後悔と小舟②

闇夜に紛れる殺し屋達

スレを開くと、見るに耐えないような言葉達が賑(にぎ)わしていた。批判や否定、苦痛等の負の感情が一つに集合した、そんな場所。

今日も一つの投稿(とうこう)が慄き(おののき)悲鳴を上げた。

“まだあいつ、エターナルでのうのうとプレイしてたぞ!運営は早くブラックリスト機能つけるか、banにしろってんだ!”

中には、エターナルをクリアしてもなお行うプレイヤーを、否定する胸のの痛いものまであった。

“クリアしてもエターナルをやるやつは、おかしいやつだ!”

その中でよくエターナルで部屋を作る者のことを常連と呼んでいた。それらはaaaaランクのキャラを嫌い、それ以下のaaaランク~aランクのキャラを使ってクリアすることを喜びとしているらしい。ここでようやく以前思っていた疑問が解けた。

今までキャラ選などほとんど考えていなかった。彼らにとって、エターナルでaaaaランクを使われることは迷惑で荒しと同義なのだろう。

僕はなんとなくで、スレの過去の投稿を見た。
すると、匿名(とくめい)ではなくプレイヤー名の書かれた投稿があった。それは、スレタイトルで名前を晒された(さら)クロコ本人だ。

内容は至って普通で、エターナルで見たような煽りは一切なかった。だが、これではいい格好の的だ。必死に弁解や抵抗しようともここの者達は聞いてはくれない。
助長させるだけだ。

その後彼は、思った通りに不特定多数の人間達から総叩きにあっていた。

荒しの最後とはこうも呆気ないものなのか…。僕はそう思いながらエターナルへ戻った。

こうなってしまえば、もう彼はエターナルで今までのような行動は出来ないだろうと─

いくつか部屋に入った後、クロコを発見した。だがいつものように煽りや、荒し行為をしてくる気配はない。どうやら掲示板で見たあれは本人だったらしい。あれだけエターナルを騒がしていたものが大人しいものだ。

そして、僕は彼と何事もなくエターナルをクリアしたのだった。

排除する者

それから僕は何度かその掲示板によるようになった。他にエターナルをよくやっている者が雑談に参加しているのもあったかもしれないが、やはりクロコと言うプレイヤーにとても関心がいった。

ある日の事だ。掲示板の過激派共(かげきはども)が、エターナルの常連数人の名前を晒し叩き始めた。このスレはクロコについてのはずだ!タイトルと著(いちじる)しく乖離(かいり)している!そう思いながらも僕は、続きの投稿を見た。
すると、名無しの投稿でないものがあった。
名を“ゴリラ駆除軍(くじょぐん)”

以前からここではちらほら見かけていた存在だったが、今では複数人が設定しているようにでは多くのレスがあった。

ゴリラと言うのは、批判する者達を指し掲示板上を平穏にしようと奮闘しようということなのだろう。
彼らのレスを見る限りでは、過激派と同じような批判ばかりで相手が掲示板上を不快感に包み込んでいる奴らへだから必要悪だ!いいんだ!と棚に上げているような感じが気に入らなかったが、僕は少し気になって続きを見た。

彼らはひたすらに暴論達を人格否定で返した。
ただ、それだけの繰り返し。

読むのに飽きた僕は今日もエターナルへ向かった。そして、適当な部屋に入る。

するとサイキさん達がいた。入った部屋は、PL低くなかったのだが、主を低ランクのキャラで煽っていた。

僕はその状況に戸惑いを隠せず、部屋を抜ける。そして、彼に疑問の手紙を送り再度部屋へ入った。

彼らは、まだ続けていた。主も名前煽りを知ってのことか、反論を呈す。

自分とレベルが近かったため、僕はその時間傍観するしか出来なかった─。


それから時間が経ち部屋は解散される。そして手紙を待った。もしかしたら、返答次第では幅が広くなり自分すらもされる対象となると考えたからだ。

また時間は流れて、ようやく手紙が届いた。
どうやら低レベルの方の部屋で荒しを辞めろと意見の対立が起こったのが原因らしい。

それから先僕は、ただ納得するだけで何も言えなかった。



反対勢力の台頭

それからも低ランクの方の部屋に行くと彼が現れた。僕は彼らを見ると、ただ傍観していただけだったが、時を重ねるにつれて彼を慕(した)ってか、同様に反発する者達が現れた。

思えばおかしな話だ。育成もしていないキャラでそれなりに難易度の高いエターナルに来る。そんな低ランクの方を庇(かば)うとは。

それに常連の人でも迷惑しているはずだ。なのに何故?そんな疑問を抱えながらも僕は彼らの観察を続けた。

煽り合い、貶し(けな)合いは毎回長期に渡った。ただ見ているだけだった僕には退屈な時間だった。
普通にエターナルがやりたくなった僕は仕方がないと退出を余儀なくした。


その後エターナルを終え、僕はもう一度部屋を探すと部屋を作っている主の名前に違和感を感じた。“s名前w”

それは自分のプレイヤー名だった。これには少々苛立ち(いらだち)を隠せなかった僕は煽り文を蓄えたキャラを多数用意し、戦場へ向かった。

中では、サイキさん達が必死に主を罵倒(ばとう)していた。どうやらさっきの部屋を解散し、プレイヤー名を変え再度作り直したようだ。しかし、僕は見ていただけで彼には何もしていない。なのに何故だ?そう思いながらも主を罵(ののし)った。

主は名前を変えていない低ランクキャラで放置しているように、待機しこちらの攻撃を微動(びどう)だにしていなかった。

それをし続け数分が経ったが、何も変わらず煽りの手を止めた。放置しているのでは、これは虚しいだけだ。

すると直後部屋は解散された。僕はすぐにサイキさんに彼の事を手紙でたずねた。

何もしていない僕に対し敵意剥き出し(むきだし)のあのプレイヤー名、関心を引かざるを得なかったからだ。

すぐに手紙が届く。

“さっきは大変でしたね。あいつは以前、イヤシンス♪とか言うア○名でエターナル上を闊歩(かっぽ)していた勘違いバ○プレイヤーですw。低ランクを庇(かば)うやつは同類なので排除(はいじょ)しましょう。”

僕は手紙を見ると、再びエターナルへ向かった。すると、イヤシンス♪がまた僕に対しての煽り名で部屋を作っていた。

僕は再度入る。その日は、さっきのことの繰り返しだった─
 

新たな暴挙

僕は久しぶりに掲示板に行った。最近はもうエターナルでクロコの姿は殆ど見ないのだが、どうも気になって仕方がなかった。
最早、雑談する内容はないだろうとは思っていたが─

すると驚いたことにクロコスレは、コメント数が限界にまでなっていたのだ。どうしたのだろうと目を見開くと、流石にこれはいけないと数人が結託し適当な文で1000レス埋めたようだ。

これで終わりか…となんだか少し残念だったが僕はゲームに戻る事にした。
その途中とあるスレを発見する。

それは、クロコスレでプレイヤー名を晒されていた一人だった。名前はパー。覗くと、それは酷い有様だ。多数の者が一人を貶(おとし)める構図。先に進めていくと、誰かから聞いてかここでも本人がご登場。

今回のは、クロコの時とは違い多数のレスがあった。次々と出てくるエターナルでの彼の行動への苦情に対し、彼は人格否定や正論で次々と論破していった。

続けて見ると、彼の年代についての話題になっていた。本人が言う話では大学生らしいのだが、他の者達は嘘(うそ)だと言い信用しない。学生証を見せろと言う者もあった。

彼はその挑発(ちょうはつ)にのり、文章と共に学生証の画像を添付(てんぷ)した。

本当にするとは思わなかったのか何やらざわめき始めた。僕はスクロールして先を見る。

そこに書かれていた言葉は僕にとって掲示板の恐ろしさを知るものだった。それは“画像の位置情報”。

不特定多数の者らは“住所解析中w”や、“人生終わったなw”等と言い彼に絶望感を植え付けようとする。
僕はその先が読めなかった。

その後エターナルへ行くと、クロコがいた。微細ながら、以前のように荒しをやっている。僕は再度彼に興味を持った。
一応彼はエターナル上では有名人だ。だからどんな人なのかフレンドになってみたいなぁ─

そう思うと僕はすぐに退出キャラ名にいろんな文章を書き込み彼との舞台(ぶたい)へと向かったのであった。

フレンド申請


僕は部屋に戻ると、彼がいるのを確認した。彼は荒しの手を緩めることなく続けていた。僕はまず手始めに挨拶がわりの煽り文の書かれたキャラを出す。

すると、それに気づいたのか彼はキャラクターを変えた。詳細を見ると、“お前弱すぎ育成しろw”と書かれていた。

僕はそれに負けじと他のキャラクターを出した。続き、戦況は混戦状態となり収束がつかなくなる。ネタが尽きるとまた最初からの繰り返しになったのだ。

すると主はこの状況に嫌気をさしたのか、部屋を解散した。

その後、すぐに僕は自分で部屋を作る。
さっきの今だ、やつは必ず僕の部屋に入ってくる。その確信があった。

数分後、やつは思った通りに入ってきた。そして、先手必勝と言わんばかりに煽りキャラに変える。やつとエターナルをクリアして、フレンド申請をしようと思ったがやつがその気ならと僕は煽り合いに付き合った。

最中、プレイヤー達が入っては抜け、入っては抜けていく。この2人は、出発する気がさらさらないのだろうと─。

お互いに一歩も譲(ゆず)らない状態が続いたが、この場を一気に変える事態(じたい)がおこった。

僕の部屋に、とても強い人達が集結したのだ。キャラ選も掲示板で見た“エターナル常連”そのものだ。これはいけないと、僕はそれに合わせたキャラを選択した。

すると、クロコも掲示板のことを思い出してか自分のいいと思える面子だとしてか、周りに合わせたキャラで待機する。

そして僕は嬉しいを連打し、出発を促(うなが)した─

戦線は良好で、皆とても安定した立ち回りだった。クロコもただの荒しではなく、周りに引けを取らないほどのプレイのうまさだ。それと同時に疑問が浮かぶ。なら何故彼は荒しをしているのだろうか?

だが、それはかねてより考えていたことで解決するだろう─。

クリア後、僕はすぐさまフレンド申請を送った。そして逐一リストを確認し、承認されるのを待った。

しかしその日は、承認される事はなかったのだった─。



承認と人柄

次の日、フレ枠を確認したがやはりいなかった。キャラで煽ったのがいけなかったのだろうか。
僕はため息まじりにエターナルへ向かった。

結局のところ、昨日彼との戦(いくさ)のために名前を変えたキャラは全て使ってはいなかった。まだ一文だけ残っている。それを使えばあるいは─

適当な部屋に入るとなんの偶然か、彼がいた。そして、今日はやけに大人しい。

僕はすかさず“クロコフレになって”と書かれたキャラを出し嬉しいを連打した。彼はそれに対し、何も反応を見せなかったが何事もなく出発する。それはどこか予感させるものがあった。

終えると僕はすぐにフレリストにはりつく。

そして数分後、フレンドが承認された。今まで疑問になっていた事を問いかけようと思った。だが、彼は掲示板で特に有名な荒しだ。弱みを見せれば相手にすらされないのではないだろうか?

そう考えた僕は、二人称にお前を使い自分の権威を示し、自分の意志を表明した。

手紙を書き終わると僕の心には安心感がうまれた。きっとこれで大丈夫だろうと─

それから少し経ち、フレンド枠の異変に気づいた。一人いなくなっていたのだ。それはさっきフレンドになったクロコだった。僕はすぐにエターナルへ向かう。

そしてまたもや偶然、彼と鉢(はち)合わせた。
今度は彼からの先制攻撃だ。“sはコミュ障w”と書かれていた。

その用語の意味は分からないが、送った手紙が良くなかったことを言っているのはすぐに分かった。お前と使ったのが不味かったか…。僕は頭を抱える。

だが、もう一度だ。
さっきのフレなろうのキャラで彼に再びアピールした。すると、彼は普通のキャラに変え出発を待っているように見えた。

これはもしや…?

その後、何事もなく出発し、フレンドも承認された。

僕はすぐに謝罪の手紙を送った。それの返信は数分後に届いたが、普通の文だった。エターナルで見るような煽りは一切なく、ごく普通の─。

その日新たなスレッドが立った。

加速する

それから僕は、たまにクロコと手紙のやり取りをした。彼は自分よりもPLが高く、プレイテクニックも上だった。一人クエ等、行き詰まった時聞けば助けてくれた。

エターナルでは、荒し行為ばかりを行っているとは思えないほどに彼は─。

今日も手紙のやり取りをする。それで聞いた事だが意外な事に、彼には尊敬するプレイヤーがいるらしい。

エターナルでのプレイはそのプレイヤーを参考にしているのだと。
僕はふと掲示板のことを思い出した。とても収拾がつかない状況に見れなくなってしまったが気になった。

見ると、またもやスレが投稿数限界にまで達していた。そして、晒されていたプレイヤーのスレが再びたっている。以前のを見返すと、エターナルスレは殆ど立っていなかったのだが、ここ最近は異様だ。これは何かある。そんな気がした─。

他のスレを見ると、敵味方関係なく攻撃する技使用で嫌がらせするプレイヤーの名前を晒そうといったものがあった。晒されている名前は殆ど既知(きち)のものが少なかった。

だが、知っているものもいた。☆モーギス★というプレイヤーだ。掲示板に晒されるということは、どうやらいろんなプレイヤーの部屋であの行為を行っているらしい。

僕は一旦エターナルへ戻った。
すると、低ランクキャラで待機しているプレイヤーがいた。荒しか?と疑問に思いながらも詳細を見た。

“イヤシンス♪です。”

と書かれていた。その名前はハッキリ覚えている。僕をプレイヤー名変えて煽ってきた人だ─。

その後、以前のような合戦になることなくクリアした。そして僕は、興味本位でフレンド申請した。

暗闇の中小舟は流される。ただゆらゆら、ゆらゆらと。

どこへ行くでもなく浮かぶ舟はある日、大きな光に照らされる。とても真っ白で清らかなもの。それは周りにあった闇を取り払ってくれるようだった。

小舟はそれをもっともっとと求め、その光の方へ突き進む。

しかし、求めれば求める程離れていく。

そして、いつしかそれはパッと消えてしまった。残された舟には、辺り一面を囲う暗闇と悲しい静寂しか残されていなかった─

返信と痛み

手紙を見ると、一通の手紙が届いていた。宛先は前にフレンド申請を送った人からだった。

名をフリーランス@楽遊部(らくあそび)。

内容は、僕らがエターナルで荒しをしていることについて、とても迷惑している人が多いのだと突きつけられた。

手紙は長文で、彼はとても陽気そうな文体できつい言葉は一切なかった筈だった。だが、一言一言が僕の胸に大きく突き刺さる。

ところで、何故以前、サイキ達の仲間に加わることなく部屋を抜けたのか?その疑問について彼は問いかけてきた。

僕は、正直に応えた。自分は嫌がらせをしているつもりはなかったんだと…僕はただ─

すると、彼は言った。“そうか。君はまだ悪しき心に囚(とら)われていないんだね。良かった。だからあんな事はもうやってはいけないよ。フレンドは一回切らせてもらうけど、君が改心して楽しく遊ばせていただいた時、今度はこちらからフレンド申請します。じゃあ、エターナル楽しく遊ぼう♪”

彼はそう言い残すと僕のフレ枠から消えていた。僕には新たな目的がうまれる。彼と再びフレンドになること。

それのために僕は、荒し行為を控える(ひか)ことにした。ゲーム内でのとはいえ、サイキさん達との付き合いもある。彼は悪い言葉を使うが、手紙を送れば必ず返してくれ、エターナル以外の協力プレイで、使えば入手困難なレアアイテムが手に入るチケットを他のプレイヤーのために惜(お)しまず使う優しい一面もあった。そして初めて僕に喜びを与えてくれた人─

早速、部屋に入ると見知らぬプレイヤーがいた。PLは少し低いながらも名前が少々気になった。“はるたけ”

適当なキャラで待機中、AAAAランクのキャラにしているプレイヤーが入ってくる。それを見たはるたけは、それを毛嫌いしてか困ったを連打した。

まだ、キャラを変える可能性はある。それを考えずに批判する行為は、失礼だ。少し懲(こ)らしめてやろう。すぐに部屋を抜け、キャラの名前の準備をする。

さっきフリーランスさんに言われたばかりだったが、僕には正当な理由があった。彼は荒しに対しての煽りや、それを辞めさせる行為に対しては行動が許容している。つまりこれは必要悪だ。僕はそう思うと支度の準備を終え再びエターナルへ向かったのだった─。

  

異物混入

その後、部屋を探したがすでに出発してしまったのかいなかった。急いで名前を変えたのは、徒労(とろう)だったが、戻すのも面倒なのでそのままにしておいた。

そして、僕はフリーランスさんとフレンドになる一歩としてエターナルをプレイすることにした─。

フリーランスさんは、皆が嫌がるヒーラー(回復役)を一心に引き受け、慣れたプレイでとても安心感があった。いいプレイがあれば、グッジョブ!といいねをおし、アイコンのいい使い道で今までに感じた事がないエターナル(協力プレイ)の楽しさがあった。

僕は自然と数度、彼の部屋に引き寄せられた。エターナルを終えてはすぐに部屋を作る。彼も余程エターナルが好きなのだろうか─。

彼がいなくなると、適当な部屋に入った。適当なキャラで待機していると、PLのちょいと低いおかしなことを言うプレイヤーが入ってきた。

キャラが低ランクで名前は、“aaaaランク使うの雑魚(ざこ)”と書かれていた。鼻についた僕は、名前を放置していたキャラで攻撃した。

今日は、やけに生意気なやつに出会う日だ─。

そいつは文に気づいたのか、意味の分からないことをボヤき始める。“シークレットナイト!”

“略してsk 検索よろ”

それを告げ終わると、部屋から消えた。すぐに僕はその単語を検索をかける。

どうやら、それは複数人で出来るメール系アプリ。その荒しグループの一つのグループ名を指すらしい。

“荒し”それはとても興味をそそられる単語。しかし、そのメールをしていなかった僕はエターナルに戻った。

するとまたもや、やつがいた。名前をハッキリ覚えた。“メリリン”

さっき抜けたのは、煽り合いの下準備を済ませるためだったのか、僕に気付くとキャラクターを変えた。

“エターナルで〇〇使うやつ雑魚”

またキャラ否定。今度はキャラ名指定でだ。これは、もっと懲らしめた方がいいな。と思った僕はメリリンを批判した。

驚いたことに彼は、“うん。”とだけ書かれたキャラをだし嬉しい連打を始めたのだ。

これに対しひいては行けないと思った僕は、批判を続けたのだった。

訪問者とデジャヴ?

それは真っ暗闇が、辺りを包み込む時間帯。メリリンはイラッとくるような挑発(ちょうはつ)を続け、僕はそれにのった。

いくら言ってもこたえないやつの精神力には参った。そう頭を抱えた時のこと、とあるプレイヤーが入ってきた。サイキさんだ。

彼は詳細を確認すると、すぐに加勢してくれた。これにはメリリンも、流石にきいたのか部屋を立ち去った。

僕はサイキさんにお礼の手紙とメリリンの雑言(ぞうごん)を吐(は)き再びエターナルへ向かった。

部屋を作っている者は誰もいなかったため、僕は自分で部屋を作ると、待っていたかのようにメリリンが入ってくる。

さっきの仕返しか…と斜(しゃ)に構(かま)え見ていると予想通りにキャラを変えた。

だが、そこに書かれていたのは驚(おどろ)くべき事だった。“sーフレなろうよー。”

さっきまで、あんなにもヤラれていたのだが、何故(なぜ)?それにしても何処(どこ)かで全く同じ事をしたことがある…。おかしな感覚だ─。

僕は彼に対し、興味をそそられた。その後、メリリンと釣(つ)られるようにエターナルをクリアした。

フレンド申請が来たが、拒否(きょひ)せずに保留(ほりゅう)しておいた。彼が何の目的でフレンド申請をしてきたのか分からないが、少し気になった─。

次の日、エターナルに行くとメリリンがいた。昨日と同じように、生意気なことを言い、意味の分からないグループ名を検索しろとぬかす。

その後、何事もなく出発し何事もなくクリアした。荒しグループを謳(うた)いエターナル上を大威張り(おおいばり)で闊歩(かっぽ)するからには、どんなに途轍(とてつ)もない荒しをするのかと思えば、ただの拍子(ひょうし)抜け。

だが、逆にそれが関心を寄せられる要因だったのかもしれない。クリア後僕は、フレンド申請を承認したのだった─。

フレ枠を見ると、メリリンのコメント欄(らん)にはおかしな事が書いてあった。

“元気にメリリッとパワフルビューティー!”

そのフレ枠(わく)の下にはクロコがいて、昨日の感覚がデジャヴでないことを思い出したのだった─。