1話物語⑤

友達になりたい思い

ずっと近くに居た人。

だけど、関係は何も無く、ただそばに居るだけのその人は、なんだか私の心に残り続けていた。

そうして、誰にも分からないよう口に出さずにおいたその感情が、何故か、周りのみんなに広まっていった。

その人と友達になりたい。

ただそれだけの思いが、すぐに周りに気付かれてしまった。

気付かれないよう、心ひそかに思っていたのに。

するとあの人がやってくる。

変わらない様子で、私のそばに居てくれた。

あの評判が広まっているのにも関わらず、どうしてそんなに優しいのだろうか。

私は尋ねてみたことがある。

すると、その人は、嬉しいから大丈夫だと笑った。

その人の優しさ、偉大さは、全てを飲み込んでしまうほど大きいものだ。

私は心の中でそう思った。

そっと、「友達になりませんか」

と言うと、その人は「いいですよ」と返した

─────

変わらない思い

濡れる頬、そしてそれを拭いて濡れた袖。それをおたがいに絞りながら…。

あの時誓った思いを覚えていますか…?

私はただ、遠くから彼を見つめていた。

あの人はきっと忘れてしまったに違いない…。

彼が語った、あの言葉は今でも私の心に残っています。

山に大きな波が押し寄せる。

しかし、その波がどれだけ強くとも、その山を越すことはなかった。

彼はそれを私との約束にたとえて言った。あの山のように、どんなことがあっても心変わりはしない。

結局、今ではもう、あの約束を守ってもらえませんでした。

だけど、私の心には変わらず残っています。

私はそっと、その思いを奥底にしまった。

すると、後ろからあの人が私を呼ぶ声が聞こえてくる。

振り返り、あの人が私を見ると「まだ間に合いますか…?」と言った。

私は少しの時間黙ってから返す。

「はい!」

────────

思い

私には友達になりたい人がいる。

その人はとても優しく、誰にもない魅力があって、それがとてもキラキラと輝かせる要素になっている。

何かオーラをまとっているような、そんな人物。

私はもうなれればそれで満足だと思っていた。

しかし、それは嘘だった。

友達になった後、私は更に長く居ることを心の奥底でずっと思い続けている。

考える時はいつも、あの人のことばっかりで、できることなら、長く、そして、ともに楽しく過ごしていたいと。

思えば、あの人と出会ってからいつも考えていた。

あの人のことを。

一緒にいれない時、それはとても寂しくて、あの人のことを考え、ただ時が過ぎていく。

あの人は今どうしているのだろうか、あの人は今何をしているのだろうか…?

思えば、私はあの人と出会ってからずっと思ってきた。

あの人と出会わなかった前も、何かに対して思ってきたことはあっただろう。

しかし、これ程までに、誰か、何かに対し思っているのははじめてのことだ。

いいや、この思う気持ちが本物で、今までのことは偽物だったのかもしれない。

私はただ、これからもあの人のことを思おう。この気持ちが嘘ではない限り。

いつまでもこの幸せな時間を。

関係

もし、この出会いが全てなかったら…

私はふとそう考えた。

今まで多くの出会いがあった。

それは、もちろん楽しいこともあって、悲しいことも沢山ある。

悲しいことが多いのが常で、もし、これら全部が無ければ……。

そう考えると、自分には、今のように何かを苦しんだりすることは一切なかったのではないだろうか?

最近あった、話しかけて無視されるなんてことも、自分の心を嘆いたりもなかったのではないだろうか。

私はいつも他者から批判されているのではと悩んでいた。

それもこれも、出会いが無ければ、悩むことはなかったのだ。自分の悪いところ、相手の悪いところが沢山見えてくる。

ただ、楽しく、心の中だけはこの世を幸せなものと感じていたいのに。

それが全て暗黒の世界に変わるように、壊されてしまう。

ありのままの美しい世界を見えず、くだらない小さなことで悩んで…。

誰かの悪い所をみて、心の中で許せなくなるのだ。こんなこと、一切なかったのだろうと思うと、それはとても気楽なことだろう。

しかし、私は、沢山の出会い、物語を見てきた。

それはとても楽しく、今という残酷な心を持たない、夢のようなものだった。

私は幻想を見ていたのかもしれない。だが、しっかりあったのだ。

楽しい日々は。

私はその思いを忘れず、心にとめまた出会いを続けたい。

この気持ちが嘘でない限り。ずっと。

あわれな自分

私は今まで多くの過ちをおかしてきた。

それに気付かず、ただ、その間違いを引きずり続け今に至る。

人は変われないのではないかと思い悩む日々である。

そんな中に、あの人が居た。

私のことをあわれだと思ってくれそうな人、それはあの人以外に考えられない。

あの人の前では、多くの間違いや、自らの悪い部分についてさらけ出せた。

心を許せる人、それは、あの人しかいない。

もう出会えないのだろうか…?

そう思うだけで、私はあの人を思いこがれながらむなしく消えていってしまうかもしれない。

できることなら、ずっと一緒に居たい。

そう思っている

積もった雪がいつの間にかとけるように、パッと消えてしまうこの人生もまた、私はその嘘を信じ、生き続けていたいのだ。

絶対的な存在ではなく、悪い所もある、そんなあの人だからこそ、長くおそばにいたいと感じたのだろう。

あの人は、泥の中に咲く一輪の花だった。

何ものにも染まらない綺麗さを、その中で自らの体を輝かせていた。

ただ、私は言いたい。何ものにも染まらないあなたでいて欲しいと…。

私は一人とイルカを連れ、海峡を行った。

イルカはこの先に行けばいいとどんどん進んでいく。

かじをこいで、イルカの後をついて行くと、何度も、どこか遠くへ行ってしまって、途方にくれるしかなくなってしまった。

しかし、イルカは何度も私の舟へと戻ってきて、再開された。

だが、ある時を境として、イルカはまた居なくなってしまう。

今度はもう帰って来ないのではないかと悲しくなるくらいの長い時間、イルカは姿を見せない。

これから私はどうなるのだろうか…。

そうして悩んでいると、隣から、そっと私の肩に誰かが手を伸ばした。

それは一緒に来てくれていた人物。特に何かをするでもなく、優しくそばに居てくれた人だった。

そして、ただ「大丈夫」と囁いて、再びこの舟で、今度はイルカなしで渡っていく。

私はなんだか、そばに居てくれているそれを感じるだけで、またどこまでも進んでいけると感じた。

ずっと気付かなかった喜びも感じた。きっといつかはまたイルカとも会える。

私はそっとそれをしまって、また前へとすすんでいった。

人の訪れない場所

あれからどのくらい経っただろう。

私の住む場所には、いつからか、人の姿が見えなくなった。

自分からまねこうとしない限り、多くのことで、私の方へやってきてくれない。

いいや、あたりを見渡せば、幾重にも雑草が茂って、荒れ果てているこの場所におどすれる人もいるはずもないが。

昔のこの土地がとても繁栄していたあの頃が思い出される。

あの時は人の足が絶えなくて、多くの人がここを素晴らしい場所だと話していた。

けれども、今では、それらはなく、寂しい風景だけが広がっている。

あの繁栄していた世界はもう嘘のようだ。

しかし、こうして、夏がやってきて、もうすぐで秋がやってくる。

人の訪れはなくても、秋という季節が毎年おとずれる。

こんな場所にも、とても広い心でやってきてくれるのだ。

そうして、そこらを私は歩いていると、小さく芽が出ているのに気がついた。

それは荒れ果てた風景とはまた別の美しい自然であった。

その芽は私にかたりかける。

そうなのかな…。

私はもう一度、ここが新しい日を見れることを頭の中一杯に広げ歩き出すことにした

───────

通じないもどかしさ

私はこの気持ちをずっと心の中にいれている。

どうしたら、伝えられるだろうか。

にごして伝えたり、そのまま伝えたりもしてみた。

しかし、その人には、全く届かない。

私がどれだけ考えようとも、届かないのである。

それは海に風が激しく吹き、波が岩にぶつかる。

しかし、岩はそのままで、その波だけが砕けちるようだ。

自分だけが、その波のように砕けるばかりで、あの人には届かないのだろう…

そう悩むばかりだ。

すると、あの人が通りがかった。

何かを言うでもなく、ただ、通り過ぎていくさまを見て、私は引き止めた。

すると、あの人は何か言うでもなく立ち止まり私の方をみる。

私はただ、「ありがとう」と言った。

何を言っても届かないのなら、それでいい。

私はその人のことが好きなのだ。

だからこそ、元気なその姿を見れること、それを大切にしよう。

何かを求めることはせず、ただ、ありのままの姿を…。

私はそう考えると、なんだか心の中がスッキリしていた。

未来のことばかりを嘆いて、今をおざなりにしてはいけない。

ただ、今ある喜びに目を向けてあげよう。そこにはきっと、未来、そして過去に求めているものがあるから。

私の燃える思い

城にいる王様を守る兵士。

それはいつも夜、かがり火とともに、燃える思いが伝わってくる。

絶対に王を守ってみせると。

朝はその明るさから、あの燃える火は消えてしまう。

あの燃えていた思いから、休息の時間に入るのだ。

私も同じように、あの人とともありたい、そして、守っていきたい。

その思いが、夜に燃え上がり、昼には落ち着いて身も心もかがり火が消えてしまうように、パッとなくなってしまう。

そんな辛い物思いをしています。

そうして、今、昼の時間に、私はただ歩いていた。

あの夜の思いは、すっかりどこかへいってしまい、抜け殻のように。

すると、前から、あの人がやってきた。

私の思っているあの人。

ただ、横を通りすがっていくあの人の姿をみていた。

すると、消えてしまった夜の炎がポッと灯る。

私はただ、あの人の姿をみて、ありがとう。と思った

ともに居たい

あなたとお会いしたい。

私はいつもそう思っています。

もうあなたとの繋がりは切れてしまった。そう考えて、お会いすることが叶わないことを嘆いています。

もし、出会えたのなら、私は命など惜しくはない。

そう考えていました。

しかし、運命とは喜ばしくも悲しく、その命。

それが、あの人ともっと長く居たい、この時間が永遠に続いて欲しいと心の奥底で思っているのです。

それにより、私は手を伸ばした。

いつ遠くに行ってしまうかの恐怖と欲におぼれ、あなたを求め続けたのです。

もし、叶うことなら、自らの欲に溺れず、ただ、あなたのことを考えたい。

できることがあるならば、私はあなたの求めることをしてあげたい。

自分の欲はそこにはなく、ただ、あなたの笑顔をみて、嬉しいと思うような。

それが未来にずっと続いていくことが私の喜びです。

今は会えていませんが、ただ、あなたが幸せに過ごしていることを望むばかりなのです

──────────