思想学部26

<h3>試合3③</h3>

みちかさんは少し驚いていたが、「良かった…」と呟いた。

みちかさんは「あゆみちゃんひさしぶりです。」と言った。

「挨拶はしなくていいよ。今日で終わるんだから。」

「早速始めましょ?」

「分かりました。」みちかさんは頷く。

「私の考えは、あなたの否定。今日のこの日から、あなたのことを忘れて未来を生きていくの!」

みちかさんはそれを聞いても落ち着いていた。

「私は…あゆみちゃんとこれからをもう一度一緒にいきたい!」

「考えは優しさ…!」

あゆみさんはすぐに首をふる。

「ううん。それはできない。私の言ったこと覚えてる?」

「うん。覚えてるよ…!自分から、切らなければ、ずっと友達で居られるって。」

「だから、もう無理なの。

それに…。」

みちかさんは頷く。

「仲直りしたいと思ったんだ。だけど、次の日にあったら、優しかったけど冷たかった…。」

「それから、話せなくて…関われなくなって…。

分かったんだ。もう、みちかちゃんは私と仲良くしたくないんだって。」

「仲良くしたいよ!ずっと、待ってたんだ…。」

「じゃあ、どうして、伝えてくれなかったの…?」

「それが優しさだと思ってたんだ…。」

「もういいよ…。みちかちゃん負けを認めて。」

「そうすれば、気が楽になるんだ。優しさを求めてるんでしょう?」

あゆみさんは少し悲しそうな目をしていた。

「ごめんね。可能性があるなら、もう一度仲良くしたい…。一緒に…!」

「そうだったとしても…私はあなたと仲良くなれない…」

「あゆみちゃん、どうしてなの?」

「だって…私は、みちかちゃんのことを切ったから…。切らなければ、ずっと友達で居られるって…。」

あゆみの頭の中に、一人だけの空間が広がった。

寂しい…。私はこの中で一人きりなんだ…。

今までも、これからも…。

また関係崩れてしまうのが怖いから…。それでも…。


みちかさんが言った。

「私は…切ってないよ…。だから、今でも友達だと思ってる!」

あゆみさんの目から涙がこぼれた。

「どうして…そんなことを言うの…?」

「私はあなたの友達だから…!」

「分かった…。」

───────

あゆみさんは自分のチームへ戻った。

ひていは怒って、あゆみさんに言う。

「なんで負けを認めるんだよ。ふざけんな。」

そこへ、はみさんが入る。

「ひていくんはすすむくんとしたかったんですよね。」

「良かったじゃないですか、できるかもしれませんよ。」

そう言って微笑む。

「あぁ、確かにな。まぁ、許してやるよ。」


それから、あゆみさんは部長の前へと行った。

「どうだった。求めてるものは得られたか?」

「分からない…。だけど、入って良かったかもしれないって。」

「そうか」

リベシンの部長ただそう言って、それ以上は語らなかった。

────────

「次は俺が行く。」

そういったのは、ひていくん。

そして、こっちを見て言う

「そっちは、すすむが出るんだろう?」

すすむくんは「じゃあ」と言いかける。

その瞬間に僕は言った。

「次は僕に行かせて欲しい。」

「あいだくん…?」

「うん。」

「わかった。任せるよ。」

「ありがとう」

向かう途中、僕は立ち止まり振り返った。

「あ、ちなみに、僕の下の名前はぶんただよ。

そっちで呼んでも大丈夫。」

「上の名前で慣れてたから。次からはそう呼ぶね。」

「うん。ありがとう。」

そして、ひていくんの前に立つ。

「すすむじゃなくて、お前かよ。楽勝に終わってつまんなそう。」

ひていくん…。前にすすむくんとした時、それを思い出すと、彼を行かせられなかった。

ひていくんは言う。

「まぁ、いいや。前会った時、俺の質問に対して、ふざけたこと言ったからなぁ。」

「それより、早速始めませんか?」

「仕方ないな。じゃあ、やろうか。」

「ありがとうございます。僕から言います。」

「僕の思想は…普通であること。」

「はぁ。普通?何の能力もないやつが考えそうなことだな。」

「まだ僕は、思想についての説明をしてませんよ。」

ひていはちっと舌打ちして、「分かったよ」と続けた。

「次はひていくんお願いします。」

「分かってると思うが、俺はお前の否定だ。くだらない考えを捨てさせてやるよ。」

「じゃあ、僕の思想の説明をします。」

僕は深呼吸する。

「この思想は、人間が偏ってはいけない生き物だからこそうまれた。」

「偏りは誰でもあるが、その偏りに対抗するための偏りを誰でも持っている。

偉人であろうと、有名人であろうと、その2つがあるからこそ中立でいられる。」

「偏りとは、どうしようもないことも含まれる。

どうしてもなおせない癖、身体的特徴。それらをどうして気にする必要がある。」

「偏りは偏りのままにしておくからこそ偏りなのであり、新しくそれに逆行した偏りを作ることによって、普通に戻る。」

「この、僕の考えは、どんな人でも悲しまずにすむ理想のそれだと思ってる。」

僕は最後に謝る。「長くなってごめん。」

すると、ひていは言った。

「謝るってことは負けでいいってことか?」

「はは。やっぱり、くだらない考えだぜ。

実験したのか?お前の考えが実際に正しいって言えるのか?」

「言えるかは分からない。だけど、今、自分が正しいと思ってるんだ。」

「やっぱりなぁ。くだらないやつの考えはくだらない。聞く価値もない。」

彼がまた口を開いた瞬間だった。

ひていくんの負けが決まる。

理由は、リベシンの部長が負けを言ったからだった。

ひていくんは「はぁ?」とイライラしている。

「部長、どういうことだよ。昔、信頼する一人だって言ってたよな?

最後までやらせろよ。」

「みらいみのことか?」

「あぁ。」

「確かに信頼してるのは居るが、その5人の中にお前は含まれない。」

「どういうことだよ」

「ひてい、お前の否定は、俺の目指す否定とは異なるものだ。これ以上やっても、無意味だと判断したからさげた。」

「それだけの話だ。」

ひていは何も言えなくなった。

部長はすすむたちを見て呟く。

「これで最後か。決着をつけよう、すすむ。」

<h3>過去と集うもの</h3>

思想学部の決勝戦って言うのに来てみた。

部長はすすむって人。

あんまり関わったことはないけど、前生徒会長の票を貰ってた。

だから、少し気になってる。

席を見渡すと、疎らに人が居た。

つくられたばっかりにしては、人が多いのね。

席に座ると、近くから声がした。

「にわのさんじゃないか。」

「獅王先輩!どうしてここに居るんですか?」

「にわのさんこそ。僕はこれからする部長さんが気になったんだ。」

「先輩もなんですね…。」

「良ければ一緒に見ようか。」

「はいっ!」


他の場所でも、1人の男が、会場に到着していた。

「思想学部懐かしいな。母校の後輩達がどんな活躍をしてるか。」

そうして歩いてると、男は1人知ってる顔を見かける。

「おぉ。そういちじゃないか」

その男は顔をあげる。

「どなたでしょうか」

「高校の同級生だった、敗来だよ。」

「そうですか。」

「覚えてないみたいだがいい。一緒に見ないか?

俺たちの後輩の姿。」

「いいでしょう。」

そして、2人は同じ席に座った。

「もう最後なのか。そういちはどっちが勝つと思う?」

「お互いの武器は分かってます。肯定と否定。どちらかに優劣はつかないでしょう。」

敗来はその言葉に驚きの感情をおぼえた。

「ただ、その肯定の否定がたどり着く先が同じになることは言えてます。

つまり、そのたどり着いた先が勝者となるでしょう。」

「よく分かんねぇや。」

敗来は仕方ないと、試合を見ながら呟く。

「頑張れよ、すすむ。」


観客席のすみで、1人の女性が試合を見ながら祈っていた。

──────

ある男の頭の中に少し前から、過去の記憶が巡っていた。

それは子供の頃のこと、男の親は彼に色々なものを与える。

世界に多くの希望をもった。

だが…。

「ぼく、ヒーローになりたい!」

そう言っただけだった。

しかし、そのことを、裏で話す声が聞こえたのだった。

「ヒーローって…あの子は親と違ってできが悪そうですね。」

「まだ幼いですし、仕方ないですよ。」

その擁護する声すら、嘲笑するそれに聞こえたのだ。

そんな時に、男の前に現れた特に大きな存在が、1人の男だった。

彼の周りには、色々な子供が集まる。そして、一人一人の考えを認めてくれる。

子供の彼も、今までみたことから、彼に自分の新しい夢を言った。

「ぼく、…になりたい!」

「とてもいいと思う!将来君や、みんなの夢が叶うこと。」

その時の彼はとても嬉しかった。

しかし、また壊されてしまう。

親が夢を否定したのだった。

男は思った。

何故…?その時は理由は分からなかったが、歳を重ねていくうちに分かっていく。

自分の望む道を進んで欲しいから…。

そぐわない道だったからこそ否定した。

いつの間にか、考えを認めてくれた男は居なくなってしまう。

裏切られた。

男は心の中で思った。

そう…。大人はみんな夢をくれるが、その夢を壊すのも大人だったんだ。

肯定するのも嘘で、自分の求めている道以外は許さない。

そうだ…。夢を与える奴ら、そいつらはみんな敵だ。

否定すること、それが人を救う武器なんだよ。

大人達は敵だ。大人たちが渡した夢なんて見なくていい。

その時とても苦しかった。理由は分からない。

しかし、それを支えてくれた人が1人居た。

キセキ…。

しかし、もう居ないけどな…。

男は考え事から、意識を戻した。

「すすむ、この時を待っていたよ。」

「僕もみんなや、君の考えを聞きたかった。」

「ふっ。そうか。

ところで、1人居ないようだが休みか?」

「きせきさんのこと?」

「あぁ。そう言ったっけな」

「どうだろうね。」

「ふっ。

まだ始まってないから言おう。」

「俺は夢を与えるのが大人。そして、その夢を壊すのも大人だと思ってる。」

「じゃあ、僕は、そこからまた手を差し伸べるのが大人だ!」

「そして、また壊すのも大人。」

そう言った時のリベシン部長の頭の中には、過去の記憶が浮かぶ。

「それでもまだ、手を差し伸べ続けるのが大人だ!」

すすむの言葉はとても強かった。

「お前はぶれないな。」

「僕は理想主義者を超えた…夢想主義者だから。」

「理想主義者か…じゃあ、俺は超現実主義者かな。」

「さっそく試合を始めようか。」

すすむは「分かった」と頷く。

これが最後の戦いだ…

───────

<h3>試合3④</h3>

「じゃあ。まず、僕から思想を言うよ。」

「分かった。」

すすむはじっと、リベシン部長の目をみた。

「僕の思想は肯定。」

「それは、俺の考えじゃなく、肯定を思想とするということか?」

「うん。そうだよ。」

「そうか、お前もか…。

否定、それが俺の思想だ。」

「分かりやすく2つにわかれたな。」

「うん。じゃあ、この説明を僕からするでいいかな?」

「すすむの考えは知ってる。話す必要はない。」

相手の部長は笑って言う。

「すすむ、俺とお前が戦うのはこれが最後だろう。だからこそ、言っておく。」

「何かな?」

「否定する時に必要なもの。それはなんだと思う?」

「否定する能力とか…?」

「いいや、相手のことを知るということ。

どんなに鋭い否定ができても、的外れなことなら意味はない。」

「つまり、この勝負、相手のことをより知ってる人間が勝つ。」

「そうなんだ。」

その言葉に拍子抜けする。

「ふっ。まぁいいだろう。」

リベシン部長には、確信があった。

前回負けた理由、それは、すすむに罪悪感がなかったから。

どれだけ指摘しようと、すすむには響かない。

しかし、仕入れた情報。

それらによると、やつには、とても長く続けてきた大事なものがあるらしい。

そう…それこそが…。

「肯定、それはとても酷いことだ。」

「どうして?」

すすむはたずねる。

「それは何故か、期待させるからだよ。」

「能力のない人間がされれば、思い込んで無意味な夢を持つ。

能力のある人間がされれば、傲慢になって行く。」

「そして、居なくなった時に気付くんだよ。肯定は全部嘘だったってなぁ。」

「そうかな?」

彼は冷静だった。

「僕は人が、自分の気持ちで、頑張ってることや、楽しそうにしてるところが好きだ。

だから、人の背中を後押ししたい。」

「肯定はどんな人でも、前に進む活力となるって信じてる。」

「だからこそ、僕は肯定を肯定する。」

リベシン部長は言う。「そんなこと、夢物語に過ぎない。」

「現実はもっと残酷だ。

相手が求めてることをしても、それは本当に相手のためになることじゃねぇ。」

リベシンの部長は呟く。

「自分で判断するんだよ。助けるべき人間と、助けてはいけない人間の判断をな。」

「苦しい世界があってもいいと思う。だけど、同時に楽しい世界があってもいいと思うんだ。」

「それは誰かの苦しみの上に成り立つ、楽しい世界か?」

「その世界でもいいし、その世界じゃなくてもいい。」

「どんな世界も肯定してしまうってことか?」

「うん、そういうことになるかもしれない。だけど、より良い世界になることを望んでる。」

「だって僕は夢想主義の、飛躍思考だから。」

「何故、そこまで肯定できる?」

リベシンの部長は、少し疲れを見せながら言った

「分からない。もしかしたら、僕が、肯定がとても好きだからかもしれない。」

「そうか。俺も否定が好きだ。これに助けられて来たし、大事な仲間もできた。」

「失ってきたものもあるがな…。」

「俺は負けない。否定こそが最強の武器だからな。」

「僕も。みんなが頑張ってくれたから…勝ちたいな。

ゆめりくんに」

最後の一言を聞いて、リベシン部長は、すすむの顔をギロリと睨んだ。

「ゆめり…。それはなんだ?」

「君の名前じゃないの?」

「俺の名前はむりだ。誰から聞いた。」

「君の名前、はじめて聞いた気がする。」

「そんなのどうでもいい。誰から聞いた?」

「今は話せないよ。終わったら話すかもしれない。」

「なんだよ、それ。」

「僕からも質問がある。どうして君は自分の名前を言わなかったの?」

「思えば、部員の人達も君の名前は呼ばず、部長や、リーダーと呼んでる。」

「言う必要はあるのか?」

「ないけど、気になったから」

「俺が自分の名前を嫌いだからだ。」

「夢に理想の理と書くんでしょ?いい名前じゃないか。」

「うるさい。夢なんてなんの役にもたたない。

それは、誰かから押し付けられたものでしかないんだよ。」

「本題に戻るぞ。」

むりがそう言った直後、すすむは言った。

「僕は君を肯定する。君自身の夢も、君の思想、否定自体も。」

「なんだ、否定されるのが嫌だったか?」

「そうかもね。ただ、僕がしたいのは君や、みんな、他の人達の方だったから。」

「君の夢を肯定する。」

「夢?俺になんの夢があるって言うんだ。」

「冒険…。」

ふと、むりの前に、昔出会った男の姿が浮かんでくる。

今更どうして、お前が出てくるんだ…。

自分を裏切って、どこかへ消えてしまった夢を与えてくれた人。

だが、その人は、口を動かす。

その口の動きは、だいじょうぶ。君ならできる。だった。

<h3>試合3⑤</h3>

むりは思った。今更、何ができるって言うんだよ。

すると、すすむが現れた。

「君の夢は、世界中を冒険したいってことだろう?」

「何故、そうだと思うんだ」

「聞いたんだ。きせきさんに。」

「なんで…。あいつにもその事、話してない…。」

「じゃあ、やっぱり、君の夢は…?」

「いいや、俺にはもう夢はない。壊されたんだよ。」

「大人たちに?」

「あぁ。もう俺には夢はない。」

「あったとしても大人達から救うことさ。押し付けられた夢から目を覚まさせる。」

「そうか。でも、君は押し付けられてないんだろう?」

「俺は押し付けられたんだよ。夢を与えるって言われてな。」

「防・剣の会。それって、守りと攻撃に見えるけど、言葉だけ聞くと冒険に聞こえるよ。」

「くどいな。なんと言われようと、俺は…」

そうだ…俺は壊されたんだ。

2度も。

そう、1度目は親が夢を与えた。

しかし、外側の人間に、それらを壊される。

今度は外側の人間が、夢を与えた。その時は小さかったから、その男がすごい人に見えた。

だが、その男も居なくなり、親にも完全に壊されてしまう。

そうだよ。名前も“むり”だ。

俺がどんなに夢を見ようと叶わない。夢と理想そのふたつが重なり合うとむり、悪いものになるんだ。

さっき見えてた夢を与えてた男も、消えてしまった。

俺の考えは揺るがない。

しかし、目の前に、強く残るものがあった。

それはすすむだった。

どれだけ否定されても、全く堪えてない。

そればかりか、苦しくなってるのはあいつじゃなく、俺の方だった。

思えば、ずっと、この苦しさとともにあった。

その中にすすむの声が聞こえてくる。

「僕は何度でも立ち上がる。間違えても、僕は自分の望んだ未来へと進んでいく。」

「僕はみんなの幸せを望む。それは君にも同じだ。本当に今を望むのなら止めない。」

「だけど…!もし、君がもう一度進みたいと言うのなら、僕は…君の背中を押す!」

むりは言った。

「そうか、そうなんだな…。俺の負けだよ。すすむ。」

「もう否定ができないんだ…」


そして、僕らの思想学部の勝ちになった。

僕はすすむくんのもとに向かう。

「おめでとう!」

「ありがとう。」

ただ、その一言だけで、それ以上は何も語らなかった。


向こうでは、少し暗いむりくんの姿があった。

副部長の人が傍による。

「部長…あの…大丈夫ですか…?」

「悪いな。俺にはもう何も無い。1番の武器を失った。」

「そんなことないです…。私は部長に助けられてきたので…!」

「俺にはほどこしを受けていいような人間じゃない。

今日でリベシンの思想学部は…」

そういいかけた時、1人の女の子が走ってきた。

「ゆめりちゃん!」

呼ぶ方を見てみると、そこにはきせきが居た。

「きせき…?」

「久しぶり!」

「記憶喪失になったんじゃないのか?」

「前に試合でゆめりちゃんのこと見たんだ。その時から段々思い出して!」

「じゃあ、もしかして、すすむに教えたのか?」

「うん…。昔から感じてたんだ…。

ゆめりちゃん悲しそうって…それが辛くて、悲しくて。」

「もしかしたら、助けてくれるかもって。」

「冒険のことも…?」

「一時期、沢山私に話してくれたから私でも気付くよ!」

「そうか…。心配させて悪かったな。」

「ううん。大丈夫!私はゆめりちゃんの友達だからっ!」

そう言ってきせきは微笑む。

昔と変わらない笑顔だった。

「ひとつ言っていいか?」

「うん!ゆめりちゃん!」

「そのゆめりちゃんって、俺、男だから。」

「ごめんね!だけど、私はゆめりちゃんの名前大好きなんだ!」

「仕方ない。」

「やった!夢に理想の理、ゆめりちゃんの夢はきっと叶うと思うんだ!」

「だといいな。」

2人はとても仲良さそうに話していた。

遠くから見ていた僕はなんだか安心する。

────────

「分かるよ。」

敗来は頷いた。

「名前って、考えられてないように見えて、一つ一つおもいが込められてるんだよな。」

「そういち、そう思わないか?」

隣を向くが、そういちはそこに居なかった。

探してみると、もう帰ろうとしている。

「行っちまうのか?」

「えぇ。終わりましたからね。決着も、思った通りでした。」

「どういうことだ?」

「私が、討論部について思ったことと同じですよ。」

「そういちを、堪えを教えろよ。」

「自分で考えてください」

そういちは、その場を立ち去る間考えていた。

終わったら、私が描いたものを、作ってみるのもいいかもしれないな。

ただ、決着を付けなければいけないことも時にはある。

懐かしいな策取。

───────

試合が終わった。思想学部ってこんな感じなんだって思った。

「獅王先輩!」

「すすむくん、何かを変えてしまうような人だと思ってたよ。」

「そうだったんですか…?」
 
「うん。彼は、純粋で平等で…ただ、子供心を忘れない人なのかもしれないね。」

獅王先輩はあの青い空を見つめていた──────

<h3>それから…</h3>

試合が終わってから数日が経った。

すすむくんや、みんなの思想も解決したいようで大団円…。

顧問の先生がみんなを集める。

「みんな、優勝おめでとう。あなた達の思想学部とてもいいものだと思います。」

「私は見てることしか出来なかったけど…。あなた達は自分の力で切り開いてましたね。」

すすむくんが出てきて言う。

「はい!みんなのおかけです!ありがとう!」

「でも、私にできることはしっかりしますからね。すすむくん。」

そう言って先生はにっこり微笑む。


終わってから、すすむくんに聞いた。

「来年も頑張るの?」

「うん。それなりにね。」

彼は嬉しそうに言った。

「また、叶ったよ。」

「良かったね、すすむくん。」

ところで、部活は、少ししんみりしている。

それもそのはずだった。部活や色々あって、部員も少し減ってる。

しずくさんは寂しそうに行った。

「やっぱり、別れるのって寂しい…。」

みちかさんはそっと背中に手をやって慰めた。

ふらさんは言う。

「みおちゃんは来れなくなるって言ってたし、ねおくんや、朝花先輩も辞めるって言ってましたもんね…。」

すると、追い討ちをかけるように留学生のシソウくんが話す。「僕達も、今年までしかいれません。」

しずくさんは寂しそうに「残ったのは7人…。おとねちゃんも去年辞めちゃった…」と言った。

そのまま目をうるうるさせて泣いてしまう。

別れか…避けられないものなのかな…?

すると、そんな中に、できくんが現れて言った。

「誰が居なくなろうと、まだ俺が居るぜ。」

彼のその一言で、まわりの空気が一気に変わった。

ふらさんは「やっぱり優しい」と微笑む。

彼は顔を隠すように、その場から離れていった。

すると、続けて、シソウくんも話す。

「創作の中にはこんなものもあります。」

「人はずっと離れてるように見えてそばに居る。その人が忘れない限り永遠に…。」

「だから、少しの間、別れても寂しくない。」

僕は「ありがとう」と言った。

「こちらこそ、皆さんには、とてもいいものを見せてもらいました。

力の強さ以外の何かを教えてもらった気がします。」


泣き止んできたしずくさんを見て、みちかさんは言う。

「試合の後にね、あゆみちゃんと今度、一緒に遊んだり勉強しないかって話してたの!」

「良ければ、しずくちゃんも来ませんか?」

すると、しずくさんは元気を取り戻して「えー!いいのっ?行きたい!」と笑った。

「もちろん!みんなでの方が楽しいから!」


僕は周りを見て思った。

色々あるけど、みんな元気に楽しそうに暮らしてる。

嬉しいな…。


そういえば、リベシン高校は今、どうしてるんだろう?

───────

「部長!話ってなんでしょう?」

副部長は嬉しそうに言った。

「はい!とても気になります。」

「なえさん、うみさんありがとう。」

「その前に1つ言っておくが、うみさん、前は悪かったな。」

「大丈夫ですよ。元からそういう関係だったじゃないですか。」

「そうか。」

「はい!」

相変わらず笑顔を絶やさなかった。

「うみは凄いな。」

「部長らしくないですね。」

「そうかな。まぁ、いい。

それで、話なんだが…」

丁度、そのタイミングでドアが開かれる。

「来たか。

ここにいる全員、俺の本当の意味で、信頼できる者たちだ。」

「来年はすすむ達の思想学部に勝つ。」

「共に来てくれるか?」

その言葉は皆、決まっていた。


それから少し経つ。

「部長、うみは居なかったけど、懐かしいメンバーですね。」

「みんな、部長を慕ってるんです。」

「そうか…。ありがとう。」
 
ただ、そう言った部長は、とても暗かった。

「もしかして…きせきさんの事ですか…?」

「いいや、もう、きせきは大丈夫だ。傍にすすむが居るからな。」

「あの人のこと、信じてるんですね。」

「あぁ、あいつなら大丈夫。」

「だが、試合は負けない。3年生最後、俺はあいつに…」

「部長、今日はなんだか暗い気がします…。」

「2人も来てくれたし…!

何かあったんですか?」

「あぁ、その事なんだが、これからどうしようかと思っててな。」

「私は…!部長の邪魔にならない限り、ついていきたいです!」

「ありがとう。ただ、こっちも、けりをつけないといけない。」

「今まで、ずっと、避けてきたことだ…」

グッと握りこぶしをつくる。

「きっと、部長なら大丈夫ですよ…!」

────────