<h3>友達の家に</h3>
今日はみちかちゃんと待ち合わせ!
友達の家に行くんだって!
とっても楽しみ!
しずくはスキップをしながら、待ち合わせ場所へ向かった。
しずくは、はやめに出たつもりだったが、みちかはもうすでについていた。
「わー!みちかちゃんはやい!」
「ついさっきついたんだ!」
みちかはそう言って笑う。
「もうその友達の家に行く?」
「ううん。もう1人誘ってるんだ!」
すると、「お待たせしました!」とふらふらと誰かがやってくる。
「ふらちゃん!」
「しずく先輩!」
「人が多いと楽しいよね!」
「ですね!」
それから3人は、あゆみの家に向かった。
インターホンをならすと、あゆみのお母さんが出てくる。
3人を見て嬉しそうに「まぁ。」と言う。
「あゆみを呼んできますね。」
少し時間が経って、あゆみが1人で出てきた。
「あ…。」そう呟いて、ドアを閉めようとする。
「あゆみちゃん、遊びに来たよ!」
すると、あゆみは言った。
「帰って。これから1人で勉強しようと思ってるから。」
「え…!?」
みちかさんは驚く。
「なんてね!嘘だよ!」
あゆみさんはドアを開いて、みんなを歓迎した。
「驚いたよ…!」
みちかさんはホッとする。
「ちょっと意地悪したくなったの!」
「あゆみちゃん…。」
「ふふ。ごめんね!」
「2人も、来てくれてありがとう!今日は一杯遊ぼうね!」
あゆみは少し前より、とても元気になっていた。
今日は2人の空白を埋める1日。
あゆみはそう思っていたのだった。
部屋につく。
「みんな、まずは何する?」
みんな少し考えたけれど、思いつかなかった。
「じゃあ、お話しよっか!」
あゆみは「いいですね!」と微笑む。
「私が居ない間、何かあった?」
「特に…。あゆみちゃんは?」
「私も…。勉強したり、1人で何かをすることが多かったよ。」
「あ!そうだ。部活に入ったことかな…。」
「思想学部?」
「うん!だけど、もう辞めちゃったけどね。」
「どうして?」
「みちかちゃんのこと、忘れるためだったんだ。だけど、今、こうして一緒に居られるのもいいなって!」
「私も、あゆみちゃんと一緒に居られて嬉しいな!」
それから2人はしずくと、ふらが居ることを忘れ楽しくお話していた。
しずくは「2人とも、楽しそうで、なんだか嬉しいな!」と笑う。
「ですね!しずく先輩、良ければ少しでかけませんか?」
「うん、いいよー!2人の楽しそうなところ、邪魔しちゃ悪いよね!」
「ありがとうございます!」
「楽しいな…」
「あゆみちゃんどうしたの?」
「今までね…一人ぼっちだったから…友達と遊ぶ時間が幸せって。」
「うん!私も幸せっ!」
「ありがとう!」
「でもね…」
みちかさんは首を傾げる。
「実は少し前に友達ができたんだ。」
「そうだったんだ!」
「ごめんね…」
「ううん。友達に友達ができるのは嬉しいよ!」
丁度、その時、チャイムがなった。
「そろそろ来たかな…?」
「どなた?」
「その友達!私も誘ったんだ。」
「お待たせしました!」
うみが2人のもとへとやってきた。
「試合に居た人ですね」
「うん。この子はね、私が困ってる時に、相談にのってくれたんだ。」
「とても優しくていい人なの。」
「そうだったんですね!あゆみちゃんをありがとうございます!」
「みちかちゃん、なんでちょっと保護者みたいな感じなの~!」
「そうだったかな?」
うみはその様子を笑顔で見る。
「あゆみちゃん、私の事、そう思っててくれたんですね!ありがとうございます!」
「こちらこそ!助けられたんだ…ありがとう!」
「近くのお店で、美味しそうなデザートあったね!」
「はい!行ってよかったですね!」
「みんな喜ぶかな!」
到着すると、「おかえりなさい!」と、あゆみがむかえた。
「デザート買ってきたんだ!ありがとう。」
「うん。みんなでわけて食べよう!」
ふらは少しドキッとしていた。
「あの…!もう1人来てるんですね。」
「うん!私の友達の、うみちゃんが来てるよ!」
「うみちゃん…?」
部屋に行くと、「あなたは…」とふらが呟く。
「どうかしたの?」
心配そうにしずくが見つめる。
ハッと思い出して、振り返って言った。
「そういえば…。あなたは、みおちゃんと…」
「みおちゃん?」
「うみさんと、少し話がしたいです!」
「いいですよ!」
「皆さんはどうぞ、食べててください!」
「なんですか?」
「中学校の時、みおちゃんと仲良くしてて」
「そうだったんですね。」
「よく、うみさんの話が出てました。とても優しいお姉ちゃんだって。」
「みおちゃん…」
「大切な友達だから…。あなたのおもいが知りたい…。
今、みおちゃんのこと、どうおもってるんですか…?」
「分からない…。でも、もう仲良くできないと思ってるよ…。」
「私の気持ち的にも、みおちゃんの気持ち的にも…」
「そうですか…。」
「うん。なんだか、ごめんね。」
「いいえ、大丈夫です!こちらこそ、急に聞いてしまってごめんなさい。」
「ううん。私もみおちゃんおもいな友達が居て嬉しいんだ。」
「ありがとう。これからも、みおちゃんの友達で居てあげてね。」
それから2人は部屋に戻る。
デザートのチョコのケーキが4つしか無かったので、一つだけしか残って無かった。
なので、うみとふらは一緒にわけて食べたのだった────────
<h3>お祭り</h3>
今日は、祭りがある日だ。
去年は1人の時間を満喫したくて、行かなかったので、今日はと考えた。
あたりを見て思う。
「やっぱり、人が多い。」
これだけ居れば、知ってる人とも会いそうだ。
早速、前から、誰かがやってくる。
「あなたは…。思想学部の…」
相手は、最近、生徒会長になった女子だった。
「にわのさん…?1人で祭りですか?」
「えぇ。そうよ。あなたも部活の人とは来てないの?」
「はい。約束もしてないので」
「そう。」
「あの…!」
「はい?」
「少し前の、試合見てたの。凄かった。」
「ありがとうございます!」
「またね!」
そのまま、にわのさんは歩いて行った。
今日は、色んな人に会いそうだ。
にわのがそのまま歩いていると、知ってる後ろ姿があった。
誰かと並んで歩いてる。
それよりも、あれは確か…。
にわのはそっと、ついていった。
すると、後ろ姿のその人は、そっと後ろを向く。
心の中で思った。あれはすいぞうくん…。
人が多くて、彼のところに行けなかった。
少し人だかりからはずれて休んでいた。
すると、1人の男が、彼女に近づいていく。
「にわのじゃないか。」
「すいぞうくん…?」
「あぁ、久しぶりだな。」
「ビックリしたよ。先生と問題があったって聞いて…。」
「それか。わざとやったんだよ、俺が。」
「どうして?」
「仲間のために動くって、俺は何度も言っただろ?」
「仲間?」
「あぁ。俺の仲間は、あの学校にはない。転校したんだ。」
「もう、お前とは会うことはないだろうな。」
「分からないことばっかり…。」
「分からないままでいい。」
「本当に相応しかったのは誰か、これから分かるだろうからな。ダメな生徒会長。」
「私は…あなたみたいに、誰か特定の人物を優遇したりしない。」
「学校のみんな、平等にいい学校生活がおくれるようにって…」
私はついついかっとなってしまった。
「怒るなんて意外だな。いつも暗そうなのになあ。」
「あなたの方こそ、少し口が悪いんじゃないの?」
「はは。ぜんほうの未来は暗いな。」
「じゃあな。」
そのまま、すいぞうはいってしまう。
残ったにわのは、悲しそうに下を向いていた。
だが、少しして「いけない!せっかくのお祭りだから楽しまなきゃね。」 と立ち上がった。
──────
僕が歩いていると、女性の声が聞こえてくる。
「人形すくいないかなー?」
声の主は、おとねさんだった。
同じ部活の人と楽しそうに歩いてる。
「人形すくいって…普通にできないんじゃない?」
「できるよー!」
「どうやってするの?」
「まず、ポイを持って、好きな人形を見つけてその上に…。」
「あ!見つけた!」
おとねさんはその方向へ走っていく。
それを聞いて、本当か!?と驚いて見てみた。
本当にそれが行われてる店があった。
「あ!あいだ先輩!」
「ふらさん!どうしてここに?」
「みおちゃんに頼まれて!楽しくやってます!」
「でも、まだ、1人もすくえてないんですけどね…」
心の中で思う。それはそうだろう。
「みおさんは?」
「隣の店で、ぬいぐるみ型抜きの店をしてます!」
「型抜き綺麗にできたら、ぬいぐるみが貰えるんです。失敗しても貰えるんですけど…」
「そうだったんだ。」
おとねさんも早速、チャレンジしていた。
「布教みたいな感じですね。」
でも、みんな楽しそうだ。
僕はなんだかそれが嬉しかった。
ところで、今日は、すすむくんを見ていない。
来てないのかな…?
───────
すすむとしずくは2人きりで、暗い夜過ごしていた。
「すすむくん、どうしたの…?」
「話があって…」
「他の人が居ないとダメなの?」
「うん。」
「実は、3年生になったら、大事な話があるんだ。」
「今じゃなくて?」
「うん。」
「そっか!ビックリした!」
「今日は、お祭りを楽しもう!」
「うんっ!」
それから、半年近くの時が経った────────
<h3>創作という名の思想</h3>
あれから、時が経った。
もうそろそろ、帰らなければいけない。
自分はここに来て何か変わったことはあるのだろうか?
何かが大きく変わった気はしていない。
しかし、逆に、恋しい場所になったとは言える。
今日も、机に向かい、創作をはじめた。
極端であることは、悪いこととされる。
なのに、世界には、極端なものが多く存在する。
簡単なところで言えば能力。
勉強がよくできる人もいれば、できない人もいる。
運動ができる人もいれば、できない人もいるだろう。
特に、そのよくできるという偏ったものに対し、人は賞賛する。
説明でも同じようなことがあるのだ。
分かりやすい説明、難しい説明、普通の説明。
もし、極端が悪いとするならば、普通の説明がいいことになるだろう。
しかし、普通の説明では、人は理解しにくい。
例えば、平均点をとった人がいるとして、その人のことを凄いと思えるのだろうか?
それは当たり前であり、賞賛の対象にはなりにくい。
何か能力が優れていたり、欠けていたりすればそれについて言える。
平均であるのならば、それがほとんどない。
つまり、普通である程、分かりづらく、極端である方が分かりやすいのである。
しかし、普通であることは悪いことなのか?
それはまた違う話である。
極端であることのデメリットとして、好き嫌いが分かりやすくなってしまうこと。
人間にマイナスの影響を強く与えてしまうもの。それが偏りだ。
どれだけ優れていても、偏りを許容し続ければ、その偏りによって押しつぶされてしまう。
そこで、中庸という考え方が大事になってくる。
そのまま、僕はかき続けた。
そして、顔をあげて気付いた。
この考えは、自分の考えではない。
近くに居る人の影響を受けた考えだった。
そして、思う。
自分の考えとは、本当に自分のものなのか…?
ただ、噂によって、作られた模倣品こそ、それらであるのならば、今まで考えてきたことは何でもなくなってしまう。
偶然が、他のものと一致することもある。
それらは考えたくないことだ。
僕はまた創作に浸った。
今日が、本当に最後の日になるかもしれないと…心の中で思っているのかもしれない。
ただ、目の前にある、無限の世界が僕を呼んでるような気がした。
───────
一人の男の子が居た。
とても寂しそうに座ってる。
世界はとても黒く包まれていた。
そこに何かがやってくる。
「少年、どうしたんだ?」
「ぼく、怖いんだ。」
「何が?」
「僕は一人ぼっち…悲しくて、寂しくて。ずっとこのままなんじゃないかって…」
「寂しいことが悲しいのか。」
「それだけじゃないんだよ。」
「他に何がある?」
「人の真似してしまうこと。自分を頑張ろうと思っても、いつの間にか、誰かと一緒のことしちゃうんだ。」
「顔をあげて。」
その声につられて、男の子は顔を上げた。
「カラス…?」
「あぁ。俺はカラスだ。」
「どうして話してるの?」
「カラスは話してはいけないのか?」
「そんなことは無いけど…」
少年があたりを見ると、とても暗かった。
「世界は真っ暗だね…。」
「そうか?俺には明るく見える。」
「カラスだからじゃない…?」
「そうかもな。」
「少年、これをあげよう。」
カラスの羽の中から、一つの白い鉛筆が出てくる。
「これは何?」
「ペンだ。」
「どうするの?」
「これを使って書くんだよ」
「どこに…?」
「少年が思うところに」
「分かった…」
少年は目の前をその鉛筆で塗った。
すると、世界が白くなる。
「これどういうこと?」
近くに居たカラスは白くなっていた。
「君は誰?」
「私はハクチョウ。」
「さっきのカラスは?」
「分かりません。元から居なかったんじゃないですか?」
「そうなのかな…。」
少年の手には、黒い鉛筆が握られている。
白鳥は言った。
「物語好きですか?」
「誰かと比べなければ…。」
「どうして比べるのが嫌なの?」
「だって…。僕も物語を書くのをよくするから…。」
「そうなんですか…。もう1つ質問があります。」
「何?」
「あなたは、物語を作って、楽しいと思ったことはありますか?」
「あるよ…。」
「そう。なら、あなたはこれからも作っていってください。」
「きっと、またその楽しい時はあなたにおとずれます。」
「うん!ありがとう!」
少年のいる世界はとても明るくなった。
────────
そうだよ。僕はただ、楽しいから想像して、書いてるんだ。
たまに辛くて、申し訳ない気持ちになったりもする。
だけど、楽しかった記憶が残ってるんだよ。
誰かに都合のいい世界って言われても、本当に自分のことが分かるのって自分だけだから…。
昔の楽しかった記憶、それと一緒にこれからも歩いていきたいんだ。
楽しい瞬間が全くない創作は作ってる意味が無い。
だけど、僕にはある。だからこそ、僕は歩いていきたいんだ。
道のない先の世界を────────
<h3>母国</h3>
「シソウ、今日で最後だね。」
「うん。」
「これから…」
トモさんはそう言いかけた。
今まで、色々創作を言って、それを受け入れてくれた思想学部の人。
そして、この環境としばし別れなければいけない。
僕は折角なので、誰かに、自分の考えを話そうと思った。
相手の考えも聞きたかったから。
「ぶんたさん!」
「こんにちは!シソウくん。
やっぱり、少し下で呼ばれるの慣れないな…。」
「そうなんですね。」
「今日はどうしたんですか?」
「話したいことがあって!」
「よく言ってる創作かな?聞きたいです!」
「苦しい時とか、現実に悲観してる時しか、人間は創造的なアイディアは浮かばないと思うんです。」
創作の中に登場する、偉大な人物達がそうだったから。僕はとてもその考えに自信があった。
ぶんたさんは考えながら言う。
「そうかな…?楽しいことが続いてる時でも、アイディアは浮かんでいいと思うよ。」
心の中で驚いた。
「だけど、上手くいってる時程、そのいいところばかり考えて、中々、今を変えたいとは思わないと思うんです。」
だけど、ぶんたさんは理解してくれない。いつもだったら…。
次に、すすむさんの会った。
今度こそ!
そう思って僕は話しかけた。
「すすむさん!」
「どうしたの?」
「考えを言いたくて!」
「なんでも言って!」
「えっと!優しい人が傷付くとか聞きますが、僕はこう思うんですよ。」
「酷い人でも、傷付くことは沢山あるって!それが当たり前すぎて忘れてるだけで。」
「うん。」
「そして、本当に傷付くのは、優しい人か、酷い人とかは関係なくて。」
「何もない時に傷付くんだと思うんですよ。普通の時程、悲しみや、嬉しいことが舞い込みやすい!」
しかし、すすむさんも、ぶんたさんと同じ反応を見せる。
「そうかな…。僕は、嬉しい時に、嬉しいことがあってもいいと思うよ!」
その時、深く何も言わず、すすむさんともわかれた。
肯定してくれるって、心の中でどこか期待してたのに。
2人とも、肯定してくれなかった。思いついて、嬉しかったし、楽しかったのに。
この喜びを分かち合えると思ってたんだ。
だけど、そんなことはなかった。今までのことは嘘だったのか…。
少し寂しかった。だけど、このくらいが丁度いいのかもしれないとも思った。
逆に全く同じ考えを持ってる訳では無い。
それが分かった。
だが、寂しさはある。
すると、後ろから、すすむさんが追いかけてきた。
「違う意見を言ったけど、君の考えもいいと思うよ。」
「ありがとうございます。」
「もうそろそろ、帰るんでしょ?」
「はい…。帰りたくはないですけど…。」
「渡したいものがあるんだ。」
「なんですか?」
すすむさんは一冊の大きめの本を取り出した。
「これ。1年生の時、先輩に貰ったんだ。」
僕はそれを開いて思う。
「絵本…?」
「うん。前に、とても助けられた気がしたんだ。」
「それを、どうして僕に…?」
「今の自分にはもう大丈夫だと思って。だから、今、必要な人に渡したくて。」
「僕に必要…?」
「うん。君が本当に困った時、助けになるかもしれないから。」
「君は、きっと、何か凄い人になると思うんだ。」
僕はそっと、「ありがとうございます!」と言って、その絵本を貰う。
そういえば、これではないけど、絵本を見たことがあるかもしれない。
小さい頃、持ってきて見せてくれた。
原点か…。
その後、思想学部の人に、トモさんお別れを言った。
その時の、思想学部の人達は、いつものように優しかった。
帰路の途中、トモさんは言う。
「来てよかったね。」
「うん。」
僕の頭の中に、思想学部で過ごした日々が浮かんでくる。
創作も沢山した。
それは全部ノートに書いておいて、今は、殆ど忘れてしまったが、とても充実した日々だった。
もう一度、来れたらいいな。
自分にとってのサードプレイス、それが…
その時、ふと、リアルくんの顔が浮かんだ。
そういえば、1年くらいあってない。
彼は今、どうしてるんだろうか…
──────
最近、創作という言葉をめっきり効かなくなった。
この国はよりよくなっているのだろうか?
「兄さん!」
弟が彼の名を呼ぶ。
「少し聞きたいことがある」
「なに?」
「父さんの考えは正しかったのだろうか?」
「もちろん。正しい勉強を正しい方法で学んできた、正しいお父さんが間違えるはずないよ!」
「そうか…。」
ただ、男の頭の中に、誰かの顔が浮かんでいた。
そして呟く。
「シソウ…?」
───────
<h3>卒業式②</h3>
今日は3年生の卒業式。
去年と同じく、旅立つ人達を送り出す日。
「来年は僕らが、卒業する立場にあるんだな…」
すすむくんは答えた。
「そうだね。」
「すすむくんとも別れなきゃいけないのかな…。」
「それは大丈夫だと…」
すすむくんが言いかけた時、騒がしく誰かがやってくる。
「思想学部、久しぶりね!」
「朝花先輩!」
試合であったきり、そのままになっていた。
「元気にしてた?」
「はい!」
「それは良かった。最後だから、あいに来たんだ!」
彼女は相変わらず、とても元気そうだった。
すすむくんと少し話してて、途中、彼が切り出す。
「朝花さんの思想はなんですか?」
「え…?」
「聞いてないなって思って。」
「私はないって言ったよ。
でも…」
「教えようかな!私は女王様になりたいの!
思想というか、夢だけど!」
「いいと思いますよ!理由はどうしてなんですか?」
「なんでも思い通りになって、幸せだと思うから。」
「でも…。私がなりたかったのは、もっと違うものだったのかもね。」
「どういうことですか?」
「なんでもない!
じゃあね!もう二度とあわないかもしれないけど。」
「僕は、きっと、またいつか会えると思います。」
すすむくんは笑顔でまたねを言う。
──────
「先輩!」
「にわのさん。」
「今日が最後ですね…。」
「そうだね。」
「獅王先輩には、会長になってからも、沢山助けてもらいました…。」
「僕は何もしてないよ。」
「いえ…。私が困った時に…」
「もし、そうだったとしても、助けたかったから動いたんだ。自分がしたいから」
「にわのさんは何も考える必要はない。」
「先輩…!」
「これからもよろしくお願いします!」
「はい!」
「ところで、聞きたいことがあるんだ」
「何でしょう?」
「すいぞうくんは、今、どうしてる?」
「分かりません…」
「最近、見なくなったからな…。」
同時に、にわのさんはやらないといけないことがあると思った。
これから、最後までやり遂げること。そして…。
────────
それから、卒業式は何事もなく行われた。
すすむは家に帰る。
その途中、彼にはなんだか、わくやくした気持ちがあった。
にわのさんは少し学校にとどまっていた。
すると、そこに、2人の女子がやってくる。
「にわのさん久しぶり!」
そこに居たのは、ひなえだった。
「先輩!」
「最後なので、会いに来ました!」
「もう1人の方は…?」
「朝花さんって言います。実は、彼女が来たいって。」
「どうしてですか?」
「生徒会長だから!実は私も、生徒会長のようなものなんだ!」
「そうなんですか?」
とても嬉しそうに頷いた。
すかさず、ひなえが言う。
「違いますけど!実は、立候補してたんだ。」
「そうだったんですか。」
「うん。そうよ。
この学校を任せられる人かどうか、見に来たの!」
そして、にわのを朝花が見つめる。
「うん。あなたなら、任せられるかも!これからよろしくね!」
「ありがとうございます!」
「私もあります。元生徒会の人達と、私からです。」
「半年間、あなたの頑張りをみてました。困ってる人に寄り添って、助けたり、優しさを持って人と関われる。」
「あなたは、これからも、きっといいリーダーとして前に進めるでしょう。」
にわのは頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「本当は言うつもりは無かったんだけど、朝花さんが来たいって言うから言おうかなって。」
「みんな、あなたの頑張りをしっかり見てるよ。だからこそ、あなたなら任せられるって生徒会長になれたんだと思う。」
そう言い残すと、またねと帰っていった。
─────────
すすむは家に到着する。
1番最初にあったのは、お父さんだった。
「すすむ、試合で優勝した頃から、明るくなったな。」
そして、首をふる。
「いいや、最初からすすむは明るかったのかもしれない。誰に似たんだろうな」
「お母さんだと思うよ。」
「そうか」
すすむの父の頭の中に、1人の男の姿が浮かんだ。
「学校は楽しいか?」
「うん。楽しいよ。」
「そうか…」
「これからも、僕は前に進んでいく。」
すすむの目はとても希望にみちあふれていた。
それがとても眩しくて仕方なかった。
ただ、すすむの父は「頑張れよ。」と小さな声で言う。
すすむは「なんて言ったの?」と聞くと、「なんでもない」と首を降る。
すすむのもとを去って呟いた。
「らしくないことを言ったもんだ。」
そして、心の中で思う。そういえば、あの人といた時もそうだった。
自分はらしくないことばっかり…。
すすむはお母さんの元へ行く。
「おかえりなさい」
ただ、そう言って微笑んだのだった───────