世界の全て⑯

2人の唯一⑤

Nくん…?

Sくんはそう言って、驚いていました。

居なくなってしまったと考えていたからです。でも、よく見てみるとそこに居たのはNくんではなく、Iくんでした。

そして、Iくんは、Kくんの前に立って、平等がいいよ!と言いました。

でも、それじゃあダメなんだよ。とSくんは言います。

優劣がないと何もしたくなくなるし、頑張っても嬉しくない。

するとIくんは言いました。

それでいいって、誰かが悲しくなって、誰か1人だけが喜ぶよりも、皆が笑顔になった方が嬉しいんだって。

するとSくんは少し悩むと

確かに…と言って謝りました。

そして、みんな仲良くがいいとKくんと仲直りしました。

そうして、3人は友達になったのです。

───おしまい───

書き終わって私は机から離れた。

「今回は引き分けかな…。」

1人でそう呟くと、1人の男の姿が浮かんだ。

「加木くん、仲間くん。私はこれから皆が仲良くなってるところを…。」

そう言いかけて辞めた。

「2人はどうしてるのかな」

窓から外の青い空を見上げた

──────

「なぜ…?」

意外なことに1番驚いていたのは、加木さん。

私は「均衡主義の人から聞いてきた」と伝える

加木さんは均衡主義?と疑問にしていたが、すぐに集多さんの話により、教える暇がなくなった。

「均衡主義と皆無主義、内部分裂はどうなったのでしょう。

しかし、それよりもまず、目の前の問題に着手しなければ」

そう言って、また話し始める。

「人間は弱い生き物です。何かにすがらなければ生きていけない。

だからこそ、絶対的な存在は必要なのです。」

私は「その考えも存在してもいいんだ」と伝える

「あなたもですか。」

集多さんはそれにふらつき、頭を抱えた。

「絶対的な存在の上に絶対的真理は存在してはいけない」

私は「どういうことですか…?」と呟く

「私は物語として落とし込んだ世界の神を、本当の神とは思わない。」

地面を強く踏む。

「だからこそ、加木の思想はまちがっている。」

「それでもいいんだ。間違ってると思っても。」

加木さんはそう言って、落ち着いていた。

「なぜ、まちがっている加木は平然とし、私はこんなにも疲弊しているのか…」

神とはなんなのか…集多さんの心の中で沢山疑問が浮かんでくる。

何故、あんなにも否定され、彼は考えを辞めることは無いのか…。

「井知さん、あなたはどうして、加木の元に居るのですか?」

「彼の考えは、私の思想とも似てる。

そして、誰かを傷付けることはない理想の思想だと思ったから…」

集多さんは「そうですか…」と言って、信者の中へと戻っていった。

そして、立ち去るなか、「今日は見逃しましょう。」と。

宗教家が集まる中、黒い影がそこへと近付いてきていた。

「そうか…もし、私が神なら…」そう言いかけた時、前の気配に気付く。

「あなたは…えおたさん」

その人はぶつかっていくように近付き、手に持っていた何かで集多さんのお腹を刺した。

そして、そっと集多さんから離れる。

「ずっとあなたのことを思って動いていた。なのにどうして…」

すると、集多さんは、「そうだったのか…」と。

信者達は彼のことを心配そうに見つめる。

「私は許そう。この苦しみを…そして、加木を…。」

そして、信者達に向かい続ける。

「仲間希望の事件、私が全てやったと警察に伝えて欲しい。そして、この怪我は自分でやったと…」

段々と集多さんの視界が暗くなる。

「どうして…?」

そう呟くものがあった。

「私がもし、神であるなら、人を愛さずにはいられない…

そうだろう…。」

そして、最後の力で振り返る「私は神ではなかった…本当の………み……は…」

その視線の先には2人の姿があった。

「…だったのかもしれませんね」

そう言い、集多さんは目を閉じた。

─────

加木唯一

ゆういちくんが私の家にやってきた。

とても暗い表情で私をみる。

いつもとは全く違う、見せたことのない顔。

私は声をかけるのに気がひけた。

そして彼はその沈黙をやぶる。

「集多が…」

私はそっと「聞いたよ」と返す。

そして「きっとなおるよ」と続けた。

すると、彼は「俺の負けだ」と涙を流す。

彼が自分で負けって言うところ、はじめてみた。

私はそっと彼に歩み寄る。

「あなたらしくないわね、まだ分からないでしょ。」

「きっと大丈夫だから。」

そして、そっと彼の背中をさすった。

「集多くんはきっと元気になって、2人は友達になれるよ!」

──────

それから少しして彼は落ち着きを取り戻した。

「ありがとう」

彼はそう言って、私の方を見る。

「今日はそういう気分だったの!次からはないよ!」そう言い私はクスッと笑う。

「ところで!ゆういちくんはこれからどうするの?」

少し部屋の天井を見上げ「俺は久しぶりに家に帰ってみる」と言った。

「そう、ずっと帰ってなかったもんね。」

「あぁ。れんかちゃんはこれからどうする?」

「書きたいものができたから、私はそれを書くよ。」

「そうか。」

男はそう言って、家を後にした

──────

男が自分の家に帰る途中、前から呪いだ…と言って歩いてくる人が。

そして、その男を見ると、相談を求めた。

「実は、僕は過去形の呪いというものにかかっているのです。」

「過去形の呪い?」

「はい、~ですなら今のことですが、~でしたなどだともう終わったことについて言ってるんです

あぁ、怖い…。」そう言っておびえています。

「俺の思想を言おう!この世界に正解や、間違いなど存在しない!」

「どういうことですか…?」

「過去形の呪いは存在してもいい。その代わり、それがない世界も存在していいんだ」

その人はハッとして、「そうか、そうだったのか!」と呟くと、なおりましたと男に感謝を告げる。

「知識…?」残った男はそれを呟くと、またどこかへと向かった。

段々とピアノの音が聴こえてくる。

ピアノの音色のする家の前に着くと、そこには、前と変わらず誰かが立っていた。

男に気付くと、話しかける

「久しぶりだね。響音ちゃんの音楽聴きにきたの?」

男は頷く。

そこで彼は色々なことを話した

響音ちゃん、色々あったんだ。怪我をして、夢を諦めそうになったり。

でも、立ち直って、こうして楽しそうに自分の音楽を奏でてる。

その人の目から涙がこぼれる。

そして、曲が終わった。

彼女は家から出てきて、お兄さんにありがとうを告げると、男の方を見て「お久しぶりです。聴いてくださってありがとうございます」と言った。

とても落ち着いた優しい笑顔で──────

男は考えた。

結局、自分の思想はいいものであったのだろうか?

その答えは今でも分からない。

しかし、何か大切なものを手に入れていたような、そんな気がした。

そして、ふと考えた。

もし、表裏一体と言う考えを信じるならば、間違い、正しいものが存在する世界。

そして、それらが存在しない世界は同じものとなる。では、この世界は理想であるのか?

考えてもその時答えは出なかった。

この先、歩んでいく途中で、何か見つかるかもしれない。

だからこそ、間違え、正しい道へと、いいや間違えも正解もないこの世界で、ただ真っ直ぐに。

明日へ──────

万物の根源は…!

あの後、私は家に帰った。

すると泊まっていたあの人は居ない。

散歩に出掛けたのかと家の中を少し探してみた。

一つ書き置きがあった。

私はそっとそれを読む。

今日まで泊めていただきありがとうございます。私はこの家にもう戻らないでしょう。

ところで、一つ最後にお話をさせてください。まぁ、くだらない戯言として受け取ってください。

ある日、とある人物を見てから、私は、彼に裏があると思った。

それは彼が話をする場に、向いた時のこと。

彼は寛容であること、誰でも自分の宗教に受け入れると優しいことを褒められていた。

しかし、次に「嫌いな人なんて居ないんじゃないか」と誰かがいった時、彼の表情がこわばった。

私はそれに疑問に思わずにはいられなかったのです。

その時は何も思わず居ましたが、彼の宗教入信者が、事件を起こしたことがあると、知った時、私は直感しました。

彼らは何かよからぬ事を考えている。と。

しかし、それらは私の妄想でした。

あの時の、激しい思想が、心をおかしくさせていたと実感します。

このゆっくりとした時間がなければ、ずっと気付かなかったでしょう。

ありがとうございます。

これからはのんびりと時間を過ごすことにしましょう。井知さんもお身体にはお気を付けて

と書かれていた。

そして、隅に、小さくお礼と書かれている。

──────

その後、真子さんと偶然会って、起こったことを説明した。

「それで、その人はお金を置いていったんだよ。」

「うん。そうなんだ…!」と彼女は真摯に私の話を聞いた。

私はその姿をみると、彼女はとても優しい女性と感じる。


ところで、彼女は集多さんのその後の話をした。

事故が起こってしまったのは驚いた。そして、まだ意識が不明で、これからどうなるか分からない状況にあるという。

私はただ「なおるといいな」とだけ言った。

────────

僕は多くの根源を知り、ある時こう言う。

「万物の根源は知識だ!」

叔父さんはそれに優しく微笑み、頭をなでた。

他にも沢山あったはず。だけど、特にこの考えだけは、私の心に今もまだずっと残っている。

あの時はただ純粋に、色々なことを知ったり、創造するのが楽しかった。

もちろん、おじさんが喜んでくれたのも嬉しかった。だけど、何より、自分がやってて楽しかったし、嬉しかったんだ。

とても幼い頃の自分。そして、叔父さんが答えている場面が浮かんでくる。

「こんなのはどうかな!」

「おお!とても面白いと思うよ!」

そう言って笑う叔父さん、その前に満面の笑みを浮かべる自分。

────────

加木さんと集多さんの事件、それが起こってから、数年経った。

私はもう自分の考えを封じ込めることはしていない。

私の考えに共感してくれる人達と、新しい変わった思想を思いついて、毎日楽しく過ごしている。

あの時から、加木さんとは会えてない。

寂しい気持ちもあるが、それが逆に楽しみでもある。

また会った時、皆で思いついたこの変わった思想を彼に言うんだ。

彼はどう思うんだろうか。それがとても楽しみで仕方ない。

ふと、子供の頃の記憶が浮かぶ。

─────

「万物の根源は知識!」

「だから、僕は神様は人間だと思うんだ!」

自信満々にそう言った。

──────

そう…。私、いいや、僕はあの頃から何も変わってないよ。

知識、それは不思議なもので、それを信じるといくらでも世界変わる。

とても楽しい世界はみんなと共有され、人はそれにともない笑顔になる。

「井知くん!」

聞き馴染んだ声が僕を呼んだ。

「真子さん、みんな!」

「昨日、色々アイディア思いついて、今日発表するのが楽しみだったんだよ~!」

「そうなんだ!」

僕の世界には明るい光がともった

この世界には間違いなんてない、正解もないよ。

なぜなら、万物の根源は知識であるから──────