思想学部⑨

過去⑧

私の子供の時、その頃から、お父さんとお母さんはよく喧嘩していた。

その様子を見て、私はいつも泣いていた。

どうして喧嘩するの…?私はこらえようとするけど無理。

いつもポロポロと涙がこぼれる。

小学校、中学校と上がっても、それは変わらなかった。

喧嘩する程仲がいい。

その言葉もあるけれど、私は喧嘩するより仲良しで居て欲しい…。

ずっとそう思っていた。

段々と、私のことでも、喧嘩の内容に変わった。

こんなに泣き虫なのはあなたのせい。あなたの教育が悪かった。

辞めて…。聞きたくない。

私は耳をふさいだ。

けれども、聞こえてくる2人の声。

私は悲しくなった。

どうしたらいいの…?

それから、泣くこと、それを辞めるようにと注意される。

まだあなたは赤ちゃんなの?と。

辞めようと頑張っても、私の目からはいつも涙があふれた。

ただ悲しくて、寂しくて、辛くて…。

小学校、中学校では、少し何かがあっただけで泣く私を同い年の子は虐めた。

最初は、謝ってくれてたけど、ずっと泣いてばかりの私を弱虫といった。

守ってくれる人も居たけど、また何か少しあっただけで泣く私を見て避けるようになる。

あの子はいつも泣くって。

先生からも、なおしたほうがいいと言われた。

悲しいことがあって、すぐに涙があふれる。

私はどうしてこうなんだろうって。

お父さん、お母さんが喧嘩して欲しくないって思って、涙のせいだって思って泣くのを辞めようとしても、できなくて…。

でも、お母さんとお父さんが喧嘩してない時もあった。

私はその記憶がある…。それはとても大事な時間。

あの時がずっと続いてればいいのに…。

そう思っても、パッと過ぎてしまってる。

私は悲しくなってまた涙を流した。

それから、高校生になった。

でも、私は、そのまま。

涙があふれて、ちょっとした事でも泣いてしまう。

もうずっとこのままなのかな…。

そう思っている時に、声をかけてきた人が居た。

部活に入らないかって。友達が居なくて、馴染めなかった私は、それがとっても嬉しくて。

はいるって言おうと思った。

だけど、部活名を聞いたら、怖くなったの。

怪しい何かに入れられて、悲しい思いをしてしまうんじゃないかって。

そう考えると、悲しくなって涙を零した。

少し経って、彼と部活への印象が変わる。

彼は優しくて、理想を追い求めてる人なんだって。

時間が経つにつれて、分かって来たような気がする。

なので、部活に入った。

けれども、ずっと問題はそのままになってる。お父さん、お母さんが喧嘩すること。

喧嘩を見て泣いてしまう自分。更にひどくしてしまうこと…。

私はこのままなのかな…?

それを考えるといつも出るのはこの言葉だけ…。

でも、お父さんとお母さんが、仲良く過ごしてるところ。

それが浮かんできて、私は少し笑顔になった。

この時間が続けばいいのに…。

心の中でそう思った──────

今までそして未来

僕の名前は間。

高校生になって、今まで色々なことがあった。

4月からもう2~3ヶ月経つ。

入学当初は、普通で居たいなと思っていたが、いつの間にか、普通じゃなさそうな今をとても楽しんでいる。

面白そうな小説にも出会えた。

それも、これもすすむくんや、思想学部に感謝。

家にかえって読むのが楽しみだ。

しかし、問題はまだいくつか残っている。

賞状のことなど、他にも沢山。

どうしたものかな。

そう思いながら、心の中では嬉しさがあった。

ところで、最近、生徒会選挙があった。

僕には関係ないだろうと思いつつも、言っていることなど考慮に入れて投票する。

2年生の人とは殆ど関わらないからな…。

部活でも、3年生1人に1年生5人で構成されていた。

「みんなおはよう。」

そう言って、部活に向かうと、みんなは揃っていた。

相変わらず、みんなめちゃはやい。

「間くん、おはよう。」

すすむくんが歩み寄ってくる。

「賞状貰うんだよね!おめでとう。」

「ありがとう。そんな凄いことは何もしてないんだけどね」

そうして、色々話したりしてる内に部活が終わった。

そして、また放課後、みんなは部室に集まった。

「授業終わった!」

そう言って伸びをするおとねさん。

「これから部活!」

よしと言いながら、すすむくんは皆の前にたった。

「そういえば、色々行事とかあったけど、最近は何も無いから、部活も特にしてないね」

僕がそう言うと「そうかな…」とすすむくんは考えている。

思想学部と言う、何をするか曖昧な部活動。仕方ないところもあるのかもしれない。

そう思いつつも、部活動としてどうなの?と思う心もあった。

「じゃあ!久しぶりに、みんなの考えた思想を叶えたり深めたりしよう!」

すすむくんは意気揚々と言う。

そうして、しずくさんの方へ行った。

「しずくさんの思想は?」

そういえばまだ聞いてなかった。

僕は興味深く、2人の様子をみる。

「思想って何?」

根本的なことを教えてなかったらしい。

「目標でもいいんだ。自由な考えこそ思想…!」

彼は目をキラキラさせながら言った。

「じゃあね…」

「仲のいい人が作りたいとかどうかな?」

しずくは笑顔ですすむくんを見た。

すすむくんは少し顔が赤くなって小さな声で、しずくさんに何か話す。

彼女は「どうして…?」と首を傾げていた。

ところで、みちかさんは顧問の先生と一緒に居る。

理由は分からないが、前から何か話していた。

「私も昔、表彰されたことがある。」

「そうだったんですね。」

「あぁ。そういちって男と走って勝ったんだ。それが表彰に繋がった。」

「そういちさん…?」

「あぁ、俺がライバル意識を持っていた男だ。」

みちかさんはそれにそっと微笑む。

「しかし、後で表彰が嬉しくなくなったよ。」

「どうしてですか?」

「あいつは怪我してたんだ。だから、早く走れなかった。」

「怪我をされてたんですね…」

「あぁ、普通に走っても私が勝っていただろうが、今回のは勝ちでないと思ってな。」

「討論部で何度も挑戦したが、結局、勝てなかった。」

顧問の先生は自虐するように言った。

「この敗来って名前のようだな。敗北がやってくる。

その通りじゃないか。」

ふっとわらう。

みちかさんはそっと「大丈夫だと思います」と言った。

「ところで、すすむ。あいつ、そういちに似てるな。

思想学部も、あの時の討論部みたいだ。」

「そうなんですか?」

「あぁ。あいつも行動力があって、面白いやつだったよ。」

顧問は時間を見た。

「沢山話して悪いな。もう部活動終わりの時間だ。」

「大丈夫です。教えてくださってありがとうございます。」

彼女はそう言って微笑んだ

おとねさんとしずくさんが仲良く話している。

同じクラスというのもあってか、親交が増えてきたらしい。

「おとねちゃんが居てくれて良かった!優しくてとってもいい人だし!」

しずくちゃんありがとう!嬉しい!」

「こちらこそ、守ってくれてありがとう!」

2人はふわふわした笑顔で見つめ合います。

「ところで、休み時間とか元気なかったね」

おとねのそれに、「なんでもないよ!」と言いました。

しずくの笑顔に何も聞けなくなったのです。

───────

そして、午後の部活が終わりました。

人の少ない体育館の裏で、しずくは誰かを待っていました。

そして、「しずくさんありがとう」と誰かがやってきます。

「すすむくん!」

しずくさんは彼の方を向きました。

「私になんの用…?」

困った表情で、すすむくんを見つめます。

「実はね、ずっと前から君のことが好きだったんだ!

だから、僕と付き合って欲しい!」

────────

事情と排斥運動

しずくはそれに泣き出してしまいました。

「ごめん。」

すすむは小さな声で呟きます。

「嬉しいけど…。恋愛関係はごめんなさい…」

ヒックヒックと言いながら断りました。

「そうか…こちらこそごめん。」

──────

次の日、2人は部活中、とてもきまずそうにしていた。

なにかあったのだろう…?

そう思っても聞ける雰囲気じゃなかった。

朝の部活が終わって、クラスに戻る途中、しずくさんの近くを同じクラスの人が通りがかる。

そして、その人は、小さな声で「疫病神」といった。

彼女はポツンと廊下に一粒の水滴を零すと、何事もなかったように歩いていく。

僕はそれで察した。もしかしたら、彼女は、いじめにあってるのかもしれない。

運動会では転んだこともあったし、昨日、おとねさんが元気がないと言っていた気がする。

僕は「なにかあったの?」とおいかけた。

すると、彼女はこちらを向いて、「大丈夫、何も無いよ」と微笑んだ。

すぐ泣いてしまうのに、今は、とても強く感じる。

僕はそれに何も返す言葉がなかった。

すると、後ろから、「あいだくん」と誰かが呼ぶ声が。

そこにはみちかさんが居た。

「みちかさん、どうしたの?」

「すすむくんがね…。」

彼女の話に僕は驚いた。

すすむくんも、クラスで嫌なこと言われていたらしい。

理由は、運動会のことだろう。2人のせいで、どうなるか分からなかったリレーが2位3位になってしまった。

途中、おとねさんも話に合流する。

やはり、しずくさんもすすむくんと同じように…。

僕は朝のことについて、おとねさんに聞いてみた。

すると「運動会の時みたいに守ろうと思って…。」

「でも、すすむくん昔から、口下手なところがあって、上手くいえなかったんじゃない…?」おとねさんは悲しそうに言った。

「なるほど…」

2人とも、部活動や、クラスではいつも通りにできないだろう。

こんな時は僕が…。

そう思って、立ち上がった。

部活動は終わって、クラスに戻ってる途中考える。

みんなをなるべく元気づけよう。

ところで、道中、なんだか張り紙が目立った。

途中途中に貼られるそれが、クラスの前にもあったので見てみた。

そこには、誤った考え方はいけない。と書かれていた。

思想学部についての批判。

生徒会からだった。

僕はどうして…?と心の中で思う。

そして、放課後、部活を休んで2年生の教室へと向かう。

「おーい、ひなえ!」

「あさかさんどうしたんですか?」

「1年生の子が、生徒会の人を探してるって」

「分かりました。行ってみます。」

クラスの人に聞いたら、呼んできてくれた。

「なんの用でしょう?」

「あの、張り紙のこと…どういうことですか…?」

「あれの事ですか。生徒会長の演説を聞きませんでしたか?」

僕はふと浮かんできた。

みんなの前に立ち、堂々とする彼の姿。

視線が集まる

「僕が生徒会長になった暁には、一人一人が安全に暮らせる学校生活を送れることを…」

その力強い演説に、僕は、彼がいいと投票した。

「つまり、思想学部は学校生活によくないと…?」

「はい、そういう事になります。」

そんなことない…と言い返したい気持ちを堪える

「生徒会長は居ますか?」

彼女は首を振る。

────────

生徒会長の名前、それはしおう。

運動もできて、1年の運動会で賞状を貰い、2年の体育祭でも表彰される。

クラスとの仲も良く、慕われている人。

彼を見ていると、前に怪我をしてしまったかけるくんのことを思い出す。

なんだか、自分は、人気者と対立する運命にあるのかと感じてしまう。

けれども、このままじゃいけない。

すすむくんがあの状況の今、自分がなんとかしなければ…。

昔のことを思った。

部活の思想協力だけでは、まだまだ足りなかったのだろうか…?

いいや…。

──────

家に帰った時、僕は、なんとなく、『真ん中のうさぎ』を読んだ。

うさぎが、橋を渡って走り回ったり、食事をとったりしていると、向こうにも同じ動物が。

それはねこだった。

右側には走り回ったり、散歩ができそうな空間があり、左側には食べ物が置いてあった。

そうして過ごしていると、ねこは散歩ばっかりして、食べ物をとらない。

すると、段々、橋が壊れていってしまった。

ねこはお腹がすいて悲しんでいた。

それをみたうさぎは、可哀想…と思って、ぴょんぴょんとねこの方に走っていく

そして、手を差し伸べる。

一緒にうさぎの渡った橋の方にいこう。

そうして、2匹は楽しく暮らした。

僕はそれを読み終わると、原稿用紙を取り出す。

そして、決意した

─────

普通

「君は普通じゃない」

僕はローンくんにいつもそう言われる。

人と変わったところがあるから、指摘してあげないと。

彼はよくそう言って、僕の悪いところばっかり見てきた。

またある日は、君が普通じゃないのは、遺伝で、親のせいだ。と言われる。

その時も、何も言えなかった。

それから少し経って、彼がいつものように、普通じゃないと言ってきた。

僕は「どこが普通じゃないの?」と聞くと、彼は「ははは」と言いながら答える。

しかし、彼は周りを見て口をつぐむ。

僕は小さな声で言った。

「普通ってなんだ?」

───────

僕は友達に肩を叩かれハッとした

「授業中もずっとボーッとしてたけど大丈夫?」

「うん、大丈夫…。」

声が後ろに行くに連れ小さくなる。

「そうか…創作できなくなったもんな…。」

「うん…」

「良ければ、僕の前では、創作話していいよ。

誰にも言わないから」

その言葉になんだか救われた。

「大丈夫だよ。誰かに迷惑かけたくないし」

「そうか…」

彼は少し寂しそうな顔をしていた

ところで、もうそろそろ、未来のことを考えなければいけない。

自分は何ができるのか、自分はこれからどうしていきたいのか。

けれども、浮かんでくるのは、創作のこと。

自分にはつくづく創作しかないのだと…

家に帰る途中、何度も創作反対運動をみかける。

「創作はいけません。誤った世界、誤った考えに人を誘惑し、堕落させるもの!」

僕は耳を塞いでしまいたくなった。

この世界では、僕は異常者。

もう聞きたくない。そこを走り出した。

そうして、家について、僕は勉強道具をとりだす。

もう創作は辞めて、勉強に打ち込もう。

そう思った。

歴史の勉強をしていると、段々とその内容が頭の中に広がっていった。

傾国の美女、1人の女性を巡っての2つの大きな争い…。

なんて物語的なのだろう。

僕はわれにかえった。

いけない…。勉強してたんだった。

違うことをしようとも、浮かんでくる創作。

どれだけ考えないようにとも、ずっと一緒にここまで来た、僕にとって強い相棒のようなもの。

考えてるだけでは、こうして、勉強にも影響が出る。

友達の言ってたとおり、聞いてもらって発散させた方がいいのでは…?

そうも思った。しかし、それによって、影響が出たら…

そう思うと、その考えは頭の中から消えた。

もう、ずっとこのままなのだろうか…?

そうして、何を思うのでなく、ボーッとしていると、声が聞こえてきた。

女子生徒が話す声。そんなに聞いた事がないので、他のクラスだろう。

「~ちゃん、2年生になったら、数人、勉強として、半年間、海外に行けるらしいよ。」

「そうなんだ。どこなの?」

「初終島だって!」

僕はそれを聞いてハッとした。

そこは、僕が、創作にはまるきかっけをくれた場所。

僕はその声の方に耳を向ける。

「でも、あんまり人気じゃないらしいから、応募者ほとんど居ないんだって。」

「そうなんだ。私は興味あるな~!」

「~ちゃん物好きだね」

「家に帰ったら、その場所について調べてみるよ」

───────

「応募者がほとんど居ない…?」

グッと握りしめた。

それなら、行けるかもしれない…?

ずっと行きたかったあの場所が、とても近くにあるよう。

手を伸ばせば届くような。

今までたくさん見てきた、あの理想が、自由にできる場所。

創造の自由を与えられた…。

物語を作れないという地獄になった現在に、一筋の光が差し込んだ。

まだ希望はある…。

自分が普通であってもいい、その場所に行くんだ…。

そう思うと、気が楽になって、頭の中には、今まで制限してきた物語が溢れ出した。

それがとても楽しくて、幸せな時間だと僕は思った─────────

主張

この日がやってきた。

僕はひとつの紙を手に持ちながら、心の中で、大丈夫と言い聞かせ落ち着かせた。

今日、賞状を貰う。

2年生、1年生が集まるこの集会で、最初は2年生が、次に1年生。

僕はそこで…。

こんなことをしたら、普通とはかけ離れてしまうな…。

そう思っても、僕はやるしかないと強く考えていた。

今日も、部活では、すすむくんはいつものような元気はなかった。

けれども、「おめでとう」と一言言ってくれる。

元気がないながらも、頬に笑みを浮かべながら…

────────

先生が2年生の、体育祭優秀者、生徒会長の獅王くんを呼んだ。

何事もなく、賞状を渡される。

よし、次は僕の番だ。

そう思った時、獅王くんは言った「先生少し話してもいいですか?」と。

「大丈夫ですよ。」

「ありがとうございます」

彼はマイクをもらって、笑顔で言った。

「皆さん、改めて言いましょう。生徒会長に選ばれた獅王です。」

「投票してくださった方や、投票しなかった方も皆さんありがとうございました。」

「僕には目標があります。演説でも言った通り、皆さんがこの学校生活を安全に暮らせること。」

「そのために行動していきたいと思っています。」

僕はドキッとした。

「誤った考え、そして、それによって掻き乱すようなもの、それは徹底的に生徒会長となった僕が絶対に許さない。」

「なんのためになったのか?それは、みんなのために、行動することです。」

「前の代から受け継がれた生徒会長という役職、それを遂行し、次の代へと繋げていけたらと思います。」

「僕の話は以上。聞いて下さってありがとうございます。」

そうして、獅王くんは自分の場所へと戻っていく。

その最中、ずっと彼の視線を感じた気がした。

次は僕の番だ…。

緊張しながらも、深呼吸して、落ち着かせた。

向かう間、他のクラスの人から、「思想学部の人だ」と少し悪い口調で話す声が聞こえた。

「大丈夫、大丈夫。」少し声に出しながら必死に落ち着かせる。

そうして、賞状を貰った。

僕は生徒会長と同じように、話させてくださいと先生に伝える。

すると、「いいですよ」と許可を貰った。

ポケットに原稿用紙があったが、もういいと何も見ずにと決める。

「最初に言う!僕は思想学部の部員の1人だ!」

2年生のところから、ザワザワと声が聞こえてくる。

「確かに見たことがある…」など。

「最初は、入るのにも乗り気じゃなかったけど、一緒に過ごしてみたら、楽しいって思えてきた。」

「これからどうなるんだろうって。楽しみも増えてきた」

「僕は思想学部が好きだ。だから言う。」

「思想学部は悪いことを教えたり、わざと誰かを嫌な目にあわせるようなことはしない。」

「みんなの幸福を願ったり、行動しようとしたりするのがこの思想学部だからだ。」

「もし、悪いものになると言うのなら、それは僕がさせないし、絶対にならないと思っている。」

「他の部活にも、協力できるなら、できる限り行動もする!」

「この賞状も、思想学部皆が居なければ貰えなかった。だから、みんなにあげたい…」

「すすむくんは、助けたし、他の人も競技頑張った。だから…」

僕はいけないと「僕の話は終わりです」と切り上げた。

普通を目指していたのに、やってることがもうそれじゃない…。

話したいこともまだあったが、もう仕方ない…。

少し悲しくなっていた。

すると、獅王くんが笑みを浮かべた。

そして、ぱちぱちと拍手する。

それにあわせるように、段々とみんなも拍手が全体に広がっていった。

先生は「友達思いなんですね。後で、賞状を見てください」と言って微笑んだ。

────────

終わった後、すすむくんに「ありがとう」と言われた。

その時の彼は元気になっている。

僕はそれが嬉しかった。

ところで、その後、生徒会長が、すすむくんのもとにやってくる。

「君が部長さんかな。いい部員を持ったね。」

「ありがとう!」

「彼の話を聞いて考えた。今回は見逃すことにしよう。

けれども、もし、何かするようなら生徒会は動く。」

「分かった!でも、いい部活にするから僕には関係ないかな。」

根拠のない自信がすすむくんにはあった。

「今後の活躍、期待してるよ。また会おう」

そう言って、獅王くんは帰っていった。

寛容で、正義心が強い。思想学部のことも、学校を思ってのことだったんだろう…。

生徒会長に向いてるなと心の中で思ったのだった

───────

「すすむくん!」

しずくはすすむに話しかけた。

「しずくさんどうしたの?」

「あのね…!」

涙目になりながら、もじもじしている。

「いつも通りがいいです…!ワガママなこと言ってごめんなさい!」

すると、すすむくんは「当たり前だよ!僕はいつも通りなのさ!」と言った。

おとねさんはそれにホッとした。

一方、獅王は、1人で昔のことを思い出す

前生徒会長のへいぎょくに聞いた。

「何故、この部活を…?」

「関わって見ればわかると思うよ。」

獅王は「なるほど。」と呟いた───────