思想学部29

<h3>洗脳</h3>

皆さんは、洗脳という言葉をご存知だろうか?

僕はその言葉がよく分かっていない。

異常な考え方を、全員で共有した時、それは洗脳されているというのだろうか?

それはともかく、僕が洗脳という言葉を知っているという前提にたち、これから話していこうと思う。

洗脳されやすい人として、高学歴があげられるとどこかで聞いたことがある。

それが事実だと仮定しよう。

何故、洗脳されやすいのだろうか?

僕はこう考えている。

それは高学歴に関わらず、何かで物凄く結果を残している人物。

それこそ、洗脳されやすい、いいや、そもそも洗脳されている人物だと考えた。

何故、そんなことが考えられるか。

それは、どんなことに於いても、一番がつくられるそのもの自体は、誰かが作らないといけないものであるからだ。

ルールは全て、その人の考えに準じて、その中の技などもそれによって規制される。

勉強に於いてもそうだ。その分野は、作った人が、どういう方向性のものにしようと考えるかによって、内容が定まる。

つまり、創造者によって、支配されているその世界を上手く攻略するという事は、その考えを深く理解しているに他ならない。

ルールという制限の元により、思考する範囲は狭まれる。

本当はもっと色々な考え方がうまれるものであったそれが、偏ったルールによって、狭い思考へと偏ってしまう。

偏った思考というのは、中々、相手の考えも受け入れにくいものだ。

もう一度、高学歴の話をしよう。

それらの人に共通することは、誰かが作ったものを頑張って来たもの達だ。

それはとても素晴らしいことで、凄いことではある。

しかし、同時に、作った人間の考えを深く共有しているだけに過ぎない。

他の可能性もあったそれを、単一のものとして認識する。

それはある種、洗脳ではないだろうか。

ただ、こう書いても、僕は何かを作り出すことが悪いこととは思わない。

何かを深く理解することもそう。

ただ、それにより、相手の思考を奪ってしまうのは、余りに酷いことだ。

自由な発想があってこそ、理想の共有関係がうまれる。

少し長く語ってしまったが、そろそろ終わりにしよう。

ここまで読んでくれた方。

僕の考えを深く理解したと言うのなら、もしかしたら、洗脳されてるかもしれない。

前に語ったことを共有したことで、1つ新たな偏見がうまれた。

今まで語ったことが、事実であるか、嘘であるか。

それは分からない。

人は無意識のうちに、何かに洗脳され生きている

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僕はもう、1人になってしまった。

洗脳、それを強く感じたのは、まわりの雰囲気を見てからだ。

僕に味方は居ないのか…?

元から、居なかったような気もするし、居たような気もしている。

ただ、自分の考えを肯定することすらも、ある種の洗脳に近いものを感じる。

では、どうすればいいのか…?

そんなこと思いつきもしない。

ただ、心の中に、自由に創造したい気持ちがわいてるのは変わらずだ。

こんなに規制が強い現在であるのに、僕の心は創作をとても欲している。

最近は、段々と、ゆるくなってきた気もする。

ほとんどの人が、創作を辞めてしまったり、そういう本が無くなったこともあるのだろう。

ただ、どんな時でも、できるのが創作だ。

自分の考えているうちの世界では、どんなことをしようとも自由。

その自由を奪うことは誰にもできない。

僕は創作を辞めるつもりはない。

これから、たくさん頭の中で、創作により、色々な発見をして楽しく過ごすんだ。

僕は日記をひらいた。

そして、今まで起こった事などを書きながら、その合間に、頭の中に浮かんだ創作などを書き連ねていく。

すると、自然と、さっきまでの孤独は消えて、楽しいという思いが溢れてきた。

誰かに迷惑をかけるつもりはない。

だからこそ、自分の中でとどめておくんだ。

これからは無理に、自分の考えを押し付けることはしない。

創作に求められるのは強制された苦しさではなく、自由な発想。

人と共有することで洗脳がうまれるのだとしたら、自分の中でとどめておけばそれは絶対におこらない。

僕はなんだか、気が楽になってきた。

世界はただ、苦しいだけではなく、楽しい瞬間もある

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<h3>過去物語1</h3>

「私が…なります。」

その一言から、少し経った。

それが、どんなものなのか、はっきり分かってなかったけれど。

そこにはあの時のような、冒険があった。

少し黒く塗りつぶされたせかいに、一つ明かりをつけたようなそんな淡い光だったけど…。

その周りに人は集まってきて…

段々とその光が広がっていく。

そう、あの時感じた好奇心。

私たちはどんどん前へ進んで行った。

そしてたどり着いたの…。

私たちの部活は優勝した。

だけど、相変わらず、私は何も出来なかった。

みんなの前でおめでとうを言ったけど、どこか寂しさが残る。

夏休みが終わりに近付くと、お祭りに行った。

一緒に行く人は居なかったけど色々回ってた。

そろそろ帰ろうかなって時に、偶然出くわす。

「先生!」

どこか困って、少し涙を流してる彼女の様子を見て、「どうしたの?」とたずねた。

「すすむくんが倒れてしまって…!」

しずくさんに手をひかれ、その場所まで行く。

すると、ベンチに横たわるすすむくんが…。

「何があったの?」

「今日、楽しかったねってお話してたんです。」

「すると、うんって答えて!その後、眠くなってきたって言って…そのまま…!」

すすむくんを見てみると、すやすやと気持ちよさそうに寝てる。

「すすむくん大丈夫でしょうか…。」
 
心配そうに震えてる。

私はそっとしずくさんの背中をさすって言った。

「大丈夫よ。寝てるだけ。」

「良かった!」

しずくさんはホッとして微笑んだ。

「気持ちよさそうに寝てるから、起こさないであげましょう。」

「あとは私がどうにかするから、しずくさんは帰っても大丈夫よ。」

しずくさんは「ありがとうございます!」と頭をさげて、帰って行く。

家まで送って行こうと思ったけど、持ち上げられなかった。

仕方ないから、起きるまでまとっか。

私はそう思って、すすむくんを見てた。

すると、寝言で「しずくさん…」と呟く。

「青春してるのね。」

私は少し嬉しくなった。

それと同時に、昔のことが頭に浮かぶ。

あの人が居なくなって、それから恋は一度もしなかった。

どこへ行ってしまったの?

だけど、今もあらわれない。

忘れてしまって居たけど私は…。

丁度、その時、「いなし先生じゃないですか」と呼ぶ声がした。

「あわて先生!」

「何してるんですか?」

「生徒が寝てしまってて、起きるまで待ってたんです。」

「僕が起こしましょう。」

「ゆっくり寝かせてあげてください。お願いします。」

「いなし先生がそういうのなら。分かりました。」

「でも、もう遅いので、良ければ私の車で。生徒も連れていきます。」

「ありがとうございます。」

それから、車に乗せてもらって、すすむくんの家に向かった。

相変わらず、車の中でも、すやすや気持ちよさそうに寝てる。

私は「ふふっ」と笑った。

「驚きましたよ。生徒って、すすむくんのことだったんですね。」

「はい。」

「何かまた問題おこしてませんか?」

「すすむくんなら、大丈夫ですよ。」

あわてさんはそれ以上何も言わなかった。

到着する少し前、すすむくんは目を覚ます。

シートベルトに手をやり、起き上がる。

「あれ?しずくさんは。」

「帰ったよ。これから、あなたの家に向かってる途中。もうすぐつくから。」

────────


それから私は、すすむくんと彼の家の前へ。

チャイムをならすと、すすむくんのお父さんが出てきた。

「こんばんは。」

そう言ってペコりと頭を下げる。

「すすむが何かしたんですか?」

「いえ。眠ってしまって、夜も遅いので、連れて帰ってきたんです。」

「そうだったんですか。良かったです。」

すすむくんのお父さんはそう言うと、私の顔をじーっと見た。

「どうかされたんですか?」

「いえ。あなたと昔、どこかであった気がして。」

「すみません。覚えてません。」

「いえ、大丈夫です。こちらこそすみません。

夜も遅いので、帰り気をつけてください。」


それから数日経った。

すすむくんは元気そうにしてる。

部活の時も、少し子供みたいにはしゃぐこともある。

私は時折その様子を見ながらぼーっとしてた。

時には、やりすぎることもあったので、腕をそっと握って止める。

それで、思った。私は…過去のことばっかり考えてる。

今も、あの時の冒険とあるんだ…。

来年も、みんなは、試合に出る。

私に何かできるかな。

そんなことを思って、彼らの様子をただながめてる。

過去の思い出、私の大切な思い出は今もそこにあるのかもしれない。

ある日、私は出かけることにした。

子供の頃、伝説とか、神話とか現実とは違う何かにみんな憧れてた。

そして、冒険に出かける。

結局、何も見つからなかったけど、そうしている間沢山のもの得たって…。

今は感じてる。

そして、ここが最後の場所だった。

私はいつの間にか、懐かしいあの頃に戻ってた。

目の前に、1人の男の子が座ってる。

私は言った。

「おかえりなさい。」

────────

<h3>事実と虚偽</h3>

私は昔、虐められていた。

そんな時に、助けてくれた人が居たの…。


部活が終わって、帰る時間になった。

転校してきた2人。前々から関わってたけど、どうだろう。

帰りそうな1人に声をかけた。

「すいぞうくん。」

「あぁ、なえか。どうした?なんでも言ってくれ。」

「部長のこと、どう思ってるの?」

「俺はあの人に救われた。だから、部長や、その仲間のためならなんでもするって決めてる。」

「もちろん、それはなえも例外じゃない。」

「ありがとう。」

少し頑張りすぎなところはあるけど、すいぞうは部長に何かする人じゃないって分かってる。

次は…。

もう1人の女の子の方を見る。

あの子も大丈夫って分かってるけど、行ってみるかな。

「えりちゃん…」

そう呼んだ時、部長と彼女が話してた。

「1年前は悪かったな。」

「いえ、部長のためなら…。」
 
「そうか。」

「はい。」

「ところで、何か言ってたか?」

「はい。部長は部長の道を進んで欲しいって言ってました。」

「そうか…。あの人が。」


それから、部長との話が終わったので私はえりちゃんのところへ行った。

「えりちゃん。」

「こんにちは、なえちゃん」

「元気そうにしてるみたいね。」

「うん…少しは元気にしてるよ。」

「大丈夫だったの?他の学校では1人きりだったんでしょ。」

「大丈夫だったよ。今は部長が居るし…。1人にはなれてるから…。」

「でもね。」

「どうしたの?」

「他の学校の思想学部はダメだった。やっぱり、部長の部じゃないと。」

2人とも、少し、部長のことを慕いすぎてるところはあるけど…。

わざと裏切ることはしない。あらためて思った。

2人なら大丈夫って。


「なえさん。」

うっとりするような声…。

私は振り返った。

「部長!何でしょう?」

「それぞれ、決めた思想があっていいな。」

「はい!前とは比べ物にならないくらいいい部活になってる気がします!」

心の中で思った。ひていはもういない。

「あぁ。」

私は部長の姿に見蕩れた。

「そういえば、あの後、キセキさんとはどうなってるんですか?」

「あってない。今は会えないんだ。」

「そうなんですか。」

「あぁ。」

「試合の後、2人きりで話してましたね。」

「それか…。いずれ、俺は旅に出ようと思うんだ。」

「旅…?」

「あぁ。良ければ、キセキも一緒に行かないかって言ったんだよ。」

その答えは…?

私は心の中で聞いたが、口には出なかった。

高校を卒業したら、離れてしまう…。

私はそれが悲しかった。

いつかはわかれてしまう…。

それ以上は部長と話さなかった。


そして、帰る途中のこと。

私を呼び止める声があった。

とても嫌な声。

「なえ。」

「ひてい…?」

「あぁ。久しぶりだな」

「なんの用?」

「謝りたいことがあるんだよ。」

「今更何を?あなた部活にも来てないし…」

「もう部活には行かない方がいいかもしれない。」

「それはそうでしょ。あなたは試合で…」

「いいや、俺の事じゃない。なえのことだ。」

「どうして?」

「謝りたいことってのは、昔、なえを虐めたことだよ」

ひていの言葉の瞬間、トラウマがフラッシュバックした。

ただ、集中して、勉強してるだけなのにその行為を勉強以外できないからって言われた。

みんなの前で…。

ただ、あの時、悲しかった…。

「今更、許すと思ってるの…。」

「許さなくていい。ただ、真実を知って欲しいんだ。」

「あなたが私を虐めたことでしょ。」

「確かにそうだが、本当のところは違う。」

「何が違うっていうの。」

「俺が、あいつに命令されて、なえを虐めたってことだよ。」

「…?」

私は少し驚いた。

「どうしてあなたは、そんな嘘つけるの。」

「嘘じゃない。」

「私を虐めから救ってくれたのは部長だよ。そんなことする訳ない。」

「いいや、こうなることを計算して、虐めるように言ったんだよ。」

「つまり、マッチポンプってことだ。」

「嘘ばっかり。私はそんなこと信じないから。」

「不利になるのは、なえだけだぞ。」

「あなたの言うことを聞いてたらね。」

そのままなえは行ってしまう。

残ったひていはニヤリと笑った。


私が、部長を疑うことなんて有り得ない。

なえは、部長が助けてくれた時のあの日のことを思い出した。

王子様のように、私の前にあらわれたあの人…。

私はどんなことがあってもあの人のために…。

────────

<h3>決意</h3>

僕は昔、大切な人を、助けられなかった。

見てることしか出来なかったんだ。


ある日からどこか気まずくなって、話すことが減ってた。

「最近、学校どう?」

僕は思い切って聞いた。

だけど「大丈夫。」と一言いうだけで、何も言わない。

いつもだったら、もっと話してるのに。

きっと何かあったんだ。

僕は休み時間、姉の学年に行った。

呼ぶのは気まずくなるかもなので、外から見ていた。

そこにはすわって勉強するお姉ちゃんの姿。

そして、近くに男の人が立ってた。

よくみみをすませてみると、お姉ちゃんに何かを言ってる。

「相変わらず、できは他のことは何も出来ないから勉強ばっかりしてるぜ。」

「できないって読むんだよな。名前。相応しい名前。」

ぼくはそれを見て、胸が苦しくなった。

「なんでそんなことを言えるんだって…。」

辞めてって言いに行きたかったけど、まずは友達に相談した。

こんなことがあったんだって…。

だけど、友達がいったのは…。

関わらないことだった。

必要以上に関わってしまえば、更に虐めが酷くなるかもしれない。

だから、何もしない方がお姉ちゃんのためだって…。

きっとお姉ちゃんなら大丈夫…。うわさも何日って言うからこの虐めも続かない…。

きっといつか…。

だけど、昔、貰った言葉が頭の中に浮かんできた。

「どうしてお姉ちゃんはなえで、ぼくはしゅごって名前をつけたの?」

「これはお姉ちゃんには言ってないんだけどね。」

お母さんは笑顔で教えてくれた。

「幼い植物を苗って言うの。なえちゃんには、強くなくていい、ただ優しい子でいて欲しいって。」

「そして、しゅごくん。

あなたにはそのなえちゃんや、自分自身を守って欲しいって思いでつけたんだ。」


「ぼくは守らなきゃいけない。名前とかじゃなく、自分が守りたいと思うから…。」


20分休みの時、ぼくは言ってた男を呼び出す。

名前はひていって言うらしい。

「お前誰だよ。俺になんの用?」

「お姉ちゃんを虐めるのをやめて欲しいんだ。」

「なんで?できは、困ってなさそうだし、辞める必要ねぇだろ。」

「もし、今度いじめたら…君の親や、僕の親に伝える。ほかの先生にも君のことを話す!」

「そうすれば、できにもいくぞ。」

「君もただじゃすまない!」

ひていはにやりと笑って言った。

「できをいじめるのはやめとくよ。」

「当たり前だ!」

「でもな、俺がやめてもほかのやつに言われて、結局終わらないと思うぜ。」

ぼくは困ってしまった。

ひていは最後につぶやく。「相手はいくらでもいるから、別にあいつじゃなくてもいいんだよ。」

結局、お姉ちゃんへのいじめは続いていた。

ぼくはまもれなかったんだ。

もう二度と、お姉ちゃんのたのしそうな姿とかみられないのかな…

そう思ってたけど、元気を取り戻した。

ぼくはそれがとっても嬉しかった。

────────

「今日は2人1組で模擬試合をしよう!」

「やり方分からないです。」

れんかさんが出てくる。

「やった事ある人にやってる中で教えてもらうとか!良ければ、僕としよう。」

すすむくんが言った瞬間、「僕が部長とやりたい。」としゅごくんが。

「分かった。他の人、れんかさんと…」

そう言った時、れんかさんが、しずくさんの手をとった。

「私、しずく先輩としたいです!」

しずくさんは「いいけど…!」と困っていた。


「それじゃ、決まり!」

始まってすぐのこと。

しずくは「ごめんね…」とれんかに言う。

「大丈夫ですよ~。」

れんかは心の中で思った。

よく分からないことするより、好きなき…物語を考えてる方が自分のためになるもの。

でも…。

少し、すすむの方が気になっていた。

れんかはその理由が自分でもよく分かってなかった。


「僕の考えから話すよ。」

しゅごは自信ありに言う。

「僕の思想は、大切な人や、自分自身を守ること、それこそが1番大切だってことだ。」

聞いていたれんかや、すすむはその言葉にドキッとした。

「そうなんだ。うん、いい考えだと思う。」

「次は僕が言うよ。僕の思想は君の考えを…」

「肯定すること?」

「うん。そう。」

「相手の考えを肯定する?付和雷同か何か?

僕が聞きたいのは、部長の考え。1番に肯定してるものだ。」

「相手の考えなんて、無限にあるもの唯一の考えにはならない。」

「なるほど…分かった。僕の考えは肯定を肯定すること。」

「そう、それでいい。これこそ、対等な関係だ。」

「僕の思想のこと話そう。人にはほぼ必ず、1人以上大切な人がいる。」

「その人を大切にすること、それが1番大事なんだ。その大切な人の中には、自分も居る。」

「一人一人が、その大切な人を視認し、幸福にしたいって思うこと。それが広まれば世界は平和になる。」

しゅごは以前のように、イケメンであることではなく、自分の本当に心で思うことを言った。

そこにあったの彼の熱意。

それにやられてか、すすむは言葉が出なくなっていた。

「僕は決勝に行く。お姉ちゃんとの約束だ。

必ず果たす。」


少し離れたところに居た、れんかはつぶやいた。

「大切な人…か…。」

─────────

<h3>過去物語2</h3>

これは私が中学生の時のこと。

中学校に入ってから、同級生の唯一くんはずっと休んでる。

学校に居るよりも、散歩して、人と話したり相手のために行動した方がいいって。

将来のこと、考えてなさそう。

私には唯一くんの考えがよく分からないな。

でも!!

ということは、あの人と2人きりで居られるってこと!

私は両手をあわせて、彼の元へいった。

「きぼうくん!」

「れんかさん。」

名前を呼んでくれたその直後、彼は男の子達に囲まれる。

「遊ぼうぜ!」

「うん、いいよ。」

そして、行く前に「少し待って」と言って私のところへ。

「ごめん。また後で!」

そう、きぼうくんはとても人気者なの…。

「うぅ…。」

その休み時間は、1人で、図書館に行った。

小学校の時から続けてる物語。

という名前の、あの人のことを考える時間。

ふわーっと頭の中に、きぼうくんが出てくる。

「名前呼んでくれた…嬉しい…!」

顔が赤くなる。1人だけど、寂しくない。

また今度話せるかもしれないし…。それに、こうして、物語の中ではいつも私と一緒に。


放課後になった。

私はいつも1人で帰ってる。

特に仲のいい友達は居ないし、好きなきぼうくんのことでおもいを馳せている方がとっても幸せだから…。

今日、ちょっと話せたな!

それが嬉しかった。

すると、後ろから誰かが走って来る音がきこえてくる。

耳をすませると、誰かが呼ぶ声が。

「この声は…もしかして、きぼうくん…!?」

振り返ると、きぼうくんが私の前までくる。

そして、息をととのえると、「良ければ一緒に帰ろう」と言った。

私はとっても嬉しかった。

胸がドキドキする。

なんて幸せなのだろうと思った。

「休み時間ごめん。」

「大丈夫…!私のことよりきぼうくんのことを優先させて!」

「ありがとう。折角だから、2人で帰ろって思ったんだ」

だけど、彼の口から出たのは…。

「そういえば、唯一どうしてるかな。最近、来てないみたいだけど。」

「確かに。学校には来てないね…。私の家にはよく遊びに来るんだけど。」

「そうだったんだ。何してるの?」

「えっと…。勝負とか言って、居るか居ないか当てるみたいな!」

「楽しそうじゃん。」

「でも、モグラの背中から翼がはえて空を飛んでるとか…ありえないことばっかり言ってて。」

きぼうくんは笑いながら言った。

「唯一らしいな!」

「うん。確かにそうだけど…。」

「そういえば、前に1回ね、綺麗な魚を見せてくれたんだ。その後、補導されちゃったけど…。」

───────

きぼうくんと話せたけど、複雑な気持ち。

唯一くんのことばっかり話しちゃったな…。

今日も彼、来るのかな?


私には秘密がある。

好きなあの人には隠してること。

私は唯一くんが来た時のために、お母さんに手紙を渡した。


「ほんださん来ましたか。」

「集多くん久しぶり。学校どう?」

「それはとても素晴らしいですよ。彼が学校来てないのでね。」

「そうなんだ…。」

「更に、新しい入信者も。この集多教、これから大きくなっていくでしょう。」

「良かったね。もう彼のことはいいんじゃない…?」

「彼は考えを改めましたか?」

「ううん。いつもと変わんないよ。」

「そうですか…。それなら、私も変えるつもりはありません。」

「どうして、あなたはそんなに人を集めてるの?」

「自分の宗教が何よりも正しい証明するためです。」

「そして、異端とされる考えは、この世から消し去ってしまう。」

「もし、許しを与えるとすれば、その考えを捨てるか、入信するか。その2つに1つです。」

「そうなんだ…」

「今は何もしないで居ますが、これから、彼は苦しむことになるでしょう。

考えを改めないその自らの態度によってね。」


私は集多教に入信した。だけど、あまり来てない。

たまに彼は、怖くて悲しそうな顔をする。


私は帰った。

家につくと、丁度、手紙を受け取った彼が帰ろうとしてる。

「やっぱり、来たんだ。」

「うん。勝負しよう!」

「いいよ。」

今日は少し悲しいことがあったけど、私の好きなきぼうくんと話せたんだ。

長く、この嬉しい時間を過ごしていたい。

「今日は何の勝負?」

私はそう言った。

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