世界の全て⑦

すれ違い

今日はどこかに行く用事もない。

私は家の中でのんびりと過ごしていた。

今日は誰かに邪魔されることなく1人の時間を堪能出来る。

そう思っていると、チャイムが鳴った。

外に出てみると、居たのは、真子さんだった。

「今日は何の用?」

私がそう言うと、「今日は料理を作りに来たの!」と言って、私の家に上がっていく。

彼女は以前の一件から感謝していることも多く、少し惹かれている部分もある。

私は無理にかえすことはできなかった。

「宗教勧誘はもうごめんだよ」

そう呟くと、彼女は、「大丈夫!もうしないよ!今日は本当に料理を作りに来ただけだから!」

そう言って、味噌汁を作った。

とてもいい匂いがする。

そうしていると、またチャイムがなった。

今度は誰だろうか?あおしくんか…?

そうして、向かい、ドアスコープからのぞくと、知らない男が立っていた。

年齢は若い。私と変わらないくらいだろう。しかし、奇妙な格好をしていた。

もしかして、宗教家だろうか?

真子さんを呼ぶと、丁度作り終わった後で、すぐにこの場所へやってきた。

彼女が覗くと、少し驚いた表情をしていた。

「集多さん…」

「集多…?」私は首を傾げる。

「あの人は、私の入信している宗教の創始者であり、神様よ。」

私は拍子抜けしてしまった。

「人間が神様?宗教ごっこをしてたってこと?」

彼女はすぐにドアを開けた。

数人の信者とともに、私の部屋に入っていく。

「ちょっと待って。」

私は彼らが入っていくのを遮った。

「どうかしましたか?」

集多さんが止まって私の方に耳を傾ける。

「前にも言いましたが、私は、あなた達の宗教には入りません。なので、帰ってもらいたい。」

すると、彼は「いいでしょう。今日のところは帰ります。」と言った。

これでは、前と同じではないか…

私は、帰る前に1つ聞いて欲しいと言った。

「万物の根源は知識だ!原子でも、素粒子でもない。」

自分の考えを、嫌われるために使うのは、少し思うところもあった。

しかし、こうすれば、誰も私のことをまた宗教に誘うことはないだろう。今までの経験から私には確信があった。

目の前をそっと見てみると、信者はふざけた考えだと言っていた。

集多さんはと言うと、よく分からない表情をしている。

そして、小さく言った。

「面白い」と。

その小さな声に、私は膝をついた。

彼は私のことを認めてくれたのか…?嬉しさで一杯になった。

彼はそんな僕を見て言う「私の宗教、それは、どんな考えであろうと引き受ける。その中では、捨てなくてもいいんです。」

これは、今まで考えを受け入れられて来なかった、自信のなさだろうか?その時、理性を働かせて深くは考えられなかった

私は小声で言った。

「私も入信したい。」と。

「いいでしょう。」

集多さんはそう言った。

「ただ、1つだけ条件があります。」

とても真剣な顔で、私の方を見つめる。

「加木とはもう二度と関わりを持たないことです。」

それに私は驚いた。

「どうしてですか…?」

「彼は誤った思想で人々を堕落させる。あの思想だけは許してはならないのだ。」

加木さんのことを言った彼は、とても怖く感じられた。何かとてもうらんでるような。

私は、矢張り、入信は無理だと言った。

「その後も、加木さんと何度でも会って、更に加木さんが入信しようと言っても許してくれるのなら…

私はその宗教に入信したい」


そう言うと、「そうですか。彼と関わっていたこと、後悔しますよ。」

と言って彼は信者を連れて帰っていった。

これからどうなるか?

私にはそんな事を考える余裕なんてなかった。

自分の好きな人を否定されること、それは、相手がどんな人であっても悲しいことだったのだ─────。

しかし、今日のことで分かった事があった。

信者と教祖の間には、考え方の違いがある。信者は、この宗教以外の考え方は異端だが、教祖はある例外をのぞいてはどんな思想であろうと受け入れる考えをしている。

しかし、何故、彼はあれ程までに加木さんを嫌っていたのだろうか…?

そんな事を考えていると、真子さんが「あの井知くん、味噌汁が冷めちゃうよ!」

と言ってきた。教祖からを断ってもなお一緒に居てくれる。

とても優しい人だと思った。

この世界も捨てたものではないのだと。

────────

持論

俺には自分の考えがある。

全ては自分に対する否定からうまれた。

人は安直に誰かの否定をするが、客観視出来ていない。

全ては自分のことであると言うのに。

──────

ひきこもり、その言葉聞いたことがあるだろうか?

多くは自分の家にいる時間が長いものとして、使われていることが多いだろう。

しかし、俺はその言葉で、自虐する必要はないと考える。

勿論、他人に対して、外に出ろといったり馬鹿にしたりするのはもっての外だ。

それは何故か?

この社会全体が、ひきこもり社会であると考えるからだ。

会社でも、学校でも、建物の中に居る時間は、絶対的に長い。

いいや、ほとんどを占めているだろう。

それなのに、自分は大丈夫だと思い込んで、他人を責めるその態度は解せない。

人と他人の家が違うものと考えたりするかもしれない。

しかし、同じことだ。

例えば、気をつかわない人間が居たとしよう。その人が他人の家を自分のように使っていたらどうだろうか?

それは、他人の家ではなく、自分の家とも考えられる。会社でもそうだ。

そこが居心地のいい場所であれば、自分の居たい場所にいるってことで、その人は引きこもりになる。

人だろうが、動物だろうがほとんどは、自分の家にこもっているので、それについて悪く言うことの方が問題なのだ。

引きこもりに関して問題視するとなれば、人間社会、いいや、その枠組みを超えて、動物社会全体としての問題に変わる。

引きこもりは悪いことではない。むしろ、家の中にいることが多いのが人間なのだ。

───────

よく、年上を敬えという。

しかし、これは、もし、年上が言っているのなら間違えと考える。

多くの人は、年上、先祖の事など気にかけてないからだ。

もし、気にかけているとすれば、動物園で猿を飼うことはなくなるだろう。

そして、亡くなった人達が行ってきた戦争は肯定されるべきで、後に間違いとしたあの考えは全て間違いとされることになる。

これは当たり前だが、尊敬できる人とできない人がいる。

だからこそ、そうできる人を敬うことが大切なのだと考えた。

多くの人を恐怖におとしめた犯罪者、それを、尊敬することはできない。

誰かに自分を敬えと言う前に、自分がそうされるに相応しい人間か、そして、誰かを敬うべきは誰か?

それをもう一度考える必要があると思うんだ。

尊敬する人は、年上ではなく、尊敬できる人。それが俺個人の考えだ。

────────

猿や、縄文時代など、特に昔の人のことを馬鹿にする人がいる。

けれども、今、自分が居るのは、その人たちが居るおかげでもある。

どんな学問でも、今の知識とは少ない状態で色々な発見や、発明がされてきた。

今となっては常識でも、過去ではそれが常識でなかった。

そんなことザラだ。

悪く言ってしまえば、どんな偉人であろうと、今の現代人よりものを知らない劣った人間が文字、言葉、学問を作っている。

しかし、それらは、とても偉大だ。
今でも新しい発明をすることはできる。しかし、とても難しいだろう。

ほとんど見つかったと思われているからだ。

しかし、未知は無限。発見されてないこと、発明されてないことなんて山ほどある。

今、思いつかれてないだけで、とても多く。

そんな今だからこそ、偉人は凄いことをしたのだと実感するだろう。

もうほとんどのことが発見されたと思われている時だからこそ、新しい発見ができるからだ。

それはとても偉大だ。

何かで1番をとるよりも、何か新しいものを生み出す方が凄いことなのだから。

1番をとっても、それを作り出した人物にはどうしても勝てない。

その人が作り出さなければ、自分は1位を取れなかったという恩恵を受けているだけに過ぎないのだから。

昔の人の礎に今がある。その事に感謝し、新しい前例になりたいものである。

─────────

全てのことは否定からうまれた。最初にそう言った。

しかし、少なからずとも、否定以外からうまれることもある。

誰のことを否定せず、誰も傷付けず、皆が幸せになれる。

そんな理想こそが、本当に素晴らしいことで、目指すものなのかもしれない。

客観的に見られない1人として、俺はこれからも生きていく。

それでいいじゃん

私は今日、欲に負けてしまった。

お菓子を食べないって決めてたのに、ついつい。

けれども、それでいいじゃん。そう思ったの。

私は、食べないって決める、1歩前に進めたんだから。

ところで、私の周りには、とても悩んでる人が一杯居る。

その悩みは人それぞれで、些細なものから大きなものまで。

私はその悩みをよく聞くの。

今日も数人の人から相談を受けました。

「とてもいい人に悪口言ってしまったんです…」

彼はとても後悔してる様子。

私はそっと「それでいいじゃん。」と言いました。

「え?」

彼は驚いていました。

「とてもいい人と知ったのなら、あなたはもうその人に悪口は言わないでしょ?」

「はい。」

「自分のことを責めないであげて。今のあなたなら、きっと、その人やみんなのことを優しくできるはずだから」

────────

次の人がやってきます。

「悪口を言われてしまったんです。自分が人のためにならないことをしてしまったのが悲しくて…」

「それでいいじゃん。あなたは、人のために何かをしようとしたんでしょう?」

「それなら、きっと大丈夫だから。間違えたっていいの。

失敗は、きっと、未来にみんなを幸せにするためにある大切なものなの。」

「だから、自分を責めないであげて」

───────

そして、最後の人。

「僕は昔、悪いことをしてしまいました。人に酷いことを言って、相手を嫌な気持ちにさせてしまったり、自分の欲のために、相手を利用してしまったんです。」

彼の表情はとても曇っていた。しかし、私の言うことは変わらない。

「それでいいじゃない。」

彼はなんでと、少し怒った表情を見せていた

「昔したあやまちは、一生背負っていかなければならないんです。ずっと責め続けられなければならないんです。

何がそれでいいんじゃないですか…」

そして、とても悲しそうな目をしていた。

「そんなに気負わなくて大丈夫よ。昔したあやまちは、今、みんなを幸せにするためにあるの。」

「詭弁だ!それなら、常習犯は、何故繰り返すのか?

彼らは皆、人のことを幸せにしていない。」

そして、私はいった

「どんな時でも、今に感謝すること。いつの間にか、それを忘れてしまっているからじゃないかな

欲は、今に満足できないから、求めてしまうの。」

「だから、どんな時でも、今に感謝し、満足することを忘れなければ、きっとあなたはみんなを幸せにできるはずよ。」

彼は言い返そうとする。感謝するだけで何が変わる。と。

しかし、今まで、何かに本当にありがたいと、現在に感謝した覚えが無かったことを思い出した。

もし、そんなことは有り得ないと言ってしまえば、ただの知ったかぶりだ。

「昔、ダメだったとしても、嫌なことをしてしまったとしても、もし、その人があなたのもとを訪れた時、私はその分だけ幸せにしてあげればいいと思うの。

もし、戻って来なかったら考えなくて深く考えないでいいじゃん。そのかわりとして沢山ね。」

「そして、今、近くに居る人を大切にしてあげて。」

────────

私はよく、何故、人のことをよく聞くのかとたずねられる。

自分のことよりも、他人のことを優先するのか?と。

相手のためになることは自分のためにもなる。

他人を許してあげれば、自分も許してあげられる。

それに、人は鏡で、多くのことを悩んで、それについて考えることで、新しい考えがうまれるの。

今日もまた、今、居る人の大切さを振り返った。

だから、私は、そばに居る人を大切にしたいと考えたんだ…。

──────────

女性はクスッと笑って、その本を閉じた。

「何かあったのか?」

そばに居た男が近付いてくる。

「なんでもない!」

女性はそう言うと、「ありがとう」とまたニッコリと笑った。

それにつられ、男の顔にも、笑みが浮かんだのだった───────

それは突然だった。

何があったのか?それは分からない。

異変が起きたのは、ある日、散歩に出掛けた時だった。

私が、久しぶりに、彼に出会った公園へ出掛けると、それの前で入らず、立っている男が居た。

その男は、私の知る人物。加木唯一(ゆいいつ)さんだ。

何をしているのか?とたずねたが、返事はなく、驚いてその場に立ち尽くしていた。

私もその方向を見ると、いつもの景色はなく、集多教と書かれた文字とともに、公園のあった全てのスペースを使った建物があったのだ。

「どうして…?」

私は、思わずそうつぶやく。

すると、中から、信者と思われる人物が出てきて、加木さんの近くを通り過ぎた。

その最中、とても小さい声で「人殺し」と言ってどこかへ通り過ぎていく。

彼はそれに膝を地面についた。

様子がどこかおかしい。

私は何も言わずに、その時は別れた。

しかし、何が起きたのか?

その後、ずっと、それが頭の中から離れなかった。

────────

ある日のこと、本多さんの家に、私は1人で向かう。

加木さんのことが気になって仕方なかったが、会える手段が、あの公園しか無かったのでやむを得なくのことだった。

彼女は、特にことわることも無く、私を家に通す。

何か紙に書いている。

もしかしたら、日記かもしれない。

私はそっとそれを見守っていると、彼女は、視線に気付いて、書くのを止めた。

「それで、今日は1人でなんの用?」

それに、率直に聞きたいことを言う。

「加木さんと最近よく見かける宗教との間に何があったのか…。

そして、信者が呟いた人殺しとは…?」

彼女はそれを聞いて、私を睨みつけるようにみる。

それに驚いて、後ろに下がった。

「さぁ、私は知らないわ。あんまり寝てないの。

悪いけど、今日のところは帰ってもらえない?」

───────

1人残された彼女の机に、一粒の雫がふってきた

か……………を……む…

───────

彼女の様子も、どこかおかしい。何があったのだろう。

私がそう思いながら、帰ってる間に、加木さんとすれ違う。

私はそれに気付いて、彼を呼び止めた。

そうして、彼女のことを話した。

「そうか。最近、俺は、自分の過去のこと、そして、今のことが全て筒抜けになっているように感じていたんだ。

俺の周りが何故か、大きく変化している。そんな気がする。」

私もそれに激しく同意。自分の周りではそんなに変化はなかった。

しかし、彼の周りでは大きく変化している。彼女の件もそう、公園の一件もそうだ。

何が起こっているのだろうか?

すると、前から、人がやってくる。

彼の隣を横切る時にその人は呟いた。

「間違いのない世界。」と。

加木さんと会った時の思想だ。

何故、一般人でありそうな、彼が知っているのか?

そうして、段々と、私の頭の中に、この光景を以前に感じたことがある。

そんな気がしてならなくなった。

ずっと考えていると、ふと断片的に思いだされることがある。

それは、1人の悪を倒すために、とても強大な力を持ったものが立ち向かう。

何故だか、そのストーリーが何度も何度も頭の中をよぎってくるのだ。

もしかしたら…

私は前に行っていた本屋に、彼を連れて行った。

なんの根拠も無かったが、昔の自分がそれを教える。

加木さんは、少し戸惑っていたが、私はすぐにあの3巻あった話を、彼に渡した。

すると、彼はそれに読みいっている。

私はその間にこの本屋について調べていた。すると、レジの近くに多くの、あの宗教のチラシが重なっているのを見つけた。

ここは、あの宗教の…?

そう呟くと、加木さんは本を読み終えたようで、私の方へとやってきた。

「これはもしかしたら、俺と集多のことかもしれない。」

ずっと、誰かにこの物語を書かれていたんだ。

だが、情報が全く無かった。

誰がこれを書いていたのか?2人でその情報がないか、他の本も探してみた。

けれども、名前は、どの本にも書かれていない。

ストーリーを読んでも、何かつかめる気配もない。

名前、場所など必要そうな要素をどれか、もしくは、ほとんど書かないものを曖昧描法と名付けた!など、得られそうにないものばかりが入ってくる。

その中で一つだけ、名前が書かれたものがあった。

梶野亜星、その名前が私の頭の片隅に、何故だか、離れなかった。

────────

探し人

「あぁ、聞こえる。神様からのお告げだ。今日、私の元に反逆者が訪れる。」

─────────

私達はその後、公園があったあの場所に向かった。

集多教の施設。ここ以外の場所は知らない。

もう手がかりがここしかないのだ。

誰でも入っていいとなっているので、加木さんを置いて、1人でここに潜入した。

中は、あからさまに宗教家の格好をしている人や、普段着も沢山居たため、私はなるべく、前者には近付かないよう、紛れ込んだ。

すると、前から、知っている顔がやってきた。

前に、真子さんが連れてきた宗教家の人だ。

私に気付くと、「昔の偏った思想を捨て、宗教に入信することを決めたのですね。

よいこころがけです。きっと、教祖様もあなたのことをお認めになられるでしょう。」

そう言って、通り過ぎていく。

すると、また知っている顔が現れた。

真子さんだ。

私に気付いて駆け寄ってくる。

「井知くん!どうしてここに?」

私は彼女を連れて、人が居ないところへと向かった。

そして、事の経緯を話した。

すると彼女は、一緒に手伝ってくれることを話す。

どうしてそこまで自分のためにしてくれるのか分からなかった。

しかし、今は加木さんのことだ。

何か情報はないかと真子さんは聞いてくる。

「特に情報は…」

そう考えていると、ふと、梶野亜星の名前が浮かんできた。

しかし、彼女はその人のことを知らないと言う。

何故、この人だけ名前あったのか?

その疑問が尽きることはなかった

外では、男が、あの青く曇りのない空をただ見つめていた。

───────

ところで、ここには、多くの闇を抱えた人達が居る。

1人に、水野瑶二さんは、一つ思想があって、それを何度も何度も繰り返していた。

「はじまりは水溜まりのようなものだ。何かを理解しようとしなければ、いつの日にかパッと消えてしまう。

しかし、一度理解すれば、その波にのってどこまでも大きくなり、更に急流へ。

そして、最後に大海に流れ着く。その時こそが君の世界である」

彼は人から理解されなかったことで、この考えをずっと何度も1人で言っているらしい。

そして、次に、赤野誠二さんと言う人だ。

彼は、女性と別れてしまったことをきっかけとして、深くこの宗教に依存しているらしい。

色々な人が居る。

この他にも、沢山この宗教の場所があるらしく、色々な思想があるに違いない。

私は少し嬉しい気持ちが心の中にあった。自分以外にも、変わった思想を持っている人がこんなにもいることに。

───────

「ここには、色々な思想を持った人が居るの。だから、あなたが入信しても居づらくない場所になってるのよ。」

真子さんはそう言って私に笑いかけた。

「そうなんですね。」

「特に、私が会った中では、正二さんって人がとても変わった思想を持ってた気がするわ。」

彼女がそう言った瞬間、一つの名前が思い浮かんだ。

「かじのあせい。」

私はすぐにペンと紙を求めた。

そして、さっき知っている名前の人をざーっと書いていく。

すると、パッと一つだけ、あかのせいじという名前があった。

アナグラムだ。

私はすぐに、その人があれら全てを書いた張本人であると、私はそう確信した。

私はすぐに彼の元に向かうと、待っていたかのように、不敵に笑みを浮かべてこちらを見つめる。

そうして、「待っていた。」と言うと、その施設から出て、どこかへ歩いていった──────