1話物語⑧

美しい夕方

今日は前に自分の家のかわりとして作った宿に泊まる。

仮だったため、粗末なものとなっている。ススキに似た植物を屋根に。

雑なものとなったが、なんとか完成した。辺りを見回すと、もう日が暮れている。

今日は自然の美しいものが見れるかもしれない。

私はあの美しい夕焼けを見ることにした。

家の近くには、田んぼがあって稲が一面に広がる。

そこからさやさやと音がたって、私の葦葺きの宿に、気持ちのいい秋風が吹き渡ってくる。

金色に輝く稲がとても綺麗だ。

この時に感じるあの沈む太陽はなんと美しいことだろうか。

朝や夜の世界は青く、暗い。しかし、この時に顔を出す世界は真っ赤に染めてしまう。

それは、短い時間に過ぎないが、何かを与えてくれる。

とても素晴らしい今日の夕方よ

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波とあの人

私は夏になるとよく海岸に行って、あの波をみる。

評判が良くて、よくたち騒ぐあの波。

あれを見ると、あの人のことと重ねてしまう。

私には友達が居る。

とても大切な。しかし、自信のない私は、いつ他の人と仲良くなって、私の前から居なくなってしまうかを気にして、心が定まらない。

仲良くしているのが苦しくて、あなたがそばから居なくなって、涙で袖をぬらすようになるのはどうしてもさけたいことです。

だからこそ、なるべく、心にかけすぎないよう、求めすぎないよう関わっていきたい…そう考えています。

あなたと長く友達で、できるだけ長くあなたのお傍に居たいですから…。

私の心の弱さ、それがあなたを求めすぎ、あなたを信じることができないこれを作ったのです。

もし、できることならば、ただ、私の求める人達で仲良く笑顔で溢れる…そんな空間が作りたい…。

外部の何かで傷つくようなことはなく、楽しくて、優しくて、誰もが安心して過ごせる、そんな場所を…。

私は平等に心にかけることをして、この心の依存を捨てたいと思います。

みんなが笑顔になること、それこそが理想と…私は思います。

そうして、またあの夢を見ましょう…。

山の美しい桜

今日は春のある日。

家の窓からそっと外を眺めると、近くの山に美しい桜が咲いている。

毎年この日は山頂に咲くあの花を見ながら食事をする。

今日も美しく咲いて、ただ見とれてしまっていた。

この時は特別で、幸せな時間だなあ。

わたしはそう思うと、人里近くにあった霞が段々と近付いてきてることに気が付いた。

この日は、たまに、あの霞によって桜が見えなくなってしまう。

どうか、霞よ。かからないでくれ。

あれを見ると、あの日のことを思い出す。

美しいものが、段々と陰りによってその姿をにごらせてしまう。

それだけは許せない。その陰を消し去ってしまいたい。

私はそう思って必死に陰を払おうとした。しかし、段々とその美しさはどこかへなくなってしまった。

まるで、春の美しい桜の花が散ってしまうように。

どうか、たたないで欲しい…。

私がそう願うと、ふと心の中に浮かんだ。

自分は今まで、今の美しさを忘れてしまっていた。

霞がかかっていない今。それは喜ぶべきもので、なくなることをおびえるよりも、今、美しくあるそれを見つめる。

それを忘れてしまっていたのだ。

今、気にするべきは、なくなってしまうことではなく、今、そこに存在していることなのだ。

私はそれをそっと考えて、また、あの美しい桜にみとれていた。

そして「美しい…」そうこぼした──────────

それでいい

昔はあの人は、あんなに傍に居た。

けれども、時が経つにつれ、段々と離れていってしまった。

私が何かで誘おうとも、あの人はつれない表情で、来ようとはしない。

どうしても一緒に居たい、その思いから、宗教に頼り、その神に祈った。

しかし、そばの山に吹き降ろす風のように、激しく地面へ吹き付ける。

私はあの人を求めるあまり、考えてあげられなかったのです。

求め、求めるあまり、自分のことばかりが頭の中で一杯になって、あの人のことは何も思わなかった。

辛く、苦しい時に、手を差し伸べるではなく、ないかのように振舞ったのです。

なんでそんなことを思ったのか、考えることもせず、まるで、相手が悪いかのように振る舞う。

彼女はますます辛くなったかのように、あの頃が無かったような元気を失ったように見えました。

でも、私はそんなことは求めていなかった。お互いが楽しく、幸せであればいい。

そう思っていたはずだった。まるで、あの山下ろしの風のように、激しく吹き付けた。

今ではもう後悔することしかできない。

しかし、私はもう一度祈る。

今度は、なびくのではなく、自分の心の弱さ、それを脱却し、ただ、相手の喜びを考えたい。

相手が本当に喜ぶことを見つけ、それを実行する。

戻ってこなくてもいい。ただ、出会えない今、あなたが幸せであることを祈ります。

もし、また出会えたのなら、その時、私はあなたのことを思い、そして、あなたが求めることをしたい…。

ただ、これだけは言わせて欲しい

今までのこと、ありがとう─────

あなたとの約束

あなたは覚えていますか?

あの約束を。

私はずっとこの薄れゆく思いの中、その約束を忘れず、心に置き続けていました。

それは、草においた露のようにはかないものにすぎないかもしれない。

けれども、私にとってはとても大きい希望の光。それを頼りに、片隅に置き続けていました。

こうして、命長らえているのは、もしかしたら、あなたの言葉かもしれません。

いいえ、多くの人のおかげです。けれども、あなたの希望の言葉、約束も私の心の中では、かけがえのない、私を支えたもの。

あなたが有言実行をする方ならば、まだ約束は実行されてなくておかしくはありません。

しかし、あの約束が実現されないのでは…と不安で、今年の秋が過ぎていくと思うと…私は寂しくて仕方ないのです。

もう一度会いたい。そう思えども、あなたは頑張っているのでしょう?

そうであるならば、私は、お約束が実現されないこと、それを嘆くことなく、私もあなたとともに、今を頑張ろうと思います。

近くには大切な人がいる。確かに、あなたも大切です。しかし、それによって、周りをおざなりにしてはいけない。

あなたが、囲まれているのが好きとおっしゃったように。

私はただ、また進んでいこうと思います

約束の時まで─────

広がる海と空

とても綺麗な朝、1面は、ポツポツと雲があるが、その中に青さが顔を見せている。

なんといい景色だろうか。

こんな日は、舟で出かけたい。

私はそう思うと、1そうの舟を取り出して、こいで行った。

このどこまでも続きそうな大海原、私は風に吹かれながら、とてもテンションがあがる。

この先に何があるのか、そんな冒険心すらもあった。何も考えず、ただ、この舟とともにどこへ到着するのか…。

そうして、私は周りを見渡した。すると、いつの間にか、岸が見えなくなった。

そんなに来てしまったか…。

そうして、そのままキョロキョロと当たりを見渡していると、空の青さと、海の青さが重なった。

もう、世界はこの青さで埋め尽くされているのか。

そう思うも、なんだか、それがとても美しくて仕方が無くなった。

ただ、歩いているだけでは得られない世界、それが今、この私の目の前にある。

それがとても貴重で、胸を高鳴らせるものだと思った。

すると、小さな波がやってくる。

それはまるで、大空に浮かぶ雲のようだった

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鳥の声

この時期になると、千鳥がやってくる。

それはとても悲しい声で鳴いて、なんだか、私もそれにつられ悲しい気持ちになる。

集団で渡ってくるはずが、その声によって、どれだけ多くの人と囲まれていようと、寂しさを感じさせる、分離した孤独であることを千鳥は私に教える。

1人である時はとても強く感じるが、人と居れば、感じない。

そうも思っていたが、今の苦しい気持ちを分かり合えない、別々の分離した人間であること、それを教えた。

この関所に番人として、長い間、暮らしていることで、千鳥によって多くのことを教わった。

時には、晩になくものだから、そのもの悲しい鳴き声で、何度目を覚ましたことだろうか。

もっと寝ていたいと思いつつも、私はそうして、千鳥の鳴き声から何かを学んでいた。

だが、寂しい時も、そっと鳴き声を出して、ここに居る。一人じゃないと励ます声にも聞こえたことがあった。

千鳥は鳴く。私はそれを喜びと思っている───────

雲の隙間の光

今日も、辺りは真っ暗になり、夜がやってきた。

今は秋のある日。

とても長い夜に、気持ちのいい風が吹いてくる。

そうして、見上げると、暗い夜の空には、雲が1面にかかっていた。

その雲に、秋の日に吹くこの夜の気持ちのいい風があたって、たなびいているように見えた。

そうして、見ていると、その雲の切れ目から、明るい光が輝いている。

それは、月の光だった。その雲の隙間から、体を隠してしまっている、月も、全てを隠しきることはなく、その美しい光から、雲すらも、透過させ、明るくこの夜空を彩る。

この秋の風景もまた、とても美しいものだ。

私は深く感じいって思った。

今日の夜も、とてもいいものである。と。

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私のおもい

あの人はずっと私のことを思っていてくれるだろうか…?

私はふと考えた。あの人はとても優しく、気遣いができて、とても理想の人間像の方。

私とは釣り合いがとれないのは分かっている。しかし、私はそれでも、あの人と居たい。

遠く離れて、誰かに傷付けられたり、嫌なものに変わってしまうよりかは、私がそばにいて、必死に、より良い方向へと抗う方がいい。

だからこそ、私は、友達でいたい。

あなたの心は分かりません。

しかし、私はあなたに会って、すぐに別れたその後の私の心は、起きた時に、乱れている髪のように、強いおもいをはせて、千々に乱れているのです。

あの人と関わっている瞬間、ただの友達なのに、それが私にとって、とても素晴らしい時間で、過ごしているだけで、笑顔になれて、考えるだけでも幸せな時間になるのです。

時間や、周りを忘れ、あの人のことばかり考える。

でも、それが、私の大切な時間。なくしたくないもの

ありがとう…
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