占いと葛藤
皆さんは、占いについてどう思いになられるだろうか?占いなんてインチキだ、騙されている、現実をみろと思う人も多く居るだろう。
僕、赤野誠二は、その狭間で葛藤していた。
無料の占いを利用し、やるべき事へのモチベーションで、自分をコントロールしている。
そう思いかけて居たが、その反面、スピリチュアル的な偶然が多く起こるようになってきた。
これは不味いと思った僕の中に、自分を御するため、2つの人格が現れたのだった。
それは、否定派と肯定派。
そのふたつの意見に耳を傾け、どちらにするか考える。
まずは否定派からの意見だった。
「なぜ、誰かに自分の人生を決められなくてはいけない。自分の人生は自らの手で切り開くものだ。」
肯定派は、すかさずバツを入れる。
「人は何か縋るものがなければ生きていけないんです。だからこそ、そんな人に占いはとても重要な役割を発揮しているのです。」
そのままヒートアップしていった。
「占いはいいところばかりじゃない。適当なことを言ってその人をいい気にさせて騙すんだ。それに、誰かに自分の下駄をあずけていては、自分の本当にしたいことができないのだ。」
「 どんな物事においても、悪い部分は存在する。モチベーションをあげるための利用なら、げたは預けないでしょうに。」
「それがげたを預けているという事だ。ポジティブなことばかり書かれている訳では無い。そればかりを言われる訳じゃない。ネガティブなことを言われることだってある。それによって、気分が浮き沈みするのは、げたをあずけている証拠ではないか。」
「悪い情報は無視して、いい情報だけをみればいいじゃないですか。」
「それでは、高慢な人間になるだろう。今まで、沢山経験してきて、分かってるだろう?占いの何が悪いかは。実際に、悪影響も出ている。筆頭にあげられるのが、スピリチュアルだ。ただの偶然を、運命的なものだと思い込んでしまう。客観視しても、思っていることには変わりはない。
何故、そうなったか?それは、占いによってスピリチュアル的な見方が構築されたからだ。確かに、いい面だけなら、これがあるといいかもしれない。しかし、悪い点を見ない訳にはいかない。運命と、悪いことをして、自分に返ってくる。そんな言葉があるだろう。それはほぼ同じものだ。ちょっとしたことでも、悪いことと認識され、自分の肯定感を下げる。これは、悪であるとしかいいようがない。それによって更なる不幸へと導かれてしまうのだ。犯罪や、多くの人を不幸にしてしまうよっぽどの悪であるなら、改善すべきだが、ほんのちょっとの悪ならば、気にする必要がないのだ。」
「いいところが見えるなら、そこだけを考えて、悪いところは一切考えなければいいのです。」
「いいや、前に見たことがあるだろう?占いで、あなたは占いに依存しすぎると。だから、辞めるのが吉だ。」
「いいところしかみないのです。よく考えてみてください。占いはあなたのことをあてることすらも、それとして成立します。なので、あなたは占いにはまりすぎるとなっていた場合、それをみるのは、依存しかけの人や、占い好きくらいしか居ません。ほぼ確実に当たるので、そう言ったものには、手を出さないんです。」
少しの沈黙が流れたあと、否定派は言った。
「実際に占いが正しいという証明をしてみろ」
肯定派も続けて言う
「正しくないという証明をしてみてください」
2人の結論はそれだった。解決策のない答えに、僕は頭を抱える。
そして、その事を振り払うように、走り出した。
少し走ると息が荒くなり、その場に止まって呟いた。
「僕は何を信じればいいんだ…。」
すると、後ろから肩にポンと叩かれる。
振り返ると、何かの宗教服のようなものを身にまとった男が立っていた。
そして、僕にそっと話しかけてくる。それはとても優しいこえだった。
「何かお困りですか…?」
僕はその声に、苦しさがどこかへ飛んでいくように、涙がポロリと頬を駆け下りた────────
皆無
最近、周りでは、宗教勧誘が増えてきた気がする。1つのことを信じ、絶対とし、人にそれを信じさせる、私はそれがどうも鼻についた。
「馬鹿らしい」
そう呟くとズキッと頭に痛みがはしった。
「お前も、そうだろう」
その痛みの原因は、そう言っている。
走馬灯のように、過去のことが思い出された。
そこには、この世界は、知識でできるていると話したことで、皆に笑われ、馬鹿にされ続けた自分の姿があった。
とても苦しくて、悲しくて、今にも泣き出しそうな、自分の姿がありありとそこにある。
信頼できそうな、女の子にすら裏切られ、あの時は、孤立無援だったんだ…。
それと、その宗教の姿を重ねていたのかもしれない。
私はそれらを振り払うため叫んだ。
「うるさい。」
ふっと我に返り周りを見渡した。すると、少し驚いた表情で、道行く人がこちらをチラリと見ていた。
私は少し顔を赤くしながら、その場から離れる。
払拭させるため、昨日のことを思い出していた。
─あの後、加木さんとは、知り合いの家に行くということで別れる。
その直後に、約束を取り付けてくれた。ある人の家に一緒に来て欲しいとのことだ。
変わった思考の持ち主らしく、彼はとても楽しみにしていた。
その後、加木さんと合流する。
道中、2人で歩いていると、今日もなぜか、加木さんに話しかけてくる人が居た。
「ちょっと、聞いてくれよ。」
耳を傾けると、どうやら、彼はこれから行く人に先に相談に行ったらしい。
でも、それに、満足行かなかったようで、とてもご立腹のようだ。
「最近、うっかりが多くなってきたから、どうしたらなくせるか聞いたんだ。」
「するとな、あいつは、う、っ、か、りのどれかが無ければ、うっかりはなくなるって言ったんだ。」
彼の怒りが溢れてきた
「俺はそんな事が聞きたいんじゃないんだ。うっかりしないためにはどうしたらいいかが聞きたいんだ。」
とても悔しかったらしく、足をバンと叩く。
「なのに…あいつは…。解決策を言わないで、ずっとそればかり言ってきたんだ。
時間の無駄だった…。」
彼は話してスッキリしたようで、そこで別れる。
これから行くとこは、変わった人間のもとであることは分かった。
──────
私は、少し固まっていた。
自分は何をしていたんだろう?
辺りを見渡すと、加木さんともう1人が向かい合っていた。
そうだった──
私は、あの人の話に圧倒されて、意識が無くなっていたんだ…。
始まりは…加木さんからだった。
会ってすぐに、理想の世界についてたずねた。
「あなたの思う、それとはなんだ?」
すると、少し考えると、口を開いた。
「それは、何もかもが存在しない世界。これこそが理想。」
私は反発して見たくなった。
「何も無い世界より、嬉しいこと楽しいことしかない方が、断然いいのでは?」
それに彼はすぐに答える
「もし、そんな世界があったらどうだろうか?
人には多くの欲がある。
今までの欲では我慢できなくなり、更なる欲を求める、それは、理想とは程遠い世界だ…。」
加木さんが言った。
「苦しみと喜びは、表裏一体、どちらがかければ、その理想の世界もかけてしまうという事か?
だからこそ、どちらも存在しない、そんな世界が理想だと…。」
彼はこくりと頷いた。
「以前、兄の下に訪れたんだな。話は聞いている。相談に来たはずが何も聞かず帰ったと。」
そうだと思い出したように、彼は続ける。
「僕の名前は掘多正ニ、堀多同一の弟だ。」
「以前、俺に、対義語と言うものは、表裏一体でどちらか一方をなしにすることはできないと言った人か。」
加木は納得した。思想体型にすら、影響を与えるのだと…。
正二はまた頷くと言った
「そう。そして、僕こそが、皆無主義者。全ての疑問、悩みは存在しなければ、解決される。」
そこで、私はハッとする。
そうだ…私は…加木さんと知り合いという驚きと、彼のよく分からない思想にやられてしまったのだ…。
2人の方をみると
正二さんは、自分の思想について語っていた。
「何故傷付くのか?それは、悪口など傷付く言葉があるからだ。そもそも、それらが存在しなければ、傷付くことはない。
そして、殺人や、自殺の問題についても同様だ。生と死という概念がそもそも存在しなければ、人は苦しむ必要がないのだ。」
「全ての問題は、これで解決される。そう、これこそが最高の思想、皆無主義なのだ。」
私は、この時また新しい思想と出会ったのだった──────
負の感情
僕は理想主義者だ。
常に頭の中に、こうであるべきだと言うルールが浮かんでいる。
人の、負の部分をみると、あつくなるような思いに、ルールが僕を突き動かす。
いつも宥めて行動にまでは至らないが、憤りがいまにも吹き出しそうになり、それを思い切り何か他のことへぶつける。
僕は対戦が好きだ。理不尽さもあるが、ほとんどは自分の実力により決まる。
そして、自分だけの哲学もある。
近い実力で戦う時、気を強く持てば、ほとんどの対戦に勝てるということだ。
多くの敗北は、体調が悪い時、マイナス思考な時で、沢山行えば行うほど、その状況に近づいていく。僕はそう確信している。
ちなみに気を強くは、決して傲慢さとは違う。
自らの実力を過信し、求めていることを得られなかった時、理不尽だと嘆くことは、正反対の位置にある。
こう言ったことはどうしても許せないのだ。
────────
僕はいつもの散歩道を歩いていると、空き地の方から声が聞こえてきた。
単語の言い合い、これは、しりとりだと気付いた。私はその空き地の周りをぐるぐるとまわって戦況をみる。
どうやら、勝つ人はいつも同じで、何度も1番最初に負けてる人が居るらしい。
とても悔しがっていた。
数回終わると、解散されたが、負けていた人は残っていた。
スマホを取り出して、そこに、何かを書き込んでいる。
偶然、SNSを使用してることが分かって、僕はそのアカウントを自分で調べてみることにした。
すると、そこに書かれていたのは、とても酷いものだ。
負けたのが悔しい。あの人が強すぎるせいで負けたんだ。
他を振り返ってみると、レートなどで上に前は行けたのに今は行けない。昔は強かったんだと書き込んだ。
さながら、自分はとても強い存在だから当然そこに居なければおかしいといいたげなそれに無性に腹がたった。
レートは、全体のレベルが上がれば、自然とそれに伴って、そこに達成するまでの難易度もあがる。
だから、君の実力はなんら変わってないんだ。そう言いたくなった。
下には、沢山の愚痴が綴られていた。通信がおかしい、どうにかしろと。
自分のストレスを他人のせいにして、鬱憤を晴らそうとしているそれが、許せなかった。
一言何か言ってやろうと思ったが、ふっと思い出した。自分自身のルール、それは、ネガティブはなく、気を強くもつこと。
もし、ここで文を打ち込んでしまえば、それは必ず、ネガティブなことになるだろう。
僕は打つ前に止まった。
人はネガティブなことを、敏感で、よく覚えている。嬉しいことよりも、辛くて悲しいことを覚えているんだ。
そっとその場から離れた。そして、思った。
自分自身も、心の中では、ネガティブなことを思ってしまう。それを押し殺すために、ポジティブなことを思おうとしている。
だが、彼と何一つ変わらない弱い人間なのだと…。
もうここへは二度と来ないだろうと思った。
僕は散歩に戻った。
道中チラシが舞う。風にゆらゆらと。
そこには、梶野亜星と書かれていた─────
名前
今日、加木さんが知り合いを紹介してくれると言うことで、私は、待ち合わせの場所へと足早に向かった。と言うのも、彼の知人だからと、期待に胸が膨らんだ。
私は待っている間に色々な妄想を広げていった。
女性を紹介すると言っていた。もしかしたら、加木さんが女になったような人かもしれない。
多分、彼とはまた違った斬新な思想だろう。それはそれは、とても面白いものに違いない。
そのドキドキが強すぎて、時間待ち合わせの30分前についてしまった。そこで私は、いくつかのアイディアを考えて、これが彼女の思想だと予測しよう。とそう思った。
多分、加木さんの思想に影響を与え、与えられで、似ているのだろう。
この世界には、可愛くないものは存在しないではないだろうか…。
だが、それらはパッと私の前から消えてなくなった。
彼女に会った瞬間にそれは分かったからだ。
加木さんに会うと、のべつまくなしに、今日はなんの用?と聞いてきた。
その時の彼女はとても怪訝そうな表情で、私の方をのぞく。
その表情が私の古傷を疼かせた。
加木さんが事情を話すと彼女は話す
「あなたの事だから、変わった人を連れてきたのね。」
私はそれに少しカチンときた。
すると、加木さんは言う。
「あぁ、とても面白い思想だ。」
「前にあなたが言ってた人かしら?聞かせて。」
すると、彼は話し出した。
「この人の名前は井知、彼は言った。この世界は一つのものからできていると。」
彼女は少しそそられる。
「なになに?」
「そう、元素よりも大きな、全てを包み込むように大きな…。万物の根源は知識だ。全ては、知識でできていると。」
少し場の空気が固まった。私は第1印象から、どうせこの人は、自分の意見を受け入れてはくれない。
過去の周りの人らのように…と思った。だからこそ、言うのは控えようと思っていた。しかし、加木さんが代弁してくれた。
少し嬉しかったが、この後が怖い。私はそっと成り行きを見守った。
「へぇー。やっぱりあなたも変わってるね。」
思った通りの悪口だ…。私ははぁとため息をつこうと無意識に空気を大きく吸い込んだ。
すると、その時だった。
「でも、面白いじゃん。加木くんが、あなたのこと紹介したいって言ったのわかる気がする。」
彼女の言葉に嬉しさで、今度は涙が零れそうになった。自分の考えを2人も認めてくれるとは思ってはいなかったから。
その涙を堪える。今度は彼女のことが気になった。私は思い切って、何か思想があるのかとたずねてみた。
しかし、彼女はそれに答えない。きっと、持っていないのだろう。
直後、彼女は、加木さんの方とは反対側の窓の外を眺めた。
この時の彼女の行動が、私にはどうしても分からなかったのだった─────
その後、沈黙が流れる。
「ねぇ。」
それを破ったのは、彼女だった。
「加木くん、これを。」
そこにあったのは、テストの答案用紙だった。
加木さんに渡されたそれを、私は見せてもらった。
懐古に浸りながらザーッと眺めていた。
どうやら、小学校の時の、国語のテストだ。
しかし、全部何かしら埋まっているが、点数のところは、1文字だけが書かれている。
名前には、加木唯一と書かれていた。私には、2つの驚きがあった。ひとつは、下をゆいいつと言うこと、そして、もうひとつは、この点数を取っていたこと。
今彼を見ても、恥ずかしさは全くないようだった。子供の頃だし、当然といえば当然かもしれない。
しかし、過去の汚点を、隠さずどうどうとしてるのは、如何なものか?と考えていると、偶然、答案用紙のことで彼女が話始めた。
「あなたが、間違いはこの世界に存在しない~って言い出したのって、テストの点がいつも同じ点数だったからよね。」
彼女は、少し小馬鹿にしたようにそう言った。
「あぁ。そうだったかもな…。」
加木さんは、少し悲しそうな声で頷く。
「それにしても、解答用紙にあんなこと書くなんて、昔からずっと変わり者だったのね。」
私はそれを聞いてすぐに解答用紙を眺めた。
選択問題は、新しい選択を作り出して、自分の思ったことを書く、そして、文中から書き出す問題は、どこにも書いていない自分の意見、考えなどを。
最後にお題にそったことを書かせる作文は、全く関係の無い、自分の思想についての作文だった。
自分の考えと逆の存在である、テストと言うものがどうしても嫌いだったのだろう。
その後、彼女は別れる前、自分の名前を言った。
「私の名前は、本多(ほんだ)。」
どうして、名字なのかと聞くと、加木さんと名字で読んでいるからだそうだ。
今日、2人目の自分の考えを認めてくれる人物に会え、彼の過去を少し知れた気がした─────
出来事
少年が求めていた、人を集めることは、達成できました。しかし、彼の存在が頭から離れませんでした。
人を集めている今も、彼は、少しずつ自分の考えを周りに広めている。
そう思うと許せませんでした。
少年は、彼が何をしているか、度々見に行きました。
すると、何度も何度も考えを否定されています。少年はそれがとても嬉しかったのでした。
しかし、ある人が仲裁に入りました。さながら、ヒーローのように…。
それを見た少年は、そのヒーローのことが、なんだか気に入らなかったのでした…。
それから数年が経って、その間に段々、ヒーローと少年の間が縮まってくる…。
しかし…
───────
ある一屋根の下で、画が映し出された。
そこには、何やら重苦しい雰囲気の大人達が居て、その真ん中に進行者が1人ずつ質問を投げかけていた。
その中の1人に、焦点が当たる。本を書く仕事をしているらしい。
「現代の悪いところ?
そんなもん分からんが、過去と現在、共通して悪いものがある。」
進行者ははてなを浮かべながら聞いた
「それは…?」
彼はスラスラと論った。
「議論だよ。
これは無駄だ。何かを正しいと言い合ったところで、結局何も出んでしょう。」
私たちがしているこれも、議論なのでは…?
「えぇ。そうです。私たちは、無駄なことをしているんですよ。
この場だから、はっきりと言ったんです。」
「では、私たちは何をすればいいんですか…?議論が無ければ、何も進歩出来ないでしょう…?」
そう言うと、断言する。
「何をすればいいか?それは決まっています。」
「創作だ」
彼のその1文字1文字に周りの人達に、疑問符が打ち付けられた。
「そうです。創作です。これは、素晴らしい世界だ。
この世界では、創作者がルールであり、どんな内容であったとしても、その世界では否定されない。それに、議論では必ず起こりえる、あげつらうと言うことがないんです。」
周りの反応を他所に、彼は続ける。
「そう、創作以上に素晴らしい世界、いや、最強の学問は存在しない。」
彼がそう言った直後、画から、プツンと音をたてて、それらはその場所から居なくなった。
一人の男が近くに立っていた。
少し、何かを探すと、ある時、見つかったように、その場から立ち止まる。
さっきの男の名前、「そういち」と書かれていた。
もしかしたら、また彼と会うかもしれない。そんな予感が男の心の隅を過ぎったのだった─────
紙が1枚、また1枚とめくられた。
そして、これ以上は無理だと、その人は本を閉じた。
そこには、雫が転がっていた。