世界の全て⑧

神のお告げ

彼の後をついて行くと、加木さんと合流する。

経緯を説明し、彼が足を止めるまで3人でついて行った。

─────

あおしさんが、歩いていると、向こうの道路から右に、3つ通り過ぎる影を見た。

それにチラリとみると、真子さんの姿が見える。

そして、井知の姿も。

「何故…?」

彼はそう言って、頭を抱えた。

────────

どこか、公園のような場所に到着すると、赤野さんは、「ここで話がしたい」と言った。

「話…?」

それに頷く

「はい、この世界は、1人の神によって作られていることを」

それは、集多さんのことだ。私はすぐに分かった。

「なので、加木さんの考えは間違えている…と?」

「話がはやい

異端とされるものは、排除しなければならない。」

そう言って笑った。

「その前に、本を書いたのはあなたか?」

加木さんがそう言うと、彼は女性と自分の姿を思い浮かべる

「えぇ、そうです。」

その声に、見つけた。

そう思ったが、彼をどうしたら辞めさせられるか?その方法がなかった。

「私は、神から力が授けられている。」

「それは…?」

「神のお告げ。私には、その力が授けられました。

小さく声が聞こえてくるんです。加木という反逆者がやってくることを何度も何度も。」

彼が言うことは本当だろうか?私はそれを知るのが恐ろしかった。

本当であれば、自分達の言ってることは全て嘘であり、彼や、あの宗教こそが正しいことになる。

加木さんはどうだろうか?

隣を見ると、「凄い!」と言って、目をキラキラ光らせてる彼が居た。

彼は信じている。それが嘘か本当かはまだ分からないのに。

すると、ハッとした。彼の原点の思想、それは、この世界に間違いはないということ。

彼の言ってることもそれは例外ではない。

自分がしっかりしなければ…。

私は思い切って「では、勝負しよう」と言った。

「なんの勝負ですか?」

私は下に落ちていた、子供が落として行ったのであろうサイコロを拾った。

「10回中、何回、目を当てられるかの勝負だ。」

「もし、5回以上当たったのなら、あなたが神のお告げを聞いていることを認めよう。」

「しかし、当たらなかったら、お告げは嘘ということで、加木さんのことを書くのをやめて欲しい。」

そう言うと、「勝負になりませんよ。事実なのですから。」と余裕に構える。

「それなら勝負開始で行こう。」

私がそう言うと、「全て当てます」と話す。

「まず、最初はなにをひく?」

「2です」

そうして、私はサイコロの目をふった。

すると、彼の言った通りの「2」の目がでる。

「私の言った通りの目が出たでしょう。これで、嘘ではないことが証明された。」

彼がそういうのを遮るように、「まだ9回残っている」と言った

「次は?」

「6です。」

すると、また彼の言った通りの数字が出る。

少しの焦りがあったが、自信は変わらず心の中にある。

「次は?」

「3ですね。」

すると、サイコロは、4の目を出した。

「な…!?そんなはずは…。」

彼の表情に焦りがみえた。

サイコロは、6分の1の確率で、簡単に数字をひきやすいものとも見える。しかし、1回、2回と増えていくにつれて、それでない確率はとても高くなる。

3回目に行った時はもう100回以上に1回当たるかどうかの確率に。

そして、自分の実力を過信して居るものほど落ちていく。

「1だ!」

「5ですね。」

最初がどれだけ良かろうと、後半も全て良くなる訳では無い。

「6だ!」

「2です!」

それからも、3回間違えて、私の勝ちとなった。

「そんな…そんなはずはない…。」

自分の信じていたことを裏切られた。

とても悲しい人のように思えて仕方ない。私は心の中でそう思った。

もしかしたら、あの占いにハマっていた物語のキャラは、彼自身だったのだろうか?

彼は、その井知の考えをよそに、昔のことが頭に浮かんでいた────

聞こえない声

私には大切な人が居る。

この人をずっと守っていきたい。

そう思っていた矢先のこと、ある日、彼女は私の前から姿を消した。

どうして…?私はとても悲しくなった。理由も分からず、ただ、一人ぼっちになってしまったんだ。

それから、占いにハマった。何も無い自分には、オアシスのように感じられる。

自分の寂しい心を、その言葉で癒してくれる時間が、その時の私にはとてもかけがえのないものだった。

しかし、闇は段々と私を侵食してくる。

それは、期待と裏切り。

仲の良かったあの人が今日、戻ってくる。私はそれを聞いて、もしかしたら…そう思って期待した。

けれども、待っても待っても、彼女が戻ってくる様子はない。時間が経つにつれて、前の占いが嘘であると心の中で思った。

けれども、私はそれを捨てられない。頼りになるものが、すがるものがひとつも無かった。

ずっと葛藤していたそんな時に、宗教家がやってくる。

私の困った表情を見て、私に手を伸ばしてくれたのだ。

それから、ある日、私は、宗祖であり神である集多さんとすれ違った。

その時、感じたんだ。

とても小さな声で、私に話しかける声を。

私はすぐに分かった。

あの方、いいや、神様からのお告げであることを。

私はそれが聞こえてから毎日、その方へと耳をすませた。

すると、段々とその声が何を言っているのかが聞こえてくる。

「今日かぎやってくる。あの人との思い出…」

私はそれを毎日聞いた。

かぎとはなんなのか?

私は周りの人に、それについて聞いてみた。

すると、決まって「反逆者」だと言う。

今日、反逆者がやってきて、あの人との思い出を壊しにくるのではないか…?

私は震えた。

すぐに、本に、今の気持ちと、あの人との日々を書き綴った。

彼女の顔が段々浮かんでくる。

私は彼女が居るだけで、それで良かったはずだ。

しかし、いつの間にか、私の中の欲求は、それだけでは満足できず、多くのことを求めていた。

それが得られないと、なぜ?こんな理不尽はない。そう言って、傷付けた。

彼女の姿がありありと浮かんでくる。

微笑んで発するその一言「ありがとう」がとても私の心を締め付けた。

私は今までいつも、求めすぎたんだな…。と悲しくなった。

その姿を書き記すうちに、もう一度会いたい。それが言葉になって、よどみなく何度も何度もあふれでる。

そうだった。私は今の今まで、神のお告げなど聞いていなかったのだ。

ずっと彼女の声を聞いていた。

もう一度、一緒に居たい…

その自分の気持ちを──────

意識を取り戻すと、全員、ただ、こちらを見ていた。

見守っていたのだ。私が過去に浸っているところを。何をするでもなく。

「気がつきましたか?」

井知が歩み寄る。

「私の負けだ。もう本は書かない」

そう言って、彼はその場に座り込んだ。

すると、加木さんは、「そうはしなくていい。書きたいなら書き続けていいんだ。」

「どうして?」

井知はそれにとても驚いていた。

「その人がそれを本当にしたいと思っているのなら、俺はそれを止められないから。」

私は「ありがとう」と、涙を流して、その場を後にする。

──────

宗教の施設にばっかり居て、家にはずっと帰ってこなかった。

そこで私は少しずつ、彼女のことを書いていこうと思う。

あの人は居なくなっても、私の心の中に居続けるのだから。

あの時の喜びはいつも、ずっとすぐそばにある。

家に到着すると、玄関に、見知らぬ靴が置いてあった。

私は何も考えることなく、靴を脱いで家の中に入っていった。

そして、ドアを開ける

すると、奥に、椅子に腰をかけて、眠っている女性の姿があった。

私はそれを見て、涙があふれてきた。

彼女は寝言で「ありがとう」とつぶやく。

その一言に、私が聞こえていたあの声はもう二度と聞こえなくなった。


──────────

もう1人の作者

赤野さんが行ったあと、加木さんに話した。

「彼が辞めなければ、ずっとあなたは困ることになるのでは…?」

すると、落ち着いた表情で言う。

「大丈夫だ。誰がなんと言おうと、自分の歩んで来た道に間違いはない。

誰になんと言われようとそれは変わらない。」

彼はそう言って笑った。

強い人。

私は心の中でそう思った。

──────

その後、真子さんと別れて、本多さんの家に向かった。

彼は今日のことを報告するという。

前に彼女は、こころなしか、とても冷たい目で見た。

何があったのだろうか?

そして、今回、行っても大丈夫なのか?

そんなことを考えていると、到着する。

しかし、彼女はいつもと変わらない表情で私達を迎えた。

私の気のせいだったのだろうか?

「今日はどうしたの?」

彼女はそう言って迎える。

「神のお告げを聞くって人にあったんだ。」

「そう。また変わった人に会ったのね。

変わった人は皆、あなたに引き寄せられるのかしら?」

そう言って笑った。

すると加木さんは「もし、俺が磁石なら、S極、N極じゃあ全然足りないな。」と言う。

彼女は「そうかもね。」とまた笑った。

「あの!盛り上がってるところ申し訳ない。」

私は話しに割り込んだ。

「本多さんは集多教について何か知ってますか?」

彼女はそれに少し驚いていた。

「知らないよ…」

そう言って、少し悲しい表情を浮かべる。

加木さんはそれを見て、私を連れて、そこから離れた。

───────

その事について何故かと聞くと、彼は昔のことを話した。

─────

小さい頃、彼は、ずっと人に考え方を言っては間違えていると批判されていたそうだ。

けれども、その考えを辞めず、批判する人達には、とても強い自分の考えへ肯定する姿勢をみせた。

その中で、1人だけ、彼の考えに対していつも否定的であり、肯定的な人物が居た。

それが希望さんという人。

希望さんはいつも、考えに面白いと言ったり、それは違うんじゃないかなと、彼のことを冷静に分析した。

加木さんはもちろんのこと、本多さんも彼に惹かれていたらしい。

今でもその人と関わってるのかと聞くと、彼は少し暗い表情を浮かべた。

希望さんはある日、亡くなってしまったのだ───────


この世界には、絶対的な1人の神様が居る。

けれども、それは、その時間だけの絶対的なものであり、時が経てば、神様は新しいものへと変わる。

受け継がれるのか、剥奪されるのか?それによっても変わり、絶対的なものはその世界において絶対的なものでしかなく、淡く脆いものだと。

関係ないことだが、創作はとてもいい。その世界を自由気ままにでき、登場する人物は皆、自分の思い通りに動いてくれる。

しかし、現実はどうだろうか?自分の思い通りにはならず、いつももどかしい思いを募らせてばかりだ。

だが、そんな現実をとてもいいものと思っている自分もいる。何故、思い通りになる人形遊びを人は辞めてしまうのか?

それは、思い通りになる今よりも、全く思い通りにならないそれの中にあるとても貴重で不意に出てくる喜びを、とても大事に心の中にとってあるからだ。

創作は、その人の中で、決まりきったものでしかなく、現実より多くの感動を与えてくれはしない。

けれども、創作は現実であり、現実は創作だ。

もう1人の作者が新しい感動をみせてくれることもある。

それが同じものであるか、違うものであるか。そして、受け継がれていくのか、そうでないのか。

なるべくはずっとそこにあって欲しいものである。

─────────

希望さんのことを聞きたいと思う心もあったが、彼の表情を見るに、聞いてはいけない話題なのだろうと、胸底にしまった。

ところで、あの本のことは、どうなったのだろうか?

今ではもう知る由もない話題にすぎないのだろうか──────

過去①

私はどうしても、二人の関係、そして、希望さんのことについて気になったので、本多さんの家によった。

1人ではと、真子さんがついてきてくれた。

「今日は知らない子も居るね。何の用?」

そう言って、本多さんはこちらを向く

「この人は私の同級生で、集多教の信者の1人です。」

それに少し驚いた表情を見せていた。

「あなたもその宗教に入信したの?」

私は首をふる。

「そう。」

「今日は、希望さんのことについて聞きにきたんだ。」

私がそういうと、少し怖い表情に変わった。

「分かった。いずれ、誰かに言わないといけないことでしょう…。」

彼女はそう言って話しはじめた。

───────

彼と出会ったのは小学校の時。

私は彼に一目惚れしたの。

優しくて、いつも元気で、嫌われていた加木くんとも仲良くする彼が。

でも、私が好きになったのは、それだけじゃなかった。

ある日、彼と加木くんが一緒に帰ってることがあって、私もそれについて行ったの。

その時、彼はずっと加木くんの話をとてもキラキラした笑顔で聞いていたの。

加木くんの話を自分のように受けとめて、真剣に話す彼のことをとても好きでいたように。

人の笑顔が好きなんだって。私は思った。

それで、歩いている時にね、困ってる人が居たのよ。友達よりもってかけよって助けてあげてたの。

とても優しい人だなって、彼のことを王子様のように感じていたわ…。

でも─────

加木くんが彼のことを…

そう言って、彼女は目を逸らした。

私はそれがどうも信じられなかった。

この世にはもういない人物だったなんて、そして──────

真子さんと、少し話しながら家に帰った。

「加木さんって人と集多さんとは、そういうことがあったから、宗教に入れたくないのかな…?」

私は首をふる。

「分からない。当時に何があったのか。そして、何を信じればいいのかも…」

心の中にあった加木さんへの気持ちと、その事件のことについてで葛藤していた。

「そういえば、罪を犯したのだったら、彼はどうして捕まっていないのかな…?」

私は彼女の一言で、ハッとした。

「ありがとう」と言って、すぐに家に帰る。

ネット検索、新聞などで昔の事件について探した。

その最中、あの物語が私の頭の中に何度も何度も現れていた

─────────

そして、長い時間が経ち、ようやくのことで発見する。

「これだ。」

私は、それをみて少し心の中で安心していた。

「彼は罪を犯してない。」と。

しかし、少し悲しい気持ちもしていた。彼が生きていることを心の中で望んでいたからだ。

そしてすぐに、また外に出てどこかへ向かった

家には、獲尾他(えおた)という人物が書かれた新聞が置かれていた

───────

本屋へ少しよって、一冊の本を買う。

そして、片手にそれを持つと、再び本多さんの元へ向かった。

そこには丁度、加木さんも居た。

少し焦っていたため、「騒がしいね。どうしたの?」と本多さんは言う。

「今日は伝えることがあって来た。」

「何?」

私は思い切って言った。「この本を書いたのは、本多さんでしょう?」

「えぇ。そうよ。」

その返答に拍子抜けした。

加木さんは少し驚いた表情をしている。

「私も、集多教に入信しているわ。それで、本を書いているの。」

バサッと置いて、日記や、小説などが散らばる。

私はその1冊を拾い上げた。

「読んでもいいよ。後で返してね。」

彼女はそう言って、何も感情を見せることはなかった。

────────

そして、加木さんとともに家から出る。

彼は彼女が自分や、宗教家のことを本に書いてたことに少し驚きながらも、変わらず、どうしようといい。

そんな感じを受けた。

心の中では、どう思っているのだろうか?

そして、彼女は、どうしてあの宗教に入ったのか?どうして加木さんを…?

私の頭の中に疑問が尽きなかった。

すると、それを察してか、「大丈夫だ」と加木さんは呟いた。

私は少し安心する───────

過去②

1軒の家で、「ない…、ない…。どうして…?」

そう1人で何かをつぶやきながら言う女性が居た。

すると何かを気付いたように

「まさか…?」

と言って窓の外をみた。

─────────

私は加木さんと別れ、家に帰る。

誰も居なく、静かな空間。

私は彼女から借りた本を一枚とめくった。

すると、それは、彼女の日記だった。

「これはまずいのでは…?」

そう思ったが、興味が次のページへと進ませた。

加木さんのことはまだ一切書かれていない、彼のこともまだ…。

日常のことを楽しいと書いて、とても元気な子供時代。

次のページでは、猫の話が出てきた。

そこから、猫の話題が尽きなかった。とても可愛い。大好き。ずっと居たい。と思ったままを文章に落とし込めている。

「その猫のことがそんなにも、大好きだったんだな…」

そう言って、またページを新しく進めた。

猫が居なくなって悲しいと書かれている。

そこには、ゆういちくんという新しい登場人物が現れた。

この人は誰だろうか…?

私は心の中にとめて、続きを見る。

彼は、猫が見つかるかどうか勝負しようと言って、見つけてきてくれた。負けたけれどとっても嬉しかった。

と書かれている。

もしかしたら、希望ゆういちという名前で、本多さんが惚れた彼のことかもしれない。

次には、その人と何回か勝負をして、負けたり勝ったりしたと書かれる。

勝ち負けの回数をしっかりと毎回つけていた。

すると、ある時、恋をしたと書かれていた。

名前を希望という。

今まで勝負していた人は、恋をしたその人ではない。とハッとした

では、彼は誰なのだろうか…?

しかし、日記は、恋をしたところで終わっていた。

─────

彼女に、この本を持って返した。

「日記を読んだのね…」

そう言って少し恥ずかしそうにしている。

「はい。あの…ゆういちくんって誰なんですか?」

「しっかり読んでるのね…。加木くんの下の名前よ。」

彼女のことに少しビックリした。ゆいいつとよんでいた。それが恥ずかしかったのだ。

「懐かしい。昔は、彼、私の事れんかちゃんって呼んでたのよ。」

「そうなんですね。仲良さそう。なんで今は、上の名前なんですか?」

そういうと「あの時より、大人になったからじゃない?」と笑った。

「ですね!」

私はそういうと続ける

「もし良かったら、続きの日記も読ませてくれませんか?」

「嫌よ。私のプライベート。これ以上、黒歴史は晒せないわ」

「私はとてもいいと思いましたよ。特別な過去ですね。」

私がそういうと、彼女はクスッと笑って「そう。あなたはそう思うのね。ありがとう」

と言ってその日は別れた。

────────

本多さんはどうして加木さんと居続けるのだろうか…?

道中、それが浮かんだ。

もし、昔の事件、彼がしたことだと思っているのならいれないはず…。

それに、あの彼女の落ち着きはなんなのだろうか…?

しかし、彼女にホッとしている自分もいた。

───────

「今日の収穫はどうでしたか?」

「宗教内の1人と話し合ったそうよ。」

「そうですか…。彼は、何も宗教に入らないものだけでなく、この宗教内部にも、その誤った考えを広めようとしてきましたか。」

「あなたはなんでそんなにも彼にこだわるの。」

そういうと、「彼と私の因縁です。」と言った。

「そう…。」

その後、私は少し昔のことを考えていた。

─────────

「加木って嫌なやつだよな。」

その同級生の声がする。

「そうだよな。希望もあんなやつと関わってるから同類だ。」

そう言って笑う彼らに私は「希望くんは何もしてないでしょ!

それに、ゆういちくんはいいところもあるもん…。そんなに悪く言わないで…!」

「れんかも肩持つのかよ。あいつらと同類だな」

そう言って沢山悪く言われて、泣きそうになっていた時、彼が現れた。

「集多さん!」

その人が来ると急に態度が変わったの。

何か普通の人とは違う空気をまとっているように感じた。

「希望さんは、加木に騙されているだけで何も悪くありませんよ。」

「聞いていたんですか…。ごめんなさい」

そう言って謝った。

「でも…。ゆういちくんはいい人よ…!ちょっと変わってるところもあるけど…」

そういうと、周りの人は、「そんなわけない」と言う。

けれども、集多さんは、「そうですか。それもいいでしょう。」と微笑んだの。

「私の宗教に入りませんか?そうすれば、彼らについて悪いことを言う者を減らしてさしあげましょう。」

彼がそういうと、私は「入りたい」と。

その時は何も考えられなかったし、希望くん、そしてゆういちくんのことを守ろうと思って必死だったの…

─────────