思想学部⑳

<h3>過去物語❺</h3>

これはある学校でのこと。

僕には夢がある。

自分の学んでいることについて、深めていく職業につきたい。

ただ、今していることを、1人でずっと考えていたいから。

ただ、ある男が、僕の前に現れた。

寝るに夜と書いて、しんやくん。

ねるくんとみんなから呼ばれる。

彼は、猛虎くんなど自分を含め4人を集めていると言った。

何故集めてるのかと聞くと、どんな時でも、この5人であれば乗り越えていける。

そんな男達を。

一人一人は漢字一文字で呼ばれる。

しんやくんはねる、もうこくんはとら。

後のふたりは、破(は)くんと日(ぴ)くん。

一人一人には、それぞれ能力がある。

ねるは、人の能力を見抜く力、とらくんは力強さ。

破くんは、守っていく力がある。日くんは慈悲ぶかさを持っている。

この4人に比べれば、僕はとりわけ何かを持っている訳では無い。

僕は断ることにした。

だが、ねるくんは言った。

「僕の目に間違いはない。君は僕らと共に歩むに相応しい人間だ。」

そう言って、僕に王(おう)と名付ける。

何故、王なのか?

名前に王は入ってる。しかし、それに相応しい逞しさは持っていない。

ただ、彼は言った。

「この4人をまとめていけるのは、君しかいない。」

そう期待の言葉をかけられた。

それは2年生のこと。

意外にも、全員部活には所属していなかった。

特に活動もなく、この5人が居ればという言葉だけ残る。

僕は心と会話をした。

何が起こっても、自分はノートで。

ある日、ねるくんが言った。

この5人で部活をしないかと。

その部活というのが、最近出てきた、思想学部というもの。

どんなことをするかと言うと、自分の考えをお互い話し合う。

そして、その考えについて、話を続けていく。

相手の考えの方がいいと思ったり、満足すれば、相手の勝ち、その逆はこちらの勝ち。

時間制限もないため、一種の根性勝負になる。

偶然、5人参加で先に3勝した方が勝ち。

ねるくんは、この5人なら、どんな相手であろうと戦っていけるという自信がある。

他の4人は参加すると出したらしい。

後は僕だけだ。

部長になるのはねるくんらしいが、僕は5人のうちの最後をつとめることをお願いされている。

断ることもできるが、どうするべきか。

今まで、あの4人を見てきた限りだと、自分が上手くつとめることができるか…。

悩む僕に、ねるくんはこう言った。

「君なら任せられる。」

僕は心の中でそっと決めた

「分かった。できる限りのことはしよう。」

「その返事を待っていた。1年後、最後の高校生活を共に、より良いものにしよう。」

───────

それから、練習する。

しかし、その中でも、4人はすぐになれていき僕は自信をなくしていった。

何故、自分が重要な役割を任せることになったのか

未だに分かっていない。

人を見る力のある、ねるくんか、1番の強さをもつとらくんの方が向いている。

そんな気がしていた。

しかし、任せられたこと。

自分なりに少しずつ進んでいくしかない。

今、できることを1つ1つ。

────────

私は手を止めた。

半分まできた。

ようやく、折り返し地点。

あと、もう少しだから、続けて書こうかな。

そう思ったけど、強い睡魔に襲われた。

もう時間かな…?

折角なら、最後までやりたかったけど…。

私はゆっくりと、毛布へと入った。

この世界には、色々な物語がある。

私は今まで嫌という程、沢山それを見てきた。

あの子は今、どうしてるのかな…。

ふと頭の中に浮かぶ。

あなたのそばにいけそうだけど、この時になってみると、失いたくないって思うね…。

あんなに、拒絶してたのに。

今はとても愛おしくて、大切なものに感じてる…。

できることなら、もっと……いたかった…。

私はそのまま目を閉じて、眠りについた

────────

<h3>これからのこと</h3>

すすむは朝起きて思った。

「今日はとてもいい朝だ。いいことがおこる。」


そして、いつも通りの部活が始まった。

全メンバー揃っての部活。

最初の頃では、有り得なかったかもしれない。

僕は思った。

何か偶然が重なり、この結果を導いたのかもしれない。

ところで、今日は、すすむくんに、シソウくんが相談をしていた。

なんでも、困ったことがあるらしい。

自由時間になっているが、いつもお喋りするだけなので、見慣れた光景が僕の前にあった。

「それで困ったことって何かな?」

「これからの事を考えたんです。もし、帰ったら…また考えられなくなってしまうと思って。」

「そうなんだ。」

「はい。だから、帰りたくはないです…。」

すぐにシソウは言った。

「ところで、すすむさんはこれからのこと考えていますか?」

「なるほど。」

すすむくんはそう言って少し考えている。

そこに、みおさんが元気な声で「はい!」と言って手を挙げた。

「私言いたいです!」

「いいよ!」

嬉しそうにみおさんが話す。
「これから、1年生、2年生、3年生全部生徒会長になる!」

「それでね、私の可愛い、美しいものを愛するって考えをみんなに広めたいの!」

「なるほど」

すすむくんは頷いた。

「そしたら、みんな楽しくて、幸せな学校生活を送れると思う!」

最後に「可愛いものしか勝たん!」を忘れずに言う。

「いい考えだと思う。」

そして、小声で「生徒会長か…」と呟く。

「少し考えたい!シソウくん、とりあえず、他の人にも聞いてみたらどうですか?」

シソウくんは彼の言う通り、他の部活のメンバーに聞いた。

まずは、きせきさんから。

「これからのこと…?

全然考えてないよ!今で精一杯!」

えへへと笑った。

次はねおくん。

「僕は前に言った通り、違う部活に入る。何か得られることがあったら、それを拾っていくだけだ。」

その後、僕の方に近付いてくる。

「あいださん」

「今度は僕?」

「はい、これから何をしますか?目標とかありますか?」

僕は悩んで答えた。

「特に…。だけど、自分の考えを深めていきたいと思ってるよ!」

「なるほど。深めてどうするんですか?」

その質問に困ってしまった。

「進んでいくうちに、見つかると思うんだ!」

「そうですか!ありがとうございます!」

あんなに人のを見てたのに、自分では答えられなかったか…。

他人の事ばかり気にかけるんじゃなく、自分のことも考えるのも大切だな。

そう思いながらも、気になっていたので、僕は引き続き彼の様子を見ていた。

次はがとくんに話を聞いている。

「かっこいい僕を選ぶなんて…。見る目ありますね。」

彼のその言葉から始まった。

「目標はあります。けど、ここで話すんですか?」

「一人一人、紙に書いてもらうとかにすればいいと思います」

彼の一言から、部員の人達に書いてもらうことになった。

名前は書かず、それぞれの目標を。  

5つ紙があって、シソウは順々によんでいった。

最初は友達や、人の考えの後押しをしてあげたい。

次は、特にないけど、いつも通り、毎日楽しく送れたらな…って!と書かれている。

3つ目は、昔の友達と仲直りしたい。みんなに優しくしたい。 

4つ目は、お姉ちゃんを守ること。

最後が、どんなことでも全部リーダーになること。

シソウは読み終わると、感謝を告げた。

「皆さん、ありがとうございます。」

すると、すすむくんが言った。

「もし、何か君のためになった事があったなら良かった。」

「ところで、僕も思いついたよ。これからのこと。」

「良ければお願いします!」

「了解です!特に変わらず、いつも通りで…。大会を目指す。」

「色々な人の考えが聞けると思うし。」

「なるほど。創作にも役にたちそう。」

「だけど、それだけじゃなくて、みんなが幸せに過ごせるよう、今、自分にできることをしたい。」

シソウは小さな声で呟く。

「僕は自分のことで精一杯なのに、人のことを考えるなんて。」

その後、「ありがとうございます。」と言った。

「こちらこそ。聞いてくれてありがとうございます。」

「ところで、これからのこと決まりましたか?」

すすむくんはだすねると、彼はすぐに答えた。

「まだです…だけど、この先、思想学部に居れば見つかる気がしてます。」

「そうなんだ。じゃあ、これからもよろしく!」

────────

帰り道、シソウとトモは話す。

「結局見つからなかったんだね」

「うん。だけど、それでいいと思うんだ。」

「どうして?」

「答えは出てない時の方が、じっくりといい考えを思いつくことができるから。」

「そう。」

「うん!」

そのまま沈黙が続いて、トモが言った。

「実は、私だけ、まだこれからのこと言ってなかったんだ」

「そうだったんだ。」

「今、直接言いたくて。」

「…?」

「これからのことなんて、考えてないよ。帰ってもいつも通り過ごせたらいいなって」

シソウは頷く。

「もちろん、将来の夢とかはあるよ…だけど、シソウみたいに、自由を奪われるなんてことはないから…。」

「そういう意味では、シソウのこと凄いと思ってる。これからどうするかって考えて、悩んで行動したんだから。」

「ありがとう。」

その一言で、2人は今日話すことはなかった─────────

<h3>修学旅行①</h3>

今日は隣町に修学旅行へ。

毎年、そこで、1日目は動物園、2日目は水族館に行くことになっている。

となりまちなのでいつでも行けるが、この学校では、これが恒例となってる。

そして…。

部活のメンバーが6人もいる。残念ながら、きせきさんだけ違うクラスだが…。

バスの中、すすむくんの隣でそんなことを考えていると、近くの席から、話し声が聞こえてきた。

しずくさんだ。

「昨日ね、動物さんのこと、沢山調べてきたんだ!とっても楽しみだったの!」
 
みちかさんは笑顔で話を聞いている。

シソウくんはどうしてるだろう?

見てみると、1人でとても楽しそうにしていた。

そんなに楽しみだったのかな

心の中で良かったねと呟いた


ところで、修学旅行は、午後に集合だった。

はやく起きるのが辛い人にも大丈夫な時間。

はやく行き過ぎても、楽しめないからかもしれない。

そして、バスが、動物園に到着した。


この動物園は意外なことに、1箇所に、動物が集まっていることで知られる。

肉食動物が、草食動物をおそうことはない。

色々な動物が共存している。

僕は回りながら、「なるほど…」と呟いた。

今日の動物園も、明日の水族館も、自由行動がメインになっている。

しかし、いつの間にか、僕の周りには思想学部のメンバーが揃っていた。

キセキさんも、他のクラスだが、一緒にみたいとやってきた。

しずくさんが「寂しくなかった?」と聞くと、笑顔で答える。

「おとねちゃんや、吹奏楽部の人達が居たから、バスの中も楽しかったよ!」

ところで、シソウくんがずっと何か言いたそうにうずうずしている。

そこへトモさんが「どうしたの?」と話しかけた。

「動物を見たら、思わずに居られないことがある!」

「それは…?」

「ほら!あれを見て!」

向こうには、ゴリラが居て歩いていた。

「あれがどうしたの?」

「ナックルウォークだ!」

「何それ…?」

直後、その近くに居た、ゴリラが自分の胸を叩いた。

「あれはドラミングだ!」

続いて、近くに居た、猿を見て「今度はブラキエーションだ!凄い!」と言う。

「もしかして、用語言いたいだけ…?しかも、猿のことしか言わない…」

「そんなことはないよ!クジラを見て、バブルネットフィーディングだ!って言おうと思ってる!」

「とても限定的…。そもそも、クジラ自体見えるか分からないでしょ?」

「確かに…!それを考えていなかった!」

その一言で、シソウは落ち着く。

ところで、おとねさん達が、近くに居なかった。

どこだろうと探してみると、コアラの近くに居た。

「あのね、昨日調べたんだけど!」

「なになに?」

キセキさんは楽しそうに聞く。

「コアラさんはね…!ユーカリ食べるんだ!」

「わー!そうなんだ!しずくちゃん博識だね!」

みちかさんはにっこりしながら、2人を見ていた。

「忘れちゃいそう…!

昨日、読んだ日記に書いてあったの…。」

「テストの時、用語とか書いた紙を沢山貼ってギリギリ赤点を免れたって…。」

すると、何か思い出したように、「そうだ!」と言った。

ポケットに手を入れて、何かを取り出す。

そこにあったのは、メモ帳だった。

「忘れない為に、いつもメモ帳をポケットに入れてるの!」

「キセキちゃん凄い!」

しかし、メモ帳を開いてみると、びっしりと書かれて、スペースが無かった。

「かいかえないとだ…!しずくちゃん、ごめんね。」

「大丈夫!またキセキちゃんに教えるね!」

「ありがとう!」

2人が仲良さそうなのは、良かったこと。

ところで、すすむくんは今日は落ち着いているようだ。

あたりを見回してみると、そこには、彼の姿が無かった。

「どこに行ったんだろう…?」

時間は過ぎ、夕方になっている。

そろそろ、この時間も終わる。

もしかしたら、1人で何かを見てるのかもしれない。

僕はそっと納得して、限りある時間を楽しむことにした

────────

それから、何事もなくすすむくんとバスで合流し、泊まる場所へ向かった。

バスの中で、彼に、どこに行ってたのか聞いても、彼は口を閉じたまま。

何かを考えているようだ。

僕はそっとしておいた。


泊まる場所について一段落すると、自由時間がおとずれる。

これからどうしようか。

そう思っていると、すすむくんがどこかへ出かけていった。

どこに行くんだろう?

何も言わず、外へ出ていった。


「来たか」

男はすすむの様子を見て呟いた。

「答えは出たのか?」

「うん。ちなみに君の名前は?」

「俺は留(りゅう)。」

「そうなんだ、僕はすすむ。」

「では、早速はじめようか。すすむに今一度問おう。」

「この世界は、なんと思い通りにならない事か。王でさえ、自らの力で、全てを操ることはできない。」

「もし、行動を意のままに出来たとしても、その思考や、心までは思い通りにすることはかなわない。」

「お前はこの世界をど思い、どう生きるか?」

すすむは言う。

「今を思い、その時、出来ることをしたい。」

「そうか。」

留の頭の中に、過去のことが浮かぶ。

前に1度、この質問を、他の男にたずねたことがある。

その時、男は言った。

思い通りにならないからこそいいんだ。

たまにおとずれるそれが、とても特別なものになるから。

その言葉は私に響くことはなかった。今回もそう。

だが…。2人には共通したことがあった。

それが俺の心に。

どれだけ何かが優れていても…偉大なことを成し遂げようと…。

頭の中に近親者の顔が浮かんだ。

俺は待つことを忘れていたのかもな…

───────

<h3>修学旅行②</h3>

留は「それがすすむの考えか」と言った。

「そうだよ。」

留は何も言わなかった。

そして、すすむに背を向ける。

「じゃあな」

その後、少し歩くと足をとめる。

「そうだ。俺は思想学部には通っていない。」

「うん。」

「だが、俺の高校に、強い5人の男が居る。」

「一人一人が優れた能力をもつ…。彼らと君達の試合が楽しみだ」

留はそう言い残すと、暗闇の中に消えていった。

 
すすむが宿泊施設に向かうと、もうあたりは暗くなっていた。

「どこへ言ってたの?」

帰ってきたすすむくんに僕は聞く。

「少しね」

彼はそう言って、特に何も教えなかった。

まぁ、いいか。僕は心の中で納得する。

宿泊施設で、色々すませて、夜になった。

数人と、一緒の部屋で寝ることになる。

部屋にいるのは、すすむくん、シソウくん。
 
思想学部はみんな近くに来やすいのかな。

そう思いながら、眠りにつこうとすると、シソウくんが言った。

「眠る前にひとつ言いですか?」

僕は言った。「いいよ!だけど、僕からもひとつ。敬語は使わなくて大丈夫だよ!」

「この方が楽なので!」

「それならそのままでいいよ!」

色々ありながら、シソウくんの話がはじまる。

「今日は、流行などについて話したいと思います!」

「流行?」

「はい。流行っているものはどうやって、受け継がれていくのか…。」

ぼくは頷いた。

「それは、下の世代です。多くの場合、自分より下の世代で無ければ、その考えなど受け継いでいくことはできません。」

「確かに、僕が自分の普通って考えを広めたければ、上の世代にするってよりかは、下の世代にするだろうね。」

「はい。上の世代には、受け入れ難いと思います。」

「下の世代でも、受け入れてくれないことはありそうだけどね。」

僕は続けて言う。

「ところで、シソウくん創作好きなんだよね?」

「はい。そうですよ」

「案外、漫画とかそういうような創作とは違うんだ。」

「はい。多くは見ないようにしてるので。」

彼の国では、創作が禁止されてるって言ってたからか…。

僕は心の中でそう思うと、「自由にできたらいいね」と一言だけ言った。

彼は「聞いてくれてありがとうございます」と僕に話すと、眠りについた。

こういう時は、すすむくんも聞いてるはずだけど、今日は何かあったのか…?

隣で静かに眠っていた。

僕もそろそろ寝るか…。

──────

僕は目を開けた。

ここはどこだろう…?

あたりは真っ暗闇。

すると、突然、すすむくんが目の前にあらわれる

そして、彼は口をあけて言う

「さようなら」

その言葉がとても寂しかった。

自分1人だけになったような。

その直後、周りに沢山の人が現れた。

その人たちは、どこか冷たい目で僕を見る。

とても孤独を感じた。

寂しい。

その言葉をこぼすも、彼らは変わらない。

ずっと、浮かないように、普通を目指していたのに…。

こうならないために…。


その直後、目を覚ました。

まわりをみると、すすむくんの姿があった。

まだ眠っているようだ。

それを見て安心する。

「夢だったのか…。」

とても怖い夢だった。

────────

それから、みんな起きて、朝食を済ませる。

午後になると、水族館に向かう。

昨日は口数が少なかったすすむくんだが、今日は元気そうだ。

それを見てホッとする。

「水族館楽しみだね。」

「だね。どんな魚が居るかな」

シソウくんの方を見ると、何だか元気がなさそうだった。

どうしたんだろう…?

───────

水族館について、また思想学部のメンバーで行動することになった。

今回も、シソウくんの傍に、トモさんがよる。

「何かあったの?」

「何も無いよ」

しかし、その声もどこか元気がなさそうだ。

「ベニクラゲいないかな」

シソウは呟く。

「クラゲはこの水族館に居ないみたいよ。」

「そうなんだ。動物園もそうだけど、肉食動物ははなにを食べてるんだろう。」

「あんまり知られてないみたいだけど、人が作った人工の肉を食べてるらしいよ。」

「じゃあ、ベイトボールも見れないってことか。現実は平和でいいな。」

「言い方が、平和じゃない方がいいみたいね。」

「そんなことはないよ。平和がいいさ…。だけど…」

「創作のこと…?」

「さぁ、わかんないよ…。なんか、元気が出ないんだ。」

それから、みんなはそのまま水族館を見て回った。

シソウくんの元気がない理由が、創作してあんまり寝れなかったことは後々気付いたのだった───────

帰りのバスの中。

先生は、なんで、動物園と水族館にしたんだろうか?

理由を考えていた。

けれど、結局、答えは出なかった。

うっすら、動物の姿が頭に浮かぶ。

他の動物に危害を加えることなく、いきいきと生きてる気がした。

そこには平等な何かがあった───────

<h3>過去物語❻</h3>

私にはある日から決めた自分のあるべき姿というものがある。

それは友情を大切にすること。それが自分のなすこと。

今まで、どんな時でも、その事に気をつけ生きてきた。

しかし、同時に足りない何かを心の中に感じていた。

最高のものであると思うのに、何故、これを感じるのだろうか?

1人で考えても、答えは出なかった。

私は通っている学校、一人一人に自分のあり方というものを聞いてまわる。

しかし、そもそも、それを持っている人が居なかった。

これ以上は難しいか。

心の中でそう思ったが、数日すると、私の前に4人の男が現れた。

私と同じように、自分のあり方というものをもつ男達だ。

1人は他人に対する親愛や、優しさこそ自分のあり方と言い、もう1人は利益や、欲よりも、今、なすべきことをすることを言った。

残りは、習慣的なものなど、知識が豊富であることを言う。

全員、目指す場所が違うが、どこか自分と似通った何かを感じていた。

自分を曲げることなく、お互い認めあうことができる関係性になった。

この出会いはもしかしたら、運命だったのかもしれない。

強い志しを持つもの同士は、結びつきあうのだ。

私は、4人の前で言った。

「私たちが共に居れば、完全なものとなる。」

私はそこで決める。

これからすることは、何か大きなことを成し遂げることではなく、自分を見て、そして、相手と自分の異なるところを観察すること。

この偶然の出会い。大切にしていきたいものだ。


ある日のこと。

話し合いの大会が開かれると聞いた。

本当に凄い5人を決める大会。

お互いに自分の考えを話し合うというもの。

年齢制限はなく、参加したい人は自由に参加できると聞いた。

私はすぐに、他の4人にこのことを伝えると是非参加したいと許可を貰った。

全員考えることは同じ。

あり方というもの…。

大会は、1人ずつ順番にやっていく。

審判が数人居て、どちらが良かったか判定する。

私は1敗もすることなく勝ち続け、決勝にこまをすすめた。

決勝でも、4人全員勝って、私の番にまわってきた。

そこに緊張は一切ない。

自分のすることは負けないことではない。

相手のあることを聞くことだった。
 
私は4人と同じく、最初から一貫して自分のあり方とは、友情を大事にすることだと言った。

相手の人は、少し口を開けると、自分の負けだと話す。

終わったあとは、あの5人はとても強いと場内で飛び交った。

何かコツがあるのだろうか?

もしかしたら、とても沢山練習していたのかもしれない。

そんな話し声も聞こえてきた。

しかし、私たちは、ただ自分のあり方というものを追求してきただけであった。

もし、原動力となったとすれば、相手の在り方というものが知りたい。その思いだったのだろう

───────

俺はノートを開いて、そこに書かれていたことの続きを書いた。

昔から欲しかったもの、それが手に入った。

これからどうするか。それは決まってない。

ただ、中途半端に終わってしまったこれを、やり遂げておきたい。

その思いから、あの時沢山見てきたこの世界を一つ一つと書いて言った。

この世の中には、本当に多くの考えがあって、色々な見え方があって面白い。

子供心ながら、いつどんな時でもそれが浮かんでくる。

ところで、俺はとても昔に、大きな選択をした。

時間と今というものをはかりにかけて、未来を選択した。

もう二度とかえってこないと思うと寂しい。

しかし、出会いは、いつも沢山自分の前に現れてくる。

昔だけでなく、今にも多くの人が居ていつでも楽しいと思える。

あの時の選択は正しかったのかもしれない。

ところで、あの人は、俺が言ったことを最後までやってくれた。

あとは俺が最後まで歩いていく。

とても長い時間だった。君もこの時を感じていたと思うと、どう過ごしていたんだろう?

分からない…。

難しいことを考えるのは辞めよう。

ただ、今は目の前のことを

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