思想学部⑩

残された手紙

すすむはそういちのようだ…。

男はそう思った。

高校を卒業してからもずっと、彼のことを考える。

どうしてあの時…。

しかし、最近、聞いた事で、もしかしたらそういちなのかもしれないと思うこともあった。

優しさについて語った男。

それは、そういちなんじゃないか…。

しかし、根拠も何も無い。

優しさについて語った私と、それの反対を語ったあの時のことに矛盾している。

あいつは何を考えているんだろう。

ところで、私はずっと、親が書いた手紙を読めずにいる。

今更、私に、何を送るのか。

あまり親のことが好きではなかった。

特に名前、敗来。

何度か、教えると言ってきたが断ってきた。

聞くのも怖かったが、意味は敗北が来るだろう。

そんなことを、正直に親に聞くことなんて出来なかった。

思えば、自分は負け続けた。

受験でも、沢山失敗し、会社もほとんどダメで、その中でもずっと負け続ける。

そうして、いつの日にか、こうして清掃員になっていた。

今は、偶然に、こうして、自分の卒業した学校で顧問をやりながら…。

私はそっと手紙を開いた。

「読むか…」

そこには、“ずっと、言えなかったことそれをここで、ちゃんと書こうと思います“

と書かれていた。

今更何を…

そう思いながらも、男は続きを読んだ。

“あなたの名前、敗来は、敗北と未来を表します”

“つまり、負けても未来にいいことはあるから、諦めずに進んで欲しい。その思いを込めて、あなたの名前を考えました”

私はそれにハッとした。

「ずっと…勘違いしてたんだな…」

そう呟くと、また過去のことを思い出す。

結果はどうであれ、いつも、よくはなっていた。

大学にも受かったし、会社にもつとめていた。

もう一度、頑張ってみるか…。

男はそう言うと、家を後にした───────

学校で、部活時、男は言った。

「この仕事辞めようと思う」

部員はとても驚く。

それも仕方ない…男はそう思うと続けた。

「悪いな。だから、顧問も続けられない。」

その中で、すすむは「大丈夫!」ととても元気にしている。

「すすむ、君はいいな。未来が広がっててさ。私にはもうないよ。」

私は俯きながら言うと、すすむは「思想学部で言うなら…思想家はいつからでも遅くない。いいや、これからが人生だ!」と。

それがとても強い言葉に感じられた。

「そうか…。君はそういちじゃない、すすむだ。」

男はそう言って「じゃあな」と、思想学部に別れを告げた。

すすむは「また会おう」と元気にしている。

思想学部の部員も皆、彼に別れを告げた。

───────

男は学校から去る中、考えた。

すすむか…。最初は、この学校に、いきのいいやつは居ないと思っていたが、いつの時代も居るんだな。

凄い何かをもったやつが。

そういち、お前が、何をおもって討論部を辞めたのか…

今となっては、もう分からない。

けれども、それでいい。

あんなことを言われてしまえば、またこの道を歩いていくしかないだろう。

男の上に浮かぶ空は、とても青く綺麗だった─────

「みちかちゃん!」

おとねさんは笑顔で近付いた。

「何か手紙を貰ってたみたいだけど!」

「うん、もらったよ!」

「何が書いてあったの?」

「今から見てみるね!」

みちかさんはそっと優しいてづかいで、手紙をあける。

そこには、君は優しいな。いつも話聞いてありがとう。

君なら、仲直り出来ると思う。

と書かれていた。

「前に言ってた友達のこと…?」

「うん…そうだと思う。」

「仲が悪いままじゃ悲しいよね…。みちかちゃんはどう思ってるの?」

「仲直りしたいと思ってるよ!このままじゃ悲しいから…。」

「そうなんだ!」

「でも…。」

そうして、下を向いていると、すすむくんがやってきます。

「2人ともどうしたの?」

「実はね!」

おとねさんはあったことを話しました。

「前の人のことか。なるほど。」

すすむくんはそう言って頷きました。

「仲直りする?」

彼がそう言って、聞くと、「仲直りしたいよ…でも…。」と悲しそうにしています。

「でも…?」

「このままの方がいいかなって!

会っても、悲しい気持ちになっちゃうから…。」

すすむくんは「なるほど」とまた頷きます。

「じゃあ、一つだけ言わせて欲しい!」

「なんでしょう?」

「色々な形の優しさがあってもいい!」

すすむくんは自信満々に言った。

みちかさんはただ「ありがとう」とだけ言う。

すすむくんは相変わらずだった。

何も根拠がないのに、自信満々で、しかし、それで居て強い何かを目指している気がした。

自分の考える理想の世界…?

それは分からない。けれども、これから、彼と居れば良くなる。

そんな気がしていた──────

知らせ

思想学部には問題があった。

それは、顧問が居ないこと。少し前まではいたが、辞めてしまった。

これからどうするのか…?

そんな不安の中、嬉しいしらせが届く。

それは、数学の先生が顧問になってくれるらしい。

掛け持ちでもいいならとの話だが、思想学部としては是非ともだった。

どうしてなったのか、前から先生は、すすむくんのことを気にしていた。

僕は心の中で納得する。

「ところで、皆、早速だが、今日、練習試合申し込みがあった」

それに驚いた。

すすむくんはとても嬉しそうにしている。

「練習試合ってことは、大会も開かれる…?」

「開かれるよ。来年からね」

「やった!」

僕はすぐに聞いた。

「分からないことが沢山あるんですが、聞いても大丈夫ですか?」

先生は「大丈夫ですよ」と言ったので、心置きなく聞いた。

「対戦相手ってどこの高校なんですか?」

「リベラルシンク高校です」

みちかさんの友達が通ってる高校…。
しかし、どうして部活が…?

僕がみちかさんの方を向くと、彼女は少し驚いていた

また考えることになるとは思わなかったのだろう。

「もし、するとして、思想学部の大会って何をするんですか?」

「言おうと思っていました」

内容はこうだった。

2人が自分の思想などを話し合い、どちらかが、一方を認めるまで続く。

つまり、おれた方が負けの試合。終了が選手次第なので、いつまで続くのか分からない

「なるほど!」

すすむくんは元気に笑う。

「それは楽しみだ!」

「これから、試合に向けて、練習しよう!」

「そうしよー!」

おとねさんは笑顔で答えた。

できるメンバーは5人、1人余ってしまう。

「僕はいいや」そう言って見ていることにした。

する相手は、それぞれ、すすむくんとおとねさん、しずくさんとみちかさんに決まった。

顧問の先生とすることになるかもだったが、他の部活との掛け持ちだったので居ない。

もし、出来たとしても、僕は断っただろうが…。

自分の思想を、誰かに真剣に話すのは気がひける。

すると、丁度、青野くんがやってくる。

「久しぶりに顔を出しにきたよ。」

「久しぶり!」

「最近どうだった?」

青野くんに今までのことを話す。

「そうだったんだ。よければ、僕としないかな?」

僕は「是非!」と喜んだ。


おとねさんが先に言った
「私は思想考えついたけど、今は教えないね!

だから、すすむくん先に教えて!」

「なるほど!いいよ!」

「僕の思想はみんなが笑顔で楽しい空間を作ること!」

おとねさんはハテナを浮かべる。

「前に凄いなにかになりたいって言ってなかったっけ…?」

「うん、いったよ!
凄い人になれば、それができると思って!」

「そうなんだ。具体的には?」

「えっとね…」

すすむくんがそう考えていると、おとねさんが言った。

「久しぶりにあれ見せてよっ!」

「あれ?」

「うんっ!中学校の時に見せてくれたノート!」

「分かった!」

────────

しずくさんは困った表情で、みちかさんを見ていました。

みちかさんはニッコリと微笑みます。

それに安心して、しずくさんは、「あのっ」と言いました

「何かな?」

「みちかちゃんの思想って何かな?」

「私は、優しくなりたいことだよ!」

「えー!いいね!」

「ありがとう!しずくちゃんは仲のいい人が作りたいだよね!」

「うんっ!そうなの!」

「おとねちゃんとかどうかな!」

「うん!仲良くしてもらってる…!とってもいい人!

だけどね…」

しずくさんは寂しそうに言う

「高校を卒業しちゃったら、離れ離れになっちゃうでしょ。」

「うん…。」

「それが悲しいなって…」

みちかさんは「大丈夫だよ!」としずくさんの手に優しく触れた。

しずくさんはそれに「みちかちゃんありがとう。」と笑顔で言った


青野くんならいいか。僕はそう思った。

「僕は普通を目指してるんだ」

すると、彼は、「そうなんだ。それもいいね!」と言う

やっぱりいい人だ。彼の返事を聞いて安心した。

そこから、少し、自分の考えてること、思ってることなど話す。

彼は何も言わずに頷いて、聞いてくれた

───────

結局、試合がどんな感じなのか、分からず、普通に話すだけになってしまった。

練習試合の時に、理解するしかない。

時間を見てみると、部活終了の時間になっている。

すすむくんはおとねさんと何かを見ている。

しずくさんたちももう終わったようだ。

すすむくんに聞いてみると、終わったら帰ってもいいと言っていた。

4人はそのまま帰る

その最中、おとねさんとすすむくんがいつの間にか、仲良くなってることに気が付いた。

最初の頃は、少し関係悪そうだったのに。

なんだか、安心した気がした。

─────

残った2人は、かわらず、ノートを見ていた。

「色々見せてくれてありがと!」

「こちらこそ、見てくれてありがとう。」

「2人きりだね。」

おとねはそう言うと、「実はね!」と切り出す。

「どうしたの?」

「私、思想ができたんだ。」

「さっき言ってたね。どんなものなの?」

「思想って言うか、私の夢だけど。

もう一度ピアノをひきたい!皆に私の音楽を聴いて欲しいんだ!」

すすむはそれに笑顔で「それもいいと思うよ。」と答えた───────

過去⑨

お母さんがピアノを弾く。

それを聴いて過ごしていた。

ある日のこと、お母さんは私に、ピアノを教えてくれた。

優しい笑顔で、そっと…。

私がその時、上手くひけなくても笑顔で頑張ったねと。

大丈夫だよって支えてくれた。

でも、いつの日にか、お母さんは私にピアノを教えなくなる。

ただ、いつも何も言わずに、私のピアノを聴いていた。

終わったあとに一言、「ありがとう」とニッコリ笑う。

お兄ちゃんのところに行く前のささやかなしあわせ。

毎日毎日、聴いてくれて、ある日、「今日も良かったよ」と言ってくれた。

私の音楽で、喜んでくれる人が居る、お母さんも喜ぶ…それがなんだか、とっても嬉しかった。

私はどんどんピアノが好きになって…。

本当に目指そうと思った。けれども…。

色々あって、私はピアノを見るのが嫌になった。

困ってる時、お母さんはピアノを弾いてくれる。

最近はあんまり弾かなくなったけれど、あの時とほとんど変わらない。

私はそれに励まされた。

もう一度、ピアノを弾くんだって。

けれども、私はもう弾きたくないと思った。

あの時のように指が動かなかった…。

その時、お母さんはそっと私の手を握る。

そして、言った。

「あなたが今、本当に望む方向へ進みなさい」

そこから、お母さんはピアノについて話すことはなかった。

高校に入っても、また、私の大切なものを奪った人と会う。

高校なら、もう会わないと思ってた。

だけど…。

彼は私の前で言った。

もう一度…。

その言葉を聞いて、お母さんの言葉を思い出した。

あの時から、もうピアノの話は一切出さない。

だけど、あの時からずっと、その言葉が浮かんできていた。

あなたが、今、本当に望む方向へ進みなさい。

私は諦めきれない…。

だから、彼と同じ場所に。

最初は少し恨んでたところもあるけど、段々、彼の見え方が変わってきた気がする。

そもそも、あのノートを真剣に考えてた彼が…

人の苦しみを望むはずなんてない

それから、彼は、色々なことに挑戦していった。

恥ずかしさなしに、正しいと思ったことを頑張ってする

その姿を見たら、頭の中に、ピアノが浮かんできた。

もう一度、弾きたい…。

でも、あんなにずっと弾いてきたのに、今ではもう、見る影もなかった。

下手な音楽を、みんなに聴いて欲しくない…。

恥ずかしいから…。

私は心の中で葛藤していた。

もう一度チャレンジするか、しないか…。

その時の私には、何度も浮かんでくるお母さんの言葉と、すすむくんの頑張る姿が浮かんでいた。

そして、ある日、私はピアノの前にいた。

もう見ないでいたいと思っていたのに、私の目の前にある。

その時、お母さんが「弾く?」と話して微笑んだ。

私は少し迷って「うんっ!」と言った。

そこで、私はピアノに向き合う。

あの時のことを思い出すと怖かった。

だけど、そっと、ピアノに触れる。

昔のことが思い返される。

最初の時はおぼつかない指の動き、でも、少しずつよくなっていった。

私は夢中で、弾いていた。

私は自分の弾く音楽を聴くのが、そして、みんなに聴いてもらうのが好き。

私はあの頃のように、少しずつ、次へと進めていった。

そして、中盤になると、私は手を止める。

私の音楽を聴くのが恥ずかしかったのもあるし、これ以上聴きたくなかった。

私はお母さんの方を見る。

すると、ただ、微笑んでいた。

何も言わずに。

私は前に言ってたお母さんの言葉、そして、すすむくんの姿を思い浮かべた。

私はピアノに戻った。

上手く弾けない。

だけど、今は、これでいい…。

そして、私は最後まで続けた───────

私は立って、お母さんのところに行くと、「頑張ったね」と私の背中をさすった。

「お母さん!」

私は嬉しくて一杯の笑顔になる。

その時、決めたんだ…。

私はこれから

──────

衝動

僕には抑えなければいけない衝動がある。

あなたはこんなことを思ったことはないだろうか?

物語の主人公、とても強大な敵と戦っていく勇者。

それが、最後の敵を倒した後、果たしてどうなるのだろう?

村人達と、楽しく暮らしたで終わるのだろうか。

いいや、違う。

1度習慣になってしまったものを、そんなに簡単に手放せるはずがない。

僕は今まで、悪いものと、沢山戦ってきた。

みんなに危害を加えるものだからいい。

そう思って、多くのものをこの手で…。

そして、ようやくのことで、勝ち取った平和なのに、悩んでばかりだ。

今では、昔のことが正しかったのか、間違っていたのか分からない。

しかし、正しいこととなっているのは確か…

僕が歩いていると、向こうから仲間がやってきた。

前の戦いで強い功績を残した1人。

「勇者さんが来たよ。」

彼はそう言って僕を迎えた。

以前、僕は、1番の功績をあげた。そこから、身内では、勇者と呼ばれている。

「こんにちは。」

そして、話しながら歩いた。

彼は認められている。前の戦いで、彼も活躍したから。

しかし、僕は心の中で、苦手に思っていた。

相手を苦しめるような、それをわざとする彼の姿が、人道的に反してるように感じた。

彼はこの国に居てもいいのだろうか…?

話の中で彼は、おびえる姿を見て笑ったと言った。

前の戦いで、命令から1人残らず、全滅させた。悪いものだからいい。

その考えに疑問があった。

何もしていない人まで傷付けていいのか…。

悪い人間になら、何をしたっていいのか…?

強く功績を残した中には、残虐な行為を平気でしたり、相手を人間ではない道具のように扱うものも多かった。

とても強い業績を残せども、人道的に反したこと、言動や、心のあり方が悪いもの。

それらは、この国に悪い影響をもたらす。

この手で…。

そう思うも、僕は我に返った。

内部に危害をもたらせば、どんな理由があれ悪者。

その考えで自制した。

どんな立派な人間でも、1度、緩めてしまえば、どれだけだって欲をおさめることが難しくなる。

いつだって、暴君になる可能性を秘めている。

だからこそ、許す部分と、許せない部分、それを考えなければいけない。

僕は注意をいれながら、自分の欲を抑えた。

────────

あの場所へ行けると知ってから、少し時間が経った。

僕は相変わらず、葛藤している。

あの場所に行けるまでしないでいるか、するのか…。

当初は、しようと考えていたが、副作用として、誰かに言いたくなったり、意図していない時に話してしまう危険性がある。

規制されている今では、創作に対し、肯定的な僕が正常に生活を送ることも難しいだろう…。

矯正してくるかもしれない。

どんなことがあっても、創作に対しては肯定的に、そして、愛を向けていたい…。

すると、ふと、浮かんだ。

最近考えていた創作の主人公。それは、今の自分と似ている。

今までは、出来ていたことが時代の変化で、出来なくなってる。

対岸の火事でありたいのに、こうして自分の状況と照らし合わせると純粋に楽しめない。

しかし、だからこそ、創作は楽しい。

自分のマイナスなこと、嬉しいことでもなんでも創作にできてしまう。

───────

少しして、留学募集が始まった。

僕はすぐさま応募する。

けれども、海外に行く。

未知の体験ができるそれに、行きたくないなんて思うだろうか…?

少し悲観しながら、創作を続けた。

どんな時でも、僕に希望をくれるのは創作だ。

誰もくれない本当に欲しい言葉や、世界をくれる。

僕だけの世界…

──────

僕はエトワくんと一緒に暮らしてる。

彼はいつも話を聞いてくれた。

「エトワくん、どこか遠くへ行ってみたいよ。」

「どこへ行ってみたいの?」

「空にかがやく星全部に」

「いい夢。とてもロマンチック。」

「ありがとう」

僕は笑顔になる。

「ところで、エトワくんは夢はあるの?」

「あるよ。」

「何?」

「それは、ずっとこのまま、君と話したり、一緒に居られることかな。」

それを聞いて、僕はなんだか嬉しくなった。

「ありがとう。エトワくん!」

その後、2人は、ずっと一緒に色々な星を回ったのでした

───────

友達の存在、僕には、本当に心を許せる友達は近くに居ない。

もちろん、規制があるから…相手に負担をかけたくないのもある。

しかし、それでいい。

僕には、創作という友達がいる。

それは、絶対に裏切らないし、どんな時でも味方で居てくれる。

強い友達。それは、絶対に裏切らない。

しかし、心の中で、期待しているところもあった。

───────

夏休み!

もう少しで夏休みが始まる。

思想学部の皆は集まった。

「夏休み、部活はどうするの?」

すすむくんが答えた。

「それについてだけど、色々やりたいことがあるんだ!」

嬉しそうに言う

「何かなー?」

おとねさんは首を傾げる。

「まず、夏休みの部活と言えば合宿。

あと、遊んだり、練習試合に向けてのトレーニングをするんだ!」

自信満々にすすむくんは言った。

「合宿って…大丈夫なの?」

「きっと大丈夫!」

だが、先生が後から来て、合宿はできないことが決まる。

そもそも、何をする部活なのか、はっきり定まっていないところがあった。

「どうする…?」

おとねさんは困った表情で、すすむくんをみる。

「大丈夫!考えがあるから!」

しかし、「何?」と聞かれた直後、頭を抱えて考えていた。

すると、そんな中に、青野くんがやってくる。

「良ければ、勉強とか、宿題に部活の時間を使わないかな?」

彼のその一言に、おとねさんや、しずくさんは「いいね!」と言った。

僕ももちろん賛成で、部活は、みんなで集まっての勉強会に。

その中に、思想を交えるのは変わらずなので、練習試合のための特訓にもなる。

つまり、一石二鳥。

すすむくんもみんながそれが良いと言ってるので、それにしようと笑った。

半年の学校生活。色々なことがあった。

小学校、中学校の時と比べると、とても濃密な時間。

これからどうなるのだろう…?少し楽しみでもあった。

そうして、自分の世界に浸っていると、すすむくんが話しかけてきた。

「間くん!夏休みなんだけどね。」

「どうしたの、すすむくん?」

「僕の家に来ない?」

その提案に驚く。

「すすむくんの家?」

「うん!親に君のことを紹介したくて」

「別にいいけど。」

「君は僕の1番信頼している人だから。」

その一言に少し照れた。

「ありがとう。」

誰かにこんなことを言われる日が来るなんて、想像もしなかった。

心の中で前にしたこと…。それを後悔はないと思った。

「それと!」

「他にも何か用があるの?」

「うん!そうなんだ!」

「何?」

「実はね、ショーに出られることになった!」

「なるほど…」

─────────

この国で、1年に1回行われるショー。

狭い範囲だが、色々な人が応募し、限られた人数が参加出来る。

そこでは何をするか自由で、自分の人に見せたい特技などを発表。

1人あたりの時間は5分で、その中におさめなければいけない。

色々ある人は悩ましいところだ。

比較的有名だが、僕はまだ1度もいったことも、応募したこともない。

僕は「行くよ!」と彼に話した。

すると、すすむくんは喜んだ。

────────

すすむが歩いていると、「あの…!」と呼び止める声に足を止めた。

振り向くと、女性の先生が居る。

「どうしたの?」

「あなた…すすむくん?」

「そうだけど」

「色々してるみたいね。あなたとは、後々、関わることがありそう。」

すすむはハテナを浮かべていた。

「ごめんなさいね。あなたの事が気になったの」

「大丈夫!」

自信満々に言う。

「そう…。ありがとう。

またね」

「またね!」

先生が行こうとすると、思い出したようにすすむの元へ戻った。

「そうそう、私の名前はいなし。あなたの名前…

いいえ、なんでもない。」

それだけだから…と先生は言い残して、すすむくんの元を後にする。

───────

今日が学校最後の日。

今までのことに比べたら、何事もない1日だった。

この夏は、どんなものになるだろう。

はじめてのこと続きで、僕は、楽しみな部分もあった。

一人で、窓の外に見える星を眺めていると、弟がやってくる。

「どうしたの?」

僕は「実はね!」と言った。

そして、学校で起こったこと色々教えた。

自分の考えた通りの生活はおくれてないが、とても楽しい日々。

───────

ある家で、鏡の前に座る女の子が居た。

彼女は仮面を被って、じっとその場から動かない。

あたりには、沢山の本が積まれている。

女の子はすぐ側にあったぬいぐるみをとった。

「これからどうなるのか、楽しみね!」

「楽しみ楽しみ!」

女の子は口を動かさないように、ぬいぐるみを揺らした。

「これから、色々な出会いがある…。

沢山のものに触れられて新しいことを沢山学べるの」

女の子は胸をときめかせる。

「ふふふっ」

笑顔で思いを馳せた──────