思想学部⑤

僕の世界を包む雲

僕は創作をやって、どのくらいになるだろう。

小学校の頃からはじめたのを覚えている。

とても楽しくて、続きをどうしようと悩んだあの日のことは、いい思い出だ。

今でも、変わらず、この世界で楽しく過ごしている。

ところで、最近、特に考えている事があった。

それは、悪いことに対し、悪いことで返すのは正しいことなのか?

しかし、考えても分からない事だった。

最近、友達が、こんなことを話してきた。

「最近、また、創作の規制が強くなったらしいぜ。」

僕はそれに恐怖する。

「そうなんだ。」

「あぁ。このままじゃ、これからもう作れなくなるんじゃないか。」

核心をつかれて、下を向いた。

「お前の創作好きだから、規制進んで欲しくないんだけどな。」

友達は僕の顔をみて続ける。

「どうしようもないな…。こればっかりは、無力さを感じるよ」

僕は「大丈夫だよ。ありがとう」と言って、その場を後にする。

───────

1人になって、僕は頭を抱えた。今まで沢山考えてきた創作を辞めなければいけないかもしれない…。

そう思うと、もどかしさが募る。

何故、規制が進むのか…。

その答えは、間違ったものすらも、正しいとされてしまう絶対的な世界観にあった。

学問的には、あやまった世界。それが共存していること、許されないことだった。

リアルの父は、とても強い権力をもつ。

そこから、間違った世界である、創作というものを排除し、正しいものだけで世界を構築し直そうと考えた。

絶対的に正しい世界こそが、真実であると疑わないリアルの父の考えであった。

まだ学生の僕には、友達と同じようにどうすることもできない。

これから、心の中ですら、この創作を否定し続けなければいけないのだろうか…。

そう思うだけでも、やりきれない思いで一杯になる。

僕の中の創作は、虚構でしかないのだろうか──────

僕が住むのは花星という場所。

朝や、夜には大きな電星と他の星達が沢山に、空に散らばっている。

花星、それを中心として、グルグルと空を飛んでゆく。

ここに住む人達、それは完全な人間と言われ、彼らの言うことは絶対である。

しかし、その中にも不完全な人間が住んでいて、それが僕らである。

今まで多くの失敗をしてきた。僕は完全な人間と、不完全な人間の中間に居る存在。

間違いを多くおかし、実際に、それが目の前で多く起こってきた。

僕の目の前に、女性の影が浮かんでくる。

あの人はいつも優しく、一面に咲き誇る花のように美しく綺麗であった。

しかし、僕の心の欲がそれを切り取ってしまった。

完全な人間になれば、そのあやまちはなくあれるのだろう。

しかし、あの時は、不完全であった。

もっともっとと、心にある際限ない欲が、怒涛に押し寄せる波のように、襲いかかってくる。

その時の僕には、それを回避するすべがなかった。

この心にある欲が無ければ…そう、完全な人間であれば、あやまちは回避できたのだろう。

けれども、その時は不完全であった。

今でも、不完全であるかもしれないし、完全になっているかもしれない。

ところで、僕の目の前に、いつからか少女が座っている。

彼女は誰で、何を思っているのか、それは分からない。

しかし、分かっていることは、一つだけある。
僕と同じ、不完全な人間であること。

完全な人間により、完全な人間に進む前の、不完全な人間であると。

彼女は何も言わず、僕の服を引っ張った。

とても弱々しい、けれども、なんだかとても強く、力を心に秘めた…。

そんな気がする。

不完全であったがため、昔は多くの失敗を繰り返してきた。

彼女もまた、多くの失敗を繰り返していくのだろう。

後悔ばかりの人生。前を向けば、あの女性が浮かんでくる。

僕はいつの間にか、その人との関わりを美化し、今までしてきたあやまちを忘れる。そして、またいつの間にか手を伸ばしていた。

完全にはなりきれない中間で、座ったまま、動こうとしないのだ。

これを捨てられれば、楽になるのだろうか?

そう思えども、そんなことはできないのは分かっていた。

完全であることが素晴らしいことなのか。

完全であれば、その人もまた、不完全であるそれに、教えをとかなければいけない。

しかし、完全である人、それは、人を思いやる心が欠如していた。

少しはあるのかもしれない。

しかし、完全であるが故に、その欠陥だけは中々克服することが難しかった。

僕のそばに居る少女は言った。

「おにいちゃん」

ただ、それだけを。

僕はその言葉に、彼女の姿が浮かんだ。

彼女は自分とともにある最後の瞬間まで、希望を投げかけた。

優しさ、人を思いやる気持ち、ただ光るその姿。

それは、今まで自分が見てきた完全な人とは違う、もしかしたら、間違えた存在、不完全な人間なのかもしれない。

けれども、しっかりと、僕の心には残り続けた。

僕はそっと少女の方に顔を向けると呟く。

「お前は後悔すんなよ。」

彼女は何も言わなかった。けれども、それで満足していた。

これからの道、どう進んで行くか、そんなことは分からない。

けれども、僕は、今、僕のできることをする。

人を守ることもまた、大切なのかもしれない。

けれども、何が正しいか、そんなことはもう分からない。

僕の住む、花星は、宇宙の中心にある。

世界は回っていく。ただ、完全な世界として。

────────

例え、規制と言う波が襲いかかろうと、僕は心の中で、新しい未来へと創造を続ける。

僕のなかで、その世界は間違いなんてないから。

その時、空に浮かぶ太陽はギラギラと燃えていた

───────

戻りたい気持ち

今日の朝、僕は、情報を渡そうとした。

色々な人に聞き、沢山集めてきたので、自信はあった。

しかし、まずは、内部からの方がいいかもしれない。

そのすすむくんの提案により、部員に1人ずつ聞いていくことになった。

まずは僕からだったが、特に本が気になるくらいでなかった。

僕は首を横に振る

そして、次に、すすむくんはみちかさんに聞いた。

すると、彼女は口をつぐんで答えない。

「みちかさん、どうしたの?」

僕がそう言うと、彼女は「実は…」と切り出した。

───────

彼女の話はこうだ。

小学校の頃、友達と訳があって、縁が切れてしまった。

今でもそれは続いて、今に至ると言う。

仲直りしたい気持ちはあるけど、中々、会う機会もない。

おとねさんは、みちかさんに近付いて「友達と長い間離れ離れになるのは悲しい…」と慰めた。

その時のおとねさんは、とても自分のことのように悲しんでいた

みちかさんは「ありがとう」と言って、最後に何か呟く。

「今になって、どうして考えたんだろう…」

──────

「よし、行こう!」

学校が終わって、すぐに、みちかさんの友達の学校へと向かうことに。

行けるメンバーは、すすむくんと僕だけ。

みちかさんは今日外せない用事があるらしい。

2人で行っても、解決できないだろうとは思ったが、すすむくんはとても乗り気だ。

彼を1人にさせれば、何を起こすか分からない。

僕は仕方なしに、すすむくんについていった。

リベラルシンク高校、それが彼女の友達の通う学校の名前。

リベシン高とも略される。

県内のテレビ放送で、たまに取り上げられ、多種多様な生徒が色々な社会的貢献をしているそう。

なんでも、最近は、否定についての考えが取り上げられている。

新しいことを発見するには、悪いことを否定し、いいものに近付けていく。

それが、番組でやっていたリベシン高の1つの思考法だと。

そうしている内に、学校に到着した。

電車からそんなにしない場所で、更にとても広い敷地にその学校はあった。

授業終わってすぐだけど、もう帰ったんじゃないか…。

悲観的に考えていると、すすむくんは構わず、近くに居た生徒に話しかけている。

あの子の友達の雲音さんは、まだ居るかと訪ねると、生徒は答えた。

帰宅部らしいし、帰ったんじゃないですか。」

やっぱりか…。

そもそも、この時間に来るのが間違いだったんじゃないか…

そう考えていると、前から声がした。

その方向を見ると、どこかで見たことがある人が。

「やっぱりお前はすすむだな。」

そう言ってやってきたのは、前に、散歩中にあった大人気ない人。

名前は非低。

「前に言ったこと覚えてるか?」

どうやら、僕をすすむくんと勘違いしてるらしい。

「なんだっけ…?」

彼はすぐに返した。

「俺の夢、沢山の金を好きな時に手に入れる。それをどうしたら叶えられるかだ。」

自分はすすむくんではない。そう言っても、信じてくれるかは分からない。

僕は少し考えていた。自分だったらどうするか…?

「どうした、考えて来なかったのか?」

「考えてきたよ。少し整理してたんだ。」

「そうか、言ってみろ」

「お金について深く知ること。それが君の夢を叶える方法だと思うね。」

男はイライラしながら言った。

「抽象的な答え求めてない。」

「そう…」

向こうから、すすむくんがやってきた。

非低は彼を見て、「誰だ…?」と考える。

直後「お前がすすむだ」と言った。

そしてこちらを向いて「お前は誰だよ」と。

とんだとばっちりだ。

「僕は間だよ。」

「そうか、あの時、一緒に居たやつだったな。」

「名前覚えておく」とだけ。

「そんなことよりも、今日は紹介したい方が居る。」

彼はそう言ってついてくるように、目配せした。

「その前に!」

すすむくんはそう言って彼を止める。

「どうした?」

「会いたい人が居るんだ。名前は…くもね…雲音あゆみ!」

「なるほど。その人と、今から会うあの人は同じクラスだ。

ついてこい」

彼はそう言って歩き出した。

「しかし、変わってるな。」

「何がかな?」

「雲音のこと。クラスではいつも1人で居るようなやつだぜ。」

そうなのか…。僕はすぐにポケットにあったメモ帳に情報を書いた。

それから、クラスに到着し、彼は「リーダー」と呼んだ。

「前に言った、すすむってやつを連れてきました」

そのリーダーと呼ばれる男は、「そうか。そいつがすすむか。」とジロジロ彼のことを見ていた。

クラスの端では、1人の女生徒が、1人で黙々と勉強している。

出席を見てみると、その人が雲音さんであることが分かった。

僕はごにょごにょと、すすむくんにその事を伝える。

その様子に、何かのリーダーの人が「お前らも、部活入ってねえのか?」とわってはいる。

すすむくんはすぐに言い返した。

「僕は思想学部に入ってるよ」

「思想学部?」

「うん。全国大会もある、凄い部活動になる予定なんだ。」

「まだなってないのか。」

「うん。だけど、この部活は凄いからなる気がしてる。」

リーダーの人は、フッと笑うと、非低さんを連れて、「またな」と去っていった。

非低さんも「次回会った時に夢に聞くからな」とリーダーの人の元へ。

「リーダー!」

すすむ達が聞こえないところにつくと打ち明ける

「非低、これからすることがある。」

「はい、なんでしょう?」

「思想学部、それをこの学校に作る。そして、他の学校にも、いいものだと噂を流すんだ。」

「どうしてですか?」

「同じ土俵の上で、屈服させるんだ。」

「なるほど。そうなったら、すすむは立ち直れませんね。」

「あぁ。否定は無敵の武器、どんなものでもつらぬく刀のようなもの。」

リーダーの男はそう言って高笑いした

────────

「君が雲音さんだね。」

すすむくんはそう言って、女生徒に近付いた。

「そうだけど…」

彼女は僕たちの方に顔を向ける。

「あなた達は…?」

「僕らは、思想学部。」

「思想学部…?」

「うん。人を救い、自分も救うための部活動。」

「それがなんで私のところへ…?」

「みちかさんの事で!」

すすむくんが元気に笑うと、彼女は、勉強道具をしまった。

「みちかさんがどうしたの?」

「喧嘩したままそのままになってるって聞いて!」

すすむくんがそう言うと、雲音さんは少し怒った

「もし、そうでも、どうしてみちかさんが居ないの?」

「今日は来れないらしくて」

「もういい。」

「仲直りしたくないの?」

すすむくんは止めようとするが、雲音さんは帰る準備をして言う。

「もうこの学校に来ないで」

その一言に、すすむくんは、何も言えずに居た。

雲音さんが居なくなって、すすむくんは僕に聞いた。

「今日のこと、何が悪かったんだろう?」

僕は頭を悩ませる。

「なんだろうね。もし、言うとするなら、みちかさんが居なかったことかな」

それから、家に帰る最中、ずっと彼女が答えなかったこと。

それが頭に残り続けていた

───────

過去③

私はピアノを弾くの好き。

小さい頃から、家にピアノがあり、お母さんが上手に弾くのを聴いて育った。

そして、私もいつの間にか、ピアノの前に座って弾いていた。

最初はおぼつかなくて弾けなかったけれど、時間が重なって行くに連れて、上手くなってる気がしてる。

ずっと、弾くのにも楽しさがあって、傍にはお兄ちゃんが上手くなったねとずっと支えてくれた。

他にも沢山の人が来て、私はそれがとても嬉しい。

お兄ちゃんはいつも、私のいいところを真剣に見つけてくれた。

私はピアノを弾くのが好き。

皆が喜んでいると思うのも好き。

私の夢、それは、ピアニストになること。

皆を私の楽しいと思うことで笑顔にさせたい。

それは、中学校になるまでの私の夢だった

けれども…

痛い…

私は指を抑えながら苦しんだ。

ある男の不注意によって、指に怪我をした。

治療すれば治るらしく、時間はかかるけど、完治すると聞いて、私は安心した。

もう一度、ピアノが弾ける…。

お見舞いによく友達が来てくれた。

嬉しかったけど、その原因になった人、男の子について、嫌な人って言う。

私は「大丈夫だよ!」と笑顔で返した。

なおるし、私は大丈夫だから…

ある日は、あの人がぶつかってきた原因について聞いた。

彼は、1人で考え事をして、その最中に、メモを取ろうと紙を取り出す。

そして、歩きながら、周りを見ずに、歩いていたところを私とぶつかった。

彼の不注意でこうなったの。

私は病床の中、そっと1人で、大丈夫。と心に言い聞かせた。

私は誰も恨まないし、人が喜んでるところが好きだから大丈夫って。

でも、怖かった…。

それが何故だったのかその時の私には分からなかった──────

それから結構経って、私は退院する。

心の中では、まだ明るい気持ちは残っていた。

これで、ピアノが弾ける。

昔みたいに、色々な曲を弾いて、上手く行かなくても最後までやって、できた!楽しいって。

そう考えると、私は、はやく弾きたいって思った。

今でも、ピアニストになりたいって夢はあるから…。

でも…

私はピアノに向かって、悲しくなった。

前みたいに弾けない。

指が動かない。

私はそれに悲しくなった。

もう私の夢は叶わない。

そして、ピアノはもう弾けないのだと…

いいえ、弾けるかもしれない。

けれども、私の心がもう諦めてしまってた。

私ははじめて途中でピアノを引くのを辞める。

その日から今まで、お兄ちゃんや、聴きに来てくれてた人に、私のピアノの音を聴いてもらったことはなかった。

あれから、余りお兄ちゃんにも会ってない。

なんでこうなったのか…

私はある日考えた。

すると、あの男の子のことが浮かんでくる。

あの人は、自分のことに集中して意地悪した。

その時、私ははじめて人をうらんでしまいそうになった。

──────

ある日のこと、私は、学校の放課後、帰ろうと思っていると、目に入るものがある。

それは、あの男の子の机。

あったのは、何かのノートだった。

その時、私は思い出す。

あの男の子が考え事をして、書いていたノート。

これのせいで、私は、怪我をした。

それをやぶってしまいたくなる。

私はそっと、そのノートを拾い上げる。

ただ、表紙を眺めていると、クラスに男の子が戻ってきた。

彼は慌てるでもなく「やぶってもいいよ」と言った。

私は驚く

「大切なものなんじゃないの?」

「うん。大切なものだよ。」

驚いている私に彼は続けて言った

「君には、僕の大切なそれを破る権利がある。」

とても強いその言葉に私は「しないよ」と。

「何が書いてあるの?」

彼は答えた

「これからの事。未来への希望かな。」

「何それ?」

私は頬を緩める。

「そこにあるのは俺の全てだよ。」

「読んでもいい?」

私がそう言うと、ただ、彼は顔を縦にふった。

ページをめくると、そこには大きく、高校生になった時のことと書かれている。

‘’高校生になったら、思想学部を作って、皆を笑顔にできるそんなところにしたい”

次のページを開く。

‘’大人になった時に、全世界の人を平等に救えるような、そんな人になるために”

‘’僕の高校生活は、この思想学部によって、近くの人を笑顔にさせる”

私はそれを見て、思わず笑ってしまう。

「僕は真剣にそのこと考えてるよ。」

真面目な顔で、私の方を見る

「面白いね。」

「まだこれは誰にもみせてないよ。」

「そうなんだ…。じゃあ、もし、同じ学校だったら…」

彼はそのまま私の顔を見つめていた。

「一緒の部活に入ってあげる!」

「ほんとう?」

「うんっ!」

その時、私は、昔のことを忘れ、彼と楽しく時間を過ごしていた──────

遺書

あなたは、考えたこと、あるだろうか?

自分が死んだ時のこと。

この創作の題名は…そう、遺書としよう。

エンディングノートでもなんでも良かった。

しかし、言葉としては、それが1番相応しいのかもしれない。

人は死んだ後、どうなるのか?

想像しただけでも怖い。意識はそこに残り続けるのか、消えてなくなってしまうのか。

そうして、先の世界とされる天国と地獄という場所。

それは存在しているのか?

けれども、僕は、この考えることのできる頭さえあれば、どんな世界でも必ず天国にできると信じている。

それは創作という力。人から共有したもの、新しく作り出した自分だけのそれを考え続ければ、その恐怖から逃れることが出来る。

創作とは、何か外部の特別なものが必要とはならず、自分の頭と少しの経験さえあれば、無限の創作をつくりだすことができる。

現実逃避とも言えるが、人はいつも目を逸らそうとする。

仕事、勉強、どんなことにおいても、避けては通れない、死という現実を。

だからこそ、僕は肯定する。現実逃避を。

地獄に居るのならば、今までの楽しいことを振り返って、今のことを忘れてしまう程のめり込む。

そして、意識があり続けても、創作をする限り、苦しみは永遠には続かない。

創作とは、多くの人を救い、多くの人を望んだ世界へと誘う。

何か特別な道具が必要ではなく、想像さえできれば、この楽しい時間を永遠に創り出すことができる。

僕はどんな時でも、創作し続けよう。

そして、僕が居なくなった後の世界。

どう考えているだろう?

悲しんでいて欲しい、覚えていて欲しいなど色々あるだろう。

しかし、僕は覚えている必要はないと考える。

誰かで自分の人生を埋めつくしてしまうのは、外の世界が苦しいものに変わってしまう。

相手がどうであろうと、囚われすぎず、自分の心躍る何かに頑張って欲しい。

しかし、囚われてしまうこともあるだろう。

僕はそんな時も、創作をする。

創作をしている間は、誰でも、自分のそばに居てくれる。

誰かがかける事はなく、本当に居たい人、本当に楽しい時を永遠に感じていられるもの…それが創作。

これによって、自分はいつも救われていた。

そして、悲しむ人は居るかどうか、僕はそれは要らないと思う。

本当に相手のことを思うのなら、悲しんでいる姿は見たくはないはずだ。

悲しい気持ちになれば、自分も悲しくなる。

それなら、楽しんでいる姿を望むことこそ、本当に思いやることではないだろうか?

多くのことで、人は、自分のことを考えすぎている。

そんなことよりも、残った人。それは、頑張って生きていかなければいけない。

なら、その先の未来が幸せであること、それを望んで居なくなるとしようじゃないか。

これが僕の遺書。

また人生を歩んでいく最中、帰るかもしれない。

創作とは、時を重ねるにつれ、とても強くなっていくのがそれであるから。

僕は変えていく。

そう思った時、近くにあったノートがパラパラとめくれていった。

───────

もうそろそろ僕はこの世を去らなければいけない。

男には、それが分かった。

いつになるかは分からない。

けれども、自分の心がそれを告げていること。

それだけは分かった。

この世に未練なく、最後まで何かをするには、どうしたらいいか。

昔は、プロのスポーツ選手になる、有名人になるなどとても分をわきまえない夢を抱いたものだ。

しかし、達成した後のこと、それを考えると本当にそれがいいものなのか…。

分からなくなってくる。

最後の時でさえ、その答えは分からなかった。

けれども、今まで続けていたもの。

それは変わらずあった。

ノートをつけること。

昔書いたこと、それを振り返ってみると、こんな事を考えていたのかと懐かしく思って、あの日のことが浮かんでくる。

今では、ものは違えど、変わらないものがあった。

今日もそれを書く。

誰かの葬式、それを悲しむ人は数少ない人。

皮肉なことに、その最中、笑顔だったり、楽しく生きている人も多い。

全く関係ない誰か、その不幸を何も思わないかのように、人は楽しく生きようとする。

けれども、それでいい。

苦しみは広がる。
けれども、それと同時に、楽しいこと、幸せも広がる。

私はそれを知っていた。

だから、悲しむことはない。

精一杯、今を楽しく生きることこそ、みんな、そして、誰かを幸せにすること。

私はそっとそれを書くと目を閉じた。

明日は目を覚ますかどうか分からない。

けれども、今日はゆっくりと眠れる気がした

────────

解決

僕の情報を使っても、中々、上手くは行かなかった。

偏見のフィルターがあるため、難しいのは当然だったかもしれない。

今日もどうするか、みんなで考えた。

「1人より、部活とか大勢の人にって感じの方がいいんじゃないかな?」

僕がそう言うと、青野くんはいいねと。

調査では、悩んでる部活が多いと分かっていた。

僕は安堵する。

すると、すすむくんが待ったをかけた。

「どうしたの、すすむくん?」

「最後に前の状態で、1人だけやりたい人が居るんだ。」

「それは?」

青野くんが前に出てくる

──────

今日の部活は終わり。

すすむくんが1人でやること…

僕は彼を考えながら、今どうしているだろうと、雲を見つめた。

─────

おとねは1人で、影に隠れて、すすむのことを見ていた。

「あの子に何かしないでしょうね…。」

すすむは1人で、何かビニール袋を持って、誰かを待っている。

すると、「お待たせ!」と、女の子がやってきた。

「しずくさん、こんにちは!」

「こんにちは、すすむくん!」

そうして、首を傾げる

「何の用かな?」

すると、すすむは、持っていた袋を彼女に渡した。

「さっき買ったんだ!良かったら」

しずくが中を見てみると、そこには、プリンが入っていた。

「私の好きな!
しかも、ずっと食べたいと思ってた限定のやつ!」

しずくは顔をあげて、「ありがとう」と笑う。

少し経ってすすむは切り出した

「聞きたいことがあって!」

「どうしたの?」

「何か困ってることはないかな?」

「困ってること…?

えっとね…」

しずくはそう考えていると、ハッとした。

「そんなにもらってばっかりじゃ悪いよ!」

「僕が知りたいから、もらってるのは僕の方だよ!」

すすむのそれに「分かった」と頷く。

「実はね、最近、お気に入りのシャーペンがなくなったの…!」

「そうなんだ。」

「学校でなくなったと思うのだけど、見つからなくて…!」

「分かった!」すすむはそれに大きく笑顔を見せた。

そうして、「何か画像とかあるかな!」と言って、しずくのスマホで見せてもらう。

そこには、水色のキラキラ光るシャーペンがある。

「どうするの?」

しずくが顔を覗くと、「これから探す!」とすすむは笑った。

「いいよ…!見つからないと思うから…。
悪いよ…!」

「僕が探したいと思ってるだけだから!」

そう言って、すすむは探索を始めた。

ところで、おとねは、何も無かったのを安心すると、近くのお店に休憩しに行く

そこに偶然、遠目から見えたシャーペンが置いてあった。

「あ…!これ!」

おとねは手に取って、シャーペンを眺める。

────────

その頃、しずくは、すすむを止めていた。

いくら探しても見つからない。

それでもなお、すすむは見つけようとしていた。

「もう探さなくて大丈夫だよ…!悪いし…!

それに、そろそろ帰らなくちゃいけないんだ…!」

しずくの目に涙がたまる。

「僕は探したいから探してる。だから、悪いと思わなくていいよ。

そっか、また明日!」

「うん…!」

しずくは消えそうな声で頷いて、家に帰った。

すすむは変わらず、どこにあるかも分からないシャーペンを探していく。

それから、おとねがすすむの探していた場所に戻ってきた。

「まだ探してたんだね!」

すすむは顔をあげる。

「おとねさん。うん、中々見つからなくて。

そういえば、なんで知ってるの?」

おとねは「見てたんだ!」と言って、ポケットに入っていたシャーペンを、すすむの手に握らせた。

「何これ?」

すすむは手を開くと、しずくに見せてもらったペンがある。

「これ!どこにあったの?」

「近くで売ってて!買えたので買ってきちゃった!」

おとねはそう言って笑う。

すすむはおとねにシャーペンを返した。

「しずくさんのペンは、一つだけだよ。」

そうしてまた探しはじめる。

「見つからないかもしれないよ!」

「大丈夫、諦めなければきっと見つかるから」

すすむはずっと探し続けた。

──────

辺りが暗くなって、明日にして帰ろうと思った時のこと。

キラッと光る何かを見つける。

その方向に行くと、水色の画像で見たシャーペンがあった。

「よし!」

すすむは握りこぶしを作った

──────

次の日、すすむは昨日見つけたシャーペンをしずくに渡す。

それにしずくは涙を流した。

「そんなに嬉しかった?」

「あんなに探してくれて、更に見つけてくれて…すすむくん、ありがとう…!」

袖でそっと拭うと、「お願いばっかりになっちゃうけど…!」と。

「何かな?」

「私も思想学部に入れて欲しい!」

「大歓迎だよ!」

すすむはそう言って頷く。

その様子をおとねは見て、にっこり笑った。

その時、シャーペンはとても綺麗に輝いていた───────