後悔と小舟④

変わらない日常

僕は名前に@角馬会と入れるとすぐにエターナルへ向かった。もしかしたら、このチーム所属によってフレンドを申請、もしくは承認してくれる方が出てくるかもしれない。
そう思うと、居ても立っても居られなかったのだ。

部屋を探していると、カルトンを見つけた。他は誰も居なかったので妥協し、部屋に入った。

チームに所属した事で、早速利点が現れた。彼は気付くと、嬉しいを押してくれる。前は入れども、一切反応を示さなかったのだが…。

待っていると、他のグループメンバーが入ってきた。plがメリリンと同等程度で、どちらかと言うと“弱い”にカテゴライズされるプレイヤーだ。以前から、低ランク荒しをしていた僕にとって、数字が大きく離れたプレイヤーには差別の感情があった。

だが、例外もある。メリリンだ。少々の生意気さを性質として持っているが、どこか面白さや魅力がある。もしくは、同気相求と言うやつかもしれない。
その時の僕には、つっかえるものがあった。

エターナルを終えると、掲示板に向かった。もしかしたら、グループ所属によって何か変化する可能性が…。

その考えは、不特定多数の人間らによって否定された。変わらない。いや、以前よりも増して誹謗中傷が激しくなっていた。返信先が僕に対しての煽りレスは、僕の核心をついたような痛いものが多々ありとても精神的にやられた。

この状況を打開するには、軽薄で安直な考えを改めなければならない。他の方法。すぐに一つだけ浮かんだものがある。そもそも、名前を変えてしまうと言う事だ。

以前は、頻繁に変えていたが、サイキさんとフレンドになってからは、そのままだった。しかし、これには少しの決断力がいる。

名前を変えると、エターナルで誰だか分かってくれない、嬉しいアイコン押しても、かえってこない寂しい状況になる。それは、なるべく避けたいこと。

その案をそっとしまい、他スレへメリリンの様子を見に行くことにしたのだった─。


他者からの命名

メリリンスレでは、匿名と記名の同時投稿疑惑が浮上していた。メリリンを擁護(ようご)する者が現れたからだ。

彼が誰からも批判される対象だと、信じて疑わない不特定多数の者共は、憶測で暴論を書き連ねていった。

だが、それに負けず劣らず、余すところなく、レスをつける。その最中(さなか)僕は、不特定の輩に紛れ、自分だとほのめかす投稿をし、メリリンを呼び止めた。

気付いた彼は、メールに戻った。要求がある。少し前まで考えていたこと、名前変更。前のは僕にとって、とても些細な事で、他にも問題があったのだ。

名前を考えるのが、致命的に苦手。下手なものに変えれば、すぐに掲示板の連中に気付かれてしまう。だが、逆に他者が考えるとどうなるだろう。まだ推測の範疇(はんちゅう)にすぎないが、気付かれない可能性が高まる。

返答はすぐに来る。“スパゲッティ”。
特に選り好みしていなかった僕は、変更した。
続いて、@〇〇を今度は2人でやらないかとの提案をした。

名前を変えたからには、角馬会とは付けれない。少し残念だったが、仕方のない事。

クスノキ派がいいと来た。クスノキ、それは他のsnobと並ぶ、とても大きなアイドルグループ。その後、僕は新たな名前に変え心機一転、もう完全に荒し行為を辞めると心に決めたのだった─。

手紙のやり取りをしていたプレイヤー達に名前を変えた旨を伝えた。掲示板に向かうと、@角馬会と付けていた事が知られていたらしい。
そのグループは、荒しを集めているとの偏見の目で見られてしまった。

最早、名前を変えた僕には関係ない事だったが、申し訳ない気持ちに苛(さいな)まれた。

同スレでは、メリリンがコモンセンス@クスノキ派で再び投稿していた。
僕も負けずに、@クスノキ派をエターナルで広めようと向かう。

すると、カルトンがいた。フレンドだった場合、特有のマークがパーティー選択のところでついているはずなのだが、今、僕の眼前にはそれがなかった。

フレ枠を確認しにいくと、一人減り彼の名前も無かった─。

新加と不信感

すぐに理解した。掲示板で叩かれてることを知り、切ったのだ。

やるせない気持ちで一杯になる。あれの影響力は、計り知れない程に大きいものなのだと。

そして、僕は恐怖した。これを皮切りに、差別するものがどんどんと現れる可能性に。

気持ちを晴らすために、メリリン改めコモンセンスの元へ向かった。彼は、掲示板を一喜一憂している。だからこそ、居続ける。まだ僕のスレは作られてはいない。同時期に“彼”と言う存在が居てくれると言うことは、僕にとって、とてもありがたい。

スレが作られていないと言う事は、内容としては、薄い。このまま、彼の話題で持ち切りになれば、僕の事は、自然と忘れ去られる。

少し疚(やま)しい気持ちを心に秘めながらも、僕はそうなるのを望んでいた。

掲示板では、コモンセンススレが増えた。以前の特定記名の荒し晒しスレでは、類を見ない3,4以上に彼の名が立ち並ぶ。

最早、掲示板では、ゲーム攻略よりも彼の話題で持ち切りだ。その中で僕は、一つ掲示板に目についた。

投稿者はカルトン@角馬会、やつは切ってすぐにスレ開設したのだ。さっきまで感じていた後ろめたさや、申し訳なさは一切消え、彼に対し憤りさえ感じた。

中では、僕と同じく彼に対し不平に思っていた者もいた様で、粗を探しては、彼の喉元に突き立てた。@角馬会には他に、僕の属していた低ランク荒し同盟の一人もいたらしく、それもネタにされていた。

いいざまだ…。僕は酷く歓喜した。続けて読んでいくと、自分を嫌味に言う者は、マイノリティだと主張し始めた。そして、否定するものはバッドを、肯定するものはいいねを押せと要求した。

自分は、マジョリティだと見せて、アンチ達の手を緩めさせようと言う魂胆だろう。それに、他の角馬会メンバーに立つ背がない。僕は、カルトン以外のメンバーに同情した。

エターナルへ行くと、コモンセンスが部屋を作っていた。掲示板にハマりながらも、エターナルだけはやめられないのだろう。いいねを済ませると、他の@クスノキ派付けたプレイヤーが入ってきた─。

無関係の対象

 
ジャスティス@クスノキ派。それは、以前からエターナルでちらちらと見かけていたプレイヤーだった。plは高くないのだが、aaaaランク最大レベルにしていたのが、以前から気になっていた。

aaaaランクキャラは、課金をしなければ、ごく稀に手に入る程度。そして、最大レベルと言うのは同キャラ10体の合成で可能。重課金でないと無理なのだ。彼は、掲示板でひとたび目にする用語、廃課金と言うやつだ。

特にメンバー集めに拘っていなかったが、フレンド申請しておいた。

今日は頻繁に彼と会う日だ。おまかせで入ると、またもや彼の部屋だった。僕は、適当なキャラで待機していると、普段と違うが常連のようなプレイヤーが入ってきた。そして、低ランクキャラでいいね連呼。

“コモンセンスは小学生w”

いろいろ考えてきたのであろう名前等を出し、ひたすらに罵詈雑言をコモンセンスにぶつけていた。僕は、その人のplを確認した時、直感した。
コモンセンスの味方は出来ないと─。

その後、彼は煽ってきた相手に対し、憤りを隠せなかったのか、掲示板で吐露(とろ)した。

“エターナルでブレインさんが煽ってきたんやけど。”

少し軽率な発言だったが、不特定多数にプレイヤー名を晒された僕にとってはどうでも良かった。

それを聞きつけた者達は、
“今度は常連晒しをしだしたぞ。こいつw”
と騒ぎ出した。

その人物は好かれているのか、スレはコモンセンスに対する煽り文の山となる。しかし、そんなことでは、スレ書きや自分出しを自重しない。

疲れたのか、奴らの煽りの手が止んだ。

少しして、他スレでコモンセンスが誰かと会話しているのを見かけた。記名だったが、エターナルでは見たことのない名前だ。

円満にゲーム以外の趣味や世間話をする。途中間を切ってエターナルの話になった。

やるか、やらないか。すぐに話は戻ったが、これはチャンスだと思った。

新しい名前で、コモンセンスにエターナルへ行こうとレスを送った。

再来

返信を待つ間、他の投稿を見た。僕以外にも、エターナルへ行きたいと思っていたようだ。とても都合のいい。名前には、クスノキ、その中でコモンセンスの好きなアイドル本名の人もいた。

ちょうど返信が返ってきた。

“いいよ。”

少しして、部屋IDが提示される。僕はすぐに入力し、入る。レベルの高い先客がいたが、さっきまでコモンセンスと頻繁に話していたプレイヤー名はなかった。

荒しが入ってくるのでは…と心配したが、メンバーが集まると部屋は何事もなく出発された。

終えると、先客からフレンド申請が届く。許可し、掲示板へ戻った。皆感謝を告げ、コモンセンスと記名の会話が再開された。

“ざっくばらんさんやったんやwフレンドなってたわ”

どうやらフレンド申請して来たのと記名は、同一人物だったらしい。彼は、僕の感謝投稿に対し返信した。

“@クスノキ派って何なん?”

僕は、何との対比なのかを事細かに伝えた。

その後彼は、少々あやふやな納得を入れコモンセンスとの会話に戻った。

存外、掲示板での募集は人気だったのか、記名のなでなでさんが残念そうに、文字を連ねた。

僕は、面白そうにコモンセンス達の会話を見ていると、口火を切ったように、匿名の乱入者が現れた。

話は中断され、コモンセンスは再び不特定多数の人間達と口論になる。常連を晒したことをネチネチ、ネチネチと言い出す。
常連晒しは、エターナルでのメンバー集めや、フレンド切りのきっかけに関わる。

クロコを例にすると、入った直後に解散されるとても面倒なことになるのだ。常連の殆どは、エターナルで遊ぶのがメインなため、その汚名はとても厄介だ。

責めの内容としては最高品質。しかしコモンセンスは、攻撃してきた方が悪なのだとの一点張り。どちらもひかない状況が続くと、記名の晒された本人が現れた。

ブレインは、一度もコモンセンス部屋に入っていないと伝えた。僕は、疚(やま)しい気持ちが募った。

コモンセンスにこの事を伝えなければ、ずっと勘違いしたままになる。フレンドに心の奥で謝罪しながら、彼に手紙を送ったのだった。

晒し

普段掲示板に熱中している彼は、中々返信に気付かないのだが送った直後、既読になった。

フレンドのサイキさんがブレインに成り済ましていた。長期間彼と手紙や共に行動をしていた僕にとって、すぐに分かったこと。

コモンセンスは、それを聞くと手紙を返し、幾許(いくばく)もなく掲示板に向かった。

そして、間もなく掲示板でそれを伝えた。勘違いをしていた彼に非があったのだが、晒した事を謝ろうとはしない。それどころか、なんだか偉そうだ。叩きは悪化し、収拾のつかない状況になった。

その頃、他スレを覗くと荒らしのいない平和な場所があった。雑談に相応しい、ゲームの進行度や近況報告のような何気ない会話。途中、ざっくばらんさんも参加し、とても賑やかだ。

ここは荒しとは、全く無縁な場所なのだと思った─。

ところで僕は、掲示板にサイキさんを晒すように促してしまった。そんな気は微塵(みじん)も無かったが、よくよく考えてみればそうしたようなものだ。申し訳ない気持ちが、心の中を循環する。

手紙を出してみると、彼は普段と変わらない文体で僕を安心させてくれた。最近は一切、低レベ狩りを手伝っていない。最早この手紙は、彼と僕の繋がりの命綱だ。

彼がいなければ、今までの出会いは無かったも同然。一人で寂しくゲームに打ち込んでいただろう。だから彼には感謝してもしきれない。
僕は心からずっと、フレンドでいたいと思うのだ─。

掲示板に向かうと、メリリンはいなかった。どこに行ったのかと、者共は叫ぶ。

すると、急に僕の話題になる。スパゲッティは、sである。と。何故バレたのかは分からないが、これは弁論の余地がある。折角(せっかく)、名前を変えたのにこれでは、徒労に終わる。

僕は必死に、否認した。しかし、彼らは聞いてはくれない。そして名前を変えた後は、一切荒し行為はしていない。以前晒された事で、懲りた僕は、嘆いた。

あれ程までに苦しんだ僕に対し、これ以上彼らは何を望む。僕は、そのまま返信を続けた。

自暴自棄と天敵の登場

そのまま彼らは、僕がs前提で話を進める。

“sは叩かれてから、すぐ名前変えたからな。また変えるかもしれないぞwその時は報告頼む。”

憎らしい事だ。僕が投稿するたびに、不安にさせる文が増えてゆく。この状況をどう打開すべきか…。

“コモンセンスにsて、クスノキ派は荒し軍団やないかwwエターナルで、@クスノキ派ついてたら、解散やで。この名前、くれぐれも気をつけろよ。”

その後も、どんどん悪化していく。最早、同じグループと言うだけで、なんの関係のないジャスティスさんにまで、被害が及ぶ事になった。

クスノキ派グループ解体せねば、なるまい。そう考えると、急に罪悪感が襲ってきた。グループ作成を持ちかけたのは、僕。コモンセンスに掲示板を紹介したのも僕だ。

全て自分がこの結果を招いたのだ。それらに耐えきれなくなった僕は、謝罪した。だがそれも、コモンセンスが掲示板でしてきたことについて。あくまで僕は、sだと貫かねばならない。

新しく、エターナルを純粋に楽しむ者として─。

謝罪も虚しく、彼らは批判を続けた。おかしくなりそうだ。名前を消し投稿を続けた。

“そうだ、そうだsを叩こうぜ!”

匿名投稿を助長されるだけ、だがそれでも良かった。小波(さざなみ)に行く気ままに流される。その方が楽だ。

それは、僕の心から苦しみや罪悪感を拭(ぬぐ)いさってくれた。叩かれているのは、自分ではない誰か。とても気が楽になった。

僕のアンチにやり過ぎだと非難する声が現れる。それを聞いた時、僕の熱が冷めた。疲れがどーっと体中に流れ込み、倒れるように眠りについた─

目を開き、すぐに掲示板を確認した。すると、新しいスレが立っている。昨日の今日で、僕は油断しきっていた。

“エターナルで、s=スパゲッティが荒してきた時の対処法を教えてください”

昨日擁護するものまで、現れたではないか。スレ主の名前は、記名マリモ。僕はその名前をしっかり覚えた。

そしてあの後、何があったのかを確認しに行ったのだった。


同士と鬱憤

 前の掲示板を見ると、自分と全く同じ名前の者がレスしているのが見えた。成り済ましだ。複数人がやっている訳ではない。だがそれは、とても信憑性(しんぴょうせい)を高めるものとなる。

“低レベ○魚の部屋荒してくるw行ってる間名前晒しとけなw皆纏(まと)めて荒らしちゃるからw ”

荒しはもうしていないはず、何故ここまで粘着されるのか僕には分からなかった。しかし、理由を解き明かすまでは辞められず、続きをみた。

“スパゲッティてこんな悪人だったのか。こいつは許しちゃいけねーな。”

“そうですね、新しくスレ開設して懲らしめましょう。”

書いたのは、マリモ。“エターナル荒しを晒してけ。”のスレ作成したのもこいつだった。
荒しフレは沢山いる。僕の憎むべき相手。

新しくできたスパゲッティ対処法スレに向かった。匿名投稿が名前をイジリ始めた。

“sとかw名前のセンスなさすぎやろw”雑言投稿が疎らにあり、僕のやっていたあの行為がどれだけ根深く嫌悪されるものだと痛感させられる。

途中コモンセンスが、僕の擁護に回ってくれた。この状況で信じられるのは、彼しかいない。とても頼もしい人、眩しい存在に見えた。

名前否定のレスは、どんどん増していく。“掲示板で叩かれているプレイヤーは、皆おかしな名前で、相関関係がある”と言い出すものまでいた。

続けて見ていくと、途中スレ主が顔を出した。駄スレ開設について一言謝罪を入れると、僕への憎しみを顕(あらわ)にした文を書き連ねる。

それを見た僕には、あいつは叩かれて当然だと言われたような気がした。罪悪感よりも反発したい心があった。

マリモはまず、コモンセンスに自分も同じアイドルが好きだと打ち明ける。聞くと彼は嬉しそうに会話し、僕の擁護は一切しなくなった。

懐柔(かいじゅう)されてしまったのだ。そう思った僕から、彼に対して抱いていた気持ちが全て消え去った。不信感さえ抱いた。

彼が悪い訳ではない。僕の孤独がそれを呼び込んだのだ。
 

魔女か天女か淡い光

僕は逃げた。自分の味方は誰もいないのだと思うと、苦痛でいられなかった。

こうなってしまえば、エターナルでの居場所もない。途方に暮れていた僕の目に、以前にも見たスレタイトルが入ってきた。

ここでは安全。この傷ついた心を少しでも癒やすために、僕はスレを開いた。
だがここにも、荒しの手が回っていたのだ。一人の女性の投稿が荒れる原因だった。

それは何の変哲(へんてつ)もない、ただ楽しく遊んでいる旨を伝える近況報告のような投稿だった。

他スレのように、誰かが何かをしでかした訳ではない。それらは嫉妬や憎悪に塗(まみ)れていた。

叩かれている女性は前に、掲示板でエターナル募集した時、入れなかった人。気になった僕はすぐに、コモンセンスに手紙を送った。

“あー その人フレよ”

その人も呼んで、エターナルをしようと持ちかけた。無意識のことだった。彼女とフレンドになってみたい。何かに引き寄せられるように、僕は送った。

“分かった”

手紙が来ると、すぐにエターナルへ向かう。遅れながらも彼女が部屋に入ってきた。癒やし系キャラを選択し、完了した─。

終わるとフレンド申請を送った。自分よりplが低く、他プレイヤーのように常連ではないだろう。自分が何故彼女とフレンドになろうと思ったのか、全く分からなかった。

承認されると、僕はすぐに挨拶程度の手紙を送った。

掲示板へ向かう。カルトンスレが、どうなっているのだろうかと気になった。新しいスレを立てている。プレイヤー同士で、育てたキャラクターを戦わせる対人戦募集。

以前のスレを確認すると、いいねとバッドが拮抗していた。そして、戻ってスレを確認していくと、フレンドがレスしているのを見た。

“♫楽しくエターナル♫”以前から、掲示板で匿名投稿、エターナルでもよく見かけていた人だ。

カルトンに対人戦に申し込む。
続けると、匿名が彼女に“スパゲッティ(s)とコモンセンスは荒らしなんで、関わらない方がいいですよw”
とほざいた。

鵜呑(うの)みにしたのか、
“そうなんですね。気をつけます。”と綴(つづ)った。

これは違うと、一度手紙で挨拶をいれておいた方がいいと、僕はゲームに戻ったのだった─。

心の癒やし

彼女からの手紙を待っていると、フレになったりか♪なでなでさんから手紙が届いた。
“フレンド間違いじゃないですか?私…弱っちい子しかいなくて…。お役に立てるかどうか…。うぅ…。>_<”

ゲーム内では余り見ないが顔文字使用の子、そして久しぶりに異性と話した気がする。これは、ゲーム内でのことに過ぎないが、上下関係のようなものが存在する。自分よりplの高い人間には、引け目を感じる。尊敬、いや最早、畏敬(いけい)の念すら、抱いてしまうことすらあるのだ。

それか、叩かれたのが原因なのだろう。僕はなるべく優しく接しようと、フリーランスさんの文体に似せて、大丈夫だから、気にしなくていい。と手紙を送った。

その後、フレ枠を確認しに行くと、一人消えているのに気がついた。♫楽しく~さんだ。

僕は掲示板に向かう。彼女はなんと、カルトンと何気ない会話をしていたのだ。時間も近い。僕は疎外感に苛(さいな)まれた。

ゲームに戻り、この苦痛を共感してもらおうと、サイキさんに手紙を送った直後フレ切られたと伝え、不満を漏らした。

手紙を再度確認すると、りかさんから手紙が届いていた。

“スパゲッティさんは、とっても優しいです~。あっ、甘えちゃってごめんなさい…。”

優しいと言う言葉、それは僕にとって縁のないものだ。自分が嫌われ者だとは、分かっている。掲示板での差別発言は、嫌と言う程見た。

だが、その一言はとても嬉しかった。しかし、同時に罪悪感も感じた。僕は優しい人間ではない。ただの偽善者(ぎぜんしゃ)だ。

僕の本当の姿を見た時、彼女は何を思うのだろうか─。

掲示板では、マリモと匿名が討議を交わしていた。エターナルでの低レベの迷惑さについて、お互い主張を繰り広げた。

“目標レベルを満たさないから、荒らしをされたのだ。他人任せは荒らしと見なされても仕方がない! 匿名”

“いいえ。ちゃんとレベル以上でしたよ。でもガチャ運のいい私に嫉妬してか、執拗(しつよう)以上に煽りや荒らしを繰り返してきました。
そうでしたよね?スパゲッティさん(sさん)。あなた、自分擁護に必死すぎです(笑)マリモ”

自分以外の誰かが、僕の味方をしてくれている。誰がやっているのか分からなかったが、僕の心は平穏を取り戻したのだった─。