思想学部25

<h3>夏休み</h3>

新しい顧問の先生が来た。

これでなんとか、次の試合に参加出来る。

最初は、前の顧問の先生が、部活にほとんど来なかったから、少し戸惑っていた。

だけど、少しすると、みんな馴染む。

夏休みの少し前、先生は、思想学部を集めて言った。

「夏休み、決勝戦があるみたいね。」

「私はどんなことやるか分かってないから…。良ければ、目の前で試合を見せてもらえないかな…?」

見せるためにするのははじめてだ。

すすむくんは「僕がやるよ」と言った。

「もう1人は誰がする?」

そうたずねると、みおさんが「はーい!私がします!」と立ち上がる。

「じゃあ、この2人で実際にしよう!」

みおさんの隣に居たふらさんが「みおちゃん!」と。

「ふらちゃん!行ってくるね!」

「うん!行ってらっしゃい!」


すすむくんは言う。

「じゃあ、まず、僕から思想を言うよ。」

「僕の思想は…。相手のいいところを肯定すること…。」

僕はそれを聞いて驚いた。しかし、今の彼の考えと違っていない。

そして、みおさんは「私の思想は可愛いもの!可愛いものしか勝たん!」と笑う。

「可愛いもの、その考えいいね。」

すすむくんから言った。

「すすむ先輩、ありがとう!肯定するってこともとてもいいと思います!」

そこから先は、相手のいいところを見つけあう勝負になっていた…。

肯定同士の対戦は、どちらも傷つかない。

理想ではあるが、決着もまた中々つかないのである。

顧問の先生は「見せてくれてありがとう。」と言った。

「もう大丈夫よ!」

「思想学部の対戦はお互い楽しくできるのね。」

「はい!」

すすむくんはとても元気な声で言う。

「夏休みにすることを決めました。部活内で、考えをみんなに発表するのはどう?」

「自由研究みたいに!」

「でも…私は途中から入って、よくは分かってないから…。みんなに任せます。」

「僕はいいと思いますよ!」

それから、みんなの同意もあって、夏休み、試合の前に発表することになった。

───────

「もう少しであいつと…」

リベシンの部長は待ちわびていた。

「部長!」

「なえさん。何かあったのか?」

「最後の試合も私とあなた2人で…?」

「いいや、5人全員そろう。俺は分かってる。

そうだよな。ひてい。」

呼ばれたひていは、「俺も参加する。ギャラリーが少ないところでは楽しくない。」と。

部長と副部長は、よく分かってなかった。

「何はともあれ、そういうことだ。」

「もう1人足りないんじゃないですか?」

「大丈夫だ。最初から決まってる。」
 
それから、少しして、その日の部活は終わった。

副部長が帰る途中、ひていが後を追って彼女の名前を呼んだ。

振り返った副部長は「何?」と冷たい声で言う。

「言いたいことがあるんだよ」

「私はあなたと話したいこと何も無い。」

そう言って立ち去ろうとする。

その前に彼が言った。

「部長のことだよ。」

その一言に、足を止める。

「部長がどうしたの?」

「本当に、尊敬できる、いいやつだと思ってんのか?」

「何がいいたいの?」

「あいつが昔したこと、知らないんだろ?」

「はっきり言って。」

「また今度言う。」

ひていは頬に笑みを浮かべる。

「そう、何もないのね。あなたの嘘。分かったわ。」

副部長はそのまま帰って行った。

ひていは思った。やっぱり、そうか。

俺の中で確定した。


副部長は帰ってる途中、部長のことが浮かんでいた。キセキさんに夢中な彼。

それでもいいと思ってたけど…、完全には、そう思いきれてない自分が居た。

────────

それから、夏休みがやってきた。

毎年恒例のショー。今回は誘われても、知ってる人も居ないので行かなかった。

ただ、風の噂で、最後の1人がとても印象的だったと耳に入ってきた。


「これから、最後の戦いが行われる。肯定と、否定、どちらがより素晴らしい考え方か」

「それが、その日に決まる。俺は思う、否定こそが素晴らしい考えであり、肯定は誰も救うことはできない。」

小さな声で「俺がそうだったようにな」と言う。

そして、思った。

待っていろ、すすむ。

<h3>考えと、送り出すもの①</h3>

みんなでそれぞれ発表する日になった。

まず、最初に言うことになったのはみおさんだった。

「私の考えは、世界は可愛いもので一杯ってことです!

朝の空の美しい青い色、夜のお星様や、月は静かで綺麗…!!」

補足として、彼女は「つまり、まとめると可愛いものしか勝たんってことです!」と笑顔で言う。

次はシソウくんが発表した。

「色々、考えは浮かんでる。創作という思想についてじゃないけど、これから話そうと思ってます。」

「僕の思想。それは、人間が得たものを、そのままにしておけない生き物だと言うことです。」

そのネガティブさから彼の話ははじまった。

「記憶も、時間とともに消えていきます。道具も使えば使う程、壊れていく。

人間関係もそうでしょう。」

「だからこそ、普段から大切にいきたいと思っています。」

「本当の意味で大切に大切に考えたことなら、きっと、いつまでもともにあることでしょう。

僕はそう思ってます。」

彼は「ここまでで僕の思想は終わりです」と。

その後、ねおくんや、いけめんくんが話した。

ねおくんは、意外なことを話す

「今まで、僕は無理してでも頑張ることが、素晴らしいことだと思っていた。」

「だけど、できない時はできないし、人に無理をさせて頑張らせてもいい方向には行かないだろうと思う。」

「だが、この根性という考えを捨てるつもりはない。」

「できる時に、この根性を発揮させること。それこそが、俺の今の根性論だ。」

そして、彼は今日で、この部活を辞めると言った。

多分、何か彼の中で、求めてるものが得られたのかもしれない。

そして、次にいけめんくんは、自分がカッコイイこと意外にも少し驚くことを言った。

それは、姉が居ること。

うっかりしたように、彼は口を手で覆った。

続いて、ふらさんが、「名字は、でき だったよね?」と。

すると、いけめんくんは、「そ、そんな訳ないじゃん。」と慌てた。

しかし、そうだったとしても、同じ学校にその名字の人は居なかった気がする。

それから、なんだかんだあって次に行った。

「私は特に…」

しずくさんは困っている。

すると、後に続いて、みちかさんが「私も特にありません」と言った。  

すると、きせきさんも「私もやっぱりないかな!」と。

更に、トモさんも「私も…」と言いかけた。

シソウくんが「僕は考えとてもいいと思う。」

「この機会じゃないと、もう僕以外に話せないかもしれない」と。

「えっと…私はあるかも」と言った。

ところで、きせきさんが、すすむくんの方を見て「話したいことがあります。」と笑顔で言う。

「何かな?」

「ここでは話せません。人のあまり居ないところで!」

きせきさんはいつもとは少し雰囲気が違う気がした。

戻るが、みちかさんは、相変わらず優しかった。

彼女の考えは、確か…優しさ。  

そうか…。僕は心の中で思った。

ところで、次は、トモさんが言うことに。

「私の思想は…。前にも言ったかもしれないけど、馴れ合い。」

「悪い意味とも聞いたけど、仲良くするのってお互い嬉しくなるから…!」

「もちろん、悪い関わり方もあると思う…だけど、私は、この思想学部で見たの。」

「仲のいい瞬間、みんな認めたり、仲のいい瞬間。私はこれが大事なんだって思う…」

すると、シソウくんも出てきて「皆さんありがとうございます。僕も、思想学部に入って沢山のことをもらい、得てきました。」と言った。

「この部活に入って良かったと思ってます。まだ半年いれますが、この機会だからこそ、いっておこうと思って」

「少ししておとずれる試合、皆さんの勇姿を見守ってます!」

僕は心の中で、もう半年経つのか…と思った。

2年生も色々あったな…。

3年生も何かあるのかな?

ふと、唯一の3年生の人が頭に浮かんだ。

そういえば、試合に来てなかったな…。

彼女の方を見ると、落ち着いていた。

そのままじーっと見てると、その場を立ち上がる。

すすむくんはたずねる「次しますか?」

「私の思想については言わないけど、試合あるのよね。しかも決勝!」

「あります!」

「私、出る!しかも1番最初!」

「了解です!」

そんな感じで、出ることが決まった。

「ふふふ!部長の力を見せてあげる!」

とても自信げに笑う。

「ところで、続きしちゃいましょ!」

残ってるのは、3人くらいかな。

僕はキョロキョロと周りを見る。

「次は僕が…」

と言いかけた瞬間、ふらさんが「私が言います!」と言った。

彼女は振り返って「先輩、すみません!私が言いたいです!」と笑って言った。

「大丈夫!行ってきて!」

「ありがとうございます!」

彼女はふらふらとみんなの前に出ていく───────

<h3>考えと、送り出すもの②</h3>

「私は…!しずく先輩達と同じで、思想はないです。」

「だけど…。大切な人や、強い目標がある人。その背中をそっと押してあげたい」

彼女はみおさんの方を見た。

みおさんも彼女の方を見つめる。

「それがふらちゃんの可愛くて特別なもの!」

「うんっ!ありがとう!」

ふらさんはみんなの方を向いて続けた。

「話は変わりますが、私は試合には出ません。みんなを見てたい。」

「そして…大丈夫なら…」

「みおちゃんをかわりに出してください!」

すすむくんは「みおさんが大丈夫なら…」と。

「出たいです!」笑顔でそう言った。

「分かった!」

それから、僕とすすむくんも、みんなの前で発表して、その日は終わった。

印象に残ったのが1つ。

離れたところで聞いていた先生が、「皆さん、それぞれ色々な考えがあって、素晴らしいと思います」と笑って言った。

そんな時に、すすむくんは言う。「先生ももし、考えが思いついたら、言ってください。」

「僕はどんな考えでも受け止めます。」

「思いついたらね。」

そうだよ…いくつになっても、新しくいい考えを…。


それから時は経ち、前日になった。

遂に明日は試合。

練習するのかと思いきや、きせきさんが言った。

「今日は私の友達が、みんなに用があるみたいで!」

みちかさんも一緒に「そうみたいです!少し前に、メッセージをもらいました!」と言って微笑む。

みんなで一緒にきせきさんの後をついて行った。

そういえば、前のすすむくんに用があるって件はなんだったんだろうか…?

考えてるうちに、到着した。

ここは…音楽室?

中には、1人の女の子がピアノの前に座っていた。

よく見てみると、彼女はおとねさんだった。

「みんな久しぶり!」そう言って笑う。

僕は心の中で元気そうで良かったと思った。

すすむくんが「おとねさん、何の用なの?」とたずねる。

「実は…!みんなに私のピアノ…きいてほしくて!」

すすむくんは彼女に歩み寄って言った。

「僕はいいよ。とても楽しみ。」

「ありがとう!」

他のメンバーも全員いいと言ってくれる。

おとねさんはとても嬉しそうに「みんなありがとう」と微笑む。

「童謡のピカピカムーンをひきます!」

みんなにお辞儀した。

そして、彼女が、ピアノに触れた時。

のみこまれるように、彼女の音楽に没頭した。

そのピアノは、夜を連想させた。

暗闇の中、何よりも光って咲く花。

それが月だった。

とても綺麗で、とても綺麗で、いつもそこにあるから、いつの間にか忘れてしまってる。

だけど、変わらずそこにあるのが月だった。

────────

彼女は弾き終わって「きいてくれてありがとう」と微笑んだ。

そのピアノはとても上手だった。

すすむくんは拍手して、「ありがとう、とてもいい曲だった。」と笑う。

「ありがとう!」おとねさんはもう一度そう言って笑った。

「聞いたの!明日、決勝戦があるんでしょ!」

「うん。みんなのおかげで決勝までこれた。」

「わぁ!凄い!」

「私…。お兄ちゃんや、色々な人に支えられて、また弾くようになったんだ。

沢山ね。」

「だから…。私も、みんなが、頑張ろうと思ってることとか背中を押したいなって」

「とても良かったよ!」

しずくさんはそう言って微笑む。

「これなら、明日は大丈夫ですね!」

みおさんも微笑んだ。

おとねさんは「キセキちゃん…」と言いかける。

その方を見てみると、彼女はボーッとしていた。

「キセキちゃん、どうしたの?」

「あっ…ごめん。キセキちゃんの音楽に没頭しちゃってた。とても良かったから」

「わあー!嬉しい!」

「良かった!」

そう言った後彼女は続ける。

「ごめんね。ちょっと抜ける!」

「大丈夫だよ!」

おとねさんは微笑む。

「ありがとう!」

そう言った後、すすむくんの方を向いた。

「あの…用があります。」

「何?」

相変わらず、ここでは…と言うことなので、2人はどこかへと行った。

前のこともあって気になるが…そっとしておいたほうがいいだろう。

───────


「用って何?」

「実は…。

前に言ったこと覚えてますか?」

「うん。最後にあたるリベシン高校。そこに、キセキさんが知ってる人が居るってこと?」

「はい。彼とあった時、懐かしいなって感覚があって…。」

「でも、さっき、おとねさんの音楽を聴いて記憶が戻りました。」

「それは良かった!」

「ありがとうございます!」

きせきは続けた。

「お願いがあるんです…」

きせきは真剣な目で、すすむを見つめる。

「なんでも言って欲しい」

「ゆめりちゃんを助けてください!」

その後、きせきの言葉にただ、すすむは耳を傾けた───────

<h3>試合3①</h3>

そして、当日になった。

ついにこの日が来た…。

相手はリベシン高校。

風の噂では、準決勝にあたった剣鋭高校に、部長が1人で全員を倒したらしい。

一度したことがあるから分かる…。彼らを1人でなんて…。


始まる前、すすむくんの元に、ひていくんがやってくる。

「1年前、俺が聞いた事覚えてるか?」

「うん、覚えてるよ。」

「その返答を貰おうか。」

「夢、それはどんなものでも叶う。夢の中であれば…」

「は?何言ってんの。」

「やっぱり、すすむはこんなしょうもないやつだったってことか。

前やったように、今回も完膚なきまでにやってやるよ」

「今回は大丈夫だよ。」

「何故、そう言える?」

「僕はいつまでだって、肯定するから。なぜなら…僕は理想主義を超えた、夢想主義者だから。」

ひていくんはすこし黙って言った。

「試合の時覚えてろよ。」

「うん、待ってる。」

僕は心の中で思う。

ひていくんも居た…。一応、前にすすむくんに勝ってる。

ただ、今、気になるのは…。

僕はすすむくんの元へ。

「いつものすすむくんだね。」

「そうかな?ありがとう。」

「ところで、さっきの夢って言うのは?」

「あぁ。シソウくんが言ってたんだ。夢は叶えなくてもいいって。」

「どうして?」

「どうしても叶わない夢があるし、想像したりする方が楽しいからって。」

「だけど、僕は叶えられるなら、叶ってもいいと思うんだ…。」

「そうなんだ。」


リベシンでのこと。

部長は、副部長の元へ行った。

「なえさん、最近、元気ないけど大丈夫か?」

「もちろんです!部長!」

「無理はするなよ。」

「お気遣いありがとうございます!最初、頑張ります!」

そして、部長が去った後。

副部長は心の中で思う。

顔に出てたかな…。嘘だと分かってるのに、ひていが言ったあのことをまだ考えてる…。


それから時間が経ち、試合が始まる頃に。

リベシン高校は出る人が決まって居たが、こっちは、少し困っていた。

僕はすすむくんに聞く「あさかさんは…?確か、最初に出るのって」

「うん。だけど、見た感じだと居ないね。他の人が出ることになるかな?」

丁度、その時、「またせたね!」と言って朝花さんが到着した。

すすむくんは「良かった!」と。

「ヒロインは遅れてやってくるの!私が1番最初よね?」

「はい!そうです!」

「相手の子は…?女の子みたい。」

その後、行ってくると一言残し、試合をする人の前へと向かっていった。

「私は朝花、思想学部の部長をしてるの。あなたは?」

「部長…?」

少し疑問に思いながら、彼女は続けて言った。

「私は出来菜衣。副部長をしてます。」

「副部長?じゃあ、私の勝ちね。」

「どういう意味?」

「私の方が偉いから!」

とても誇らしげにドヤ顔する。

「そう試合じゃない。とにかく、はじめましょうか。」

「仕方ないわね。」

なえは言った。「私から言いましょう。私の思想は、あなたの思想の逆です。

つまり、ひていすること。」

「ふーん、そうなんだ。じゃあ、次は私の番ね。」

「言わなくて大丈夫です。あなたの思想は分かってますから」

「?」

「あなたの思想は偉い人になりたいということ。理由までは分かりません。」

なえは話を続けた。

「もしかしたら、なりたいって言う理由も特にないですよね?

何度も何度も懲りずに生徒会長や、学級委員になろうとしてダメだったですもんね…」

「何故、それを知ってるの?」

「人から聞いたんです。はっきり言いますね。

あなたには向いてない。だって、人のことを気遣うことができないんですもの…。」

「私の部長は人のことをおもえるひとです…。とてもお優しくて…。

あの人のお傍でそれをいつも感じてます。」

なえは心の中で思った。
そう…そんな部長が騙す訳ない。

そして、笑って言った。

「あなたが部長では、部活が崩れていくだけですよ。思想学部を辞めることをオススメします。」

朝花さんは黙っていた。言い過ぎな気がする…。

僕は心の中で思った。

彼女は大丈夫だろうか…?

すると、直後、彼女は言った。

「丁度、辞めようと思ってたから…。もう負けでいいよ…。」

彼女から元気が無くなっている。

そして、対戦は終わったのだった。

すすむくんは彼女を出迎える。

「頑張りましたね」

「頑張った…?私は何も喋らなかったよ。」

「苦しい状況で、冷静でいられるってこと。流石、思想学部の部長!」

「あの…。ごめんね…。勝手に、自分が部長だなんて言って…」

「構わないです!誰がなっても自由。

僕はそう思うから…」

「逆に部長になってくれてありがとうございます。」

朝花は呟いた。

「もしかしたら、向いてるのかもね。」

「何でしょう?」

すすむくんがそうたずねると、「なんでもない。」と小さく首を振る。

「試合、頑張ってね」
 
「はい!」
───────

<h3>試合3②</h3>

「次は私がいきます!」

そう言ったのは、みおさんだった。

すすむくんは「分かった」と言って見送る。

リベシンでは、かめんを被ったはみさんが部長の人と話していた。

「次、あの子がするみたいですね。」

「あぁ、そうみたいだな。」

「次、私が言ってもいいですか?」

笑顔でたずねる。

「もちろん。順番的にもな。」

すると、副部長の人が彼女の前にやってきて言った。

「頑張ってね。」

「うん。」

それから、みおさんと、はみさんは向かい合った。

「試合をするのは、ペルソナノングラータさんとだったんだ!よろしくお願いします!」

みおさんは嬉しそうに言った。

「はい。よろしくお願いします!」

「試合をする前に、1つ言っておきたいことがあるんです。」

「何でしょう?」

彼女は仮面をはずす。

「あなたは…!?」

「久しぶり!」

「お姉ちゃん!会いたかった!」

はみさんは小さな声で「みおちゃんは相変わらずだね」と。

「色々あるかもしれないけど、試合をはじめましょう。」

「それがいいかもですね!お姉ちゃんの美しくて可愛い考え、久しぶりに聞きたい!」

それから、試合が始まった。

最初はみおさんから言うことになる。

「私の考えは、美しいもの、可愛いものが一杯になったら幸せだと思うの!

可愛いもの、美しいものしか勝たん!」

言い終えたみおさんは、はみさんを見て「次はお姉ちゃんの番!楽しみ!」と笑った。

「私の考えは…。あなたの考えの否定。」

みおさんは驚いていた。

「お姉ちゃん自分の考えがあるでしょ…?前に教えてくれた…。」

「最近は、みんなの否定を見てますから」はみさんはそう言って、笑顔でみおさんを見つめる。

「それでもいいよ!」

反応に驚いたのか首をかしげる

「どうして?」

「私の考えで、みんなを幸せに、この世界を沢山幸せにするから!」

「ふふふ。じゃあ、まず、あなたの考えの説明をお願いできるかな?」

「分かりました!みんなが、お花や、ぬいぐるみさんとか可愛いもので一杯になったら、とっても幸せになれると思うの!」

「だからこそ、可愛いもの、美しいものしか勝たん!」

「そう…。だけど、ぬいぐるみが苦手な人はどうなの?

あなたが言う可愛いもので、本当にみんなが幸せになるの?」

みおさんは目をうるうるさせた。

「そうかもしれないけど…

みんな、それぞれ、美しくて、可愛いもの持ってるから…」

「私はこの考えいいと思うの!」

「そうなんだ。でも、悲しいんでしょ?自分の考えに囚われる必要なんてないと思うの。」

「だから、今、ここで考えを捨ててもいいのよ。みおちゃん。」

「ううん。私、頑張るから…。」

それからも、みおさんは自分の考えをはみさんに言う。

だが、はみさんはその否定をして話が続いた。

どちらも折れない。

長く続きそうと思われたその中で、決着したのはすぐだった。

みおさんが泣き出してしまった。

自分が考えてきたこと、それを否定されたのは、とても辛いこと。

最後に、はみさんは「あなたはどんな時でもポジティブね。」

「泣くのって、ネガティブだと思われがちだけど、私はポジティブだからこそ泣くのだと思う。」そう言い残して戻って行った。

それから、泣いているみおさんの元に駆け寄ったのは、しずくさんだった。

そっと、背中をさすって、なぐさめている。

しずくさんも2年生になったんだな…お姉さんになったんだな。と心の中で思った。

しかし、よく見てみると、しずくさんも一緒に泣いていた。


色々あったが、2vs0で負けてる。次で決まってしまうのだろうか…。

すすむくんを見ると、次に行く人を言っていた。

だが、行きたい人が居なさそうだったので、すすむくんは「僕が次に…」と言いかける。

すると、「私が行きます!」と出てきた。

みちかさんだ。


リベシンでは、こちらの様子を見て、「次どうする?」と話している。

「俺が行ってもいいぜ。すすむとやりたかったけどな。」

「いいや、次に行くのは決まってる。」

「おい。色々あったが、俺もみらいみの一人なんだよな。」

「それなら、俺が次に行ってもいいだろ?」

「俺がこの部活の部長だ。」

ひていはじっとみられ、目をそらした。

「わかりましたよ…。でも、回ってきたら、すすむとやらせてください。」

「しかし、次にするのって誰ですか?俺と部長しか…」

「いいや、居る。」

部長は女の子の前へ行った。

その人は、じっと単語帳を繰り返しみている。

マネージャーのあゆみさんだった。

「次、行けるか?」

「はい。」

あゆみさんはそれ以上は何も語らず、みちかさんの前へと向かった

────────