なんだっけ?
職員室でのこと。
「あの…」
その声に、数学の先生は振り返った。
「いなし先生、どうかされたんですか?」
「最近、思想学部の方は、皆落ち着いてますね。」
「確かに、学校が始まった頃は、驚く事が多かったですね。」
「最近はどうしているのですか?」
「私は思想学部の生徒に任せています。」
「彼らは強い目標があって、先生が居なくてもどこまでも高めていける。私はそう思っていますから。」
すると、いなし先生は笑顔で呟いた。
「でも、時には、止めることも必要ですよ」
「私には難しいことです。」
数学の先生は謝って、その場を去る。
職員室に残ったいなし先生は、外の景色をながめた。
────────
思想学部では、普通というテーマについて話し合っていた。
「沢山話し合ってるけど、答えが出ないね」
僕が思い切って言うと、すすむくんは「あいだくん、ごめん!」と謝る。
「大丈夫だよ!」
「行き詰まってる時は、やっぱり、違うことを考えた方がいいんじゃないかな!」
すすむくんは「なるほど」と頷いた。
「例えば、どんなことをするの?」
「前やってたように、人助け的な何かとか!」
すると、「それなら…!」としずくさんが立ち上がる。
そして、一緒に吹奏楽部のところへと向かった。
「どうして、ここに?」
ハテナを浮かべていると、おとねさんがやってきた。
「みんな!今日はどうしたの?」
しずくさんは「実はね…」と話す。
───────
「この子が私の友達のきせきちゃん!」
おとねさんは元気に紹介した。
「みんな~!よろしくね!」
あどけない笑顔で言った。
「この子がどうかしたの?」
おとねさんが答える。
「実はね…!しずくちゃんと、みちかちゃんには話したんだけど…」
彼女の話に驚く。
「そんなことが…?」
「うん…そうなの!」
きせきさんは、記憶喪失になってしまったらしい。
おとねさんが部活に入った頃から、もう記憶喪失で、楽器の扱い方すらも忘れてしまった。
友達のかなでちゃんの話では、入った頃は普通にしてたと。
きせきさんは言った
「思い出したいけど、怖い気もするの…。」
「何故…?」
すすむくんが言うと続ける
「どうして記憶喪失になったのか…。もしかしたら、怖いことがあったのかもしれないし…。」
真面目に悩む彼女におとねさんが近付いて、手を握った。
「きっと大丈夫だよ…!」
きせきさんは「ありがとう…!」とそれにとても安心しているようだった。
彼女が居ないところで、おとねさんは話す。
「きせきちゃんはね、前からかは分からないけどね…」
「いつも明るくて、ふにゃってしてるところはあるけど、とてもいい人なんだ…。」
おとねさんは真剣にすすむくんを見つめた。
「だから、きせきちゃんのことをお願い…!記憶を戻して欲しいの…」
「学校に行くのも、お母さんにおくってもらってて、学校生活もままならない状況なんだって…」
すると、すすむくんは「了解!記憶を戻すよ!」と元気にいった。
いつもどおり、根拠のない自信で。
────────
「それで、どうするの…?」
しずくさんは涙目になって言った。
すすむくんは「もちろん…!これからきせきさんの記憶を取り戻す!」と言った。
そして、きせきさんの方を見る。
「ふにゃー?今日のお昼ご飯は何かなー?」ときせきさんはぐたーっとしている。
しずくさんが「もう昼ごはんは終わったから、次は夜ご飯だよー!」と言った。
「きせきさん、あの!」
「なんでしょう?」
ふわふわしたまま、すすむくんを見る。
「昔に何があったか教えて欲しい!」
きせきさんは「なんだったかな…」とボーッと上を見つめる
「昨日のご飯も覚えてないよー。」
グターっと目を閉じた。
「なんでも大丈夫!覚えてることがあったら、それを!」
「すすむくん!僕がかわりにするよ!」とすすむくんを止める。
「あいだくん、大丈夫なの?」
「うん!僕に任せて欲しい!」
そう言って、僕はノートを取り出した。
彼女の昔聞いた話など、とってある。
これを使えばもしかしたら…?
見てみると、彼女はすすむくんと同じ3組で、そんなに目立たない子だと言われていた
そして、同名中学校出身。
特に深い情報はなさそうだ。
「同名中学校出身なんだね!」
僕がそう言うと、「同名中学校…?」と上を向いて考えていた。
すると、「私、そこに通ってた!」と笑う。
思い出してくれたのか…?
しかし、「それ以外は覚えてません」と笑顔で言った。
これで思い出したら、困らないか…。
すると、更に彼女は言った。
「あとね、思い出したことがあるの!」
「おぉ!それは?」
僕は何か新しい情報が手に入るかもと期待した。
「昨日はシチューを食べました」
彼女はえへへと笑う。
何も進展ないように思えたが、彼女の記憶が少し戻ったという事。
それがあり、きせきさんはもう少しここに居ることになった─────────
てぬるさ
その後、僕達は何をするでもなく話していた。
「そういえば、あいだくんって色々調べてて凄いね。メンバー集めの時も助かったよ」
「情報のこと?
あれは、聞ける人だけ集めてて、たいした情報じゃないものも多いんだ。」
「そうなの?」
「うん。部活のは、直近で人が話しているのを聞いて、メモってたり覚えてて。」
「もしかしたら、他にも部活に入ってない同級生は居たかもね。」
───────
男は先輩の女子と、ある場所へ向かっていた。
男は考える。
獅王さん、俺が思想学部はこの学校に悪い影響を与えると証明する…。
そこには、獅王の姿があった。
「分かった。意志に負けたよ。
ただし、凛さんを連れていくのなら許可しよう。」
このチャンスをものにする。
強く握りこぶしをつくった。
そして、思想学部が集まる部屋に到着した。
───────
ドアが開いて、思想学部の皆の視線が一点に集まる。
「部活中にすみません。私は生徒会に所属している朝木凛です。
そして、こっちが」
凛さんはもう1人に目配せした。
「俺はすいぞうだ。」
凛さんは小さな声で「上を」と呟いた。
「裏木すいぞうだ。」
僕はそれを聞いて、夏休みのことを思い出す。
「何の用ですか?」
僕は思いきって聞いた。
すると、すいぞうが出てきて「今日は…」と言いかけると、思想学部の中にいたきせきさんを見て言葉を失う。
「今日は?」
すすむくんは立ち上がった。
「なんでもない。」
そう言って、凛さんとそのまま帰っていった。
なんだったんだろう…?
帰っている途中に凛はすいぞうを見る。
「何も言わなくて良かったんですか?」
「すみません。言えませんでした。」
「当分、思想学部に何も手出しできませんね」
「はい。」
───────
「ようやく来たか。」
真っ暗な闇の中、リーダーの男はドアの近くにいた女性の方を見て言った。
「むりくん、久しぶりです」
彼女は微笑んだ。
「その名前を呼ぶな」
とてもイライラしているようだ。
「じゃあ、ゆめりちゃんがいいですか?」
笑顔を絶やさない。
チッと舌打ちすると、「名前は呼ぶな」と後ろを向いた。
すると、それにひていが「未頼三って呼ばれてんのに…。お前は信頼に値しないし、外れた方がいいんじゃねえの?」と睨んだ。
その様子にも、笑顔を絶やさない。
「みらいみってなんですか?」
「未来までずっと信頼できる3人のことだ。メンバーはおれ、はみ、副部長。
しかし、部活すらほとんど来ないそんなやつが…」
「私は入った覚えはありませんよ」と笑顔で答えた。
「私は野良猫さんのように、自由に旅をする!」
そう言って、カーテンをあけた。
すると、太陽の光が、部屋の中に差し込んでくる。
「今はあなた達と一緒に居るだけで、また私は旅に出るの」
ひていが「なんだと…!」とイライラしていると、むりが言った。
「そんなに怒るな。俺ははみのことを信頼してるんだぜ。」
「私の名前ははみじゃないですよ。羽に美しいと書いて、うみと読みます。」
にっこり笑った。
「ところで、最近は部活、何をしてますか?」
羽美は首を傾げる。
「情報交換くらいだな。」
「それで大丈夫なんですか?」
「どういう事だ?」
「昔、ある動物が油断して、自分より実力が離れた動物に負けたことがあります。」
「足をすくわれるかもしれませんよ」
彼女はどんな時も、笑顔を絶やさなかった。
「まぁ、いいだろう。そろそろただ話すだけの時間に飽き飽きしていたところだ。」
「大会こそ、否定という武器の強さを証明する場。更に研磨しのぞんでいこう。」
羽美は思った。
そう…これから楽しくなるから
ねぇ、みおちゃん
────────
生徒会の人が帰った部室では、何が起こったのか固まっていた。
僕は思いきって、「生徒会の人、なんで来たんだろう?」と呟く。
「分からないよ…」
しずくさんはそう言って、涙目になっていた。
「どうしたの?」と聞くと、隣で、きせきさんが頭をかかえていた。
「さっきから、頭をかかえて苦しそうにしてて…!」
見守っていると、彼女が顔をあげる。
「大丈夫…?何かあったの…?」
恐る恐る聞いてみると、きせきさんは下を向く。
「あの人…どこかで会ったことがある気がするの…。」
もしかして、記憶取り戻すのに関係が…?
「何か思い出したの?」
「ううん、思い出しそうだったけど、忘れちゃった!」
そう言って笑っていた。
僕はその後、すいぞうくんのことについてノートを見てみたが、たいした情報は書かれていなかった。
けれども、一つだけ驚いたことに、僕と同じクラスだったらしい────────
過去⑩
「これから行ってくる!」
そんな時、私はいつも「怪我するかもよ!」と止めた。
だけど、「大丈夫だって!」と言って、彼らは進んで行った。
私の市には伝説がある。
ほとんどの人は嘘だって言って、信じないようなもの。
だけど、あの頃の彼らにとっては、宝物のように大切なものだった。
私はいつも、「どうなっても知らないから!」と見送った。
本当は一緒に行きたい…。
だけど、正直にそれを話すのが恥ずかしかった。
帰りを待っていると、少し汚れて帰ってくる。
私は心の中で良かった…と思って、彼らにおかえりなさいを言った。
少し頬っぺを膨らませて。
でも、そんなある日、彼は少し暗く帰ってきた。
「ゆうくん、どうしたの?」
そう言っても答えない。
「とても悲しそうな目に、私は何も言葉が出なかった。」
彼はその日から、冒険に出かけなくなった。
何かあったのかもしれない…。
そう思っても、何があったのか分からない。
彼のとても暗いあの顔が浮かんでくる。
私は思い切って、彼の家に行った。
そして、「こんにちは!ゆうくん元気ですか?」と言うと、彼はすぐに返した。
「いなし、ごめん…。俺が間違ってたよ…。」
「どうしたの?」
「いなしの言う通り、行かなければ良かったんだ…。」
その時、私は笑顔で言う。
「実はね!私も、冒険に行きたかったの!」
少し驚いた様子で、彼は私の顔を見た。
「どうして…?ずっと止めてたのに。」
「悲しんでる人に悲しいことは言いたくないから!
それに…これは私の本心なんだ!」
「だから…もし、次に出かけることがあったら、私も連れてって!」
私が笑顔でそう言うと、彼は「ありがとう」と呟く。
その日は、それで別れた。
それから数日して、彼は前のことが嘘のように元気を取り戻した。
そして、私の前に立ってこう言う。
「一緒に行こう!」
私は笑顔で「行こう!」と言った。
それから、沢山、色んな場所に行った。
その時間が、私にとって、とても楽しい時間だったことを覚えてる。
ドキドキすること、楽しいこと、嬉しいこと、さまざまな感情で一杯になった。
みんなのその様子を見て、私は、ただ幸せだった。
来てよかったと思ったの。
でも、ダメな時は、しっかり止めることを忘れなかった。
そんな時、彼は、快く「ごめん」と言って微笑む。
他の人がそうしようと言っても、俺は行かないと、強い意志を見せる。
その時、ゆうくん変わったんだな…と思った。
今では、こうして途切れ途切れの記憶だけど、私にとって、懐かしくてかけがえのない時間だと今思ってる。
そして、呟いた。
「勇くん、今、どうしてるかな…?」
ところで、このこと、つい最近まで忘れてた。
理由は分からない。
だけど、思い出すきっかけをくれた…。
ある生徒の言葉。
そう、あれから10年以上経って、私は学校の先生になった。
そんな私の前に、それがあらわれたの。
彼の言葉。それは、楽しかったあの日々を思い出させた。
彼らと居れば、またあの時を…。
そう思うと…。
私も一緒に連れてって。
なんてね。
最近は、何も無いらしい。いいことよ。
私はこのまま外から見守っていようと思う
────────
発見
きせきさんのことは、色々あって、解決したようだった。
まだそれに遠いが、前よりはマシになったと。
吹奏楽部に帰っていった。
ところで、思想学部では、また話題が普通についてになる。
「普通ってなんだろうね」
みんなはそう言って、窓の外を見ている。
何も思いついてない様子だ。
僕は思い切って言った。
「前に浮かんだことがあって」
「それは?」
「人助けは普通なこと。
困ってる人は偏ってる状態だから。」
僕は続けて、思いついたことを沢山話す。
すると、「なるほど」と頷いていた。
「いいと思う!ところで、どこでそれを思いついたの?」
すすむくんはいつも真剣に考えてくれた。
「家で思いついたんだ!弟がいい漫画を!」
「そうなんだ!もしかしたら、君の弟の方が、僕らより普通に詳しいのかもね!」
そのすすむくんの一言にハッとする。
近くでいつも、僕の普通について沢山見ていたはず。
最大の理解者に気付かずにいた。もしかしたら、弟の方が何かを…?
僕は「普通について考えなくて大丈夫だよ!」と言った。
「色々考えてくれてありがとう」
すすむくんは難しい顔をしている。
「これからどうするの?」
「いつも通り、テストとか、イベント、最近の流行とかで思想を発揮するとかどうかな!」
「おぉ!なるほど!」
すすむくんは目をキラキラさせた。
大きく変えなくていい。いつも通りで…。
すると、している途中に、しずくさんが言った。
「風の噂で聞いたのだけど、冬休みに練習試合があるらしいよ!」
「どこと?」
すすむくんはとても驚く
「それは分からないけど…!結構有名なところらしい!」
有名なところって…まさか、リベシン高校ともう試合するのでは…?
僕は少し身構えていた
「だけど、どこから入ったか分からない噂だから…期待しないで欲しいんだ…!」
しずくさんは涙目になって言った。
「大丈夫だよ!教えてくれてありがとう!」
すすむくんはしずくさんを見つめる。
「これから、練習試合に向けて頑張ろう!」
すすむくんはそう言って、片手を上に突き上げた。
しかし、模擬なこともしたが、いつも通りに部活が終わった───────
家に帰って、僕はすぐに弟の元に向かう。
そして、弟に漫画のことについて聞いた。
「あれはね、たまたま読んだ本が、これってお兄ちゃんに似てるなって思ったんだ」
「普通の男って主人公だし。もしかしたらって」
「そうだったんだ。」
僕は頷いた。その偶然がためになったから…いい弟。
「ありがとう!」
「こちらこそありがとう!読んでくれたみたいだよね!」
「うん!変わった設定だったけど、面白くてためになった」
「おぉ。それは何よりだよ。」
僕は「ところで…」と切り出した。
「何?」
「普通ってなんだと思う?」
「何だろう…?」
少し考えて、教えてくれた。
「僕はお兄ちゃんを見てたから、そういう人のことを普通って言うんだと思うよ。」
「そうなんだ…。」
特に何も無く終わるのかと思っていると
「あ、そうそう。普通で思い出したんだけど」
「何かあった?」
「学校で、ホメオスタシスについて勉強して。知ってる?」
「恒常性、温度とかを一定に保つってやつかな?」
「そうそう。暑い時汗をかいて温度を下げたり、寒い時のシバリングとか。」
「そうなんだ。それで、ホメオスタシスがどうかしたの?」
「お兄ちゃんの目指してる普通と似てる気がして。」
「ずっと言おうと思って忘れてたんだけど、今日、話してくれて思い出したんだ。」
「なるほど。ありがとう。」
弟と話していると、疑問が沢山出てくるな…。改めて思った。
「その、僕の目指している普通と似てるって?」
「例えば、平均を目指すとき、不足してたらそこに何かを補う。
超過してたら抑制する。」
「それと同じで、暑い時に涼しくして、寒い時に暖かくする。
なんだか、僕にはそれがそっくりに見えて。」
「確かに、そっくりに見える。」
弟はそれを言うと、勉強するからと僕の元を去る。
丁度、1人で考えたい時だったから、ありがたくあった。
もし、普通が、弟のいったものであるなら…?
そう考えると、僕の前に色々な想像がやってきた。
自分のめざしていた普通とは、言っていたように、恒常性のように、偏りをさけてその時に応じてものを取り入れたり、抑制させたりする。
だけど、前からうすうす感じていたこと。顔の普通など、身体的特徴はその方法ではどうしようもない。
僕の目指す普通とは、どんなところにおいてものそれだ。
だが、またそれが本当に普通なら、一般的ではない。
そんなものが本当に普通と言えるのだろうか…?
僕は改めて普通と言うものが、とても難しいものだと再認識した。
しかし、心の中に、恒常性という考え方が残っていた───────
偵察
「あいだくん、久しぶり!」
その声の主は、ペルソナさんだった。
「久しぶり!」
「これから、他の学校に行こう!」
彼女はそう言って微笑んだ。
そして、電車の中、彼女は話す。
「3校に許可を貰ってきました!」
「ありがとうございます!だけど、思想学部のある学校そんなにあるんですか!」
「そうみたいですよ。」
笑顔で答えた。
そのまま、沈黙が続いていると、ペルソナさんが言った。
「良ければ、またあいださんのお話聞かせてもらえませんか?」
「え、いいんですか?」
「はい!」
僕は電車にのっている間、昔考えていた普通について話す。
そして、時間が経って、学校に到着した。
「もっと聞いてたかったな」
彼女は僕の方を見てそう呟くと「じゃ、行こっか!」と先に進んだ。
景山高校。それがこの学校の名前。
入ってみると、部員は1つの部屋に集まっていた。
しかし、活動する様子はない。
「何か話してる!」
ペルソナさんの言葉に耳をすましてみると、確かに声が聞こえてきた。
「なんで夏休みに集まらなきゃいけないんだよ。」
「大会があるんだってさ。思想学部の大会なんて、練習する必要ないだろ。」
「だよな。楽そうで、勉強になりそうだから入ってみたけどさ。」
など、色々なことが話されていた。
隣を見てみると、ペルソナさんの姿はない。
振り返ると、帰る方に向かっている彼女が居た。
そして、「あいだくん、次の場所行こー」と、手を振る。
次は鳥魚高校。
集まっている場所に行ってみると、今度は活発そうなところだった。
しかし、生徒は背中に羽や、えらのようなものを身につけている。
そして、顧問の先生が言った。
「私たちは、元は魚だった!だから、長時間水の中に潜っていられる。
鳥のようにあの大空を飛ぶ進化することもできる!可能性は無限大だ!」と話す。
「次に行こう」
ペルソナさんは耳元でそう話して、一緒に次の学校へ向かった。
その途中の電車で、僕は、彼女に普通のことについて、あつく語る。
電車なので、なるべく周りに気を配っていたものの、のめり込んでいた。
すると、電車が止まって、人が入ってくる。
その中に、同い年くらいの女の子がきた。
どこか暗そうで、下を向いている。
ペルソナさんは「他の車両に行こう」と呟いた。
そして、移ると、「知ってる人?」とたずねる。
「うん!そうだよ。」と言った。
───────
最後の学校、剣鋭高校に到着した。
この学校も活発で、模擬練習のようなことをしている。
真剣に相手の話を聞き、否定をいれたり、自分の考えの正しいところを主張したりする。
僕は思わず、それに見入った。
ペルソナさんはそっと呟く。
「あいだくんも、あの中に入る?」
「見ているだけでも大丈夫だよ!」
すると、気付いた顧問の先生が僕らの方にやってきた。
「電話を下さった生徒さんですね。確か、学校は…」
そう言いかけた時、ペルソナさんは少し大きな声で「全宝高校です!」と言った。
「そうそう、全宝高校の方。良ければ、部活に参加しますか?」
僕はチラりと、部活している人達の方を。
そこでは、2人がとても興味深い思想を話していた。
未知のもの。新しい出会いが出来そうだ…。
「是非、僕も参加したいです!」
先生は部長のまいたくんを呼んだ。
「全宝高校の生徒さんが、部活一緒に参加してくれるようなので、お願いします。」
そして、僕の方を見て言う
「この部の部長さんです。分からないことがあったら、彼に聞いてください。」
それから色々説明などあり、模擬戦に参加した。
みんなちゃんと練習していたこともあり、歯が立たない。
しかし、色々な考え方に触れられて、僕の中には満足感があった。
ペルソナさんはその様子をじーっと見つめる。
まいたくんが「きみも参加しますか?」と聞くと、「私は…。長くあの人を見ていたいから…」と話した
───────
あたりは暗く、顧問の先生も今やっている練習で最後と言った。
「まずは君からでいいですよ。」
先手必勝という言葉もある。僕はこころよくうけた。
考えること…それは変わらない「普通であること。それが僕の思想です!」
相手は「それは…?」と首を傾げる。
「強い、弱いという言葉のように、偏ったものにならず、真ん中を目指す!
それが僕の根本的な考え方です!」
「そうか。じゃあ、次は僕が思想を話して行くとする。」
「偏りがあることを目指す。それが僕の思想。」
僕の思想の反対を…?驚いたが、乱さないようにと心を落ち着けた
「まず、偏りを目指すこと。それは、多くの面で、人からの賞賛を受けやすい利点がある。」
「でも、もしそうなら…!反対の要素も考えなきゃいけない。」
「たとえ、反対のものでも、一番であれば、それは価値あるものに変わる。」
彼は自信に満ち溢れていた。
「しかし、偏らないものを目指すとなると、何も得られない。」
「同じものが沢山あっても、それの価値が下がるように、普通であることに価値はないんだよ。」
僕はそれに萎縮してしまう。
だが、心の中で語りかける声があった。
本当にこのまま言われっぱなしでいいのか…?
今までやってきたことは嘘だったのか…?
その時、あたりは暗闇で、相手の姿はない。
違う人物の姿があった。それは、昔の自分。
写真や、鏡などでみてきた自分の姿だったのだ。
僕はそっとありがとうと呟いた。
「あなたの考えもいいだろう。だけど、その分、僕も自分の考えをいいものだと考えている。」
彼の顔を見ると、少し驚いているようだ。
「子供の頃から、ずっと、普通が何よりもいいものだと考えてきた。」
「確かに、偏ったものは、喜びといった偏ったものを得られやすい。だけど、それでは、ちょっとした喜びを嬉しいと思えにくくなる。」
「僕はその毎日に舞い込んでくるちょっとした喜びを、嬉しいものだと思って…この平穏を幸せなものだと思って…これからも普通を信じていくんだ!」
僕はハッとした。沢山話しすぎてる。
維摩一黙とか言うことわざもあるし、ボロが出やすい。
僕は浮かんでくるマイナス感情を抑えながら、彼の方を見ていた。
すると、「僕の負けだ」と言った。
「どうして…?」思わず声に出る。
「純粋に君の考えがいいと思ったからだよ。それに…」
彼はそう言いかけて辞めた。
周りから、驚きの声が上がった。
「この学校で2番目の実力って言われてるだいおうさんに勝つなんて…」
しかし、喜びは無い。今日、3戦して1勝2敗。
やっぱり、本格的な練習している人達は強い。
しかも、否定を使ってしまったし、感情に任せてた。
心の中で、反省しながら、ペルソナさんの元に。
彼女は「頑張ったね!」と笑顔で迎えた。
「待っててくれてありがとう」
「いえいえ。」
帰りの電車の中で、彼女が話しかける
「今日は楽しかった?」
「うん!とっても!」
彼女はそれに「良かった!」と微笑みを絶やさない。
「最初はどうなるかと思ったけど…」
「確かに、まるであれみたいだったね。ゴルディロ…」
「うん!良かったよ!」
「またいつでも誘って欲しい!」
「うん!また一緒に行こう」
彼女の笑顔が眩しかった
───────