世界の全て⑥

世界の全て

数字ヒーロー①

今日もこの世界のどこかで差別が行われている。

そんな時、決まってあらわれる男が居た。

人は彼のことを「ナンバーマン」と呼ぶ。

───────

二人の男が、マンションの前で話をしていた。

「そういえば、こんな話知ってますか?」

「なんですか?」

「マンションって、04号室がないとこ多いんですよ。」

「へぇ。そうなんですね。」

「4は死ってとても悪い意味があって。」

「とても嫌われている数字なんです。この数字には気を付けた方がいいですよ」

「分かりました。気をつけます」

すると、「まてー」という声が、頭上高くから聞こえてきた。

男達はその声に驚いて口をあんぐりとあける。

「き、君はなんなんですか?」

すると、彼は答えた

「数字界の平和は俺が守る!ナンバーマンだ!」

男達はハテナで1杯になる。

「テトラフォビアにはさせないぞ!」

そう言って、ナンバーマンは語りだした。

「4は悪い数字ではない。差別を止めに来たんだ。」

自分達は差別なんてしていないと言うなか、ナンバーマンは、

「数字を差別している。 4と言う数字が嫌いなんだろう?」と。

すると、男は「4は死を連想させる悪い数字だから仕方ない」と言う。

「俺がいい意味を教える。」

4番バッター、これは期待されるもの。」

しかし、男は「味方側にとっては、いいものだが、相手側にとっては嫌なものだ!」

「しかも、やられる側とやる側の立場、やる側の方が確実に悪いのだ」と聞く耳を持たない。

しかし、ナンバーマンは終わらなかった

「それ以外にも沢山ある。四神、四天王、スートに書かれたマークの数、1以外の素数ではない最初の数など数えればきりがない程に。」

すると、男は「うぅぅっ…」と、弱々しい声を出して、4を悪い数字だと言ったことをあやまった。

「この世に、数字差別がある限り、それに立ち向かう!」

そして小さな声で「大丈夫だ。これからしなければ…」と呟くとどこかへ飛んでいく。

──────

この世には、トリスカイデカフォビアや、ヘクサコシオイヘクセコンタヘクサフォビアと言った恐怖症が存在する。

しかし、その数字達が悪いものではないと皆に知って欲しい。

一つ一つの数字はとても貴重で、なくてはならないもの。そこには多くの意味が込められており、どれ1つとってもいけない。

だからこそ、差別をなくして、数字界に平和を取り戻すんだ─────

4、13、666など、これらの数字は差別されるべき数字。しかし、これらの数字だけではない。

他にも多く存在する、差別されるべき数字は。

そう考えた男は、人が集まる広間で、主張を繰り広げた。

「4、13、666は悪い数字、これは言わずもがなだが、それ以外にも悪いものは存在する」

足を止める人達にえくぼを作った。

「それは、4が含まれる数字、4になる数字だ。」

分からないような顔をしていたので、例をあげて説明する。

「前者は、1の位、10の位…に含まれれば、それらは全て悪い数字、つまり、156409という数字があったら、100の位の4のせいで、これが悪い数字になる。と言うことだ。」

止まった人達は歩き出した。

残った人がいるので、また彼は続ける。

「次に4になる数字、これは13もそうだが、22が簡単な例だろう。2×2で4、2+2で4になる。この2つの数字で差別される数字になるんだ!」

それを聞いて、止まっていた人達は全員歩き出す。「気にしすぎでは…?」と言う人も居た。

だが、歯止めが効かなくなったのか、まだその主張を続ける。

──────

そこへ、ナンバーマンがやってきた。降り立つと、近くに居た人に取り押さえられた。

「来たなナンバーマン!噂は聞いていた!」

リーダーの男は笑いながら近付いてくる。

「毎日の訴えで、人を集めて、私は数字差別許容組織を設立したのだ!」

「うっ…」

ナンバーマンがそう言うと、更に笑いが込み上げてくる。

「ナンバーマン、君の噂はかねがね聞いていた。数字差別は許さないんだってね。」

動けない様子をみて、はは。と笑いながら続ける。

「これから我々は、4、6、13、そしてこれらに関係するものを全て廃止し、もし、それらを口に出せば罰則する。そんな世界を創造するのだ!」

「そんなことはさせないぞ!」

バタバタと動き回るが、手がほどかれない。

すると、数字差別許容組織の人達が何やら分厚い書物を持って、ナンバーマンを囲んだ。

ページを開いて読み始めた。

「4は悪い数字であり…」

そこには多くの数字差別が綴られていたのだ

──────

それを読み終える頃に、ナンバーマンはボロボロになって下に崩れる。

「ナンバーマン、お前はもう私たちの崇高な数字差別を止められない。」

ナンバーマンは小さい口を開けて、4は悪い数字と呟いた。

それをみて、リーダーの男は大きく笑って、ナンバーマンをそのままに、帰っていった。

残された彼はまだ数字の差別をブツブツと言っている。

この世界は数字差別許容組織に支配されてしまうのか?

どうなる?ナンバーマン!

数字ヒーロー②

人が多く通る街中、そこには、小声で呟く1人の男が居た。

彼の名はナンバーマン。

誰も彼も、倒れるヒーローを気にかける素振りすら見せず通り過ぎていく。その中、ナンバーマンは小声で呟いていた。

4は悪い数字…13は悪い…

しかし、彼の脳内では、過去の記憶が何度も自分のことを呼びかけていた。

そう、それは、ナンバーマンが子供の頃の事だ。

算数が楽しくて、何度も何度も足し算をした。計1000問以上。

あの時は同じことの繰り返しのはずが、楽しくて楽しくて仕方なかった。

自分は数が本当に好きなのだと。

ある時、数について、4は嫌な数字だと何度も聞かされた。

子供だったナンバーマンは、数字に悪いことを言われて、自分のように悲しんだ。

「どうして、そんなに悪いって言うの…。」

お母さんにこの事を話すと、4は「死」という悪いイメージから、忌み嫌われている数字なのだと教えてくれた。

その後の母の言葉を今でも忘れない…。

「けれども、いい意味も沢山あるから、あなただけは嫌いにならないであげてね…」

───────

それが何度も何度も頭の中を巡ってきた

そして、ハッと目を見開く。

「復活!ナンバーマンは絶対に数字を嫌いにならない!」

そして、さっきの数字差別許容組織のアジトを探しに行った───

一方、その組織では

「ナンバーマンが居なくなれば、もう怖いものはない。」

「4歳、6歳、13歳、14歳…40代などとにかく4に関係するもの。それら全員逮捕し、数字革命を起こす。3の次は5と言ったようにな。」

「そうなれば、世界はより良くなるんだ。」

ふふふと笑っていると、「待てー」という声が聞こえた。

その方向に顔を動かす。すると、そこにはナンバーマンの姿があった。

「させないぞ!数字差別許容組織!」

しかし、余裕の構えで待っている。

「この人数をどうするつもりだ。マイノリティ。」

だが、ナンバーマンは、その数に動じていなかった。

「君たちは、4に関係するもの全部嫌いだと言っていたね」

リーダーの男は「あぁ。」と言った。

その顔はとても自信に満ち溢れている。

ナンバーマンの表情にも余裕があった。

「4で割り切れない数字は存在しない。その分類の中では、全てが4と関わりを持っているってことだ!」

「それがどうした。」とリーダーの男は言うが、他の人達は違った。

「自分も4に関わりを持っている!?」そう言って慌てふためいている。

そして、一人が逃げ出したと同時に、リーダーの男を残して、ナンバーマンと1vs1になった。

「何故…?」

リーダーはそういうとナンバーマンが答える。

「君は分厚い書物の中でこう言った。4、13、666に関係するもの全てが悪になると。それは、4で割り切れても例外ではない。」

「大きな括りの中では、数字は全て関わりを持っているんだ。だからこそ、一つ一つがなくてはならないかけがえのないものなんだよ。」

それを聞いて、必死に抵抗するが、ふと昔のことが浮かんできた。それは、彼がその思想を持ったきっかけ─────

子供の頃、僕はいつも出席番号4番だった。

それについて毎回のようにみんなに笑いものにされた、避けられた。

4番に交えた変なあだ名の数々。どうしてなんだろう。悩んだ。

そして、ふと思ったんだ。4という数字がいけないんだって。

4という数字が無ければ、悪い数字が無ければもうこんなに悲しい思いもしなくて済むんだ

そう考えたら、4がとても憎らしくなったんだ。

そこから、僕は悪い数字批判の文を毎日のように書き連ねた────────

リーダーはハッと目を覚ますと、地面に倒れていた。

あたりを見渡すと、目の前にナンバーマンが手を差し伸べている。

そうだ、自分はナンバーマンの数字肯定にやられて倒れたんだ。

シックスマン、13星座、トランプのスートは13枚など色々良さそうな意味が沢山隠れている。

自分は知らなかったんだ。悪い部分しか見えていなくて…いいや、気付かなかっただけなのかもしれない。いいものっていうのはいつもそば近くに隠れていることを。

「なぜ、手を差し伸べるのか」

リーダーの男がたずねると、ナンバーマンは言った。

「どんな形であれ、お互いに数字を愛するもの。それなら、ともに数字差別をなくしていこう。」

リーダーの男の頭の中には、4のことで沢山嫌な思いをした過去が浮かんでいた。

もし、4がいい意味になれば、自分は悲しい思いをしていなかったのでは…

そう考えた直後、男はナンバーマンの手をはたいた。

そして、「数字許容組織は終わらない」と言って去っていく。

ナンバーマンはそれを見て、はははっと笑った。

「君なら大丈夫だ…。」

そう言い残して、その場から飛んでいった。

数字差別あるところにナンバーマンあらわれる。

彼の戦いは、数字差別が無くなるまで終わらない。

頑張れ!ナンバーマン!!

他の世界

ある日、私は見知らぬ本屋に寄った。

好奇心で、色々に本を見回ったが、普通の本屋と変わらず、有名な本などが並ぶ。

少し拍子抜けしていた。

しかし、その一角に、不気味に積まれた本の山があった。聞いた事のない題名に、作者不明のそれらに、私はなぜだか興味を惹かれる。

その内の1冊を手に取ると、パラパラとめくった。

そこには、色々な話が綴られている。読み終わったら次の本と色々に見ていった。

梶野亜星という男の葛藤の話、ある星の神話、自分が望むことなどさまざまだ。

聞いた事のないそれにそそられて、更に他の本をとって読む。

パラパラめくっていると、それが中途半端なところで終わったので、更に近くにあった「2」と書かれた続きの本を手に取り、まためくっていった。

───────

その話は、全3巻までで、完結していない。しかし、どこか懐かしいような、少しの不安があるような不思議な感覚にさせられる本だった。

私は、そっとその場で目を閉じて、さっきの話を思い返した。

まず、はじまりは一人の子供の話だ。ある日決心をして、自分だけのグループを作ると。

それで、段々とメンバーが増えてきて、ある日、とても悪い敵がでてくるんだ。

大衆を惑わそうとしてくるそれを倒さなければ。その子は、そう思ったが、中々できないんだ。

人をたらしこんで、自分の味方にしてしまったから。罪もないその人を、巻き添えにはできなくて行動をおこせなかったんだ

しかし、ある日、そのチャンスがやってきた。

その人を、悪い敵が殺してしまったんだ。自分の味方であるにも関わらず、気に入らないと…。

そこで、大義名分をうけたが、逆に悪い敵は少年の仲間のせいにして逃亡した。

そこからは大分と大人しくなったが、たまに前と同じように悪いことを言い惑わしている。

許せなかったので、何度もチャンスを待った。でも、中々いいタイミングは無くて、何年も経って大人になった時、また仲間を入れようとしていたんだ。

その人を悪の道に進ませてはいけない。そう考えて、自分のグループに入るように進めている。

そこで本は終わった。続きがどうなるのか気になったが、店の人に聞いても置いてそうにない。

読み終わった時、いいや今も続いてるこのノスタルジック?デジャヴ?かは分からない不思議な感覚はなんなのだろうか。

私はとても気になって仕方がなかった。

そして、本屋を出た。

ふと、ある人のことを思い出してつぶやく。

「かぎゆいいつさん」

何故だろうか。その時の私には見当もつかなかった。

そして、もう一度この本屋、もっといえば、あの本に出会う気がしていた。

─────

おかえりなさい

秋が過ぎ、冬がやってきた。

朝が短く、暗闇が長い。

あたりは静寂に包まれ、あの時の楽しい日々が嘘のように、心の中に寂しさが残っていた。

彼女が居なくなってから、自分の時はずっと止まったままだ。

多くの場所で誰かが、後ろに振り返るなと言う。しかし、自分は振り返ってばかりだ。


忘れ物をいつも取りに帰って、もうそこにはないものを必死に取ろうと頑張って、何も持たずにまたどこかへ旅立つ。

そして、また戻ってくる。何度も何度も。

その繰り返しだ。

君との日々をもう一度歩みたい…そう思えども、あの日はもう戻ってこない。

どうしてあの時こうしなかったのか、どうしてあの時…自分はそう後悔してばかりだった。

もう一度君がそばに居ても、幸せにしてあげられるかどうかなんて分からない。でも、心が求めるんだ…。

ずっと君と…。叶わない夢だが、その夢を見ていたい。

辺りを見渡すと、ポツポツと明かりがともっていた。

自分の心を皮肉るようにとても眩しくて、より一層、孤独が増した。

彼女のことがどうしようもなく好きなのだと。

だが、そっと明かりの方を見つめてみた。

そこには、とても明るい世界が広がっていた。

そうだ。暗闇でしか、人は明るさを知ることは出来ないのだと。

そっとその方向に近付いてみると、明かりは段々と明るさを強くして辺りを包み込んだ。

それはとてもいい心地だった。自分の全てが許されるような…

しかし、自分の気持ちは変わっていない。何かにのめり込んだとしても、彼女を忘れることなんてできない。

どれだけ有名な人が、過去に囚われず生きることを勧めようと、前に進むことを言おうとも、自分は、何度だって戻るんだ。

彼女と過ごした幸せな時間を嘘にはできないから───────

辺り一面は、明るさに彩られていた。

とても眩しい。太陽が真上にのぼってくる。

「これじゃあ、気付かないな」

そっとつぶやいた。

辺り一面はとても綺麗なのに、まだ心の中は、孤独で一杯だった。

───────

ある日、空は雲で一杯に包まれる。世界は真っ暗になった。

こんな日になると思い出す。彼女のことを。

世界が真っ暗になった時、一輪の希望のように、咲き開いた。

何度だって、思いを馳せたあの時のことが、ありありと浮かんでくるような…。

そっと頭上に手を伸ばした。すると、ぼやけて、彼女の姿が見えるようだった。

思い切り手を伸ばす。しかし、それにふれた瞬間、夢のように、彼女の姿がなくなった。

夢から覚めたのかもしれない。しかし、それがより一層、自分の心を孤独にした。

目から涙がこぼれる。

すると、明るい蛍の光のようなものが頬をふれた。

とても冷たい。雪だ。

「綺麗…」

思わずそうこぼす。

冬の時期に見える特別な結晶。世界をまた違ったものへと彩る。

降ってくる雪は、なんのまじりけないとても綺麗なものだと思った。

雪、いつもパッと消えてしまって、1年、いいやそれよりも長く来ない時もある。

でも、いつか必ず戻ってくる。

「あぁ、そうか…」

頬に笑顔が戻った。

そっと顔を下ろした。

すると、再び涙が溢れてくる。

ただ、一言だけ「おかえりなさい」と。

秋は過ぎて冬がやってきた。そして、また春が近付いてきた──────

現実と妄想

世界には2つのものがある。

それは現実と妄想だ。前者は、変えようがない今の世界。後者はその人が作り出した想像の世界。

2つの世界はお互いに干渉しあって、妄想は現実に、現実は妄想に変わることがある。

ところで、過去と未来は現実なのだろうか?それは僕の永遠の命題でもある。

───────

ある日、僕は外を歩いていた。

すると蝶々が目の前を横切って、下に降りていったので、指の上に乗せようとした。

しかし、間に合わず、くしゃりと音を立てて地面に落ちる。

そこで、僕はそれが葉っぱであることに気がついた。


また歩いていくと、木が人間のように見えた。手を伸ばして誰かに助けを求めている。

そんな感じがしてならなかった。

通り過ぎようとすると、その木の方角から声がした。人の唸り声だ。

振り返ると、とても苦しそうに僕の方向に手を伸ばしている。

ボソリと「まぁ、そんなことは起こりえないんだが」と言うとパッとそれらが消えて、元の木に戻った。

また歩いていくと、自分の夢をみんなの前で語っている人が居た。

それに辞めておけと言って止めようとして来る人がでてくる

すると、また止めようとしてる人を止めようとする人がでてきて、それをまた止めようとする人が、そのまた後も止めようと…。

僕はボソッと呟いた。

「まぁ、そんなことは起こりえないんだが」

すると、またその止める人達は消えて、夢を語る人だけが残った。

────────

途中で、僕は、なつかしい過去のことを思い出す。

相手はこう思ってるんじゃないか…?嫌われてるんじゃないか…?そんなことを考えて、毎日を過ごしていた。

それが原因でか、人との会話を取らなかった。でも、ある日、単刀直入に聞いてみたことがある。

しかし、その人は、嫌いではないと言った。

その時、彼は嘘を言っているのだと考える。人の前で平気で言えるはずがない。お世辞を言ったんだと。

しかし、数日経って、ふと気がつく。どちらも考えてるのは一人の人間だと言うことを。

もし、戻れるのなら、このことを伝えてあげたい。

────────

そして、僕はまた歩きだした。

通りすがりに、とても幸せそうに、手を組んでいる人が居た。

何をしているのかと聞くと、想像しているのだという。

宝くじで、1等が当たった時のことを考えてとても嬉しくて、それが表情に出ていたのだと。

しかし、僕は思った。

この人に宝くじが当たることはないだろう。何故なら、もう起こってしまっているから。

通り過ぎようとしている時、電話がやってきた。それにとても驚いた様子だ。

宝くじが当たったのだと呟いて、とても喜んでいる。

僕は、それに少し驚いて立ち止まった。しかし、そういうこともあるだろう。

そう思い、再び歩き出した。

自分には、物欲がない。全て叶えられるからだ。どんなものにもなれるし、どんなことでもできる。

それは、誰にだってできるのだ。

歩いていると、今度は雨が降ってきた。しかし、降っていない場所と降っている場所があって、僕は後者へすぐに向かう。

「まぁ、そんなことは起こりえないのだが。」

そう言うと雨は嘘のように消えてなくなり、近くに泣いてる小さい子供が現れた。

そういえば、妄想した起こらなかった世界はどうなっているのだろうか?

頭の中で起こっていたそれも、考えていないだけで、存在する未来なのだ。

世界線と言うものがある。もしかしたら、その妄想の先も、ストーリーが続いていて、全く自分とは異なった未来を歩んでいたのではないか?

いいや、それは、創作の領域だ。

そう考えていると、前に見た人のような木が見えてきた。

いつの間にか、元の場所に戻ってきたようだ。

しかし、その木の近くに、女性が立っている。

彼女は、人目をはばからず、木に向かってこう言った。

きっとこの木はとても凄い木です…。

色々な災害や、生き物によって酷い目にあったけれどただひたすらにその体を伸ばして、今、生きている。

それを聞きながら、僕は通り過ぎて言った。

「まぁ、人それぞれあるってもんだ。」

本題に戻るが、過去と未来、それは現実なのだろうか?

僕は、これに妄想優位か、現実優位かなのだと考えていた。

しかし、全てが妄想で、全てが現実なのだと心の中で納得した。