思想学部23

<h3>過去物語❾</h3>

私のはじまり、それはとても小さい頃のことだった。

ある人の出会いが私を大きく変えたのかもしれない。

その人はとても多くの子供達に囲まれていた。

自分の思ったことを、「いい考えだね」と肯定してくれた。

だから、私も思ったことを伝えられる。

「うれしいって言われると、うれしくなって、かなしいって言われるとかなしくなるの。」

その時もあの人は言ってくれた。

私の中にその事が残った。

ところで、私の周りには、数人の友達が居る。

こうたくんと、ていみさん。

そして…一歳年上のふらさん。


自分の席に笑顔で座っていると、こうたくんが話しかけてきた。

「何かいいことあったの?もしかして、ふらお姉さんに優しくしてもらった」

「ううん。ふらお姉さんはいつも優しいよ。

改めてね、私って人に恵まれてるなって」

彼に私らしいって笑われた。

小学校の時はそうして楽しく過ごす。

友達の笑顔がとっても幸せな気持ちになった。

自分の考えてることを伝えると、いいねと笑う。

それもまた嬉しかった。

中学校に入っても変わらない。

私は毎日「ありがとう」って伝えた。

ある日のこと、クラスで楽しく友達と話してると、ふらさんがやってくる。

部活に誘いに来てくれたのだった。

ちょうど、部活に入ってなかったので、私は「是非!」と言って、ふらお姉さんについていく。

こうたくんと、ていみさんも一緒に来てくれた。

ついたところには、知らない先輩が1人いた。

「みんな!こんにちは!」

その人はそう言って笑う。

「ふらちゃんが前に言ってた人達かな!」

「うん、そうだよ!みおちゃん。」

私は「みおさんよろしくお願いします!」と言った。

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

そして、聞いた。

「この部活は何をするんですか?部活名は?」

みおさんは言う。

「えーっと…。特にないよ!」

「時々、ふらちゃんとお話や、勉強するために集まったり!」

「うん!そんな感じ!」

ふらさんは頷く。

「みんなで楽しめたらいいなって!」

みおさんは言った「私は自由な人だから、たまに来ないこともあるかも…!」

「大丈夫!いつも来てくれてありがとう!」

「ふふふ!」

色々あるけど、この日から、おしゃべり部みたいなものが始まった。

ふらお姉さんとみおさんは色々な話を持ってきて楽しく話す。

だけど、ある日のこと。

私は思い切って言った。

「おしゃべり部ならしたいことがあるんですけど…!」

みおさんは「おぉ~!なになに!」と笑う。

「私も聞きたいな!」

こうたくん、ていみさんはそっと、私の背中を押してくれた。

「はい!もちろん!」

みおさんは「へぇ~!」と言う。

「昔、小学校の頃に、変わったことを言う人がクラスにいた事もあって!」

「そうだったんだ~!楽しそうな人!」

ふらお姉さんが「そういえば、出会った時…」といいかける。

「私、言ってみたいな!」

みおさんが元気に言う。

ふらさんは続けて言った。

「それいいね!私も言ってみたい!」

そして、それぞれ言うことになった。

「私はね、子供の頃、可愛いぬいぐるみさんや、可愛いものに沢山囲まれてたから!」

「可愛いものしか勝たんってことかな!」

「わー!みおちゃんそれいいね!」

ふらさんは微笑んだ。

「ありがとー!ふらちゃん。

次はふらちゃん教えて欲しい!」

「うん!分かった!

私は…こうしてみんなの考えを聞いて…後押しができたらなって!」

「他人思考なんだね!」

「そうかも!」

2人は微笑み合う。

そして、私が言う番になった。

「私は…」

───────

おしゃべり部で過ごしてたけど、みおさんはたまに来るくらいでよく話すのは決まったメンバー。

でも、楽しかった。こうしてみんなでとる時間が少なかったし、何より、みんなが笑顔。

ところで、2年生になりそうな時、みおさんが久しぶりにやってきて言った。

「みんな!良ければ、いろいろ部に入らない?」

「いろいろ部?」

「うん!自由に色々なことするの!」

「私はいいよ!」

ふらお姉さんは、みおさんの手を取って微笑む。

私はていみちゃんとこうたくんを見る。

すると、2人とも頷く。

「私もいいですよ!今より自由性が増えるかも!」

みおさんはとても嬉しそうに、「やった!」と言った。

2年生になってからは、みおさんもよく来てくれたり、勉強しながら、活動に参加してくれたりもした。

相変わらず、同い年の2人は、私を支えてくれる。

ふらお姉さんも優しい。

私はそっと、ありがとうと呟いた。

自分の考えも、だんだん深まってる。

きっと、みんなの優しさが、私の考えを強いものに変えてるんだ…。

優しい笑顔、そして、楽しい空間───────

<h3>試合2①</h3>

試合があって少し経った。

その間、生徒会選挙など色々あったが、またこの日がやってくる。

今回は2試合する。

準々決勝、準決勝をして、夏休みに決勝が行われるのだ。

今回は、以前よりも手強い人が多くなる。

心の中では不安が一杯だった。

すすむくんは笑っていう。

「気楽にしよう。」

彼の言葉でなんだか落ち着いた気がする。

3試合目、相手の学校が来て始まった。

─────────

からくり高校のメンバーは、リベシンを見て笑った。

「まさか、残ってくるとは思わなかったぜ。しかし、2人か」

そこに居たのは、部長と副部長だけ。

そして、男の方に「確か、部長だったよな。」と言う。

「信用されてないって大変だな。まぁ、ここで終わるからもう気にすることないか。」

すると、リベシンの部長は言った。

「そうか。だが、君たちは、副部長1人に勝てない。」

「弱いやつはよく吠えるって言うもんな。練習試合の時忘れたのかよ。」

副部長はキラキラと目を輝かせて部長を見つめていた。


一方、ひていは、つまらなそうに自分の家の周辺を散歩する。

何故、こうなった。

最近、後輩が思想学部を辞めると言い出した。2回戦目からおかしくて。

で、今日は、来なくていいと副部長に言われた。

少し前にとった態度から、部活には居づらくなってる。

最近、上手くいってない。足を引っ張られてるようだ。

歩いている途中、ふと思った。

ところで、副部長のなえ…。気にしてなかったが、どこかで見たことがある顔。

名前も聞いた事がある。それはいつだったか…

思い出せない。むかつくやつのことを考えるの辞めるか。

そうして歩いていると、昔のことが浮かんできた。

──────

3回戦目、勝ったのは、ぜんほう高校の思想学部だった。

今回も、相手の肯定をして、逆に感謝される。

ねおくんも中にいた。

「ありがとうございます!」

ねおくんもそう言われ「僕は何もしてない」と返す。

「ただ、俺も自分の考えをいいって言われたら嬉しいから言っただけだ。」

「それでも、嬉しかったので」

その人の姿を見て、ねおは心の中で思う。

考えを否定されるなんて苦しいよな。

僕は…。


すすむくんが「頑張ったね!」とみんなを労った。

次の試合は誰とだろうか

しかし、その前に。

僕はすすむくんを連れてその場を離れた。

「あいだくん、どうしたの?」

「みんな肯定してて凄いなって思って。」

「確かに。みんな凄い。」

「思ったんだけど、相手も自分も肯定だったらどうなるんだろうなって。」

「なるほど。そうなったら、どちらかが、否定になるんじゃないかな。」

「そうかな。」

「分からない。だけど、そうならなくても、それっていいんじゃないかな。」

「確かにね…」

「ところで…!」

「どうしたの?」

「選挙の時もずっと思ってて、聞きたかったんだけど。」

すすむくんは頷いた。

「ないとは思うけど、もし…」

「もし?」

「生徒会長になったら、部活はどうするの?」

「もちろん、続けるつもりだよ。」

「本当に?」

「うん。」

「でも…僕は言いたい…。」

「思想学部したかったんでしょ。試合したかったんでしょ。」

「それなら…。」

すすむくんはたずねる「それなら?」

「生徒会長にならないで、思想学部の部長としていて欲しいんだ…。こんな時にごめん。」

「大丈夫だよ。」

すすむくんは深くそれについて言わなかった。

ただ、何かを考える。


すすむくんと僕はみんなの元に戻る。

すると、その時、シソウくんとトモさんが何か話をしていた。

「私、じぶんの考え思いついたから参加してみたいな。」

「僕もしてみたい。だけど。」

「そうなんだー!

だけど?」

「最初は、自分の考えを言ってもいいねとか言ってくれる人達を思ってた。」

「実際、この学校の思想学部の人はそうだったけど。」

「でも、全員が全員そうって訳じゃない。」

「そうなんだ。」

「うん。僕の思想だけど、夢って、叶わない方がいいと思うんだ。」

トモさんは言う。

「そうかなー?私は、夢は叶うなら叶った方がいいと思うけど。」

「今までの経験から思うんだよ。叶ってもその後のことを考えると、どするんだろうなって。」

「なるべくは、自分の向いてることをしたいなって。」

すすむの頭の中に1つの言葉が浮かんだ。

────夢────


一方、リベシンは、4回戦目にこまをすすめていた。

剣鋭高校との試合。

最初対戦したのは、副部長と相手の1人。

だが、とても苦戦しているようだった。

剣鋭高校の部長は言う。「3回戦目、1人で戦って勝ったようだが、僕達の思想学部には無理だ。」

「せめて、5人であれば、まだ分からなかったかもしれないが。」

すると、リベシンの副部長は言った。

「部長、すみません…。」

「よく頑張ったな。後は俺に任せろ。」


すると、剣鋭高校の部員は「君1人で何ができるという?」とたずねる。

「後は俺1人でじゅうぶんだ。」

副部長と対戦していた相手は、「僕も…あとは任せていいですか…?」とたずねる。

それが予想外だったようで、とても驚いていた──────

<h3>試合2②</h3>

準決勝。これで決勝に進めるのがどちらかが決まる。

その少し前、トーナメントを見た。

次の相手はどこだろう。

空帝(くうてい)高校と書かれていた。

聞いた事がない。どんなところなんだろう。

そして、ついでに決勝で当たりそうなところを見た。

すると、そこには、剣鋭高校とリベラルシンク高校の名前があった。

剣鋭高校は練習試合で行ったことがある。

一人一人がとても強いところだった。どっちが決勝に行ってもおかしくはない。

僕は気を引き締めた。

それよりも、今、準決勝だ。


出るメンバーが決まった。

トモさん、ふらさん、みおさん、ぼく、すすむくん。

トモさんはさっき言ってたこともあって、参加することになる。

しかし、メンバーが決まってきてるな…。

僕は心の中で思った。

しかし、その前に、すすむくんがなんだか考え事をしているよう。

さっきのことだろうか…?

僕は少し心配になっていた。


それをよそに、試合がはじまった。

最初に行ったのはトモさん。

相手は…。

見てみると、みんな雰囲気がどこか強そうだった。

トモさんは大丈夫だろうか?

「行ってくるね!」

明るくそう言った。

それ見て、大丈夫なんじゃないかと思った。

「最初は僕と君がするのか。」

そう言って、よろしくと続ける。

「こちらこそよろしく!」

相手の名前はねるらしい。向こうからその名前が聞こえた。

まずは、ねるくんから話しかける。

「まずは君の思想を聞かせて欲しい。僕は今まで通り、後から言うことにしよう。」

「分かった!」

トモさんはそう言って、自分の考えを話す。

「私の思想、それは馴れ合い!」

「馴れ合い…。それは?」

「人と関わること、それが私にとって1番大切なことだと思ってるから!」

「今は特に何もないけど…これから作っていけたらなって!」

ねるさんは頷く。

「他にも何か言いたいことはあるか?」

「じゃあ…!

シソウが言ってたんだけど…」

「考えはあたためることって。私にはないと思ってたけど、これは昔の、気付いてない時から私の中でずっと一緒に居続けたものだから…」

「これからはちゃんと気付いて一緒に居たいなって。」

ねるは笑いだした。

「自分の思想と一緒にいる?面白いことを言う。」

「私は今それが大切なことだと思ってるから!」

「そうか。」

ねるさんは考え事をすると、次に言う。

「次は僕の番だな。だが、言う必要はもうない。」

「どういうこと?」

ねるさんは言った。

「僕が自分を負けだと言うからだ。」

そう言って、自分の学校の方へと戻る。

見ている僕もよく分からなかった。

だけど、何はともあれ、一勝できた。

これは大きいかもしれない。

僕はすすむくんに聞く。

「次は誰が行くの?」

すすむくんはボーッとしていた。

「すすむくん?」

「はっ、なんだっけ?」

「次の人は誰にするかって。」

相手の方を見ると、相手の学校の中で1番雰囲気が強そうな人が立っている。

「僕が行くよ」

すすむのその言葉に驚いた。

「すすむくん、最後じゃないんだ?」

「うん。」

「応援してるね!」

僕はそれ以上何も言えなかった。

ただ、見守ることしか…。

2戦目がはじまる。

最初に話したのはすすむくんからだった。

「僕は君の後に思想を言う。」

「なぜ?」

相手の人、とらさんはたずねた。

「言ってくれたら分かると思う」

相手は言う。

「俺の思想、それは、いくつもある。まずはそれを言っておこう。」

「自ら強くあり、周りをおざなりしないこと。それこそが俺の思想だ。」

すすむくんが次に言う。

「僕の思想は、君の考えを否定すること!」

僕はそれを聞いて驚いた。

今まで、人の肯定をしてきた君がどうして…?

相手は「そうか、いいだろう。相手になろう。」とどっしりかまえている。

もしかしたら…状況を見て察した。

さっき言った、相手が肯定だった場合…。

彼は自分に対して強い肯定感を持っている…。だから君は…?

考えをよそに、話し合いが続いていた。

「俺の考えは、いくら、武勇に優れようと、周りの人間を適当に扱えば自らに降りかかるそれも準ずるものになるという事だ。」

「それでもきっとダメになることはある!」

すすむくんはとてもよわよわしい声で言った。

「その時に考えること。俺の考え、いくつもあると言った。

それは、その考えを拾っていくという事だ。」

「俺には、1つの真理だけが正しいとは思えない。だからこそ、拾っていくのだ。」

すすむくんは頑張って否定を繰り返す。

だが、相手の強い自らの肯定が、それを全てはねのける。

ただ、苦しそうになってるのが、すすむくんの方だった。

僕は彼を止めたくなる。

どうして君は…?

<h3>試合2③</h3>

進んでいくに連れて、変化があった。

すすむくんが少しずつ苦しさを無くしていったのだ。

「とらくんだっけ?」

「あぁ、そうだ。」

「君って凄いね。考えも僕はいいものだって思う。」

彼の話を聞いて、肯定に切り替えた。

否定できないと思ったのだろう。

だが

「それは、君の思想に大きく外れることだ。これが試合であるのなら、君は自分で負けを言ったことになる。」

その一言に「うん。僕の負けだよ」とすすむくんが。


最初は予想してなかっただろう。すすむくんが負けるなんて…。

しかも、試合の内容も全く予想外だった。

ただ、このまま考えても仕方ない。

すすむくんが戻ってくる。

「みんなごめん。」と謝った。

僕は彼に言った。「大丈夫、気楽に行こうって言ってたじゃん。」

「ありがとう…。あいだくん。」

「こちらこそだよ。いつもありがとう。」


色々あったが、次に行くのは、ふらさん。

今までに大会で2回出て2回勝利している。

ただ、今度の相手はとても手強い。

僕は「無理せずに!」と伝える。

「ありがとうございます」と微笑む。

そして、最後として、みおさんを見つめる。

「ふらちゃんなら大丈夫だよっ!」

そう言って微笑んだ。

「ありがとう!」

相手の人と、ふらさんが向かい合い、試合が始まった。

相手の方が、「俺の思想から言おう」と切り出す。

「俺の思想は、前の男とは違う。守りを徹底とした考え。」

「広がった強大なる力を抑え、守っていくことである。」

その言葉からは、力強さを感じさせた。

ふらさんが「私はあなたのことを…」と言いかける。

だが、その先はいえなくなった。

彼女の次に出た言葉、それは、「私の負けです…」ということ。

僕は心の中で驚いていた。

どうして…?

戻ってきた彼女に僕は直接聞いてみた。

すると、「必要がなかったからです…」と言った。

しずくさんがそばによる。


しかし、これで、あとが無くなった。

1勝2敗。次で負ければ…。

僕は首をふった。切り替えよう。

ただ、相手のあと2人もとても凄いオーラをはなっている。

仕方ない…僕が次に!

そう思った瞬間、みおさんが「私が行きます!」と言った。

「重要な場面だけど、大丈夫なの?」

僕がたずねると「はい!次は私が頑張ります!」と微笑む。

向こうの学校では、残った2人が話していた。

「あうよ、準備をしておくことだ。」
 
そう言って、男は試合の場へ向かった。


「よろしくお願いします!」

みおさんはとても元気な声で言う。

「すまないが、最初から決めていたことがある。」

「なんですか?」

みおさんは首をかしげる

「僕の番に回ってきた時、最後の王に託すと。」

「だからこの試合は君の勝ちだ」

そう言って彼は戻っていった。

あうは言う

「何故?」

「この中で一番相応しい人間は君だと思うから。どんな結果になろうと、任せよう。」

プレッシャー、あうの心の中にはその1文字があった。


何はともあれ、最後の一戦になった。

これで、決勝に進めるかが決まる。

すすむくんは行く前に、そっと僕の背中を押した。

「できる限り頑張るよ。」

心の中で思った。

僕の言ったこと、少し頼り無かったかな。だけど、できる限り頑張りたい。

相手の人が、目の前にやってくる。

「よろしく」

彼はそう言ったあとたずねた。

「君は日記をつけているか?」

「はい、たまに。自分の考えを書き留めておくために」

「そうか、僕も自分を保っているために会話している」

「会話?」

「自分との会話。」

「そうなんですね。」

相手の人は頷く。

それから試合が始まった。

相手の方から思想を言った

「僕の思想は、自分と向き合い、自分に勝つこと。」

続いて僕もいう。

「僕は普通であること…」

そう言った時、僕は決心していた。


「みおちゃん!」

呼ぶ声に、みおが振り返ると、そこにはきせきがいた。

「きせきさん、どうしたんですか?」

「ちょっと、他のところに行ってみたくて!」

「いいですよ!」

2人はすすむにその事を伝えて出かけていく。


残ったすすむは、試合を見守っていた。

心の中で あいだくん。と呟く。


「お互い思想の説明をしようか。」

「まずは僕から。

人との能力の差、つとめをはたすこと、私の中に、多くの負の感情がわいてくる。」

「そんな時、自己にといかける。自らが弱い人間であるからこそ、まずは己に勝つことが大切であると…」

「私の思想の説明はこれで終わりだ。」

彼はそう言って、僕の顔を見た。

次は僕の番であると…。

彼はそう伝えているのだ。

僕は深呼吸する。

「普通とは、どんな人でも救える思想だと思ってる!」

────────

<h3>試合2④</h3>

「きせきさん、そういえば、今もう1つ試合があるんですよね。」

「そうなの?」

「はい!確か…」

2人が話していると到着した。

1人の男の前に、膝をつく5人の男達。

1人で全員を倒した。

「流石、部長!」

そう言って副部長が駆け寄る。

きせきは「いたい」と頭をおさえる。

「どうしたんですか?」みおはそっときせきに寄る。

「分からない…だけど、あの人、何処かで見たことがあるの…。」

「あの人に会えば記憶が戻るかもですか…?」

「そうかもしれない…だけど…。今、あの人の傍にはいけない…」

心の中で思った。

だって…あの人はとても苦しそうだから…。

───────

「普通がどんな人も救う思想?」

「うん。そうだよ。」

「どういう思想か、続きを聞かせてくれないか。」

「分かった。」

僕はそう言って、心を落ち着かせる。

「今までの僕は、外側の普通を目指していた。」

「だけど、それでは、誰一人も救われないし、自分すらも救えない。

僕はそう思った。」

そして、その後は、夢中になって語った。がむしゃらだったが、その中にも落ち着きがあった。

ただ、今まで積み重ねてきたもの。心の中で厚くなったこの考えをただ…

出し切った。

「なるほど。」

彼はそう言って頷く。

僕の今出せる限りを尽くした。これ以上、何かを語ることは今の自分ではできないかもしれない。

そっと彼の顔を見る。

口を開いて言った。

「僕は君より自分の考えが劣っているとは思わない」

そして、続けた。

「だが、自分の考えが君より優れているとも思わない。僕は考えと言うものに優劣がつけられないと思っているからだ。」

「ただ、今、自分がすべきこと…それは…。」

「前に進もうとするものの、背中を押すこと」

彼はそう言って、自分の学校の方へ戻っていった。

「僕の負けだ。君は君の道を進んで行ってくれ。」


心の中で僕は思った。勝ったのか…?

僕はその場に座り込む。すすむくんが歩み寄って「おめでとう」と言った。

「ありがとう。」

僕はそう返した。

ただ、これから、もっと真剣に、自分の思想について向き合わないとなと…。

心の中で強く思うのだった。

───────

戻ったあうは、部活のメンバーに囲まれていた。

「望んだ結果にならず、申し訳ない。」

すると、傍にいた1人が彼の肩を叩く。

「気にする必要はない。僕は君に任せると言った。」

「だから、どんな結果になろうとそれでいい。」

「ありがとう。」

その後、とらのもとへと向かった。

腕組みして何かを考えている。

そして、目の前に来た時「あうか。」と言って、目を開けた。

「うん。勝てなかった。勝利にこだわる君に、謝ろうと思った。」

「確かに、1番を目指すこと。それは素晴らしいが、それによって、何か大事なものを失うのであれば…それはより良い勝利とは言えない。」

「どんなことでも、勝利することはできる。気にする事はない。」

あうは思った。この4人は、強くありながら、心の中に優しさを秘めている。

強さゆえのやさしさなのか…。

この5人でともにあれて喜びがあった。

帰る前、ねるはみんなの前で言った。

「この試合、何か得られたものはあったか?」

あうは「あぁ。ありがとう」と

────────

みおときせきは自分の部活の場所へ戻る間話をする。

「決勝に進んだの…さっきの人がいる学校なんだ…?」

「そうみたいですね…。」

「大丈夫かな…」

とても心配そうにきせきは呟く。

「きせき先輩!きっと大丈夫ですよ!皆さんなら!」

そう言って微笑む。

しかし、きせきはいつもより元気が無さそうだった。

みおは、そっときせきの右手を両手で握る。

「ありがとう…!なんだか、安心する!」

みおはそっと微笑んでいた。

「まだ、私の部活、勝ったかも分からないね。」

きせきは心の中で少し、負けて欲しいと考えていた

───────