<h3>抗えないもの</h3>
ある日、僕は謎の生物に捕まった。
言い方がおかしかったかもしれない。僕は謎の生物の家に招待された。
そこは、全てが未知だった。
しかし、それでいて、怖さはない。考えていた時よりも、実際を見て拍子抜けした。
そこでは、色々な人が居て、その生物が提供するゲームを楽しめる。
そこに居る人は、皆、そのゲームにのめり込んでいる。
何度も何度も繰り返していた。
それもまた僕も同じように繰り返す。
ある日、謎の生物は大きな変化をもたらした。
反発するものや、そこを去るものもあらわれる。
しかし、残るものも少なくなかった。
僕も密かにその中にまざる。
ただ、大きな置き土産を残していったこと…
大きな変化に対し、おかしくなった。との愚痴を残していったのだ。
それが僕の頭の中に残る。
繰り返しても意味はもうないと分かっている。
しかし、その中にあるかもしれないと、可能性を信じているのだ。
いつの間にか、何故、ここにいるのかの目的も忘れてしまった。
いつでも彼らのようにここから逃げられるはず。
しかし、逃げずにそこへとどまっている。
ここで得た出会いや、そのゲームへの未練を捨てられずにいるのである。
それもそのはず、ここに来てから数年が経っていた。
多くの時間を費やしてきたのに、そう簡単に手放せるはずもない。
僕はそこで知り合った人に愚痴を言った。
彼らが残していった言葉の数々を、引き継いで、足を引っ張っているのだ。
雰囲気が、去っていったもの達と同じになってしまっている。
このまま続けても得られるものはない。それは分かっていたはずだった。
しかし、失うことも出来ず、今までやってきたことを無意味と否定することも無理だった。
僕はいつの間にか、蜘蛛の巣にかかった獲物になってしまったのかもしれない。
だが、その中にも、逃げ出すことはできる。
しかし、今を甘んじ、得られない何かを求め続け、比べ、苦しみ続けているのである。
どうしたら、この苦しみしかない永遠ループから抜け出せるだろうか。
見渡す限り、自分と同じ苦しみに満ち溢れた表情が並ぶばかり。
ここまでで終わってしまったのだろうか?
これ以上、もう何かできないのだろうか?
ただ、僕の目に入るのは、謎の生物が連れてきた人だけだった
───────
お菓子…
目の前にあると食べてしまいたくなる。
お菓子じゃなくても、ケーキや、甘いもの。
それが目の前にあったら、自制よりも先に手が伸びている。
味を考えたら、とても美味しそう。
食べている時はとても幸せなんだろうな。
そう考えると、余計に食べたくなる。
私は常に、甘いものを求めている。
そのひと時だけ、癒されるような気持ちになるの。
もう少し、もう少しと味わっていたいから、沢山あるお菓子を1つ、また1つと口の中にいれる。
そうすると、いつの間にか、目の前にあったお菓子がなくなってる。
幸せな時間だった。
私はそう思って、また次に食べられる時を考える。
そして、目の前にはまたお菓子や、甘いケーキなどがおいてある。
私はそれを見て、考える間もなく味わう。
それがとても幸せなひと時だから。
でも、飽きることもある。
今日はお菓子より、野菜が食べたい。
好きなドレッシングをかけて沢山食べる。
野菜の中には、食感のいいものもあって、ドレッシングもその味をひきたてる。
美味しいな。
でも、それに飽きるとまた、違うものや、甘いお菓子が浮かんでくる。
やっぱり美味しいな
──────
目を覚まして、カーテンを開けると、嫌という程見てきた青空があった。
ぼくは今日も生きている。
この人生というやつは、何度も何度も嫌なことがおきる。
心などの内部、体におこる苦しみ、それ以外の外部からもたらされる苦しみ。
いずれかが、自分に害をもたらす。
この苦しみからときはなれたい、そう思えども、今こうしてあるのが現実だ。
本当に消えてしまうのは、現実が、消えると恐怖を超過した時だろう。
僕は未だ、超えたことは無い。
しかし、幾度となく、近付いたのは確かである。
だが、僕の見える現実とは、自分の見えるところにあった。
これからもそうあり続けるのだろうか。
ただ、この欲求というものは、今の自分にとっては抗えないものであった
──────
<h3>過去物語❿</h3>
私は童謡、ドラマ、映画など色々な物語を見て思ったことがあった。
私は…になりたい!
同い年の女の子が、お話をしていた。
「お姫様っていいよね!憧れる。」
「確かに!お城に住んでみたい!」
私はその中に入って言った。
「私は女王様がいいな!」
「え…?」
私の一言で、さめたような空気になる。
「女王様って、性格悪いイメージあるよ…?」
「確かに…。どうしてなの?」
私は喜んで答えた。
「女王様はとっても偉いの!なんでもできるし、なんでも許される!
だから、私は女王様になりたい!」
だけど、今の時代では、女王様にはなれないと思う…。
心の中でそれがあった。
どうしようかな…。
そう思ってると、学級委員って言うのがあった。
それはクラスで1番偉い役職なの。
わたしはそれになりたいと思った。
だけど…。
中々選ばれなかった。
どうしてあの人の方がいいの?
そう思ったけど、忘れて、次の時に立候補する。
だけど、ダメだった。
ある時、1人も居なかったので、私がなれそうになった。
だけど、それを見て、他の女の子が手をあげる。
それでまたまた叶わなかった。
どうしたら、女王様になれるだろう…。
考えても考えても、やっぱり、1番偉い人になるしかなかった。
偉くなって、自由に何かができること。それは私の夢だった。
女王様になりたいな…。
お姫様じゃだめ。女王様じゃなきゃ。
それから、高校生になった。
そこには、学級委員よりも凄いものがあったの。
生徒会長。学校の生徒で一番偉い役職。
これこそ、女王様みたい!
私は選挙がある時に立候補した。
今まで失敗してたのはもういい。今、これになれたら、私は夢が叶ったことになる。
頭の中には、お城に住む女王様の姿があった。
それを考えるだけでとっても幸せな気持ちになる。
私もあんなふうになりたい。
演説の日になって、私は正直に女王様になりたいから、生徒会長になりたいと言った。
だけど、1人も票は集まらなかった。
心の中で思う。どうしてなの…?
こんなになりたいのに、みんな協力してくれない…。
1年生だったからダメだったのかも。
そう思って、2年生になった時に、もう1回生徒会長に立候補した。
相手は1人で、同い年の男の子。
王様になるか、女王様になるか…。
今度は絶対負けない!そう思って意気込んだ。
だけど…
また負けてしまった。
どうしてなの…?
私は同じクラスに居た、生徒会の女の子に聞いてみた。
すると、今の生徒会長は、真面目でみんなのこと考えて過ごしてきたからと言ってた。
私にはよく分からない。
偉い人になれば、人の考えなくてもいいんじゃないの…?
私の頭の中には、ずっと女王様の姿が浮かんでくる。
なんでも自由にできて、幸せに過ごせるのが女王様。
だけど、もう、生徒会長にはなれない。
どうしようかな…
そう考えていると、ふと、部活のことが浮かんだ。
私は女王様だから、部活なんて入らなくていいかなと思ってたけど…。
部長って言うものがある。
それも女王様に繋がるかも…。
部長であれば、部活はしなくてよくて、自由に行動できるかもしれない。
女王様っぽい!
私は心の中で思った。
だから、部活に入ろうと決心した。
だけど、どれにしようか…。
やっぱり、女王って言うくらいだから、同性の中で1番になること…?
部長になることを条件にして、部活に入ると言っても、どこも誰も入れてくれなかった。
そして、3年生になった。
どうしようかな…。
そうしてると、2年生の時を思い出した。
思想学部…?
そうだ!思想学部。
あそこはできてそんなにたたないから、部長になれるかもしれない。
年上だし!
私はそう思って、思想学部の部室にいった。
そこには、1人の女の子がいた。
「あなた、思想学部の人?」
そう聞くと彼女は首を振る。
「入ろうと思ってます!」
「そう、じゃあ、いれてあげる!」
「ありがとうございます!」
そう言って喜んだ。
「私はこの部活の部長なの!これからよろしくね!」
そうして、私は思想学部の部長になったの。
だけど、過ごしているうちに、女王様っぽくないと心の中で思ってきた。
最近、試合があったらしい。
だけど、行かなくていいかな
心の中でそう思った。
だけど、今でも思ってる。私は…なりたいって!
───────────
<h3>結果</h3>
試合が終わってから数日後、生徒会長が決まった。
生徒会長は、庭野さんに決まった。
すすむくんはガッカリしている。
僕はその結果にホッとしていたところもある。
僕はそっと、彼に近付いて言った。
「すすむくん。」
「あぁ…。あいだくん。」
「残念だったね。だけど、試合、決勝まで進めたよ」
「うん。そうだね。あいだくんのお陰だ。」
まだ暗そうだった。
最近のすすむくんは、試合でひていをしたり、会長になろうとしたり、らしくないことをしてる。
僕はただ見てることしかできなかった───────
「にわのちゃんおめでとう」
そう言ってひなえ先輩は祝福してくれた。
「ありがとうございます!」
そして、私はキョロキョロと周りをみる。
「そういえば、獅王先輩は…?」
「あぁ…。多分、にわのちゃんの前には、自分から来ないと思うよ。」
「どうしてですか…?」
「獅王くんに内緒って言われたけど、言おうかな。」
「何ですか?」
「実は…」
私はそれに驚いて言葉が出なかった。
「でも、こう言ったの…。」
その言葉に私は「獅王先輩のところに行ってきます!」と言った。
「行ってらっしゃい。」
ひなえ先輩はただ微笑んで送り出す。
向かってる最中、先輩が行っていたことが頭の中に浮かんできた。
「投票、私に入れなかったって。」
私はすかさずきく。
「じゃあ、すいぞうくんにいれたんですか?」
「ううん。」
「すすむさんって人…?どうして?」
「獅王くんね、卒業した元生徒会長だったへいぎょくさんのこと、とても尊敬してたんだ。」
「すすむくんって子の話を聞いて、へいぎょくさんを重ねたんだって。もしかしたら…って」
「そうだったんですか…」
「えぇ。だけど、あなたがなると思ってたって。生徒会長だったとしても、みんなと同じ一票だから。」
私はその時思った。
だけど、私にとってそれは、とても大きな一票…。
「あなたに投票しなかった理由があるらしいの。教えてはくれなかったけど…」
すぐに察した。傍にいる私のことをよく見てる。
「これから、あなたがいい生徒会長になることを願ってるって。」
私はいかなきゃいけない…。
あの人の元に。
一方で、すいぞうは頭をかかえていた。
どうして負けた。更には、思想学部のやつにも投票数負けてる。
仲間からの頼みも、もうしなくていいと言われた。
もうこの学校にいる意味もない…。
ただ、何か最後にしないとな。
ギロリと睨んだ先には、職員室があった
探していると、ようやく見つかる。
私は「獅王先輩!」と呼んでとめた。
「君は…?」
私の顔を見ると「庭野さんか、当選おめでとう。」と続けた。
「ありがとうございます!」
「これからのこと、期待してるよ。」
彼は私の目をじっと見つめる。
私は「はい!」と答えた。
これから、より良い生徒会長になるために引き締めなきゃ。
ただ、私の中に、1つ気になることがあった
───────
目の前に男の子がいる。
私は彼の顔を見てたずねた。
「どうしてそんなに悲しい顔をしてるの?」
でも、答えてくれない。
「あなたが悲しそうだと、私も悲しくなるよ…」
すると、彼の口が開いた。
「懐かしいな。」
「懐かしい…?」
私は首をかしげる。
「あぁ。あんなに長い時間一緒に居たのにな。」
「私はあなたと一緒にいたの?」
「さぁ。記憶がないなら、もしかしたら、俺のでっちあげかもしれない。」
「分からないよ…。あなたが悲しい顔をしてるのも…。
あなたが悲しそうってだけで、こんなに苦しくなることも…。」
「もし、それが苦しい記憶なら、思い出す必要はない。今を生きればいい」
私の周りには、思想学部の人達の姿が現れてくる。
そして、段々と男の影は消えていく。
もしかしたら、最初からそこに居なかったのかもしれない。
だけど、そこに居たという感覚が残っていた。
私は「待って」と手を伸ばすが、間に合わなかった。
みんながいる方から知ってる声が聞こえてくる。
だけど、私は、さっきの影を探していた。
段々と自分の意識も消えていく。
声もはっきりと出ない。
ただ、その中でひっしに出そうとした。
「私は………る」
「お……て…」
────────
目を開くと、後輩のみおちゃんが「きせき先輩、おはようございます!」と微笑んでいる。
「おはよう!」
あたりを見回すと、そこは学校だった。
「私、寝ちゃってたんだ…」
自分の席から立ち上がって、部活へと向かった。
その中でみおちゃんが生徒会に入ったって。
嬉しい事のはずだけど、少し残念なところがあった。
これから部活にはあんまり来れなくなるかもって
───────
<h3>出来事</h3>
男は歩きながら考えた。
どうして、副部長のあいつに勝てないのか。
いつも否定してるが、他のやつと違って全然きかない。
思えば、俺の周りはムカつくやつばっかりだ。
すすむのやつにもやり返さないと。
だが、その機会がない。
前の試合で、決勝に進んだが。
俺は少し前に戻った。
どうしたら、昔やった子供みたいに、あいつらを…。
苦しんでる姿が浮かんでくる。
何故、苦しんでたのか。
すると、相手の大事なものが目の前に。
そうだ。本当に嫌なことは相手が大事にしてるものを…。
ぐちゃぐちゃにしてしまうことだ。
最近、ついてないと思ったが、案外そうでもないようだ。
今、こうして、浮かんでいる。
あいつらが大切にしてるものを知ること。
それが、俺が勝つ方法だ。
そして、前に思い出した。
なえ…その名前。昔、何度も聞いた。
印象薄かったから、忘れて居たが。
ひていは思わず「ははは」ともらした。
俺はこれからまた盛り返す。
待っているがいい…
全員なぁ。
そのままひていは散歩を続けた。
それは休みのある日のこと。
すすむくんが相変わらずの様子で歩いていた。
そして、偶然、その様子を発見した僕である。
「すすむくん!」
僕がそう呼ぶとすすむくんは顔をあげる。
「あぁ。あいだくん。」
「こんにちは。君も散歩?」
「うん…。気分転換にね」
「そうなんだ。なんだか、元気がないけど、どうしたの?」
「顧問の先生から電話が来たんだ。」
「そうなんだ。何の電話?」
「学校辞めることになるって」
「え!?どうして?」
「生徒トラブルがあったらしいんだ…」
「思想学部はどうなるの?試合も近いし、出られないかもしれないんじゃない?」
「分からない…。最近、悪いことが多いから…」
すぐにすすむくんの今までのことが浮かんできた。
相手のことを否定したり、らしくない彼の姿。
思えば、去年の冬もそうだった。
その時、試合の時に相手の人の言葉が浮かんでくる。
君は君の道を進んでいってと。
今まで通りじゃなく、少しでも彼のために…。
先に話したのは、彼の方からだった。
「あいだくん」
「どうしたの?」
「大切な人って…居るかな?」
「大切な人…?分からないよ。」
「僕には居るんだ…」
「そうなんだ。言えるかな…?」
「うん。親だよ。お母さんとお父さん。」
「育ててくれた人だもんね。」
僕は心の中で、変わろうと思ったけど、変われなかったもどかしさで一杯になった。
しかし、心の中で、そうすぐに人間は変われないと納得する。
「うん。」
その頷きと共に、嫌な感覚がはしった。
後ろから、「よぉ。すすむじゃないか。」と誰かが呼ぶ声が。
振り返ると、そこには、リベシン高校の人が居た。
「君は…」
「久しぶりだな。」
不敵な笑みを浮かべている。
「久しぶり。」
「ここであったのも何かの縁だ。試合、しようぜ。」
唐突に言われた。しかし、すすむくんは「分かった」と頷いた。
「どっちから言う?」
「俺からでもいいぜ。」
相変わらず、顔から笑みは消えない。自信があるのかもしれない。
「じゃあ、僕から言うよ。」
その言葉に驚いた。
「僕の思想は、大切な人を守りたいということ。」
「俺の思想は、お前の否定だ。」
「さっきの話聞いてたぜ、親が大切なんだろう?」
彼はははっと笑いながら言った。
「うん、そうだよ。」
「偶然通りがかって良かったぜ。ついてるなぁ。」
彼は続けて言う。
「お前の今までの思想は普通じゃない。おかしいよなぁ。」
「つまり、お前をうんだ親もおかしいってことよ。」
すすむくんは口を閉じた。
会ってすぐに対戦を挑んでくるって、おかしいと思ったけど…。
「能力も低そうだ。かえる子はかえるって言うもんな。親の能力もしれてるな。」
彼から出てくる言葉、それは全て、親への批判だった。
一方的に悪口を聞かされ続ける。
心の中で思った。止めなきゃ…。
こんなの対戦じゃないと思う…。
だけど、勇気が出なかった。何故、いつも、自分はこうなんだろう。
普通を目指してきたから…?元からこうだった…?
ただ、心の中にもどかしさがあった。
その後、僕が何かする必要はなく対戦は終わることになる。
自分の負けだと、すすむくんが言った。
「弱えなぁ。いいや、俺が強すぎるのか。」
彼はそう言って笑った。
「じゃあな。みじめなすすむ。」
彼が立ち去ったあと、僕はそっと、すすむくんのそばによる。
「大丈夫?」
彼は何も言わず黙っていた。
言えるはずもないか…。
最近、ずっと、らしくないことをしてる。
僕は思い切って「すすむくんは、すすむくんの進もうとしてる方に行って欲しい」と言った。
僕が嬉しかった言葉…。彼に届くか分からない。
だけど…。今できるのは、何か1つ言葉をかける事だって思ったから…。
すすむくんとはその後、何も語らず別れた
────────
<h3>照らした光</h3>
もうそろそろ、夏休みが始まる。
そして、試合も近付いてきた。
ただ、心配なところもある。
試合ができないことは勿論、すすむくんの調子が悪そうなこと。
いつも元気だった彼が最近は…。
僕はそっと、遠くから見てることしかできなかった。
担任の先生がすすむくんの前にやってきた。
「すすむくん。何かあったの?」
「最近上手く行かなくて…」
「そう…。上手く行かない時ってあるわよね…。」
先生はすすむくんの顔を見て言う。
「先生もあったんですか?」
「あったわ。」
「後悔も…あるの。ずっと傍に居てあげられてたらって…。」
「ねぇ。私で良ければ、話してもらえない?」
すすむくんは頷いて言った。
「顧問の先生が居なくなってたこと…。」
「試合に出られないかもしれないことです。」
「なるほど…。顧問の先生は、すいぞう君との問題ね…。」
「すいぞうくん…?」
「うん。彼とトラブルがあって、この学校を辞めることになってしまったの…。」
「すいぞうくんの方は?」
「学校に来てないらしいのよ…。」
「そうだったんですか…。」
「悲しいけど、どうしようもないよ…。」
「あと、試合のこと…。あなたはどうして試合に出たいの?」
「試合に出たい理由?」
「うん。次が決勝だから?
もちろん、すぐに答えを出す必要はないよ…。」
「家でじっくり考えてもいいから、私に教えて欲しい。」
すすむくんは「分かりました」と頷いた。
僕はただ、どうなるのか…と祈ることしかできない。
いいや、まだできることはあるかもしれない。
彼と同じく、考えて…今の彼にできることを探すこと…。
そうだ…。僕が今できるのは、考えることかもしれない
────────
学校が終わって、すすむは家に帰った。
家に到着すると、お父さんがすすむの顔をみて言う。
「最近、元気がないな。」
「やっぱり、俺の子供だな。あいつとは違う。俺と同じでずっと暗く生きていくんだよ。」
「お前は変わることできない。そのままだ。」
すすむは考え事をした。
自分がすすむ道。試合することは必要なのか…?
前の試合や、最近あったことのように、悲しい思いをするだけではないか…。
考えれば考えるほどに彼の周りを暗闇が包んだ。
そうだ…。ノートを見よう。
すすむは、昔、ずっとつけていた日記を開く。
それらは、一つ一つがキラキラしてるように見えた。
自分が考えていたこと、今思えば、恥ずかしいものかもしれない。
だけど…。真剣に向き合って考えてきた、その考えや、今までやってきたこと。
僕の心の中には、感動に似た感情がうまれた。
今まで失敗だらけだった。
だけど、その中に、一つでも、何か手で掴んだ時、僕はとても嬉しかったんだ。
その日、すすむは、日記に向き合って、これからのこと、今、思いついたこと。
色々と書き連ねていった。
───────
次の日。すすむくんは昨日より少し元気を取り戻していた。
僕はホッとする。
結局、昨日考えたのは、中立主義のこと。
彼が困っているのなら、手を差し伸べる。助けることで、中立の状態に戻すと。
それで完結していた。だけど、もう大丈夫そうだって。
僕は彼に話しかける。
「すすむくん。元気そうだね!」
すすむくんは「僕は元気!」と笑った。
それから、先生が、すすむくんをよんだ。
「昨日のことだけど…。理由、考えた?」
「もちろん、まだ待つよ。」
「それなんですけど。」
「うん。」
「考えても思いつきません!」
「え…?」
先生は驚いたように言う。
「本当にしたいと思ったからしたい!だけど、できないのならそれでもいい。」
「ただ、昔、したいと思ったから!その考えは今でも間違ってないと思ってる!」
「そう…。」
「思想学部って楽しい!作ってよかったなって。」
私は何故か、子供の頃のことが浮かんでくる。
彼の後をついて行ったあの頃…。
私は言ったの。
「一緒に行きたい」って。
そう…今、もう一度…。
「すすむくん、私が顧問になります。一緒に大会に出ましょう。」
「いいんですか?」
「はい。私が見てますから。大丈夫です。」
「ありがとうございます!」
僕が、すすむくんの元に行くと、いつも通りの彼の姿があった。
「すすむくん!」
「あいだくん、どうしたの?」
「特に何も無いけど、自分に向いてることをしよう!」
「そうだね!」
─────────