後悔と小舟⑥

侵食してくる不信感

その日中には承諾されなかったが、次の日ログインして見ると、許可されていた。
僕はすぐに手紙を送る。ゆっくり聞いてくのも少し面倒だったため、ちょっとした挨拶と本人かの確認を率直にたずねた。

そして、名前を変えてすぐなので、僕は適当によく話すプレイヤー限定で、片っ端から変更についてと挨拶をした。

コモンセンスには少し悪い気持ちがあったが、話すと快く思ってくれた。しかし、文だけではどう思っているかの気持ちが読み取れない。その点について僕は、少しもどかしさを感じていた。

掲示板では、勢いが途絶えたようで更新されなくなっていった。名前を変えた意味は余りなかったが、喜ばしいことだ。
後は、マリモがきた時どうするか…。僕は少し考えながらもゲームに戻った。

trashさんから手紙が届いた。
プレイヤー名変えていたためか、僕が誰だか分からず疑問符を打ち付ける。

サブ垢に攻撃してしまった過去があったため、名前を教えるのは気がひけたが、仕方がないと昔の自プレイヤー名を書いて返した。

僕には疑問があった。何故、同じ目的の2人に亀裂が走ったのか。この2人の間に何が起こっていたか。付き合いは長いが、彼らのことについては知らないことばかりだ。

ところで、サイキさんには頻繁に手紙を送っていた。週に何度もなんでもない話や、不満などを語りあった。
彼の話には必ず同意していたので、何も不快に思わない。そのためかずっと会話が続いた。

今日は何故だか、掲示板の話になった。彼らのしつこさに不満を漏らす。サイキさんはそれに同調してくれた。

そしてよく行ってるのか、りかさんの話題になる。彼が発した言葉、それらは僕にとっては驚きだった。

不特定多数の人間等と同じような、不快な発言をした。否定派の僕は少し癇(かん)に障り、コモンセンスにその画像を送る。

すぐにつき、彼もそれに憤りを感じさせる文を連ねた。

そこからだったのかもしれない。
気持ちが離れていくのを感じたのは─。


約束

最近、朗報が入った。来月から新しい機能が多く実装され、アップデートすると─。
魅力はチーム機能だ。

一チームに最大30人まで入ることができ、チャットで会話等が楽しめると言う。

他にもやり込み要素が増えるらしい、これはやることが少なすぎて、苦情や非難の声が殺到したためだろう。

僕を含めてフレンドの多くは、それをとても楽しみにしていた。チーム機能、それであることを思いついた。彼女と一緒にチームを開設したい。

なるべく早めに伝えておいた方がいい。僕はそう思うと、一緒にチームを開設しないかと手紙を送った。

トップ画面に戻ると、昨日trashさんに送った手紙に返信がきた。
少し驚き気(げ)に感じたが、多くはそのことに触れず話を続ける。

サイキさんと何かいざこざがあったらしく、その文面はとても怯(おび)えていた。

少しでも安心させるために、いろいろ慰める言葉を書き並べていったが、そんなことよりも僕の心には知りたい欲求があった。

りかさんから手紙が届く。
“いいですよ!やりましょー‼”

文の後半にはメンバーの事についてで、フレンドから誘おうと決まった。だが、それではまだまだ少ない。

@〇〇とついたプレイヤーはそのチームに入るだろうし、中にはもう誘われてる者や入らない者もいるはずだ。

彼女はそれを気遣ってか、掲示板でフレンド募集すると言った。彼女のフレンド募集のid晒しは荒らしを呼び寄せる。あんなことがあった後だ、絶対よした方がいい。すぐにそう思ったが、止める言葉が浮かばなかった。

数分後には、フレンド募集の掲示板に彼女のidがのった。その時の僕は、雑談のアンチ共がそれに気付かないことを祈るしか出来なかった─

コモンセンスに話すと了承の手紙がくる。
その後にりかさんに悪いことをしたと続けた。もう考える必要のあるものではなかったが、彼は最後まで聞いてくれた。
その後、思考に耽った結果、僕が自分のidを晒して彼女の身代わりになれば、もう叩かれなくて済むのではないか?愚直な考えだったが、彼もその案にのっかった。

徒労か否か

僕は少し考えすぎていたのかもしれない。スレを立てられたこと、彼女が僕に対して悪い人ではないと言ったこと。

今の僕には彼女に心配をかけてしまった、迷惑をかけてしまった。頭の中にはそれしかなかった。彼女は何を考えているのだろうか。僕はあの人を騙してしまっている。
結局のところ、僕には荒らして悪かったと思う罪悪感が殆ど無かったのだ。

荒らしていた時の僕は常連達もしていることと言う免罪符(めんざいふ)があった。それは安心感があり、ずれてる、常連ではない、はみ出し者と言うレッテルを貼られたくない心があの行為を楽しさにさせた。

それだけでは叩かれる理由にはならず、常連達より一層なのは、ただ僕の場合は人よりもしつこかったのが原因だ。
しかし、プレビアスジェネレーションの凄さは軍を抜いており、僕の荒らし行為はあれらよりは劣ると、マシだと思っていた。

叩かれていた当時では、罪悪感よりも自分の保身にばかり目がいった。
深く思考すれば分かっていたこと。つまり僕は過去のことを一切反省していなかったのだ。
これが僕の荒らし完全引退のキッカケになると思った─

その後僕は自分のIDに書き込み、名前とメッセージを彼女と同じにして書き込んだ。

これで大丈夫だろう。コモンセンスと話しながら逐一フレンド申請を確認した。
だが、その間(かん)は来なかった。
人が集まらない時間帯だったため、仕方のないことだと思い2時間程間をあけた。

しかしそれでも、申請は来なかった。
上手い話には裏があると言うことだろうか。それとも彼らは掲示板だけで、気概がないのか。ここでは、ただの不満や不快発言を吐くだけの存在。

僕は阿呆らしくなり、コモンセンスに辞めることを告げた。このまま続けていればフレンド等にも勘違いや、荒らしの次は成り済ましかよ。と後ろ指を指されてしまう。それを危惧した。

その後、本人に一言名前を被らせていたことを謝罪し掲示板に向かう。
新しいスレが立っていた。
投稿主はマリモ/s。アイコンはマリモと同じだったため、同一だと確信した。

どうやら彼は僕と決着をつけたがっているようだ─。


爆発

このままではいつまでも言われっぱなし、僕は反撃にでた。
“マリモは荒らし。”
投稿するとすぐに匿名から返信がきた。

“コモンセンス=マリモだぞ。荒らしなのは当たり前だ。”

とても強い偏見だ。彼は純粋で、今まで毎日欠かさず話してきたから分かる。マリモなどでは断じてない。

匿名にそうでしたかと続けると、一応の確認でコモンセンスに聞いた。

すぐに知らないときた。僕は安心し、掲示板に戻りマリモへの雑言を書き込む。
マリモもそれを見て、黙っていられなかったのか、負けじと煽り文を羅列する。
 
この戦いには割り込めなかったか、スレが一面2つの名前で持ち切りだ。

僕は途中、中断し、以前のことを思い出した。荒らし系してたフレンドは、半数くらい煽り合いがきっかけだった。

僕は当て字でスパゲッティと入力し、フレなろうと持ちかけた。

マリモは別のプレイヤーに成り済まし返信した。
“弱すぎるから嫌ですw
aaaaランクキャラ全部最高レベルにしてからきなさいw サイキ”

煽ってるのが分かった。繋がりのあるプレイヤーを出されると僕としてはとても痛い。
そこをついた心理攻撃だ。
掲示板は影響力がある。すぐに埋めなくては。
頻繁に名前を変えて荒らしを行うサイキさんの気持ちを汲(く)みながらも、マリモの挑発にのった。

そして彼は、僕がのったと思うと、新しいスレを乱立させ始めた。
“ひつもん!ハレーションとパラダイムってどっちが強いの? s=スパゲッティ”

今度は僕の成り済ましだ。そして、自分が投稿したレスに自分で攻撃する。
“ひつもんじゃなくて、しつもんだろ~。s君は何やってるんだか…”
さらに呆れ顔文字を使い、相乗させる。

僕も負けじとスレを立てた。
僕ではない誰かに恨まれていると思えば、もう投稿しない筈だ。

少し若めに演じて投稿してみると、マリモは全く悪意を感じないのかレスで攻撃を加えた。

これでは駄目か…と、新しいスレでアイコンを変え、成り済ましで投稿した。

これならもう投稿して来ないだろう─僕には自信があった。



新しくはじまる毎日

掲示板に向かうと、スレ全部に同じ投稿がされているのに気がついた。

その匿名は決まって荒らしはもう終わりだと言う。新機能により、最早やり込み要素が少ないといった難点は払拭されるからだ。

これにより、何もすることがないと言ったプレイヤー達の不満がなくなることは間違いないだろう。最早掲示板に行く意味も少なくなる。雑談等は、チームでやればいいだけなのだから。

荒らしとしての注目が他へいき、叩きがなくなる。僕としては万々歳だ。

この人の発言が功を奏したのか、今日はいつもより、全体的に投稿が少なくなっていた。
僕のマリモ成り済まし投稿を見に行くと、関係のない匿名投稿が疎らにあった。

その中にマリモの投稿は無かった。前はスレが立つとすぐさまにやり返してきた筈、これも焦点が僕から新しい機能にいったことに同じなのかもしれない。

安心し、ゲームへ戻る。そして手紙をフレンドに送った。
新しいチームを作るために、メンバーはなるべく多く集めたい。

それから、僕は一人ずつフレンドに手紙を送ったのだった─。


そして数日後、とうとう実装の日がやってきた。僕はすぐさまチーム作成画面に行った。
少々開設にかかるお金はワンミリオン(100万)オール(or。ゲーム内の通貨単位)と高かったが、彼女と同じチームになれると思えば安いものだ。

チーム開設が済むと、このチーム設定を誰でもokにし、はじめにコモンセンスを呼んだ。
設定を誰でもにした結果か野良からの所属が多かった。
そして彼が来る頃には、3、4人の野良からのチーム参加者がチームリストに名を並べた。
そのプレイヤー達はチャットでの会話はしていなかったが、メンバー集まったことに対して感無量だった。

コモンセンスと会話で、チャット機能の是非を確認する。アイコン等面白い要素が多数収録されており、悪いものではなかった。適当な会話を続け途中僕は、彼にメンバー集めの協力を頼んだ。

彼は快く引き受けてくれたようで、ちょっと行ってくるとチャットを後にした。

紹介文

メンバー集めはいいものの、チーム名とチーム紹介等や、りかさんをいつ呼ぶかとまだまだ問題が山積みだ。

取り敢えず僕は、メンバーがそれなりに集まるまで彼女のことは後回しにし、チーム名を考えることにした。

エターナルアディクト。と適当に名前を決めておき、次に紹介文へ向かった。

“特に選り好みはないが、エターナル好んでプレイする方は歓迎。(りかさん大歓迎‼)”とした。

丁度、コモンセンスもメンバーに呼びかけたようで、“エンペラー弱さんとジャスティスさんは大丈夫らしいよ。”ときた。

メンバー集めは良好だ。これならすぐに20人と多くのプレイヤーが集まるだろう。

一応今のところは問題解決したので、チーム内でエターナル部屋を作りチームで出来る他機能等確認することにした。

コモンセンス以外は誰も入ってこなかったが、それでもいいと野良で募集をかけた。
その時僕は考えた。チームにはリーダー、サブリーダーと役職がある。選べるのは2人程で、サブリーダーはリーダーが決めるものだが、することと言えば今日の活動方針等をメモに書いておく程度だろう。
他に特に何もすることもないし、すぐにサブリーダーを選ぶ必要もない。しかし、選ぶとすればコモンセンスは候補の筆頭だ。

後リーダーと言えば、僕の役職は固定であるが誰かに変わってもらうことも可能。コモンセンス等に一時的な代理か、後任を頼み、他のチームを転々とし、どんなことをしているかの情報集めもいいかもしれない。

僕が思考を巡らせていると、いつの間にかにエターナルは終わっていた。チャットへ行き、アイコンで感謝を言った。

その間にも人数は増え10人を超えた。初日に作ったのが良かったのかもしれない。僕の中には、少し安心感があった。

チーム関係なくエターナルで募集をかけると、久しく見ていない名前のプレイヤーが入ってきた。

★モーギス☆だ。以前は頻繁に見かけ、僕がみかけた範囲では必ず部屋を荒らしていたプレイヤー。今回もしてくるのでは…

不安に思いながらも、でかたを窺(うかが)った。

減少傾向

今回は前とは違うようで何かをしようと
する様子は一切ない。
そして、キャラクターも常連好みのaaランクで、特技も変わったところはない。
キャラ選を終えると完了し、出発を待っていた。

しかし、最近知ってきた常連要素にすぐに完了しないと言うものがある。これは後に入ってくる即完了するプレイヤーを考えてのことだ。全員がaaランク使用に対し、何を募集しているか見ずに完了する。大体そういう輩(やから)はaaaaランクキャラ使用なのだが、概して嬉しいを連打する。周りを無視した挙げ句のそれだ。これは一種の荒らしととられても仕方がない。

弱いプレイヤーが入ってくると
★モーギス☆は待機に戻し、困ったを連打した。
今の僕はどんなプレイヤーでも構わないのだが、抜けるまでやめるつもりはないのか連打し続ける。だが全く抜けようとしないそのプレイヤーに今度はキャラクターを被せ、あなたにやっているのだと突きつけた。

気付いたのか、そのプレイヤーは抜けた。

抜けると★モーギス☆は安心し、元のキャラクターに戻す。そして、何事もなく出発した─。

戦闘中も★モーギス☆は何をするでもなく、淡々とこなしていく。
その中で何かミスがあっても適切な処置をする。その都度僕は感服させられた。

終わるとフレンド申請を送る。冷静沈着でお手本になるプレイヤー、そして今まで荒らしをしてきたプレイヤー。僕はどんな人間なのか気になった。
ついでにメンバー集めにもなるかもしれない。

チームに戻るとコモンセンス達が話をしていた。エターナルアディクトはおかしい
と、変えた方がいいのではないかと言う提案だ。

僕は新しい名前を他に任せ、エターナルに向かった─。

久しぶりにrose(seco)さんと会う。前のtrashと言う名前は精神的にも安心したようで変えたらしい。
そのまま待っていると、もう一人似たようなプレイヤーが入ってきた。gloryと言う名前で、roseさんと似たようなキャラ選、同時に完了した─。

慣れない操作、一回一回にとても時間がかかっていたので、アカウントを2つ使いながらやっているのが分かった。

告白

時間がかかりながらもエターナルクリアする。もう一つの垢に申請を送った。そして一応の確認として、gloryはサブかどうかたずねた。

少し経つと、どちらもサブだときた。どういう意味なのかは理解出来なかったが、取り敢えずgloryは同一人物だと言うことだけは分かった。

続いて彼女は昔のある出来事について話した。それはサブ垢での荒らし行為だ。以前コモンセンスに見せてもらった画像のプレイヤーはgloryだと。それでやったのだときた。

とても気にしていたようで、文面にも滲(にじ)みでていた。僕は気にしなくて大丈夫だと。安心するようにと告げる。

その後僕は、コモンセンスにそのことを告げ、いなす文を送った。時間も経っているようで、もう気にしていないようだった。

ゲームに戻ると、彼女はコモンセンスへの不満を連ねた。彼だけは好ましくないと。前に悪く言われた若しくは、彼の生意気さという原因が彼女のそれを引き起こしたようだ。

どうやら、さっき言ったのは一人で荒らしをしてしまったと言う不安から漏れた文らしい─。

このことは伝えるべきではない。僕はそれを頭の隅に追いやった。

ところで申請は受理されたのだろうか?リストを確認した。見ると、★モーギス☆は中に名を連ねている。

メッセージは初期設定のままで、キャラ設定はaaランクが多かった。僕は少しそのことについて気になり、サイキさんにたずねてみた。

★モーギス☆は課金しているのだろうかと。前に聞いた話では、クロコは課金していなかった。サイキさんは微課金だ。つまり、荒らしの殆どは無課金や微課金していないのではないか。そんな疑問だ。

手紙を送り、コモンセンスと少し話しをした。最初は課金についてだったが、途中りかさんの話に脱線する。
付き合ってと言ったが、駄目だったらしい。

彼の行動力にはいつも驚かされるものがある。だが、僕はそう思いながらも心の奥底では焦りや不安が立ち込めていた。
何故この感情があるのか。どうすればこれを消せるのか、今の僕にはどうすることも出来なかった─。

過去の因縁

手紙が返ってくる。付属としてつけたaaランク最高レベルだったことを踏まえてのこたえだったが、それだけでは情報量が少ないとの判断に至ったようだ。
矢張り、aaaaランクキャラの情報が欲しい。

手紙のやり取りを終え、僕は考えた。そろそろ彼女を呼んでもいい頃あいではないか。すぐに僕は彼女に手紙を送り、チームへ向かう。

チャットではチーム名が決まっていた。
“ミーク”はどうかな。ジャスティスさんが決めた名前にコモンセンスらチャットするもの達は賛成の声をあげた。

異論はないとすぐにチーム名をそれへ変更した。りかさんからの手紙も丁度届いた。
今は山犬隊にいるとのことだ。

最初に約束したことについて、疚しいと思ったのか謝罪し、チームはもっと後でやろうと言った。掲示板のこともあるからと言うことなのだろう。コモンセンスも同チームにいることだし、僕の考えは時期尚早だった。
しかし、彼女と同じチームにいたい。僕はそう考えていた。自分も一緒のチームにはいれてもらえないだろうか?リーダーに頼んでくれないだろうか?
僕はその思いを手紙にだして彼女にきいた。

掲示板チームと言うこともあり承認制なようで、リーダーに聞いてみるときた。
僕は嬉しかった。ようやく彼女と同じチームになれると思うと─。

僕はチームに戻り、リーダーを代わってくれないかと聞く。すぐにコモンセンスがなりたいとくる。僕はリーダーを彼に選び、チームの紹介文やその他諸々の設定等を好きにかえていいと伝え、一時的に脱退した。

山犬隊のチーム加入画面まで行き、僕は
メンバーを確認する。掲示板の記名達の名前は無かったが、全員仮名を使っていたことがすぐに分かった。そして、中にりかさんの名前があり、僕はひとまず安心した。

承認制となっていたので少し時間がかかるだろう。承認を待つ間、僕は掲示板に向かった。

そこには掲示板基地〇ランキングと言うものがたてられていた。今までの総まとめのようなスレで、中には掲示板で叩かれてきたプレイヤー達、記名が名前を連ねていた─