女を抱き寄せる。



「うわぁ、鐘の音が聞こえてきた。僕たちを祝福しているようだね。」

「えぇ、そうね。」

「このままケッコンしよう。」

「えぇ、そうね。」


「エヘヘ…エレットラちゃん、ふるえてるね、ちょっと激しすぎるよ。」


「おい、起きろよ!」

うっすらと誰かが僕の視界に入る。

「ハッ、今のは夢だったのか…」

「なんの話だよ。そんなことよりさ、今日はアイドル見に行かない?」

「昨日ヒーロー見に行ったばっかりじゃないか…」

「いいじゃん、いいじゃん。行こうよ。」

「全く君はしょうがないなぁ。」


アイドルの歌に歓声が鳴り響く。

「すごい人の数だねぇ。」

僕は驚いたように言った。

「そんなこと今は、どうでもいいだろう?歌に集中しろよ!」

「あんまり聞きたくないなぁ…だって…」

“運転中ムカついたらーっ隣の車にあっかんべーっ。みんな仲良く喧嘩売りましょー!あなたのハートに悪口ドッキュンドッキュン”


「最悪な歌だ…」

「何か言った?」

「いや、何も…」


「イェーイ、ストーカーのみんなぁー!さよならだょー!」

歌が終わった。

「良かったね~」

「いや、何処が…」


「君たち若いのにアオリンのファンなんだね」

ぽっちゃりした男性が僕達に話しかけてきた。

「いや、僕はファンじゃないですよ…。あの…このアイドルの何がいいんですか?」

「君には分からないのか!彼女の魅力が!」

その男性は急に熱弁を始める。

「私がファンになったのは」



通勤の途中美少女と中年の男性が何かを言い争っているのが見えた。

私は関わるのはよそうと通りすぎようとしたその時。

「ぶつかっておいて、謝りもしねぇのか!最近のガキは!」

「おじさ~んとぉっても臭いですぅ~。それ、スメハラですょ~。」

その発言に私は足を止める。

「何だと!挑発しているのか!ちょっと裏へ来い、教育し直してやる!」

美少女の腕をつかむ。

「やだぁ~、今度はセクハラだ~。気持ちわる~ぅい。」

2人の周りに男性達が集まってくる。

「なっ、何だ!お前達は!」

「いい年してそんな事するのはやめましょうよ。ねっ?」

分が悪いと思ったのか男は捨て台詞をはいて去ってゆく。

「大丈夫でしたか?」

男性達が心配そうに見つめる。


「大丈夫な訳ないじゃないですか~。だってぇ~、こんなに群れられたらぁ、気分最悪バドバッドですもの~」

皆黙り込む。

「でわでわ、暇人の皆様さようなら~。
あっ、そうだっ!私アイドルになろうっ!」

「それからだったよ。私がファンになったのは。」

「いや、今の話のどこになる要素が?」
 
「ハッハッハ、君は子供だね。」

男性はそう言い僕の頭をポンとなでる。

「彼女は裏表がない、そんなところがいいんじゃないか。」

「表があれですから、確かになさそうですね…。」

「それにね。私は知ってしまったんだよ、けなされた時に感じる胸の痛みと恋に落ちた時におこる胸の痛みは同じだってね!」

「いや、意味が分かりません…。」

「そうか。それなら今日彼女の握手会があるから行ってみたらどうかな?」

「えっ…」

僕はかたまった。

「行こうよ、何事も経験が大事だぜ!」

隣にいたネイハムがニッコリ笑う。



「それにしてもさ…なんで君はこんなところに僕を誘おうと思ったんだい?」

「そんなの決まっているだろう!俺達はもう友達じゃない、あおられ仲間だからだ!」

「それ、何か位が下がってない…。」

「下がってないさ、なんて言ったって仲間だからな!それより見えてきたぜ。」

アオリンが笑顔でファンの方々の対応をしている。

「アレの何がいいの…?」

「いや~、君はやっぱり分かっていないねぇ~。ファンとの会話をよく聞いてごらんよ。」

僕は耳をすました。

「あなたの手とーーっても汚いですねぇ~。ちゃんと洗ってますかぁー?」

次から次へと来る人への失礼な言い回し僕の疲れは最高潮に達した。


「ワイアット!握手してもらっちゃったよ~。」

「そう…。なら、もう帰ろう…。」

「いや、まだだっ!アオリンの楽屋に行こう!渡したい手紙があるんだ。」

「握手会の時に渡しておけば良かったじゃないか…。それと一般人は入れないんじゃないの…?」

「そんなのどうでもいいよ、行こう行こう!」

僕は仕方がないなと大きくため息をつきながら重い腰を上げる。


「私って、どうしてこんなんだろう…」

一人考え事にふける。



「握手会の時何してたんだい?」

「あぁ、そういえば言っていなかったな。妹と俺の関係を相談してたんだよ。」

「えっ⁉」

「『俺と妹は相思相愛なんです…。けれども、それは絶対に結ばれてはいけない恋っ。だから今は妹と離れてるんですけども…これからどうすればいいでしょうか』と俺は聞いたんだよ。」

「それでそれで?」

「アオリンは満面の笑顔で応えたんだ。『わぁー、そうなんだぁー。じゃあ、オススメの美容院紹介して上げるねぇー!』」

「君はどうしたんだい?」

「相談に乗ってくれて嬉しかったから自分の出来る精一杯感謝の気持ちを伝えたよ。」

「美容院じゃなく病院って言われたんじゃない…」

僕は小声でつぶやく。

「着いたぜ、ここだ!」

「やめておこうよ…」

「いや、もうついちゃったんだから、行くぞー!」


中にはアオリンが椅子に座っていた。

「ボクたちぃ、迷子?」

「あの、こいつがアオリンさんに手紙を渡したいと」

「ボクぅ、そんな理由でここにきちゃぁだめでしょー」

「悪いんですけど、その話方やめてもらえませんか?」

「あー、ゴメンねぇ。こっちの方が良かったでちゅかー」

「いや、悪くなってるじゃないか!話すのが嫌になるなー、もうー」

「ボクぅ、大人ぶりっ子はやめようねぇ。お子ちゃまにはこの話し方がいいのよ~」

僕は頭を抱えた。

「仕方がないな!絶対に傷付けてしまうからこれだけは言いたくなかったんだけどね、もう言うよ!」

「なにぃ?ボクぅ。言ってごらんなさぁい」

「昔どこかで聞いた話なんだけど、小学生以上であおりする人って心の病気なんだって!」

「なんですって!」

アオリンはのけぞる。

その後、少し考えたように不敵に笑いだした。

「やるじゃな~い、ボクぅ。今のはズッキュンしちゃったわ。」

「ワイアット、なんて事言うんだ!アオリンさんがかわいそうだろ!」

「あなた、よく見たらさっき病院紹介した坊やじゃない!あれは取り消しであなた警察行った方がいいわよぉ。」

「なっ、なんだってぇ!
そっ、そうだったのか…妹が好きすぎる、それは犯罪か…」

「ネイハム君、そんなの気にするなよ!気にしたら負けだからさ!もう帰ろう!」

「まだ手紙渡してない…。」

「なにぃー?私に恋しちゃってる感じィー?わるいんだけどぉー、お子ちゃまは駄目なのよねぇー。」

「感謝の気持ちを書いたんです。」

「もぉー、嘘ばっかりついちゃってぇー。失礼の失に恋と書いて失恋(しつこい)って読むのよぉー。」

「とにかく受け取ってください。」

「しょうがないわねぇー、後で捨てておくわ。」

僕はネイハムの手を引いた

「もう行こう!最後にアオリンさん、今度あったときはもっと極上のネタを持ってくるんで覚悟していてください。」

「その時は返り討ちにしてあげるわー。」




「そろそろ潮時かなー。あっ、マネーさん」

「おいおい、その呼び方はやめてくれよ。それで…あの件はどうするか決まったかな?」

「この性格を治すためにはじめたんですからねー、でも結局…。私には向いてなかったんですよ。」

「そうか…。なら、君の意志を尊重しよう。ところで…その手紙はなんだい?」

「あぁ、さっきもらったんですよ。」

「どうせ辞めるなら、今読んでおいたらどうかな?」

「そうですかぁ。」

アオリンは手紙を開けた。

“アオリンさんへ

俺は今まで一人でずっと苦しい目にあっていました。どこに行っても批判の嵐で心がまいりかけていた時アナタの曲をきいたんです。俺はあなたのその批判を恐れない勇気にとても感銘を受けました。今まで暗かった気持ちも晴れて明日も元気にやれそうです。

ファンの一人より”

「なんて事書くのよ…あのお子ちゃまは……」

アオリンの目がうるむ。


「大丈夫かい?」

心配そうに彼女を見つめる。

「えぇ。マネーさん大丈夫です。それと、さっきのはなしでワッタシ、アイドルつっづけま~す!」

「あぁ、いいと思うよ。これからもガンバレ!」



「今日は何かと疲れる一日だったね。」

僕はぐったりしながらネイハムの方を見る。

「いやー、最高だったじゃないかー!」

「そうかなぁ…?」


「あのッ、ワイアット君」

「この声はッ!もしかして!」

僕は急激に元気を取り戻す。

「やっぱりエレットラちゃんだ!」

「あのねッ、私今朝ワイアット君の部屋に行ったの。」

「えっ⁉」

僕は硬直した。

「アナタが寝言で言っていたのだけど、ワイアット君の事は好よでも、恋愛としての好きじゃないの…。勘違いさせてたらゴメンね…」

「ネイハムくん僕今朝何か言ってた?」

「あぁ、言ってたぜ。エレットラちゃんエレットラちゃんって何回も。」

「恥ずかしい…」

僕は顔を赤面させた。

6

「私を置いていかないで、もう一人は嫌だよ、お兄ちゃん。」

しかし、彼はその声の方を振り返らず先へ進む。

部屋で一人少女は涙をこぼす

「どうしてっ、どうしてなのっ。パパと同じように私の元から離れていくの。」

何かを確信したように泣くのをやめる。

「次の人は永遠に私の元から離れなくさせちゃえばいい。私のお人形さん待っていてね。」


「俺の妹マジでかわいいんだぁ。」

「あっ、そうなの。」

「ここに来る前まではね、ずっと一緒におままごとしてたんだぁ。どう、うらやましいだろー?」

「いや、肉親とじゃあ嬉しくないだろ…」

「そっかそっかー。ワイアットには分からないかー!いつもさぁ、俺の方見て無邪気にほほ笑んでくれるんだー!天真らん漫とは妹にこそふさわしい言葉だよなー!」

「会ったことないから知らないよ…。」

「それでー!昔一回俺に『大人になったらねぇ、お兄ちゃんのお嫁さんになるのっ!』って言ってくれた事があってさー!その時はマジで幸せの絶頂だったねー。これをワイアットとわかりあえなくてホント残念だよー」

「そんなん分かりあいたくないよ。」


歩いている途中、僕は女の子達が誰かを囲んでいるのに目がいった。

「この子、迷子?」

「ううん、私もここの生徒だもん。オネェちゃん、私のお兄ちゃん知らない?」

「なんて名前なの?」

「名前は分からない…。やっぱりネイハムでいいや。ネイハム知らない?」

「ネイハム君ね、スグそこにいたわ。ねーネイハム君この子が呼んでるわよ。」

「なっ、俺の妹じゃないかぁ!どうしてここに?まだ学校に来れる年じゃあないだろうに。」

「あっ、いたいた。」

そう言いそばによってきて妹は服をつかむ。

「えっ⁉」

ネイハムは目線をとなりにやった。

「この人がね、私のお兄ちゃんなの!」

どうやら僕に言っているらしい。

「おいおいおい、待てよどう言う事だ?ワイアット」

「知らないよ。」

「フフフッ。お兄ちゃん。」

「僕は君のお兄さんじゃないんだよ。君のお兄さんはネイハム君だろう?」

妹はネイハムの方を見る。

「ワタシ、この人知らないぃっ。」

「さっき名前を呼んでたじゃないか。」

「う~ん、そんなの忘れちゃったぁ。」

「妹ちゃん、彼をあんまりイジメないでやってくれないかな?」

「もぉ、妹ちゃんって呼ばないで~!いつものようにフォレッタって呼んで!」

「あぁ、分かったよ。フォレッタ」

僕は何かに操られたように口を開いた。

「まさか…お前俺がいない間にフォレッタとそんな関係に……。ずっと友達だと思っていたのにー!最悪だぁー!こんなのもう絶好だよ。明日から俺のボッチ生活開幕だぁ!リア充爆発しろー!」


「おいおい、それはいくらなんでも言いすぎなんじゃないか…」

「いいやぁ!言いすぎじゃないね!お前はいいよなぁ、リアルであおられキャラというポジションを確立してその上…もしかして、俺をリアルから追放するために…」

「疑心暗鬼すぎるだろ!」

「もうおまえなんて、知らない!ワイアットのばっかやろー!」

ネイハムは走り去っていった。


「フフフっ、お兄ちゃん!邪魔者がいなくなってよかったねっ。」

「それもこれも全部君のせいなんだぞ…。後でネイハムになんて謝ろう…。」

「ひどいわっ、ワタシはお兄ちゃんと、一緒にいたかっただけなのに。」

涙をうかべる。

「ちょっと言いすぎた、ゴメンね。」

「フフフっ、もういいのよっ。お兄ちゃん!お願いがあるのだけど、私をギュッとして!」

「あぁ!いいとも。」

僕は言われるがままフォレッタを抱きしめた。

「ワイアット君こんにちは。」

スグにやめ、僕は振り返った。

「エレットラちゃん!」

僕は両指を交差させ祈るポーズをとり彼女に見とれた。

「お兄ちゃん、あの女誰?」

僕は彼女に見とれながら小声で言った。

「あの子はねぇ僕が一番大好きな女の子だよ!」


「ワイアット君その子妹さん?」

「えっ、いやぁ…」

言いかけた時フォレッタが僕の服をつかむ。

「お兄ちゃんはアナタの事なんか大嫌いだって!」

「えっ?」

エレットラは固まる。

「なっ、なんてことを言うんだ!」

「お兄ちゃんもそう思うよね?」

「あぁ、エレットラちゃんなんて嫌いだー。」

僕はまた操られたように言った。

「ワイアット君。ゴメンっ、ゴメンね。私なんて最初から…」

そう言い残し彼女は走り去って行った。


僕は地面に膝をつく。

「そんなバナナー!…思ってもない事が口から。」

「大丈夫よ!だってワタシがいるもん!皆がお兄ちゃんの事を嫌いになってもずーっとワタシが一緒にいてあげるッ。」

しかし僕はふさぎこんだまま動けずにいた。

「ねぇっ、聞いてッ」

「あぁ、ゴメンごめん」

「ワタシ決めてるの!将来お兄ちゃんのお嫁さんになるの!嬉しい?」

「あぁ、嬉しいよ。万々ざいだぁ。」


僕等は部屋に向かった。

「あのね、あのねッ。お兄ちゃんはお父さんで私はお母さんの役ね。」

「イヤだよ…この年でおままごとは。」

「ダメっ、ママの言う事聞きなさい!」

「分かった。でも、一つだけ聞きたいんだけど、なんでネイハム君の事知らないなんて言ったの?」

「実はね、ネイハムは本当のお兄ちゃんじゃないの。」

「えっ!?でもあいつ君の事を妹だって言ってたぜ。」

「ううん、私お父さんに捨てられて、ようしっていうのにされちゃったの。」

「へぇ…そうなんだ。」

僕は辛そうな彼女の顔をみる。

「それでね、それでね…。」

「もう言わなくていいよ。それは辛かったよね。」

「でもね、今は辛くないの!新しいお兄ちゃんはずっと私と一緒にいてくれるの!」

「えっ⁉そのお兄ちゃんって、もしかして僕のこと?」

「うん、ワイアットはもう一生私のそばにいなくてはダメなの。」

「あぁ、分かったよ。ずっと一緒にいるよ」

まただ。また僕は、思ってもいない事を話してしまっている。



一人声高らかに訴える。

「神よ!その者はどこにおられるのですか?総出で探しても見つからないのです。もうアナタ様のお力を借りなければ、これ以上我々にはどうすることも出来ません。おぉ、神よ!どうぞ我等を導いてくださいませ!」

するとどこからか声が聞こえてくる。

「そうか、ならその男の名前を教えよう。」

「それはいかような?」


「ウゥ、重い」

僕の背中に何か違和感を感じる。

「アハハはっ、ワイアット君かわいそう。」

少女が僕を見る。

「君は誰だっ!」

「セリルンティルス99世とでも名乗っておこうかしら。」

「99世⁉すごいな!」

「そんなの適当よ。」

「何だぁ、嘘かぁ。本気にしてしまったじゃないか。」

「そんな事よりアナタは一生このままになるけどいいの?」

「君はなんの話をしているの?」

「分からないなら、いいわ。」

そう言い彼女は背を向けた。

「いや、待ってよ!ここどこ?」

「一つだけ教えてあげるのだけど、質問を質問で返しちゃいけないのよ。ワイアット君、じゃあね。またいつか会いましょう。」

「いや、僕はそんな事聞きたい訳じゃないんだよ。待って、ねぇ待って─」


「お兄ちゃん、起きて!」

僕の視界にフォレッタが。

「あぁ、おはよう。」

「やっと起きた!今日も私とずっとおままごとするのっ!」

僕はうつむく。

「ゴメン、僕にはしなければならない事がある。お父さんを探す。でも、ある人にその男はもう死んでいると言われた。僕はそれを嘘だと思っている。だからそれを証明するためにこれから探しに行かなければならないんだ。」

「フフフっ、お父さんはお兄ちゃんの事を捨てたの。だから探しても無駄なの。もし会えても拒絶されるだけよ。」

「なんて事を言うんだ!」

僕は声を荒げる。

「また、お父さん達みたいに私を捨てるの?そんなの絶対許さない!私の言うこと聞かないとお人形さんにしちゃうよッ!」

「人形ってなんだよ…」

「私の近くにいる人にねッ、私のいうことを聞かせる事ができるのッ。」

「つまり、自分の奴隷になれと言ったらその人に絶対服従するってこと?」

「ドレエ?フクジウ?私むつかしい言葉わかんない」

「そうか…」

僕は大きくため息をついた。



「チッ、アノヤロー俺の妹とイチャつきやがって!」

ドア越しでそっと中をのぞく。

「もうあの禁断の必殺技使ってやろうかな!密着スクープW氏幼気な少女にいけない遊びを教えるッ。なんてな。ヘッヘッヘッ。きっとアイツへこむぜ。」

すると何かに気づいたように頭を抱える。

「いやいや、裁判長僕は名誉毀損なんてしてませんって。いやいや、弁護士さんそんな訳ないでしょう。ナッ、なんだってぇー⁉人生チェックメイトォォー!」

ヘナヘナと座り込んだ。

「ワイアット、ゴッ、ゴメンよぉ。そんな事になるとは思わなかったんだぁ。」

するとドアが開く。

「おいおい、君は僕の部屋の前で何をしているんだよ。」

「許してくれぇー、俺達友達だろう?まだネットで何もしてないから裁判沙汰にしないでくれよぉー。」

「いやいや、何があった。」

「あっ、悪者だーっ!お兄ちゃんから離れてっ!」

「イッ、妹よ。お兄ちゃんはな、まだ何もしていないんだ。だから、犯罪者じゃないんだよ。」

「何かよくわからないけど、よく分かったよ。だからネイハムくん、妹引き取ってよ。」

「えっ⁉いいの?ありがとう。君は親友…いや、そのもっと超越した…そうあおられ同好会会員だ。」

「はっ⁉そんなのイヤだよ。」

フォレッタは僕のうでをつかむ。

「この人嫌いだから私、行かないもんッ!」

「ソッ、そんなぁ」

ネイハムはひざをつく。





「うぅ、またここだ…。」

やけに背中が重い。

「アハハッ、昨日ぶりね。ここに来るの、早かったじゃない。」

「あぁ、今日考えていたんだけど。ここって僕の夢の世界だね?」

「えぇ、そうよ。」

「君も僕の夢がつくりだした幻影なんだろう?」

「いいえ、違うわ。私は実在するわ。名前はバリリッドスレリアス6756星雲からやってきたホレレウム・シリリット…」

「長いよ!どうせそれも嘘だろう?君は悪い子だなぁ!」

「えぇ、そうよ。だって本当の事言いたくないんですもの。でもいいわ。教えてあげる、私はねアナタの娘そうワイアット二世よ。」

その言葉に僕は驚きが隠せなかった。

「えっ⁉マジで!未来の僕って娘に2世なんて…。それより誰と結婚してるの?」


「確か…そう名前はカテリーナよ。」

「はぁッ⁉先生と?そんなの嫌だよ!年離れすぎだし…!そうか、だからやけに僕に優しくしてきたのか…」

「そうよ!母はいつものようにワイアット君の部屋にいきアナタの顔をジッと見つめていたの。すると突然!湧き上がる欲求に耐えきれなくなって…!それは聖夜のあやまちだったと言ってたのよ。」

「そっ、そんなぁ。僕は同い年の子が好きなのに…現実とはそんなにも…」

「落ち込まないで、ちょっとした冗談じゃない。」

「えっ⁉すると今のは全て嘘だったの?君は僕の娘じゃないの?」

「えぇ。アナタ騙されやすいのね。おじいさんになったら詐欺にひっかかって借金だらけになるんじゃないの?」

「ひっ、ひどいやぁ!うそばっかりついて!もう君の話なんて信じないっ!」

「いいのよ。聞かなくて。いいえ、今から話すこと絶対に聞いてはいけないわ。」

「そんなの分かってるよ!もう騙されるのイヤだからね!」

「とても寂しがってる女の子がいるの。その子はね、いつも一人で泣いているわ。私はその子を助けてあげたいの。」

「その子ってフォレッタだろう?」

「あら、アナタついさっき自分で言っていたこと忘れてしまったの?まさか認知症に⁉」

「禁止されたらなんか無性に聞きたくなってしまったんだよ…。」

カリギュラ効果実験大成功ね。それよりどうしてその女の子だと思ったの?」

「これは僕の夢だろう?昨日調べたんだ。夢占いの本でね。前に背中の辺りが重いと感じたのは彼女のから目をそらそうとしていた自分がいたからだと思うんだ。」

「夢占いって…あなた女性みたいね。」

彼女は微笑む。

「うるせいやーい!で、僕の言ったことは正しいの?」

「さぁ。どうでしょうね。ワイアット君がそう思ったならそうなんじゃないの?じゃあ、またいつか会いましょうね。」

「おいおい…君はまた何も言わずに…。」


「起きてッ、起きてよ!なんで起きてくれないの」

僕の額にしずくが落ちる。

「私もう一人はイヤだよ…」

僕は彼女の頭をそっとなでた。

「もう、君は一人じゃないさ。君が嫌になるまでそばにいるから。」

「本当?本当に私の前から離れていってしまわない?」

「あぁ、本当さ。でも一つだけお願いがあるんだ。僕の友人のネイハム君。彼のことを許してあげて、ほしいんだ。」

「イヤっ。だって…。」

「分かっている。辛い思いをしたんだよね。でも彼はね、君が嫌いで離れたわけじゃないんだよ。これは、彼なりの優しさなんだ。」

「やさしさ?」

「うん、そうだよ。彼は君に自分以外の男の人の事を好きになって欲しいと考えて決断したんだ。」

「どうして?どうしてなの?」

「世界には色々な人がいる。でも、彼とばかりと一緒にいたら、狭い空間にいたら本当に楽しい事を知れないからね。」


ドアが開く。

「おぉ!同志よ!ありがとう!」

僕にネイハムがしがみつく。

「君はなんでいつも僕の部屋の前にいるんだよ…。」

「そんなのはどうでもいい!そう、そうだったのか俺はをそんな事を考えて妹のそばを離れたのかっ…!」

申し訳なさそうにフォレッタがネイハムに近づく。

「お兄ちゃん、ゴメンナサイ。てっきり私のこと嫌いになっちゃったのかと思ったの。」

「兄って俺のこと?」

「うん。」

「フハハハッ!聞いたか、ワイアットォ!兄再誕だぁ!」

「君はいつも元気だねー。」


僕のそばにフォレッタがよってきた。

「ワイアットお兄ちゃん、昨日のオネエちゃんに謝りたいの。」

「え⁉マジで?きっとエレットラちゃんも(僕を)許しくれるよ」

僕は歓喜した。


「おのーエレットラちゃん、昨日の事なんだけどね…。実はね、言葉のあやなんだよ。ほら、フォレッタからも何か言って!」

僕はフォレッタの背中をおした。

「そうなの!ワイアットお兄ちゃんはね、オネエちゃんのお嫁さんになりたいから絶対そんな事思ってなかったの!」

「ワッ、ワイアット君…」

彼女は顔を赤くした。

「おいおい、そんな事を言うってさっき言っていなかっただろう!勘弁してくれよ~!」

「いいえ!言っていた!そうでしょお兄ちゃん?」

「あぁ、そうさ!オイラはエレットラさんが大好きだ!だから、僕は将来彼女と絶対結婚する!

「フフフっ。よかったねっ、オネエちゃん。」

おおいなんでそーなるのーと思う僕でした。

7


「やぁやぁ、ワイアット君!」

「ネイハムくん今日はやけに上機嫌だね。どうしたの?」

「実はッ!新しい恋を見つけちゃったんだぁー!」

「へぇー、この学校の子?」

「いやいやぁー!その人の年齢はわからないんだけどさッ、きっと年上の人だよッ!」

「え?それって本当に大丈夫なの?」

「当たり前のすけさん!!」

「で、どこで知り合ったの?」

「インターネットさッ!」

「えぇー⁉」

彼が発した言葉に戸惑いを隠せなかった。

「昔聞いた話なんだけれどもね。インターネットって危ないらしいよ。デアイケイサイトってやつ?」

「いいや、ケイジバンさっ。」

「前に君が言っていた最大の敵とかいうの?」

「あぁ、でも探してみたらなぁ。その中に天使がいたんだよ。世の中決めつけるもんじゃないなっておもったぜよ!!」

「で、ケイジバンってなんなの?」

「匿名で雑談などをする場所さ。顔知らない相手とね!」

「それ騙されてんじゃないの…?」

「いいや!絶対に騙されてないねっ!」

「どうして好きになったの?」

「それは、昨日のこと─。」


俺はいつものように自分のたてたスレにカキコしていた。

“私ッ、レイフィン12才♪♀(仮名)リアルでは最近いろんな男子達から告白されていて、私困っちゃってる~ん!魅力的すぎるって罪なのね~…。”

するとスグにレスが返ってきた。

そこには胸の痛い言葉が書かれていたんだ。

ネカマ乙”

“かわいそうなやつw”

“酷いわっ!皆して私のことイジメるなんて!あることについて相談したかっただけなのに…”

しかし、そんな誹謗中傷の嵐の中俺に光が差し込んできたんだ。

“相談とは何だい?私でよければ聞いてあげよう。”

俺はスグにレスした。

“ぁりがとぅ!!でもぉ、ここではぁ、恥ずかちぃなのでぇ、リア凸でぇお願いしますぅ。”

“あぁ、いいよ。場所は─”


「と言った感じ。」

「はぁ?」

僕は呆れる。

「その人はきっと優しくて美人なオネイサンなんだぁ!やっぱり付き合うなら年下より年上だよな!ニシシシシ。」

「デアイケイよりたちが悪いじゃないか…」

「出会い系は18禁だぜ。それより、待ち合わせ今日なんだ。でも…まずいことがある。そこでお願いなんだけど!ちょっと誰でもいいから女の子をさ!」

「ムリです。僕には女の子の友達はいません。」

すると僕の部屋のドアが開いた。

「ワイアット君、こんにちは。用事があるのだけど…」

僕はスグさま彼女の手をとった。

「用ってなんだい?」

「あっ、あの…。」

彼女がそう言いかけた時だった。

「そうだ!彼女を連れて行こうよ!」

すぐさま僕は返答する。

「いや、絶対にダメだ!」

「えーっと、なんの話?」

彼女は不安そうに僕を見つめる。

「実はさぁ、ちょっと近くへ出かけるんだ。でも、ちょっと危険な場所だからケガを治せる人が必要なんだ。」

僕はネイハムを睨みつけた。

「おいおいおい、嘘つくなよ!」

「行くわ!私ッ、ワイアット君の役に立ちたいから…。」

そう言い彼女は僕の手を掴む。

「エレットラちゃんがそう言うなら!」

僕は顔を赤くしながらネイハムの方を見た。

「それじゃあ決まりだな!」

ネイハムはとても嬉しそうに頷く。


「それにしても、その相手の人って本当に女の人なの?」

「あぁ、自分のこと私って言っていたからな!絶対にそうだぜっ!」

僕は呆れながら彼の方を見る。

「おいおい…男でも社会人の一人称は大体私らしいよ。」

その言葉を聞いて動揺しはじめた。

「そっ、そんな訳ないだろ!あんな優しくしてくれる人が男だなんて…夢をブチ壊すこと言うなよ!」

その後ネイハムは急に頬を赤らめた。

「でもこの際性別はどっちでもいいや。優しい人だからな。」

「優しい人だったら誰でもいいのかよ…。」

俺はボソッと呟いた。

「それでさ、エレットラさん。さっき言ったこと、頼むよ!」

「えぇ…。頑張ってみる。」

エレットラはか細い声で頷く。


そして僕たちは待ち合わせ場所についた。

そこには20代くらいの女性が1人で本を読んでいる。たまに時計をちらちら確認する。誰かを待っているようだ。

「もしかして、あの人じゃあ!」

「そうかもね。良かったじゃないか、男でなくて。」

すると女性が何かに気付いたように立ち上がる。そしてこちらに向かってきた。

「おいおい、どうしよう?ワイアット~」

ネイハムはそう言いながら頬を赤くしながらピョンピョンと飛び跳ねる。すると、後ろから男性が僕達のそばを通り抜け彼女の方へ向かって歩いていく。

「待ったかな、ジョイアさん?」

「もぉ~遅おい。10分も遅刻よ!」

「ははは、ゴメンゴメン。」

二人は腕を組んで仲良さそうにドコかへ行った。

「あの人じゃないのかよ…好みだったのに。」

ネイハムは地面に膝をつく。

「まぁまぁ、そんなに落ち込むなって。それより、エレットラちゃんドコ行ったか知らない?さっきまで近くにいたのに…。」

「知らないよ。ドコかでかっこいい男性に一目惚れしてついていったんじゃない?」

僕は怒りが込み上げネイハムの胸ぐらをつかむ。

「ふざけんじゃねぇ!あの子はなぁ!あの子はなぁ!…とってもかわいいから一目惚れなんて絶対にしないよー。逆はあってもね。」

「お前は、情緒不安定か!」

すぐさまネイハムがツッコミをいれた。

その後、近くを二人で捜索すると彼女を発見した。何やら誰か知らないおじさんと何かを話しているようだ。

「わたしっ、知りません…」

「そうか…。」

僕は思い切ってそこに突入した。

「やめろ!エレットラちゃんが困っているだろう!」

するとオジサンは、落ち着いた表情で笑った。

「そうかそうか、それはすまなかったな。女の子と約束をしたもので。」

ネイハムが僕の耳元で囁いた。

「もしかしたらこの人かもしれない。約束した人。」

「やっぱり男じゃないか。」

番外編

僕は老人の背中を見つめる。

「なぁ、ヒヤシンス知っているか。」

「何おじいちゃん?」

おじいさんは眩しく照らす太陽を見る。

「戦で勝つ国はどんな国だと思う。」

「それは…兵の数が多い…いやとても強い、そう強国だよ。」

「いいや、最後に勝つのはな諦めなかった方だ。だからなヒヤシンス、お前はどんな事があっても最後の一瞬まで絶対に諦めるんじゃないぞ。」

「うん。おじいちゃん!」

そう言ったおじいちゃんの背中はとても大きく、太陽の光で神々しく見えた。

「やぁやぁヒヤシンス君。な~に、読んでるの?」

「あぁ、ワイアット君か。将棋の本だよ。」

「ショギ?何それ?」

「チェスとかシャンチーみたいなやつ。」

「あぁ、チェスか。それなら分かるよ。相手のキングをバッキューンってやっちゃうやつだろう?」

「まぁ、そんな感じだよ。」

「で、なんでそんなの読んでるの?」

「まぁ、趣味みたいなもんなんだけどね。おじいちゃんとたまにやるんだ。」

「へぇー。僕も見てみたいな、チェスの対局。」

「いいよ。チェスじゃなくて将棋だけど。楽しいよ。」



「これは中飛車と言ってな。こうでこうでこうやって攻めていくんじゃよ。」

「へぇー、将棋って奥が深いんだなー。」

「どうじゃ、こぞう。わしと一局やってみんか?」

「いいの?やったー!」

すると、ヒヤシンスが僕の服を引っ張ってきた。

「やめておいた方がいい。僕のおじいちゃんはね、相手が初心者でも、女性でも手加減をしないんだ。」

「ホッホッホッ、ヒヤシンスお前でもいいんじゃぞ。」

「今は、まだ…だめだよ。でも、いつか必ず対局するから。その時まで待っていて。」

「早く頼むぞ…。」

そう言ったオジイさんの表情はドコか暗かった。


番外編2

「ワイアット君っ、実はワタシね、アナタのために英語頑張って覚えたのよ。それで、アナタに英語で気持ちを伝えたいの。」

エレットラがいつものように僕の顔を下から見つめる。

「そうなんだね、とっても嬉しいよ!聞かせてごらん!」

すると、彼女は恥ずかしそうに口を開いた。

「アイラブミィーッ!どっ、どうかな?」

その言葉を聞き僕の頬が緩む。

「かわいいやつめ。」

僕はそう言いながらエレットラを自分の胸に引き寄せ抱きしめる。


すると外野から大きな叫び声が聞こえてきた。

「カットォ!!」

「なんだ、また君か!毎回毎回、僕の夢でてくるなよ!」

「今のは見ていられなかったの。何がアイラブミィーよ!今度からこの子のこと愛ラブ美って呼ぶわね!このナルシス子!」

「エレットラちゃんはそんな子じゃない!そう彼女は僕の心のマーメイドさっ!」

「痛い痛いわ、アナタ。とんでもなく痛い。さながらのスケートリング上でカッコつけて滑り倒したような痛さよ。」

「よく分からない例えだなぁ!」



























メモ─────────────────
この世界には優れた能力を持つ者がいた。しかし、彼らには致命的な弱点があった。それを皮肉り人々はこう呼んだインコンプリートパーソンと。








奴の名はサミュエル。この世で一番強い男になるために目を失った。

サミュエルの失ったものは目だけではない。

本当は優しい人だが近づいたら死んでしまうため誰とも関われない。



ネットの煽りが頻繁に頭の中に浮かんでくるという念写使い

ポール

プロローグにでたおじさん
相手を優しくしないと能力を使えない。オールコンプリート

デーヴ途中で敵になる。

ワイアット能力なし

エレットラ転びやすい。

カテリーナ先生完璧主義

ポール

エレットラ

新興宗教 セオドア教


アオリン

11月11日誕生日(いい月のいい日)

第三次給油革命

仮定代入法

妹フォレッタ

ジャレッド

オースティン