思想学部⑬

なんだっけ?

職員室でのこと。

「あの…」

その声に、数学の先生は振り返った。

「いなし先生、どうかされたんですか?」

「最近、思想学部の方は、皆落ち着いてますね。」

「確かに、学校が始まった頃は、驚く事が多かったですね。」

「最近はどうしているのですか?」

「私は思想学部の生徒に任せています。」

「彼らは強い目標があって、先生が居なくてもどこまでも高めていける。私はそう思っていますから。」

すると、いなし先生は笑顔で呟いた。

「でも、時には、止めることも必要ですよ」

「私には難しいことです。」

数学の先生は謝って、その場を去る。

職員室に残ったいなし先生は、外の景色をながめた。

────────

思想学部では、普通というテーマについて話し合っていた。

「沢山話し合ってるけど、答えが出ないね」

僕が思い切って言うと、すすむくんは「あいだくん、ごめん!」と謝る。

「大丈夫だよ!」

「行き詰まってる時は、やっぱり、違うことを考えた方がいいんじゃないかな!」

すすむくんは「なるほど」と頷いた。

「例えば、どんなことをするの?」

「前やってたように、人助け的な何かとか!」

すると、「それなら…!」としずくさんが立ち上がる。

そして、一緒に吹奏楽部のところへと向かった。

「どうして、ここに?」

ハテナを浮かべていると、おとねさんがやってきた。

「みんな!今日はどうしたの?」

しずくさんは「実はね…」と話す。

───────

「この子が私の友達のきせきちゃん!」

おとねさんは元気に紹介した。

「みんな~!よろしくね!」

あどけない笑顔で言った。

「この子がどうかしたの?」

おとねさんが答える。

「実はね…!しずくちゃんと、みちかちゃんには話したんだけど…」

彼女の話に驚く。

「そんなことが…?」

「うん…そうなの!」

きせきさんは、記憶喪失になってしまったらしい。

おとねさんが部活に入った頃から、もう記憶喪失で、楽器の扱い方すらも忘れてしまった。

友達のかなでちゃんの話では、入った頃は普通にしてたと。

きせきさんは言った

「思い出したいけど、怖い気もするの…。」

「何故…?」

すすむくんが言うと続ける

「どうして記憶喪失になったのか…。もしかしたら、怖いことがあったのかもしれないし…。」

真面目に悩む彼女におとねさんが近付いて、手を握った。

「きっと大丈夫だよ…!」

きせきさんは「ありがとう…!」とそれにとても安心しているようだった。

彼女が居ないところで、おとねさんは話す。

「きせきちゃんはね、前からかは分からないけどね…」

「いつも明るくて、ふにゃってしてるところはあるけど、とてもいい人なんだ…。」

おとねさんは真剣にすすむくんを見つめた。

「だから、きせきちゃんのことをお願い…!記憶を戻して欲しいの…」

「学校に行くのも、お母さんにおくってもらってて、学校生活もままならない状況なんだって…」

すると、すすむくんは「了解!記憶を戻すよ!」と元気にいった。

いつもどおり、根拠のない自信で。

────────

「それで、どうするの…?」

しずくさんは涙目になって言った。

すすむくんは「もちろん…!これからきせきさんの記憶を取り戻す!」と言った。

そして、きせきさんの方を見る。

「ふにゃー?今日のお昼ご飯は何かなー?」ときせきさんはぐたーっとしている。

しずくさんが「もう昼ごはんは終わったから、次は夜ご飯だよー!」と言った。

「きせきさん、あの!」

「なんでしょう?」

ふわふわしたまま、すすむくんを見る。

「昔に何があったか教えて欲しい!」

きせきさんは「なんだったかな…」とボーッと上を見つめる

「昨日のご飯も覚えてないよー。」

グターっと目を閉じた。

「なんでも大丈夫!覚えてることがあったら、それを!」

「すすむくん!僕がかわりにするよ!」とすすむくんを止める。

「あいだくん、大丈夫なの?」

「うん!僕に任せて欲しい!」

そう言って、僕はノートを取り出した。

彼女の昔聞いた話など、とってある。

これを使えばもしかしたら…?

見てみると、彼女はすすむくんと同じ3組で、そんなに目立たない子だと言われていた

そして、同名中学校出身。

特に深い情報はなさそうだ。

「同名中学校出身なんだね!」

僕がそう言うと、「同名中学校…?」と上を向いて考えていた。

すると、「私、そこに通ってた!」と笑う。

思い出してくれたのか…?

しかし、「それ以外は覚えてません」と笑顔で言った。

これで思い出したら、困らないか…。

すると、更に彼女は言った。

「あとね、思い出したことがあるの!」

「おぉ!それは?」

僕は何か新しい情報が手に入るかもと期待した。

「昨日はシチューを食べました」

彼女はえへへと笑う。

何も進展ないように思えたが、彼女の記憶が少し戻ったという事。

それがあり、きせきさんはもう少しここに居ることになった─────────

てぬるさ

その後、僕達は何をするでもなく話していた。

「そういえば、あいだくんって色々調べてて凄いね。メンバー集めの時も助かったよ」

「情報のこと?

あれは、聞ける人だけ集めてて、たいした情報じゃないものも多いんだ。」

「そうなの?」

「うん。部活のは、直近で人が話しているのを聞いて、メモってたり覚えてて。」

「もしかしたら、他にも部活に入ってない同級生は居たかもね。」

───────

男は先輩の女子と、ある場所へ向かっていた。

男は考える。

獅王さん、俺が思想学部はこの学校に悪い影響を与えると証明する…。

そこには、獅王の姿があった。

「分かった。意志に負けたよ。

ただし、凛さんを連れていくのなら許可しよう。」

このチャンスをものにする。

強く握りこぶしをつくった。

そして、思想学部が集まる部屋に到着した。

───────

ドアが開いて、思想学部の皆の視線が一点に集まる。

「部活中にすみません。私は生徒会に所属している朝木凛です。

そして、こっちが」

凛さんはもう1人に目配せした。

「俺はすいぞうだ。」

凛さんは小さな声で「上を」と呟いた。

「裏木すいぞうだ。」

僕はそれを聞いて、夏休みのことを思い出す。

「何の用ですか?」

僕は思いきって聞いた。

すると、すいぞうが出てきて「今日は…」と言いかけると、思想学部の中にいたきせきさんを見て言葉を失う。

「今日は?」

すすむくんは立ち上がった。

「なんでもない。」

そう言って、凛さんとそのまま帰っていった。

なんだったんだろう…?


帰っている途中に凛はすいぞうを見る。

「何も言わなくて良かったんですか?」

「すみません。言えませんでした。」

「当分、思想学部に何も手出しできませんね」

「はい。」

───────

「ようやく来たか。」

真っ暗な闇の中、リーダーの男はドアの近くにいた女性の方を見て言った。

「むりくん、久しぶりです」

彼女は微笑んだ。

「その名前を呼ぶな」

とてもイライラしているようだ。

「じゃあ、ゆめりちゃんがいいですか?」

笑顔を絶やさない。

チッと舌打ちすると、「名前は呼ぶな」と後ろを向いた。

すると、それにひていが「未頼三って呼ばれてんのに…。お前は信頼に値しないし、外れた方がいいんじゃねえの?」と睨んだ。

その様子にも、笑顔を絶やさない。

「みらいみってなんですか?」

「未来までずっと信頼できる3人のことだ。メンバーはおれ、はみ、副部長。

しかし、部活すらほとんど来ないそんなやつが…」

「私は入った覚えはありませんよ」と笑顔で答えた。

「私は野良猫さんのように、自由に旅をする!」

そう言って、カーテンをあけた。

すると、太陽の光が、部屋の中に差し込んでくる。

「今はあなた達と一緒に居るだけで、また私は旅に出るの」

ひていが「なんだと…!」とイライラしていると、むりが言った。

「そんなに怒るな。俺ははみのことを信頼してるんだぜ。」

「私の名前ははみじゃないですよ。羽に美しいと書いて、うみと読みます。」

にっこり笑った。

「ところで、最近は部活、何をしてますか?」

羽美は首を傾げる。

「情報交換くらいだな。」

「それで大丈夫なんですか?」

「どういう事だ?」

「昔、ある動物が油断して、自分より実力が離れた動物に負けたことがあります。」

「足をすくわれるかもしれませんよ」

彼女はどんな時も、笑顔を絶やさなかった。

「まぁ、いいだろう。そろそろただ話すだけの時間に飽き飽きしていたところだ。」

「大会こそ、否定という武器の強さを証明する場。更に研磨しのぞんでいこう。」

羽美は思った。

そう…これから楽しくなるから

ねぇ、みおちゃん

────────

生徒会の人が帰った部室では、何が起こったのか固まっていた。

僕は思いきって、「生徒会の人、なんで来たんだろう?」と呟く。

「分からないよ…」

しずくさんはそう言って、涙目になっていた。

「どうしたの?」と聞くと、隣で、きせきさんが頭をかかえていた。

「さっきから、頭をかかえて苦しそうにしてて…!」

見守っていると、彼女が顔をあげる。

「大丈夫…?何かあったの…?」

恐る恐る聞いてみると、きせきさんは下を向く。

「あの人…どこかで会ったことがある気がするの…。」

もしかして、記憶取り戻すのに関係が…?

「何か思い出したの?」

「ううん、思い出しそうだったけど、忘れちゃった!」

そう言って笑っていた。

僕はその後、すいぞうくんのことについてノートを見てみたが、たいした情報は書かれていなかった。

けれども、一つだけ驚いたことに、僕と同じクラスだったらしい────────

過去⑩

「これから行ってくる!」

そんな時、私はいつも「怪我するかもよ!」と止めた。

だけど、「大丈夫だって!」と言って、彼らは進んで行った。

私の市には伝説がある。

ほとんどの人は嘘だって言って、信じないようなもの。

だけど、あの頃の彼らにとっては、宝物のように大切なものだった。

私はいつも、「どうなっても知らないから!」と見送った。

本当は一緒に行きたい…。

だけど、正直にそれを話すのが恥ずかしかった。

帰りを待っていると、少し汚れて帰ってくる。

私は心の中で良かった…と思って、彼らにおかえりなさいを言った。

少し頬っぺを膨らませて。

でも、そんなある日、彼は少し暗く帰ってきた。

「ゆうくん、どうしたの?」

そう言っても答えない。

「とても悲しそうな目に、私は何も言葉が出なかった。」

彼はその日から、冒険に出かけなくなった。

何かあったのかもしれない…。

そう思っても、何があったのか分からない。

彼のとても暗いあの顔が浮かんでくる。

私は思い切って、彼の家に行った。

そして、「こんにちは!ゆうくん元気ですか?」と言うと、彼はすぐに返した。

「いなし、ごめん…。俺が間違ってたよ…。」

「どうしたの?」

「いなしの言う通り、行かなければ良かったんだ…。」

その時、私は笑顔で言う。

「実はね!私も、冒険に行きたかったの!」

少し驚いた様子で、彼は私の顔を見た。

「どうして…?ずっと止めてたのに。」

「悲しんでる人に悲しいことは言いたくないから!

それに…これは私の本心なんだ!」

「だから…もし、次に出かけることがあったら、私も連れてって!」

私が笑顔でそう言うと、彼は「ありがとう」と呟く。

その日は、それで別れた。


それから数日して、彼は前のことが嘘のように元気を取り戻した。

そして、私の前に立ってこう言う。

「一緒に行こう!」

私は笑顔で「行こう!」と言った。

それから、沢山、色んな場所に行った。

その時間が、私にとって、とても楽しい時間だったことを覚えてる。

ドキドキすること、楽しいこと、嬉しいこと、さまざまな感情で一杯になった。

みんなのその様子を見て、私は、ただ幸せだった。

来てよかったと思ったの。

でも、ダメな時は、しっかり止めることを忘れなかった。

そんな時、彼は、快く「ごめん」と言って微笑む。

他の人がそうしようと言っても、俺は行かないと、強い意志を見せる。

その時、ゆうくん変わったんだな…と思った。

今では、こうして途切れ途切れの記憶だけど、私にとって、懐かしくてかけがえのない時間だと今思ってる。

そして、呟いた。

「勇くん、今、どうしてるかな…?」

ところで、このこと、つい最近まで忘れてた。

理由は分からない。

だけど、思い出すきっかけをくれた…。

ある生徒の言葉。

そう、あれから10年以上経って、私は学校の先生になった。

そんな私の前に、それがあらわれたの。

彼の言葉。それは、楽しかったあの日々を思い出させた。

彼らと居れば、またあの時を…。

そう思うと…。

私も一緒に連れてって。

なんてね。

最近は、何も無いらしい。いいことよ。

私はこのまま外から見守っていようと思う

────────

発見

きせきさんのことは、色々あって、解決したようだった。

まだそれに遠いが、前よりはマシになったと。

吹奏楽部に帰っていった。

ところで、思想学部では、また話題が普通についてになる。

「普通ってなんだろうね」

みんなはそう言って、窓の外を見ている。

何も思いついてない様子だ。

僕は思い切って言った。

「前に浮かんだことがあって」

「それは?」

「人助けは普通なこと。
困ってる人は偏ってる状態だから。」

僕は続けて、思いついたことを沢山話す。

すると、「なるほど」と頷いていた。

「いいと思う!ところで、どこでそれを思いついたの?」

すすむくんはいつも真剣に考えてくれた。

「家で思いついたんだ!弟がいい漫画を!」

「そうなんだ!もしかしたら、君の弟の方が、僕らより普通に詳しいのかもね!」

そのすすむくんの一言にハッとする。

近くでいつも、僕の普通について沢山見ていたはず。

最大の理解者に気付かずにいた。もしかしたら、弟の方が何かを…?

僕は「普通について考えなくて大丈夫だよ!」と言った。

「色々考えてくれてありがとう」

すすむくんは難しい顔をしている。

「これからどうするの?」

「いつも通り、テストとか、イベント、最近の流行とかで思想を発揮するとかどうかな!」

「おぉ!なるほど!」

すすむくんは目をキラキラさせた。

大きく変えなくていい。いつも通りで…。

すると、している途中に、しずくさんが言った。

「風の噂で聞いたのだけど、冬休みに練習試合があるらしいよ!」

「どこと?」

すすむくんはとても驚く

「それは分からないけど…!結構有名なところらしい!」

有名なところって…まさか、リベシン高校ともう試合するのでは…?

僕は少し身構えていた

「だけど、どこから入ったか分からない噂だから…期待しないで欲しいんだ…!」

しずくさんは涙目になって言った。

「大丈夫だよ!教えてくれてありがとう!」

すすむくんはしずくさんを見つめる。

「これから、練習試合に向けて頑張ろう!」

すすむくんはそう言って、片手を上に突き上げた。

しかし、模擬なこともしたが、いつも通りに部活が終わった───────

家に帰って、僕はすぐに弟の元に向かう。

そして、弟に漫画のことについて聞いた。

「あれはね、たまたま読んだ本が、これってお兄ちゃんに似てるなって思ったんだ」

「普通の男って主人公だし。もしかしたらって」

「そうだったんだ。」

僕は頷いた。その偶然がためになったから…いい弟。

「ありがとう!」

「こちらこそありがとう!読んでくれたみたいだよね!」

「うん!変わった設定だったけど、面白くてためになった」

「おぉ。それは何よりだよ。」

僕は「ところで…」と切り出した。

「何?」

「普通ってなんだと思う?」

「何だろう…?」

少し考えて、教えてくれた。

「僕はお兄ちゃんを見てたから、そういう人のことを普通って言うんだと思うよ。」

「そうなんだ…。」

特に何も無く終わるのかと思っていると

「あ、そうそう。普通で思い出したんだけど」

「何かあった?」

「学校で、ホメオスタシスについて勉強して。知ってる?」

「恒常性、温度とかを一定に保つってやつかな?」

「そうそう。暑い時汗をかいて温度を下げたり、寒い時のシバリングとか。」

「そうなんだ。それで、ホメオスタシスがどうかしたの?」

「お兄ちゃんの目指してる普通と似てる気がして。」

「ずっと言おうと思って忘れてたんだけど、今日、話してくれて思い出したんだ。」

「なるほど。ありがとう。」

弟と話していると、疑問が沢山出てくるな…。改めて思った。

「その、僕の目指している普通と似てるって?」

「例えば、平均を目指すとき、不足してたらそこに何かを補う。

超過してたら抑制する。」

「それと同じで、暑い時に涼しくして、寒い時に暖かくする。

なんだか、僕にはそれがそっくりに見えて。」

「確かに、そっくりに見える。」

弟はそれを言うと、勉強するからと僕の元を去る。

丁度、1人で考えたい時だったから、ありがたくあった。

もし、普通が、弟のいったものであるなら…?

そう考えると、僕の前に色々な想像がやってきた。

自分のめざしていた普通とは、言っていたように、恒常性のように、偏りをさけてその時に応じてものを取り入れたり、抑制させたりする。

だけど、前からうすうす感じていたこと。顔の普通など、身体的特徴はその方法ではどうしようもない。

僕の目指す普通とは、どんなところにおいてものそれだ。

だが、またそれが本当に普通なら、一般的ではない。

そんなものが本当に普通と言えるのだろうか…?

僕は改めて普通と言うものが、とても難しいものだと再認識した。

しかし、心の中に、恒常性という考え方が残っていた───────

偵察

「あいだくん、久しぶり!」

その声の主は、ペルソナさんだった。

「久しぶり!」

「これから、他の学校に行こう!」

彼女はそう言って微笑んだ。

そして、電車の中、彼女は話す。

「3校に許可を貰ってきました!」

「ありがとうございます!だけど、思想学部のある学校そんなにあるんですか!」

「そうみたいですよ。」

笑顔で答えた。

そのまま、沈黙が続いていると、ペルソナさんが言った。

「良ければ、またあいださんのお話聞かせてもらえませんか?」

「え、いいんですか?」

「はい!」

僕は電車にのっている間、昔考えていた普通について話す。

そして、時間が経って、学校に到着した。

「もっと聞いてたかったな」

彼女は僕の方を見てそう呟くと「じゃ、行こっか!」と先に進んだ。

景山高校。それがこの学校の名前。

入ってみると、部員は1つの部屋に集まっていた。

しかし、活動する様子はない。

「何か話してる!」

ペルソナさんの言葉に耳をすましてみると、確かに声が聞こえてきた。

「なんで夏休みに集まらなきゃいけないんだよ。」

「大会があるんだってさ。思想学部の大会なんて、練習する必要ないだろ。」

「だよな。楽そうで、勉強になりそうだから入ってみたけどさ。」

など、色々なことが話されていた。

隣を見てみると、ペルソナさんの姿はない。

振り返ると、帰る方に向かっている彼女が居た。

そして、「あいだくん、次の場所行こー」と、手を振る。

次は鳥魚高校。

集まっている場所に行ってみると、今度は活発そうなところだった。

しかし、生徒は背中に羽や、えらのようなものを身につけている。

そして、顧問の先生が言った。

「私たちは、元は魚だった!だから、長時間水の中に潜っていられる。

鳥のようにあの大空を飛ぶ進化することもできる!可能性は無限大だ!」と話す。

「次に行こう」

ペルソナさんは耳元でそう話して、一緒に次の学校へ向かった。

その途中の電車で、僕は、彼女に普通のことについて、あつく語る。

電車なので、なるべく周りに気を配っていたものの、のめり込んでいた。

すると、電車が止まって、人が入ってくる。

その中に、同い年くらいの女の子がきた。

どこか暗そうで、下を向いている。

ペルソナさんは「他の車両に行こう」と呟いた。

そして、移ると、「知ってる人?」とたずねる。

「うん!そうだよ。」と言った。

───────

最後の学校、剣鋭高校に到着した。

この学校も活発で、模擬練習のようなことをしている。

真剣に相手の話を聞き、否定をいれたり、自分の考えの正しいところを主張したりする。

僕は思わず、それに見入った。

ペルソナさんはそっと呟く。

「あいだくんも、あの中に入る?」

「見ているだけでも大丈夫だよ!」

すると、気付いた顧問の先生が僕らの方にやってきた。

「電話を下さった生徒さんですね。確か、学校は…」

そう言いかけた時、ペルソナさんは少し大きな声で「全宝高校です!」と言った。

「そうそう、全宝高校の方。良ければ、部活に参加しますか?」

僕はチラりと、部活している人達の方を。

そこでは、2人がとても興味深い思想を話していた。

未知のもの。新しい出会いが出来そうだ…。

「是非、僕も参加したいです!」

先生は部長のまいたくんを呼んだ。

「全宝高校の生徒さんが、部活一緒に参加してくれるようなので、お願いします。」

そして、僕の方を見て言う

「この部の部長さんです。分からないことがあったら、彼に聞いてください。」

それから色々説明などあり、模擬戦に参加した。

みんなちゃんと練習していたこともあり、歯が立たない。

しかし、色々な考え方に触れられて、僕の中には満足感があった。

ペルソナさんはその様子をじーっと見つめる。

まいたくんが「きみも参加しますか?」と聞くと、「私は…。長くあの人を見ていたいから…」と話した

───────

あたりは暗く、顧問の先生も今やっている練習で最後と言った。

「まずは君からでいいですよ。」

先手必勝という言葉もある。僕はこころよくうけた。

考えること…それは変わらない「普通であること。それが僕の思想です!」

相手は「それは…?」と首を傾げる。

「強い、弱いという言葉のように、偏ったものにならず、真ん中を目指す!

それが僕の根本的な考え方です!」

「そうか。じゃあ、次は僕が思想を話して行くとする。」

「偏りがあることを目指す。それが僕の思想。」

僕の思想の反対を…?驚いたが、乱さないようにと心を落ち着けた

「まず、偏りを目指すこと。それは、多くの面で、人からの賞賛を受けやすい利点がある。」

「でも、もしそうなら…!反対の要素も考えなきゃいけない。」

「たとえ、反対のものでも、一番であれば、それは価値あるものに変わる。」

彼は自信に満ち溢れていた。

「しかし、偏らないものを目指すとなると、何も得られない。」

「同じものが沢山あっても、それの価値が下がるように、普通であることに価値はないんだよ。」

僕はそれに萎縮してしまう。

だが、心の中で語りかける声があった。

本当にこのまま言われっぱなしでいいのか…?

今までやってきたことは嘘だったのか…?

その時、あたりは暗闇で、相手の姿はない。

違う人物の姿があった。それは、昔の自分。

写真や、鏡などでみてきた自分の姿だったのだ。

僕はそっとありがとうと呟いた。

「あなたの考えもいいだろう。だけど、その分、僕も自分の考えをいいものだと考えている。」

彼の顔を見ると、少し驚いているようだ。

「子供の頃から、ずっと、普通が何よりもいいものだと考えてきた。」

「確かに、偏ったものは、喜びといった偏ったものを得られやすい。だけど、それでは、ちょっとした喜びを嬉しいと思えにくくなる。」

「僕はその毎日に舞い込んでくるちょっとした喜びを、嬉しいものだと思って…この平穏を幸せなものだと思って…これからも普通を信じていくんだ!」

僕はハッとした。沢山話しすぎてる。

維摩一黙とか言うことわざもあるし、ボロが出やすい。

僕は浮かんでくるマイナス感情を抑えながら、彼の方を見ていた。

すると、「僕の負けだ」と言った。

「どうして…?」思わず声に出る。

「純粋に君の考えがいいと思ったからだよ。それに…」

彼はそう言いかけて辞めた。

周りから、驚きの声が上がった。

「この学校で2番目の実力って言われてるだいおうさんに勝つなんて…」

しかし、喜びは無い。今日、3戦して1勝2敗。

やっぱり、本格的な練習している人達は強い。

しかも、否定を使ってしまったし、感情に任せてた。

心の中で、反省しながら、ペルソナさんの元に。

彼女は「頑張ったね!」と笑顔で迎えた。

「待っててくれてありがとう」

「いえいえ。」

帰りの電車の中で、彼女が話しかける

「今日は楽しかった?」

「うん!とっても!」

彼女はそれに「良かった!」と微笑みを絶やさない。

「最初はどうなるかと思ったけど…」

「確かに、まるであれみたいだったね。ゴルディロ…」

「うん!良かったよ!」

「またいつでも誘って欲しい!」

「うん!また一緒に行こう」

彼女の笑顔が眩しかった

───────