思想学部24

<h3>抗えないもの</h3>

ある日、僕は謎の生物に捕まった。

言い方がおかしかったかもしれない。僕は謎の生物の家に招待された。

そこは、全てが未知だった。

しかし、それでいて、怖さはない。考えていた時よりも、実際を見て拍子抜けした。

そこでは、色々な人が居て、その生物が提供するゲームを楽しめる。

そこに居る人は、皆、そのゲームにのめり込んでいる。

何度も何度も繰り返していた。

それもまた僕も同じように繰り返す。

ある日、謎の生物は大きな変化をもたらした。

反発するものや、そこを去るものもあらわれる。

しかし、残るものも少なくなかった。

僕も密かにその中にまざる。

ただ、大きな置き土産を残していったこと…

大きな変化に対し、おかしくなった。との愚痴を残していったのだ。

それが僕の頭の中に残る。

繰り返しても意味はもうないと分かっている。

しかし、その中にあるかもしれないと、可能性を信じているのだ。

いつの間にか、何故、ここにいるのかの目的も忘れてしまった。

いつでも彼らのようにここから逃げられるはず。

しかし、逃げずにそこへとどまっている。

ここで得た出会いや、そのゲームへの未練を捨てられずにいるのである。

それもそのはず、ここに来てから数年が経っていた。

多くの時間を費やしてきたのに、そう簡単に手放せるはずもない。

僕はそこで知り合った人に愚痴を言った。

彼らが残していった言葉の数々を、引き継いで、足を引っ張っているのだ。

雰囲気が、去っていったもの達と同じになってしまっている。

このまま続けても得られるものはない。それは分かっていたはずだった。

しかし、失うことも出来ず、今までやってきたことを無意味と否定することも無理だった。

僕はいつの間にか、蜘蛛の巣にかかった獲物になってしまったのかもしれない。

だが、その中にも、逃げ出すことはできる。

しかし、今を甘んじ、得られない何かを求め続け、比べ、苦しみ続けているのである。

どうしたら、この苦しみしかない永遠ループから抜け出せるだろうか。

見渡す限り、自分と同じ苦しみに満ち溢れた表情が並ぶばかり。

ここまでで終わってしまったのだろうか?

これ以上、もう何かできないのだろうか?

ただ、僕の目に入るのは、謎の生物が連れてきた人だけだった

───────

お菓子…

目の前にあると食べてしまいたくなる。

お菓子じゃなくても、ケーキや、甘いもの。

それが目の前にあったら、自制よりも先に手が伸びている。

味を考えたら、とても美味しそう。

食べている時はとても幸せなんだろうな。

そう考えると、余計に食べたくなる。

私は常に、甘いものを求めている。

そのひと時だけ、癒されるような気持ちになるの。

もう少し、もう少しと味わっていたいから、沢山あるお菓子を1つ、また1つと口の中にいれる。

そうすると、いつの間にか、目の前にあったお菓子がなくなってる。

幸せな時間だった。

私はそう思って、また次に食べられる時を考える。

そして、目の前にはまたお菓子や、甘いケーキなどがおいてある。

私はそれを見て、考える間もなく味わう。

それがとても幸せなひと時だから。

でも、飽きることもある。

今日はお菓子より、野菜が食べたい。

好きなドレッシングをかけて沢山食べる。  

野菜の中には、食感のいいものもあって、ドレッシングもその味をひきたてる。

美味しいな。

でも、それに飽きるとまた、違うものや、甘いお菓子が浮かんでくる。

やっぱり美味しいな

──────

目を覚まして、カーテンを開けると、嫌という程見てきた青空があった。

ぼくは今日も生きている。

この人生というやつは、何度も何度も嫌なことがおきる。

心などの内部、体におこる苦しみ、それ以外の外部からもたらされる苦しみ。

いずれかが、自分に害をもたらす。

この苦しみからときはなれたい、そう思えども、今こうしてあるのが現実だ。

本当に消えてしまうのは、現実が、消えると恐怖を超過した時だろう。

僕は未だ、超えたことは無い。

しかし、幾度となく、近付いたのは確かである。

だが、僕の見える現実とは、自分の見えるところにあった。

これからもそうあり続けるのだろうか。

ただ、この欲求というものは、今の自分にとっては抗えないものであった

──────

<h3>過去物語❿</h3>

私は童謡、ドラマ、映画など色々な物語を見て思ったことがあった。

私は…になりたい!

同い年の女の子が、お話をしていた。

「お姫様っていいよね!憧れる。」

「確かに!お城に住んでみたい!」

私はその中に入って言った。

「私は女王様がいいな!」

「え…?」

私の一言で、さめたような空気になる。

「女王様って、性格悪いイメージあるよ…?」

「確かに…。どうしてなの?」

私は喜んで答えた。

「女王様はとっても偉いの!なんでもできるし、なんでも許される!

だから、私は女王様になりたい!」

だけど、今の時代では、女王様にはなれないと思う…。

心の中でそれがあった。

どうしようかな…。

そう思ってると、学級委員って言うのがあった。

それはクラスで1番偉い役職なの。

わたしはそれになりたいと思った。

だけど…。

中々選ばれなかった。

どうしてあの人の方がいいの?

そう思ったけど、忘れて、次の時に立候補する。

だけど、ダメだった。

ある時、1人も居なかったので、私がなれそうになった。

だけど、それを見て、他の女の子が手をあげる。

それでまたまた叶わなかった。

どうしたら、女王様になれるだろう…。

考えても考えても、やっぱり、1番偉い人になるしかなかった。

偉くなって、自由に何かができること。それは私の夢だった。

女王様になりたいな…。

お姫様じゃだめ。女王様じゃなきゃ。

それから、高校生になった。

そこには、学級委員よりも凄いものがあったの。

生徒会長。学校の生徒で一番偉い役職。

これこそ、女王様みたい!

私は選挙がある時に立候補した。

今まで失敗してたのはもういい。今、これになれたら、私は夢が叶ったことになる。

頭の中には、お城に住む女王様の姿があった。

それを考えるだけでとっても幸せな気持ちになる。

私もあんなふうになりたい。

演説の日になって、私は正直に女王様になりたいから、生徒会長になりたいと言った。

だけど、1人も票は集まらなかった。

心の中で思う。どうしてなの…?

こんなになりたいのに、みんな協力してくれない…。

1年生だったからダメだったのかも。

そう思って、2年生になった時に、もう1回生徒会長に立候補した。

相手は1人で、同い年の男の子。

王様になるか、女王様になるか…。

今度は絶対負けない!そう思って意気込んだ。

だけど…

また負けてしまった。

どうしてなの…?

私は同じクラスに居た、生徒会の女の子に聞いてみた。

すると、今の生徒会長は、真面目でみんなのこと考えて過ごしてきたからと言ってた。

私にはよく分からない。

偉い人になれば、人の考えなくてもいいんじゃないの…?

私の頭の中には、ずっと女王様の姿が浮かんでくる。

なんでも自由にできて、幸せに過ごせるのが女王様。

だけど、もう、生徒会長にはなれない。

どうしようかな…

そう考えていると、ふと、部活のことが浮かんだ。

私は女王様だから、部活なんて入らなくていいかなと思ってたけど…。

部長って言うものがある。

それも女王様に繋がるかも…。

部長であれば、部活はしなくてよくて、自由に行動できるかもしれない。

女王様っぽい!

私は心の中で思った。

だから、部活に入ろうと決心した。

だけど、どれにしようか…。

やっぱり、女王って言うくらいだから、同性の中で1番になること…?

部長になることを条件にして、部活に入ると言っても、どこも誰も入れてくれなかった。

そして、3年生になった。

どうしようかな…。

そうしてると、2年生の時を思い出した。

思想学部…?

そうだ!思想学部。

あそこはできてそんなにたたないから、部長になれるかもしれない。

年上だし!

私はそう思って、思想学部の部室にいった。

そこには、1人の女の子がいた。

「あなた、思想学部の人?」

そう聞くと彼女は首を振る。

「入ろうと思ってます!」

「そう、じゃあ、いれてあげる!」

「ありがとうございます!」

そう言って喜んだ。

「私はこの部活の部長なの!これからよろしくね!」

そうして、私は思想学部の部長になったの。

だけど、過ごしているうちに、女王様っぽくないと心の中で思ってきた。

最近、試合があったらしい。

だけど、行かなくていいかな

心の中でそう思った。

だけど、今でも思ってる。私は…なりたいって!

───────────

<h3>結果</h3>

試合が終わってから数日後、生徒会長が決まった。

生徒会長は、庭野さんに決まった。

すすむくんはガッカリしている。

僕はその結果にホッとしていたところもある。

僕はそっと、彼に近付いて言った。

「すすむくん。」

「あぁ…。あいだくん。」

「残念だったね。だけど、試合、決勝まで進めたよ」

「うん。そうだね。あいだくんのお陰だ。」

まだ暗そうだった。

最近のすすむくんは、試合でひていをしたり、会長になろうとしたり、らしくないことをしてる。

僕はただ見てることしかできなかった───────


「にわのちゃんおめでとう」

そう言ってひなえ先輩は祝福してくれた。

「ありがとうございます!」

そして、私はキョロキョロと周りをみる。

「そういえば、獅王先輩は…?」

「あぁ…。多分、にわのちゃんの前には、自分から来ないと思うよ。」

「どうしてですか…?」

「獅王くんに内緒って言われたけど、言おうかな。」

「何ですか?」

「実は…」

私はそれに驚いて言葉が出なかった。

「でも、こう言ったの…。」

その言葉に私は「獅王先輩のところに行ってきます!」と言った。

「行ってらっしゃい。」

ひなえ先輩はただ微笑んで送り出す。

向かってる最中、先輩が行っていたことが頭の中に浮かんできた。

「投票、私に入れなかったって。」

私はすかさずきく。

「じゃあ、すいぞうくんにいれたんですか?」

「ううん。」

「すすむさんって人…?どうして?」

「獅王くんね、卒業した元生徒会長だったへいぎょくさんのこと、とても尊敬してたんだ。」

「すすむくんって子の話を聞いて、へいぎょくさんを重ねたんだって。もしかしたら…って」

「そうだったんですか…」

「えぇ。だけど、あなたがなると思ってたって。生徒会長だったとしても、みんなと同じ一票だから。」

私はその時思った。

だけど、私にとってそれは、とても大きな一票…。

「あなたに投票しなかった理由があるらしいの。教えてはくれなかったけど…」

すぐに察した。傍にいる私のことをよく見てる。

「これから、あなたがいい生徒会長になることを願ってるって。」


私はいかなきゃいけない…。

あの人の元に。


一方で、すいぞうは頭をかかえていた。

どうして負けた。更には、思想学部のやつにも投票数負けてる。

仲間からの頼みも、もうしなくていいと言われた。

もうこの学校にいる意味もない…。

ただ、何か最後にしないとな。

ギロリと睨んだ先には、職員室があった


探していると、ようやく見つかる。

私は「獅王先輩!」と呼んでとめた。

「君は…?」

私の顔を見ると「庭野さんか、当選おめでとう。」と続けた。

「ありがとうございます!」

「これからのこと、期待してるよ。」

彼は私の目をじっと見つめる。

私は「はい!」と答えた。

これから、より良い生徒会長になるために引き締めなきゃ。

ただ、私の中に、1つ気になることがあった

───────

目の前に男の子がいる。

私は彼の顔を見てたずねた。

「どうしてそんなに悲しい顔をしてるの?」

でも、答えてくれない。

「あなたが悲しそうだと、私も悲しくなるよ…」

すると、彼の口が開いた。

「懐かしいな。」

「懐かしい…?」

私は首をかしげる

「あぁ。あんなに長い時間一緒に居たのにな。」

「私はあなたと一緒にいたの?」

「さぁ。記憶がないなら、もしかしたら、俺のでっちあげかもしれない。」

「分からないよ…。あなたが悲しい顔をしてるのも…。

あなたが悲しそうってだけで、こんなに苦しくなることも…。」

「もし、それが苦しい記憶なら、思い出す必要はない。今を生きればいい」

私の周りには、思想学部の人達の姿が現れてくる。

そして、段々と男の影は消えていく。

もしかしたら、最初からそこに居なかったのかもしれない。

だけど、そこに居たという感覚が残っていた。

私は「待って」と手を伸ばすが、間に合わなかった。

みんながいる方から知ってる声が聞こえてくる。

だけど、私は、さっきの影を探していた。

段々と自分の意識も消えていく。

声もはっきりと出ない。

ただ、その中でひっしに出そうとした。

「私は………る」

「お……て…」

────────

目を開くと、後輩のみおちゃんが「きせき先輩、おはようございます!」と微笑んでいる。

「おはよう!」

あたりを見回すと、そこは学校だった。

「私、寝ちゃってたんだ…」

自分の席から立ち上がって、部活へと向かった。

その中でみおちゃんが生徒会に入ったって。

嬉しい事のはずだけど、少し残念なところがあった。

これから部活にはあんまり来れなくなるかもって

───────

<h3>出来事</h3>

男は歩きながら考えた。

どうして、副部長のあいつに勝てないのか。

いつも否定してるが、他のやつと違って全然きかない。

思えば、俺の周りはムカつくやつばっかりだ。

すすむのやつにもやり返さないと。

だが、その機会がない。

前の試合で、決勝に進んだが。

俺は少し前に戻った。

どうしたら、昔やった子供みたいに、あいつらを…。

苦しんでる姿が浮かんでくる。

何故、苦しんでたのか。

すると、相手の大事なものが目の前に。

そうだ。本当に嫌なことは相手が大事にしてるものを…。

ぐちゃぐちゃにしてしまうことだ。

最近、ついてないと思ったが、案外そうでもないようだ。

今、こうして、浮かんでいる。

あいつらが大切にしてるものを知ること。

それが、俺が勝つ方法だ。

そして、前に思い出した。

なえ…その名前。昔、何度も聞いた。

印象薄かったから、忘れて居たが。

ひていは思わず「ははは」ともらした。

俺はこれからまた盛り返す。

待っているがいい…

全員なぁ。

そのままひていは散歩を続けた。


それは休みのある日のこと。

すすむくんが相変わらずの様子で歩いていた。

そして、偶然、その様子を発見した僕である。

「すすむくん!」

僕がそう呼ぶとすすむくんは顔をあげる。

「あぁ。あいだくん。」

「こんにちは。君も散歩?」

「うん…。気分転換にね」

「そうなんだ。なんだか、元気がないけど、どうしたの?」

「顧問の先生から電話が来たんだ。」

「そうなんだ。何の電話?」

「学校辞めることになるって」

「え!?どうして?」

「生徒トラブルがあったらしいんだ…」

「思想学部はどうなるの?試合も近いし、出られないかもしれないんじゃない?」

「分からない…。最近、悪いことが多いから…」

すぐにすすむくんの今までのことが浮かんできた。

相手のことを否定したり、らしくない彼の姿。

思えば、去年の冬もそうだった。

その時、試合の時に相手の人の言葉が浮かんでくる。

君は君の道を進んでいってと。

今まで通りじゃなく、少しでも彼のために…。

先に話したのは、彼の方からだった。

「あいだくん」

「どうしたの?」

「大切な人って…居るかな?」
 
「大切な人…?分からないよ。」

「僕には居るんだ…」

「そうなんだ。言えるかな…?」

「うん。親だよ。お母さんとお父さん。」

「育ててくれた人だもんね。」

僕は心の中で、変わろうと思ったけど、変われなかったもどかしさで一杯になった。

しかし、心の中で、そうすぐに人間は変われないと納得する。

「うん。」

その頷きと共に、嫌な感覚がはしった。

後ろから、「よぉ。すすむじゃないか。」と誰かが呼ぶ声が。

振り返ると、そこには、リベシン高校の人が居た。

「君は…」

「久しぶりだな。」

不敵な笑みを浮かべている。

「久しぶり。」

「ここであったのも何かの縁だ。試合、しようぜ。」

唐突に言われた。しかし、すすむくんは「分かった」と頷いた。

「どっちから言う?」

「俺からでもいいぜ。」

相変わらず、顔から笑みは消えない。自信があるのかもしれない。

「じゃあ、僕から言うよ。」

その言葉に驚いた。

「僕の思想は、大切な人を守りたいということ。」

「俺の思想は、お前の否定だ。」

「さっきの話聞いてたぜ、親が大切なんだろう?」

彼はははっと笑いながら言った。

「うん、そうだよ。」

「偶然通りがかって良かったぜ。ついてるなぁ。」

彼は続けて言う。

「お前の今までの思想は普通じゃない。おかしいよなぁ。」

「つまり、お前をうんだ親もおかしいってことよ。」

すすむくんは口を閉じた。

会ってすぐに対戦を挑んでくるって、おかしいと思ったけど…。

「能力も低そうだ。かえる子はかえるって言うもんな。親の能力もしれてるな。」

彼から出てくる言葉、それは全て、親への批判だった。

一方的に悪口を聞かされ続ける。

心の中で思った。止めなきゃ…。

こんなの対戦じゃないと思う…。

だけど、勇気が出なかった。何故、いつも、自分はこうなんだろう。

普通を目指してきたから…?元からこうだった…?

ただ、心の中にもどかしさがあった。

その後、僕が何かする必要はなく対戦は終わることになる。

自分の負けだと、すすむくんが言った。

「弱えなぁ。いいや、俺が強すぎるのか。」

彼はそう言って笑った。

「じゃあな。みじめなすすむ。」

彼が立ち去ったあと、僕はそっと、すすむくんのそばによる。

「大丈夫?」

彼は何も言わず黙っていた。

言えるはずもないか…。

最近、ずっと、らしくないことをしてる。

僕は思い切って「すすむくんは、すすむくんの進もうとしてる方に行って欲しい」と言った。

僕が嬉しかった言葉…。彼に届くか分からない。

だけど…。今できるのは、何か1つ言葉をかける事だって思ったから…。

すすむくんとはその後、何も語らず別れた

────────

<h3>照らした光</h3>

もうそろそろ、夏休みが始まる。

そして、試合も近付いてきた。

ただ、心配なところもある。

試合ができないことは勿論、すすむくんの調子が悪そうなこと。

いつも元気だった彼が最近は…。
 
僕はそっと、遠くから見てることしかできなかった。

担任の先生がすすむくんの前にやってきた。

「すすむくん。何かあったの?」

「最近上手く行かなくて…」

「そう…。上手く行かない時ってあるわよね…。」

先生はすすむくんの顔を見て言う。

「先生もあったんですか?」

「あったわ。」

「後悔も…あるの。ずっと傍に居てあげられてたらって…。」

「ねぇ。私で良ければ、話してもらえない?」

すすむくんは頷いて言った。

「顧問の先生が居なくなってたこと…。」

「試合に出られないかもしれないことです。」

「なるほど…。顧問の先生は、すいぞう君との問題ね…。」

「すいぞうくん…?」

「うん。彼とトラブルがあって、この学校を辞めることになってしまったの…。」

「すいぞうくんの方は?」

「学校に来てないらしいのよ…。」

「そうだったんですか…。」

「悲しいけど、どうしようもないよ…。」

「あと、試合のこと…。あなたはどうして試合に出たいの?」

「試合に出たい理由?」

「うん。次が決勝だから?

もちろん、すぐに答えを出す必要はないよ…。」

「家でじっくり考えてもいいから、私に教えて欲しい。」

すすむくんは「分かりました」と頷いた。

僕はただ、どうなるのか…と祈ることしかできない。

いいや、まだできることはあるかもしれない。

彼と同じく、考えて…今の彼にできることを探すこと…。

そうだ…。僕が今できるのは、考えることかもしれない

────────

学校が終わって、すすむは家に帰った。

家に到着すると、お父さんがすすむの顔をみて言う。

「最近、元気がないな。」

「やっぱり、俺の子供だな。あいつとは違う。俺と同じでずっと暗く生きていくんだよ。」

「お前は変わることできない。そのままだ。」

すすむは考え事をした。

自分がすすむ道。試合することは必要なのか…?

前の試合や、最近あったことのように、悲しい思いをするだけではないか…。

考えれば考えるほどに彼の周りを暗闇が包んだ。

そうだ…。ノートを見よう。

すすむは、昔、ずっとつけていた日記を開く。

それらは、一つ一つがキラキラしてるように見えた。

自分が考えていたこと、今思えば、恥ずかしいものかもしれない。

だけど…。真剣に向き合って考えてきた、その考えや、今までやってきたこと。 

僕の心の中には、感動に似た感情がうまれた。

今まで失敗だらけだった。

だけど、その中に、一つでも、何か手で掴んだ時、僕はとても嬉しかったんだ。
 
その日、すすむは、日記に向き合って、これからのこと、今、思いついたこと。

色々と書き連ねていった。

───────

次の日。すすむくんは昨日より少し元気を取り戻していた。

僕はホッとする。

結局、昨日考えたのは、中立主義のこと。 

彼が困っているのなら、手を差し伸べる。助けることで、中立の状態に戻すと。

それで完結していた。だけど、もう大丈夫そうだって。

僕は彼に話しかける。

「すすむくん。元気そうだね!」

すすむくんは「僕は元気!」と笑った。


それから、先生が、すすむくんをよんだ。

「昨日のことだけど…。理由、考えた?」

「もちろん、まだ待つよ。」

「それなんですけど。」

「うん。」

「考えても思いつきません!」

「え…?」

先生は驚いたように言う。

「本当にしたいと思ったからしたい!だけど、できないのならそれでもいい。」

「ただ、昔、したいと思ったから!その考えは今でも間違ってないと思ってる!」

「そう…。」

「思想学部って楽しい!作ってよかったなって。」

私は何故か、子供の頃のことが浮かんでくる。

彼の後をついて行ったあの頃…。

私は言ったの。

「一緒に行きたい」って。

そう…今、もう一度…。

「すすむくん、私が顧問になります。一緒に大会に出ましょう。」

「いいんですか?」

「はい。私が見てますから。大丈夫です。」

「ありがとうございます!」

僕が、すすむくんの元に行くと、いつも通りの彼の姿があった。

「すすむくん!」

「あいだくん、どうしたの?」

「特に何も無いけど、自分に向いてることをしよう!」

「そうだね!」

─────────