思想学部28

<h3>新入部員!</h3>

「春になった。」

あたりは一面、花の色。思想学部は少し寂しくなったが、相変わらず楽しくやってる。

今年はどんな人が部活に来るかな。

歩いてると、すすむくんと、しずくさんを見かけた。

「昔、言ってた、大事な話って何かな?」

「うん…。今はまだ話せないな。」

「どんな事なの…?私、ずっと気になってて!」

「これから、楽しい日々をみんなで過ごすための構想かな。」

「わぁ!それいいね!

でも、今はダメなの…?」

「うん。ごめん。」


なんだか、大事な場面に居合わせてしまった気がする。

話ってなんだろう?

しかし…。未来のこと、考えてるんだな…。

僕も考えてない訳じゃないけど、しっかりとしたそれじゃない。

その時、寂しさもあり、嬉しさもあった。

数日して、以前と同じように、部員募集する。

今回は、あまり人は来なかった。

2人とも女の子。

最初の部活で、すすむくんは「自己紹介お願いします!」と言った。

片方の子が前に出てくる。

「私はれんか。楽な部活そうだったので、入部しました!」

結構ストレートに…。

「自己紹介はそれだけです。」

すると、すすむくんが「あと、思想も教えて欲しい!」と言った。

「思想ってなんですか?」

「例えば、人類の平和や、この世の全ての人を幸福にしたい。とか!」

「ようするに、夢ですね。

私はすき…」

「すき?」

すすむくんは首をかしげる

「すき…な本を書くことを頑張りたいってことです!」

「なるほど!いい目標だね!」

「これでいいですか?」

「うん、もちろん!」

それから、もう1人の女の子も出てきた。

「次、言いますね。」

その子を、ふらさんが見つめる。

そして、微笑んだ。すると、その子もふらさんを見つめて微笑む。

「私の名前は唯芽(ゆめ)です!思想は人が喜ぶのが嬉しいってことです!」

「ゆめさんの考えも、とてもいいと思う!2人とも、教えてくれてありがとう!」

なんだか、今回は呆気なく終わってしまった気がした。

少し寂しいな…。

すると、いきなり、できくんが前に出てきて言う。

「今回も、試合、決勝まで行こう!」

すすむくんはたずねる。

「どうしたの?」

できくんは「仕方ない…正直に言うよ。」と話した。

「実は、僕は、リベシン高校の、副部長、なえの弟なんだ。」

僕は心の中で驚いた。

「そうだったんだ!」

「だから、お姉ちゃんにこの学校の思想学部の情報を教えたりしてた。」

「だけど、もう、安心して欲しい。するつもりはないから。」

すると、すすむくんが「それなら良かったよ!」と笑う。

僕は心の中で、それでいいの…?と思う。

「ちなみに、理由はどうしてなの?」

「あぁ。お姉ちゃんに言われたんだ。もう情報、必要ないって。」

「じゃあ、何をすればいいんだって聞いたら、決勝まで上がってくればいいんじゃないって。」

自分のこと、かっこいいと言いながら。それが少し意外に感じた。

それから、できくんは呟く。

「昔、助けられ…」

「どうしたの?」

「なんでもない」

首をふって続ける。

「そういえば、僕の下の名前はしゅごだ。」

「しゅご?」

「うん。まもるしゅごだよ。好きに呼んでもらって構わない。」

「分かった。」

「早速、練習を…と言いたいところだけど、まず、決めておかないといけないことがある。」

「それは何?」

「現在の部長と、副部長。そして、次のその2つを。」

そうだった…。これから先、僕らは思想学部を…。

「うん!そうしよう!」

すすむくんは笑顔で言う。

「まずは、現在の思想学部の部長だけど…。」

「誰かやりたい人は…?」

みんなはジーッとすすむくんの方をみた。

僕は言う。

「僕は、ずっと、すすむくんが部長だと思ってたよ。だから、君でいいんじゃないかな?」

しゅごは「異議はないよ。」と続ける。

みんなも同じようなので、すすむくんは「分かった。」と言った。

「じゃあ、副部長は君だね」

すすむくんは僕の方を見て笑う。

「みんなが良ければ別にいいけど…!」

そうして、副部長になった。

今度は、次の部長、副部長を決めることに。

案外、すぐに決まるのかと思いきや、言い出したできくんは、部長、副部長にもならないと言った。

なんでも、自分はかっこいいから、忙しいんだと。

じゃあ、誰がなるのか…少しして、1年生で入ってきたゆめさんが「推薦してもいいですか?」とだすねる。

すすむくんは「いいよ!」と笑う。

「私は、ふらさんがいいと思います!」

ふらさんは驚いていたが、「居ないならなっても大丈夫です!」と言った。

「でも、部長は…。みおちゃんがいいなって!」

一旦、それで決まった。

────────

<h3>新しい始まり</h3>

僕は母国に到着した。

懐かしい地面、懐かしい景色が広がってる。

ただ、変わってしまった何かがそこにあった。

今日から、また、僕の新しい1日が始まる。

久しぶりに会った友達に話しかけた。

「シソウ、久しぶりだね。」

そう話しかける彼は、どこか元気が無かった。

「うん、久しぶり。」

「どうだった?」

「初終島のこと?」

「うん。」

「いいところだったよ。」

「そうなんだ。」

友達はそれ以上聞かない。

数日経って、それがはっきりした。

トモさんが僕のもとにやってくる。

「シソウ…。なんか、みんな暗いね…。」

「確かに。」

「なんでだろうね…」

「分からない。だけど、変わらなきゃいけない時が来てるんだと思うんだ。」

「シソウ…?」

トモさんはそう言って、シソウの顔を見る。

「理想のために…。」

────────

久しぶりにすすむくんとふたりで出かけた。

なんでも、話したいことがあるらしい。

僕が「なんの用?」とたずねると、彼は笑って言った。

「それがね、いろいろあるんだよ。」

「なんでも言って欲しい。僕は一応、副部長だし。君と友達だと思ってるから。」

「ありがとう。実は、最近、同級生が部に入りたいって言ってたんだ。」

「誰?」

「今の生徒会長。」

「え!?どうして?」

「やらないといけないことがあるんだって。」

「そうなんだ。」

「うん。」

「やらないといけないことってなんだろうね。」

「分からない。」

すると、前から「すすむはやらないといけないことがないから分からないだろうな」と声がした。

「君は…」

「久しぶりだな。」

そこに居たのはひてい。

「と言っても、すすむがこの時間に散歩するのは分かってたからな。」

「なんの用があって…?」

ぼくはすすむくんの前に立って言う。

「次回の試合のことだ。」

「試合!楽しみだね」

すすむくんは能天気だった。

「次回も確実に、すすむ達の学校が勝つだろうな。」

「どうしてそう言えるの?」

「俺が、リベシンを今支配してるからだ。」

「部長になったってこと?」

「いいや。俺は部活にも行ってない。」

「じゃあ、なんでそんなことが?」

「なんでだろうな。ただ、俺が知り始めてるからだろうな。」

そう言って笑った。

彼はそのまま去っていく。


僕とすすむくんは話した。

「今年は去年とは違った変化がありそうだね。」

「そうなのかな?僕には分からないけど。」

僕の心の中には、1つ、浮かんでいた。

始まりからそう。何かがこれから変わるかもしれない。

そんな予感がしてたんだ。

───────

「部長!」

「みんな、揃ったか?」

「まだ来てない人が…」

「確かに数人来てないな。まぁいい。」

「ここに居る3人、そして、うみは俺が特に信頼しているメンバー。」

「ありがとうございます!」

うみはそういい微笑む。

「今回はどんな相手にも勝てる。そう確信している。」

「ただ、今、俺は考えが変わった。自分の言ったことを覆すようになってしまうが。」

なえは笑顔で言った。

「私は大丈夫ですよ!部長の真っ直ぐ前を見る姿勢に…」
 
小さな声で「惚れたんです…」と。

他の2人も同調するように頷いた。

うみは言った。「私も大丈夫です!部長さんのこと、知りたいですし!」

「ありがとう。」

「肯定と否定、どちらが強いか。俺は否定だと思っていた。」

「しかし、どちらが強いと優劣はつけられなかった。本当に重要なのはそこではなかったんだ。」

「それはなんですか?」

うみは首をかしげる

「重要なのは、否定か肯定かと言うより、その考えの深さ。」

「肯定と否定はどちらか一方をなしにできるはずもなかったってことだ。」

すると、うみ以外の3人はそれに拍手をする。

「いい考えだと思います。」なえは嬉しそうに言う。

「なえちゃん達は、本当に部長さんが好きなんですね。」

「ありがとう。ただ、否定と言う考えを捨てるつもりはない。

否定優位か、肯定優位かそれだけのはなしだからな。」

「俺は相変わらず、否定と言う考えを深めていくことにしよう。」

丁度、そのとき、部室のドアが開く。

「ようやく来たか。」

そこには数人の影がある。

「これから、部活をはじめるとしよう。」

─────

<h3>信じること</h3>

一人の仮面を被った女の子が散歩していた。

こうして歩いていると、新しいことが知れる。

いつもと変わらない風景の中にも、たまに違った何かが見られるのです。

それは、誰かの昔にあった出来事だったり、今の気分だったり。

ちょっと違うだけでも、この風景はまったく違うものに変わってしまう。

一つ一つは、とても特別なものなのです。

そう考えると、女の子はとても嬉しくなった。

今日も、何か新しい景色が見れる。

そう思うと、胸がたかなるのでした。


前から、一人の少女が歩いてきます。

下を向いて悲しそうに。


仮面の女の子は話しかけます。

「何かあったの?」

女の子は顔を上げます。

そして、仮面の女の子を見ると、目をうるませました。

「何があったの?私で良ければ話を聞くよ。」

そして、近くにあった公園に行きました。

ベンチに座り、仮面の女の子はそっと、手を触ります。

「実はね…。不安なの…。」

「何が不安なの?」

「悲しいことが起こるんじゃないかって…」

「悲しいことは起こって欲しくないよね…。」

「うん…。一人の時は、仲良しの友達が事故になるんじゃないかって…。」

「逆に事故を起こしてしまって離れて行ってしまうんじゃないかって…」

「友達が離れて行ってしまうのが怖いの…?」

「うん…。少し前に、友達が事故にあってしまったんだ…。」

「とても悲しかった。もう起こって欲しくない…。」

「そう…。」

仮面の女の子は、少女の方を見た。すると、とても不安そうに俯いている。

仮面の女の子はそっと、彼女の肩を触った。

「きっと大丈夫だよ。」

「本当?」

「絶対にそうとは言えないけどね…。友達のことだから、信じてあげて欲しい。」

「もし、本当にあなたが、大切だと思うのなら…。心の中で、あなたならきっと大丈夫って。」

「お姉ちゃん…?」

「うん。私は友達のこと、大切な人のこと信じてる。それが友達って事でしょ!」

「うん…そうだよね!ありがとう、お姉ちゃん。」

少女は元気を取り戻した。

仮面の女の子は嬉しそうに、また散歩を続ける。


すると、偶然、知っている顔が前からやってきた。

その人は、仮面の女の子の前に立ち止まって、「久しぶりです!」と言う。

「あなたは確か…?」

「ふらです!」

それから、ふたりは、近くにあったベンチに座って話をした。

「よく仮面を被って、歩いてるんですか?」

「えぇ。仮面は色々な自分になれるから…。」

「その考えいいですね!みおちゃんが、うみさんのこと好きなのわかる気がします。」

「みおちゃんか…。」

「はい!クラス同じなので、話してる時に、たまにうみさんのこと出るんです。」

「そう…。まだ話してるんだ…。」

「その時のみおちゃん、とっても嬉しそうなんですよ!」

ふらは微笑む。

うみはただ、その様子を見ていた。

「あと!昔、みおちゃんが言ってたことなんですけど。」

「何かな?」

「いろいろ部って、もしかして、うみさんが入ってた部活ですか?」

「そうだけど…」

「やっぱり!良かった…!」

「いろいろ部なんですけど、私の後輩が、続けてくれてます。」

うみは思った。

いろいろ部…。私が名前に惹かれて入った部活。

多分、私が辞めたら、そんなに経たずに完全になくなるだろうな…って思ってた。

まだあったんだね。

「ありがとう。」

うみがそっとふらを見ると、じーっと海の方を笑顔で見てた。

「ふらさんって、みおちゃんに似てるね。」

「そうですかー?」

「うん。」

「もしかしたら、よく一緒にお話してたからかもですね!」

「でも、うみさんも似てるところあると思います!」

「そうかな?」

「はい!優しいところとか、笑顔が可愛いところとか!」

「とっても仲良かったんだな~って嬉しくて!」

「仲のいい人が、いい人と仲良くしてるのってとっても嬉しいです!」

「そうなんだ…。」

ふらは言った。「夢中になって話しすぎました!ごめんなさい!」

「大丈夫だよ!嬉しいから。」

「うみさん優しいです!」

────────

「またお話しましょう!」

うみは笑顔で手を振る。

「はい!また機会があったら!」

今日も色々な冒険があった。

昔の出会いであったり、弱さだったり…。

あなたは私の心と一緒に居るんだね。

うっすらと風が吹いて、葉っぱがとんでくる。

そしてそばにうずまいた。

それがなんだか、女の子のように見えた。

そっと、手に風があたる。

「一緒に行こう!」と言われてるようだった。

嬉しいけれど…。

私はあの子を信じてるから…今は考えないようにする。

今、それがお互いのためだと思うから…。

────────

<h3>アクション</h3>

僕は変わるために決意した。

あの場所で学んだこと。それは、何もせずに黙っていることじゃない。

世界の理想のため、全ての人間の幸福のため。

勿論、これが本当にそれのためになるのかは分からない。

しかし、みんなの顔を見て思ったんだ…。

ただ、こうして、考えてるばかりで行動できなかった事実がある…。

「シソウ、おはよう。」

挨拶の主は友達だった。

「おはよう。」

折角だから何かを…

「最近、勉強難しいよな。」

僕は心の中で思った。

確かに、1年離れてて、こんな感じだったかわかんなかったけど、大分難易度が上がってる気がする。

「でも、前からこんな感じだったかな。」

少し問題に思っただけで、彼はそれ以上は何も言わなかった。

僕は直感的に、それ以上を考えるという創造性を奪われたのだと思った。

「最近、小説や、漫画の類は見てる?」

僕がそう言った時、友達は冷たい目で僕を見る。

「よく人目を気にせず言えるよな。」

「どうして?僕は何も悪いことは言ってない。」

「その2つは禁止されてる。歴史などの、学問系の小説も最近までは良かったけど、もう…。」

「どうして…?」

「想像が入るから。想像でものを言うのは良くないことだ。」

1年前までは、僕の考えもいいって言ってくれた友達が…。

昔みたいに、明るい様子もない。

何か大切なものを失ってしまったような…。

「良ければ、学校終わったら遊びに来ない?」

何かを変えるため…思い切って彼に提案する。

「勉強会か?それならいいよ。」

「それとはちょっと違うけどね…。」

「まぁ、いいや。行くよ。」


ところで、僕が初終島に行く前、先生に少し目をつけられていた。

帰ってきたすぐの日も、「ちゃんと辞めてるか?」と厳しい目で見られている。

授業中もそう。先生は落書き、物語、授業とは違う創作の入ったものをしてないか見て回る。

もし、みつかったら、少年院おくりにされるのだろう。

いくらなんでも、これはやりすぎだ。

そう思いつつも、結局、僕には何の力もなかった。

創作にあることわざで言えば、ごまめの歯ぎしりや蟷螂の斧と言ったところだろう。

僕が何をしようとも…。

いいや、可能性はある。

近くには、リアルくんがいる。

この世界になってるのは、リアルくんの父が原因だ。

子供である彼が何かを言えば変わるかもしれない。

雀の千声だと言われても、彼であれば、鶴の一声と…。

この休み時間で、彼に直接…。

僕は勇気を振り絞り、自分の席から立ち上がる。

だが、彼とは一度も話したことがない。

関わり方を間違えれば、関係は修復できないかもしれない。

思えば僕は、彼のことを何もしらなかった。

昔友達から愚痴を聞かされたが、それも、想像上のことで、彼の性格にせまるものではない。

今の情報だけで行けば、これからに関わる…。

丁度その時、休み時間が終わった。

────────

その日は学校で何も出来なかった。

だが、まだ可能性はある。

友達と約束をしてるから。

そこで自分の仲間を増やし、現在の過剰な創作規制に対して待ったを…。

それから、友達が家に来た。

「ありがとう。」

「それで、何する?」

「言いたいことがあるんだ。」

「何だよ。」

「創作についてどう思う?」

「まだ言ってるのかよ。誰かに話聞かれてたら、通報されるぞ」

「創作の中には、悪いこともある。だけど、逆にいいこともあるよ。」

「だから、創作は悪いことじゃない。」

「みんなに聞けば分かる。口を揃えて、創作は悪だって言う。」

「どうして…?」

「それがこの国ルールだ。」

「じゃあ、どうして…」

君や、みんなは悲しい顔をしてるの…。

その後が言えなかった。

「友達だから、誰にも言わず黙っておく。だから、創作なんてやめろ。

みんなと同じように勉強だけしてればいいんだから。」

「じゃあな。」そう言って友達は帰っていく。

僕は1人で、自分の無力さを嘆いた。

もうダメなのだろうか…。

自分の出来ることはここまでだと思った。

しかし、まだある…。

一つだけ。

それはトモさんを頼ること。

もうあまり関わることはないだろうと思ったが、彼女なら、きっと大丈夫。

僕はすぐに彼女の家に行った。

トモさんは丁度居る。

誰も居ないところに連れて行って、僕は周りを気にしながら言った。

「創作禁止の反対運動を起こしたいんだ。こんな世界良くないよ。」

すると、トモさんは暗い顔をしていた。

「ごめんね…。」

そして、何も言わず、僕の前から遠ざかっていく。

僕は絶望した。

もう僕の近くに仲間は居ない。

完全に1人になってしまったのだと。

<h3>笑顔の旅</h3>

1年生の廊下でのこと。

「れんかさん!」

その声に立ち止まる。

「えっと…」

「ゆめです!」

「そうだった!」

「はい!」

「それで、私に何の用?」

「仲良くできたらなって!」

「いいよ!仲良くしよ。」

「ありがとうございます!」

「良ければ、れんかさんのこと知りたいです!」

「いいよ!何が聞きたいの?」

「部活の時に言ってた、本って何を書いてるんですか?」

「物語だけど…。誰かに見せられるようなものじゃないよ…。」

「大丈夫ですよ!興味があります!」

「えーっと…じゃあ…。でも…やっぱり内緒!」

「了解です!れんかさんは何かありますか?」

「私は…。ゆめちゃんは大切な人って居る?」

「居ますよ!れんかさんは?」

「私も居る。その人のこと、どう思ってるの?」

「毎日、幸せに暮らしてたらいいなって思います!」

「えー!いいじゃん。その人とはどんな関係?」

「友達です!」

「もっと深い関係になりたいとかあるの?…恋人とか!」

「恋人って言うか…。そばには居たいなって思いますよ!みんなで楽しく過ごせたらなって!」

「ふーん…。それもいいかもね。」

「もしかして、れんかさん好きな人居ますか?」

「えー!?」

顔を赤くして、両手で顔をおおう。

「うん。内緒だけど、居るよ!」

「いいですね!どんな人なんですか?」

「えーっとね…!優しくて、まわりのこと考えててね…めっちゃいい人なの!」

ゆめは笑顔で言った。

「ゆめちゃんが嬉しそうで、とっても嬉しいです!」

「ありがとう!好きな人のこと、たくさん話したいんだけど…。

バレちゃうのは恥ずかしいから…ごめんね!」

「大丈夫ですよ!」

「2年前に、ショーでとっても輝いてたんだ…。まるでアイドルみたいだったよ…」

「ショーってダイバースショーのことですか?私も先輩と行きましたよ!」

「えー!そうなの?
じゃあ、見てるかも…!」

「そうかもですね!」

「ちょっと話しすぎたかも。お話聞いてくれてありがとう!」

「こちらこそ!とても楽しい時間でした!」

「それは良かったよ!またお話しようね、ゆめちゃん。」

「こちらこそ、れんかさん!是非お話しましょう。」

「またね!」

そう言って、れんかはゆめとわかれた。

残ったゆめはそのまま廊下を歩いていく。

そして心の中で思った。

良かった…。先輩ともう一度会えて…。

そして色々な出会いがあったこと。

私はなんて幸せものなんでしょう。


ところで、前から先生がやってきた。

ゆめはすぐに声をかける。

「先生!」

「あなたは…新しく入った」

「ゆめです!」

「私に何か用?」

「はい!先輩から聞いてたんですけど、先生は思想学部を危機から救い出した女神様なんですよね!」

「え!?私、何かしたっけ…?」

「はい!顧問になってくれたって!」

「あぁ…。そう。顧問が居ないみたいだったから、私で良ければって。」

「でも、それ以外は特に何もしてないよ。」

「それでも、とても優しい先生だと思います!」

「ありがとう。やっぱり、思想学部に入る子ってちょっと変わってるね。」

「そうですか?」

「うん。みんなとてもいい子達。」

「ありがとうございます!他の人も言ってくださるなんて、自分のことのように嬉しいです!」

「みんながね…」

「なんでしょう?」

「自分で理想の方向へ向かおうとするから、私は先生らしいことができないんだ。」

「壊しちゃいけないって。」

「私はそれでいいのだと思いますよ。上手くは言えませんけど…。」

「そう…ありがとう。でも、変わらず行き過ぎた時は私が止めるから。」

あの時みたいに…。

「ふふふっ!」

「どうしたの?」

「先生、とても嬉しそうだったから。私も嬉しくなって」

「ふふふっ」

先生も笑った。その場は笑顔で包まれる。

「ゆめちゃん、またね。」

「はい!先生またお話しましょう!」

今日もとってもいい日。

自然とスキップになっていた。

「ゆめちゃん!」

後ろから、誰かが呼ぶ声がした。

「はい、なんでしょう?」

振り返ると、そこにはふらさんが居る。

「あ!ふら先輩!」

「みんなと探してたんだ!」

ふら先輩の後ろから、こうたくんと、ていみちゃんが近付いてくる。

「わ!ビックサプライズ!どうしたの、みんな!」

「いつもあってるじゃん。ゆめって、いつも大袈裟。でも…」

こうたくんは少し嬉しそうに話す。

続けて、ていみちゃんが「うん。でも、それがゆめちゃんのいいところ。」と笑う。

「うんうん。いつも明るくて可愛い人!」

「それでね、さっきのことだけど、みんなで学校の後、部活終わったらみんなでお話しないって話してたんだ!」

「えー!ふら先輩そうなんですか?話したいです!」

「やった!決まり!」

そう、私にとって、大切な時間。

それは、みんなの嬉しそうな姿をみる時、そして、大切な人達と楽しく過ごす時間

ありがとう

─────────