後悔と小舟③

恐れと純粋な心

少し経つと手紙が届いた。メリリンからだった。

“フレなってくれたんや ありがと”

とだけ書かれていた。僕は恐怖する。注目したのは、語尾(ごび)。やというものだ。それは生粋の関東人の僕にはよく分からないが、世にいう関西弁だろう。

経験則から言って、その話し方は掲示板で暴言、雑言などを吐きかける輩(やから)が使っているイメージだ。

僕は、二人称にお前を使い威嚇(いかく)した。するとすぐに、弱々しいような返事が届いた。

僕はなんだと緊張(きんちょう)を緩め(ゆる)彼の話を聞いた。

彼は、有名になりたいらしい。

メールアプリの荒しグループで有名になった者に対し、憧れ(あこが)を抱く無垢(むく)さをもった少し可愛げのある人間性だった。

僕は、彼にエターナルをよく見るプレイヤーについて語った。彼もよくエターナルをプレイするらしく、合致し会話に花が咲いた。

高ランクのレミさん、フリーランスさんはとても優しいプレイヤーだと言う。だが、フレンド申請しても中々フレンドになってくれないらしい。

そこで、ふと思い出す。あれから幾度(いくど)となくフリーランスさんとエターナルをプレイしているのだが、中々フレンド申請は来なかった。

もしかしたら、もうそろそろくるのではないか?僕はそう思い、すぐにエターナルへ向かった。

部屋に入ると僕に対し嬉しいアイコンを押してくれるあたたかさがあった。早くもう一度彼とフレンドになりたい。その衝動を抑えながら、プレイに臨(のぞ)んだのだった─。

戦闘を終えると僕はフレンド申請画面でとまった。もしかしたら彼の方からフレンド申請が来るかもしれない。いや今度は彼からフレンド申請が来るのだ。だからこちらから申請してはいけない…。

しようか、しまいか僕の中で欲求が交差する。

心の中を整理するため、目を閉じた。すると、僕の頭の中でフレンド申請が来る情景が浮かんだ。

そっと目を開けると、僕の指は申請するボタンを押していたのだった─。

繋がり

すぐにフレンドは承認されたようで、手紙が届いた。
内容は、“こっちからフレンド申請しようと思ったんだけど汗 まぁ、これからよろしく”

と書かれていた。なりたいフレンドだったためとても嬉しかった。

感謝の手紙を送り、すぐにメリリンに彼とフレンドになったことを伝える。

彼は、“いいなぁー”と優越感(ゆうえつかん)に浸(ひた)させるようなことを言い、大満足だ。

僕はふと、彼が言っていた“荒しグループ”のことについて気になったのでそれとなく聞いてみた。

すぐに返信が返ってくる。メールアプリでの荒しとは、垢(あか)バンさせることを指すらしい。していない僕としては、対岸の火事であり気にする必要はないこと。しかし、“荒し”と言う用語については関心を寄せられる。

今度は僕がエターナルでの荒しを語ろうと思った。有名な荒しクロコについて─

話を書き終え送るとと、“へー そうなんや”と一言だけ返ってきたが、その言葉に何故だか戦意を感じたのだった。

エターナルに行こうと思った時、また手紙が届いた。まだメリリンは何かあるのかと、再び手紙をあけると、サイキさんからだった。

彼とはちょくちょく手紙のやり取りをしていた。関係的にも良くなったと思ったのか、今度はメールで話さないか?との事だ。

このゲームでの、手紙という機能はとても不便(ふべん)だ。文字数制限があり、100文字以上の長文は送れない。そして、禁止用語。これが厄介だ。あからさまな犯罪的要因の含む文などなら仕方ないと思うが、文章の中に知らないうちに入っているであろう隠語のような言葉も対象となる。

しかもそれは、送るまで禁止用語かどうか分からない。返信した時に、“禁止用語が含まれている。”と言う文章と共に、はじめからやり直しとなる。

これらのことにおいて僕は、メール移行は賛成だったが不快に思わせないようそれとなく拒否した。

ゲームでの人間付き合いには気が引けた。掲示板を見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)。

暴論がゆきかうあの場所には、このゲームのプレイしているプレイヤーしかいかない。つまり、サイキさんも通っている可能性があり。メールのやり取りから転じて住所晒しなどされることを恐れたためだ。

僕は、返信を済ませるとエターナルへ向かったのだった─。

ジェネレーション

フレンドになった後も、メリリンの生意気さは、顕在(けんざい)だった。しかし、変化はあった。僕が同じ部屋に入ってきたのを気付くと、嬉しいを押してくれる。

これに対しては、悪い気がしない。協力プレイとは、やはりいいものだ─

クリアを終えると、手紙が届いた。メリリンからだ。

“で。 言うてたら、クロコに勝てたで。”

その手紙には歓喜(かんき)が滲み(にじ)でているような気がした。だが、クロコは以前にネットで叩かれ、荒しは以前より自粛(じしゅく)している感じだった。

クロコ被害者の会と言うのをあれから見なくなったのが、いい例だ。

彼に、掲示板の話をしようかしまいか迷った。最後に行ったときは、とても酷い状況だった。あの空間はいれたものではない。

僕は、“良かったね。”とだけ告げた。

一人冒険へ向かった。aaランクキャラ育成のためだ。最近は最早、エターナルがメインになっていた。ボックスには、育成不十分なaaaaランクやaaaランクが並び、一人冒険のクエストはやらないままだ。

しかし、エターナルにはそれだけの価値がある。今までは、協力プレイでしか得られない楽しさだけだったが、今は常連との全滅かクリアかの瀬戸際(せとぎわ)で感じるスリルがたまらなく面白い。だからこそ、今日も僕はaaランクの育成に励む(はげ)のだった─

育成を終えると、手紙が届いた。メリリンからだ。

カルトン@角馬会とフレンドになった”

そのプレイヤーは僕よりもplの高い人だ。理解に苦しむ、何故どちからと言うとplの低い雑魚の部類に入る彼とフレンドになったのか?

そして、カルトンを探しにエターナルへ出た。名前に、@〇〇としてるのはたまに見る。そして、〇〇部分が共通する者もいる。何かのグループを示すものだろうか。

いなければ部屋更新を繰り返していると、直後
カルトンがいた。すぐに部屋に入り、僕はどんなやつなんだろうと、様子を窺(うかが)う。

多分、よくエターナルにいるようなやつだから、どうせ、常連と同じようなキャラ選を求めるのだろうと待機するのであった─。

即行と許容

どれだけ待てどもカルトンは、aaaランクのキャラから変更する気配はない。キャラは、名前に@角馬会としているだけあり、一角獣(いっかくじゅう)に類似したキャラで待機していた。

つまり、掲示板で言う常連とは違ったタイプの常連と言うことだろう。僕は気を緩(ゆる)め、殆ど使うことのなかった既存(きそん)のaaaランクキャラで待機する。

同室に、aaaaランク使用のプレイヤーもいる中出発されたのだった─。

彼のエターナルでのテクニックは、通常の常連とは少し異なり、なるほどこんな立ち回りもあるのか!と頷(うなず)かせるようなものばかりで、退屈しなかった。

終えると、すぐに申請し手紙を確認した。
誰にも送っていなかったため、何もなかったが、僕には、新しい試みをしてみたいと欲求があった。

それはメール分野への進出だ。ネットやゲーム上での人付き合いというものには、今まで気が引けていたが衝動が勝(まさ)った。

メリリンに、一緒にやらないか?と意思を伝える手紙を送った。

返信はすぐにきた。

“いいよ ”と共にidも足されていた。

それを入力し、僕の新しい時間が始まったのだった─。

それから彼との会話は長時間にわたり、くだらない話や、とても気になる話などに花を咲かせた。

僕は当初、彼に対し不信感を抱(いだ)いていたが、話を続けている内に自然と忘れていった。

話は、年齢についてになる。

素直に言った。僕は高校生だが、不登校であると。すると、メリリンは少し嬉しいことを言った。

自分も同じ身空(みそら)なのだと。

話は、続いた。自分はアイドルが好きで、メリリンというのは、とあるアイドルグループのメンバーの名前だと言う。

コメントのは、そのアイドルのよく言う常套句(じょうとうく)のようなものらしい。

ふと、クロコのことを思い出す。彼の今まで見てきた煽り内容からして、もしかしたら彼も年齢近いのでないかと─

そして聞くような手紙を編集し、送ったのだった。

一つの終わりと始まり

聞かれたことには絶対にこたえなければいけないとの自分ルールがあるのか否(いな)か、クロコは自分の年代を教えてくれた。

どうやら、僕よりも10以上離れた大人らしい。エターナルで見せた煽り達は、今までに積んできた老成(ろうせい)の賜物(たまもの)のようだ。

彼は僕の年齢を聞くと、敬語をほのめかしてきた。屈辱(くつじょく)に感じると思ったのか、僕はサイキさんと話す時は彼に合わせ敬語だったため、躊躇い(ためら)なく話し方を敬語へと移行した。

クロコとの会話を終えると、メリリンとのメールのやり取りを再開した。

メリリンは、僕の送信に気付くととてもスピーディーに返信する。ネット音痴(おんち)の僕にとっては、メールは、右も左も分からない状態だったが返信はできた。

メールをはじめて数日経つも、メール送る以外の操作や機能は殆ど理解出来なかった。

僕は彼からの返信を返そうとすると、操作ミスに気付いた。自分のフェイスが、鏡のように画面に反射している。見るに耐えない、これをすぐにやめさせようと講(こお)じようとするが、中々画面が切り替わる様子はない。

だが、それは何かの破裂音とともに破られた。画面が戻ったと安心すると、メールに違和感を感じた。

さっきの鏡が縮小され、文の中に紛れ込んでいたのだ。それに気付いたメリリンは、野次馬のように言い立て僕の不安感を助長させる。

そして、頭の中が真っ白になった。もう何も考えたくない。僕は耳を塞ぐと、脳内に掲示板の文達が、トドメを刺しに来た。

それは、今まで見てきた晒しについて。ネットでの関係、それは曖昧模糊(あいまいもこ)で信用も信頼もあるかどうかも分からない微妙なもの。文体でしか判断基準がない。しかも彼に対し、生意気と言う理由だけでなじった。少しの怨み(うら)も感じているだろう。

僕は絶句した。いきようのない苦しみが、自分の中をぐるぐるとまわっている。ネット上でのつながりで得られる幸福、喜びを求めたのが間違いだった。自分の中にあるストレスが今にも吹き出しそうになる。この感情をどうすれば…僕は頭を抱えた。

そして、すぐに思いたち、ゲーム上での名前を変えた。そこには、自分の溜まりに溜まったストレスや後悔の気持ち達をぶちまける。

その行動は、自然と僕の苦しみを消してくれるようだった。段々と落ち着きを取り戻し、僕は我に返った。これ以上自分の黒歴史をネット上刻み込んではいけない。そう思った僕は、名前を戻し、彼とのメールに戻った。

何事もなかったように話しかけると数秒の間はあったものの、会話は再開された。

その時の僕は、ネット上に晒されることのないよう祈るばかりであった─

新たな遊び場

メリリンはとてもいいやつだ。僕が本当に嫌だと思う事に対し、追及しないし、ちょっとした気遣いをしてくれた。

以前の事もあるし、少しは僕に嫌いという感情を抱いている筈(はず)なのだが、それを一切見せない。これにおいては、信用出来る。そんな気がした─

メリリンから自分の顔写真を載(の)せようかとの送信がきた。その提案は、僕の恐怖心や不安感を取り除いてくれるようだった。

彼は、ちょっとした冗談を交えながらも見せてくれた。加工を入れながらも、躊躇いのないそれは、自分にとても強い感情を持っている事が分かった。

僕はそれに羨(うらや)ましさを感じた。その感情は、僕が欲しいと思っても絶対に手に入らないものだろうと─。

これで、ネットに晒されることはない。と安心すると、僕はある決心をした。掲示板を彼に掲示板を教えてみようと。

これといった理由はないのだが、今まで見てきた限りでは、エターナル常連がまばらに点在していた。

彼も頻繁にエターナルをやるようだし、有名になりたい。その望みを、ささやかながらも叶えてあげよう。僕は、思い立つとすぐにメールで掲示板のことを教えた。

しかし、掲示板などの匿名投稿サイトは暴論などが行き交う。僕と同じように投稿などはしないだろう。

掲示板を少しの時間見ていると、ちょうど誰か
が投稿したらしい。スレが更新された。

僕は、すぐさま確認しにいくと、名前のところに“メリリン”と書かれていた。内容は、“ここかここか”となんでもないような事だった。

僕の中に焦りがうまれる。ここは特に酷い。
対象とされる可能性がある。その平行線上として、被害が…。

掲示板では投稿せずに傍観していた僕は、つい彼をいなすために初めて投稿した。

彼はとてつもなく大きい何かを持っている。消極的だった僕の考えを改変してしまったのだから─

その後、メールで話を再開するとそれに付き合ってくれた。

話を続けていると、リアルでは全く会ったことのない。インターネット上だけで出会った女の子と付き合っていると言う。二次元や、アイドルとの仮想恋愛でなくだ。その時の僕には、彼の考えが全く理解出来なかったのだった。


影響をあたえるもの

ある時を境に返信が来なくなった。いつもの彼なら数秒足らずでつく。おかしいと思った僕は、掲示板に向かった。

驚いたことに、レスが10以上も更新されていた。内容を見ると、メリリンが記名の者と悠々自適に会話していた。

メールのように、なんでもないような事だったが羨ましさを感じた。見ているだけと言うのはとても辛(つら)い。掲示板に投稿するのは気が引けたが、僕は勇気を振り絞(しぼ)って匿名で投稿した。

レスはつかなかったが、僕の興奮や刺激は最高潮に高まった。新しい事への挑戦、自分だけにとっての未開の地へ一歩を踏み出したこと、それらは、僕の知的好奇心をとてもくすぐられるものだった。

もう一度、もう一度と僕はレスを更新していった。

メリリンは会話を終えると、他のスレへ足を伸ばした。面白いと思った僕は、さながら野次馬のように、彼の行く先々へへばりついた。

驚いたことに、彼がスレで一言発しただけで多くの者達が集まり楽しそうな会話が始まった。僕には分からない隠された魅力があるのだろうか。それともただダイレクトが─

その後メリリンは、とうとう暴言厨(ぼうげんちゅう)の多いであろう、エターナル常連プレイヤーの荒し批判の掲示板に足を運んだ。

“この人エターナルで見たことある。”

思った事を素直に書いてしまう。
天真爛漫(てんしんらんまん)、彼の文体から察するに、この言葉こそ彼に相応(ふさわ)しいだろう。

掲示板、それはすぐにレスがつくものではない。その事を念頭にとりあえず僕は、エターナルで時間をつぶすことにした。

ちょうどその頃、フリーランスさんがいて共にプレイに興じた。彼は、自らの部屋に低ランクが入ることを多の常連とは違い拒絶せず、荒し以外は如何なる者も拒まない。

しかし彼には、厳しい一面もあり、一定数のレベルを超えたプレイヤーがおかしな、戦況が一気に不利になるようなプレイをすると、ごめんアイコンでちょっとした叱咤激励(しったげきれい)をする。これには、思うところもあったが、それでも楽しいと思えた。

エターナルを終えると、すぐに掲示板へ向かった。スレタイトルエリアに着いた僕は、驚きを見ることになったのだった─。

妬みと苦痛の助長

新しいスレが立っていた。内容は、“メリリンってなんですか?掲示板で頻繁に見る名前~”と言ったものだ。

クロコ、パーとエターナル熟練者達が名を連ねる中、レベル的にも下位のメリリンが掲示板のネクストジェネレーションとして台頭するとは、予想もしていなかった。

前スレで状況を確認すると、暴言厨達と亀裂(きれつ)や反発があったようだ。メリリンは、なんでもないようなことでも付き合う。とても会話が好きなのだ。

それが災いし、多くの文字達でスレを埋める“突出した掲示板荒し”だと思われてしまった。
生意気さも兼(か)ね備えた…。彼は標的としてはとても都合のいい相手だ。

よもや、こんな形で望んでいたものが叶うとは思わなかっただろう。僕は、メリリンにかけてやれる言葉もなかった。性格的にも、存在否定などの自分への非難に対して、反論せずにはいられない。それらは、火に油を注ぐだけで、終わらない議論の始まりなのかもしれない。

僕は心の中で、彼の未来に同情することしか出来なかった。

エターナルへ行くと、カルトンがいた。名前の後に@角馬会とつけた他のメンバーと共に、協力プレイをするようだ。最近僕は、その角馬会と言うグループ名が気に入っていた。そのなんだかカッコのいい名前は僕の頭の片隅にこびりついた。

その後、掲示板に向かうと“エターナルでの荒しあげてけ”スレがなんだか異様に騒がしいのに気がついた。

レスの内容を読んでいくと、その時にはメリリンのレスはなかった。代わりに、馴(な)染みの深い見飽きる程に見てきたプレイヤー名で会話を賑わしていたのだ。

名前は“s”。それは僕のプレイヤー名だった。言葉が出なかった。今まで僕がやってきたことは嫌がらせだとは分かっていた。だが、揶揄(やゆ)くらいの軽いガキのいたずら。そんなに酷(こく)に思うものではないはずだ。

心の中で必死に言い訳をしながらも、苦痛が侵食してくるのを感じた。
早くレスを返さなければ。インターネット上ではちょっとした一言居士(いちげんこじ)だった僕は、プレイヤー名を名無しのところに書き込み返信をおこなったのだった─

追い詰める言葉と優しい言葉

僕は、掲示板に少なからず見ているであろう常連に気を使い、ですます調で投稿した。

すると疾風迅雷(しっぷうじんらい)、数分も待たずにレスがきた。それらは、ただ暴言を吐きかけるだけの投稿でなく、罪悪感を与えるようなものだった。

続けて見ていくと、匿名で自称僕とフレンドだと名乗るものがフレを切ると言い出した。フレンド、それは名ばかりで薄い繋がり。お互いのどちらか一方が要らないと思えば、切れてしまう細く弱い糸。

だが、僕にはとても痛かった。その言葉をそのままに受け止め、固定概念を植え付けられてしまったのかもしれない。そうすると、まんまと名無しの術中にハマってしまった訳だ。

フレンドを確認しにいくと、枠に変動はなかった。胸に少々の痛みを感じながらも戻ると、今度は知っている名前の投稿があった。

フリーランスさんだ。“s荒しキ○イ。もう部屋に入ってこないで”と書かれていた。

それは、ズタボロだった僕の心を強く刺激した。フレンドになってくれたのは嫌々で、ずっと心の中では拒絶し、嫌悪していたんだと痛切する。

エターナル上では、とても評判のいいフリーランスさん。それ故に、エターナル専門のグループ。そこのplの高いプレイヤーとのつてや、フレンドがある。

つまり僕にエターナルでの居場所はない。部屋を作ろうとも、低いプレイヤー達しか集(つど)わないだろう。今まで、あんなにも感じていた、喜びや快楽がもう味わえなくなってしまうのだ。

僕は落胆した。頭に残されたのはゲームを引退
すること。僕の中に潜む罪悪感達がそれを強要してくる。

だが、最後の最後として一つの可能性にかけてみることにした。それは、なりすましと言う存在だ。パースレ等で、頻繁に使用される用語だったため、重々承知していた。

そうであれ、そうであれと返信の途中思いながらも文章には、今にも泣き出しそうな弱々しい僕の心が投影されている気がした。

それらは、他者に同情を誘うものでなく、自分の気持ちを率直に伝えた。

“本当は僕とフレンドになるの嫌だったんだね…ごめん。”

手紙を送った後、心が葛藤(かっとう)した。手紙を待たずに辞めてしまおうかと。可能性を感じながらも、返信が来るのが怖かった。

それに、これ以上続けても何も変わらないし、辛いだけだ。

僕は臍(ほぞ)を固めた。最後として、フレ枠をそっと覗く。彼のログイン時間を見ると、数分前となっていた。

最後くらい手紙を待つのもいいだろう。諦めムードのまま、ボーッと手紙ボックスを眺めた。

すると、一つ手紙が届く。彼からだった。

“何があったんだい?”

ただそれだけだった。
しかしその一言は、今までに感じた何よりも喜びを感じ、淀(よど)みきった暗転世界を明るく照らす一筋の光ように、とても貴重な希望だった─






所属

僕は、すぐに掲示板のことを彼に話した。こんなことを君が、言っていたのではないだろうかと。

場所を教え、掲示板に向かうと少し経って匿名だが、彼のような投稿があった。

“フレさんが言っていたのは、ここだね。”

その一言だけが僕はとても嬉しかった。自分の疑いの気持ちをすべて払拭(ふっしょく)してくれるかのように。

ゲームに戻ると、手紙が届いていた。

“僕は君の事を嫌だな~。とかの負の感情はもう抱(いだ)いていないよ。いつも楽しませてもらっているしね。だから、その事において君が気に病む必要はないよ。でも、辞めるか、辞めないかについては君の判断に委(ゆだ)ねるよ。自分の利己的な考えで、引き止めてはならないと思うから。じゃあ、これで。”

心の闇(やみ)が全て消え去った。僕はまだ続けてみることにした。エターナルでの出会いや、喜びを常連の方々達と共に味わうために─

だが、ここで辞めるべきだったと痛感する出来事が起こることを…まだ知らない。

心が晴れた僕は、どこかグループに入りたいと言う欲求が高まった。グループと言っても、@〇〇と後につけるだけなのだが、それは顕示(けんじ)になる。

グループ名が大きければ、エターナルでの認知度が大きければ大きい程、攻撃がしづらくなると踏んだのだ。僕はメリリンとは対照的に、有名になることには批判派だ。

そしてこれは、常連との関わりに有用性がある。フレになった後も、あの人が部屋を作成するのを確認した。しかも、見てきた限りでは、一日での部屋作成一度や二度ではない。常連達との確固とした信頼関係がある可能性が高い。

つまり、一石二鳥だ。僕は早速、カルトンにグループ名について、手紙で問いかけてみた。

彼の話では、エターナルを中心として発足させたグループ名だと言う。馬系キャラクターが好きだからとの理由からそれにしたと。

ならば、話は早いと僕はすぐに@〇〇と自分もつけていいかと申請した。

受理される。僕は、歓喜した。これでもしかしたら、掲示板での総叩きも緩和するのではないかと─。