思想学部⑲

<h3>1つの考え</h3>

午後の部活がはじまった。

シソウくんがなんだかうずうずしている。

「どうしたの?」

僕が話しかけると、彼は「ありがとうございます!」と言った。

「思想学部の人達皆に話したいことがあります。」

視線が彼に集まる。

「僕には1つの考えがある。」

周りをグルっと見て、彼は続けて言った

「創作、それは、無限の考えを作れる自由な空間。」

「自由が故に、縛りを設けてしまいます。」

「ただ、それが本当に必要な縛りかどうか…。それは考えるテーマでもあると思います。」

そこから彼の話がはじまった。

「言葉は、時代によって意味が変わってきます。

今とは全く反対に変わることも。」

「その変わった2つ。悪いものからいいものへ、いいものから悪いものへ。」

「前者を絆化現象、後者を姑息化現象と呼ぶことにしましょう。」

シソウは夢中になって話す。

「前者の絆化現象は、元の意味は動物をつなぎ止めておく紐だった。」

「しかし、今では、友情など人との繋がりとして、いい意味を持っている」

「次に後者の姑息化現象については、しばらく休むことをさしているらしい。」

「だが、時がつれて、卑怯なことをする意味に変わってしまった」

「つまり、さっき言った通り、前者は悪い意味、普通のところからいい意味に変わるもの。」

「反対に後者はいい意味、普通のところから悪い意味に変わるものを指す。」

「ここで提唱したいことがある。前者は昔より良くなったからいい、しかし、後者は悪くなったってことで、防がなきゃいけないこと。」

「つまり、僕が言いたいのは、前者の絆化現象を推奨し、後者の姑息化現象を阻止すること!」

「これが僕のアイディアです」

夢中になって話していたため、周りは見ていなかった。

見回してみると、聞いて居ない人、理解できて無さそうな人も多かった。

やっぱりダメか…

心の中でシソウはそう思った。

すると、すすむくんが言う

「理解は出来なかったけどいいアイディアだと思ったよ!」 

近くで、トモさんが、「私もいいと思う。だけど、あなたに今、必要なのは、いいアイディアかより、周りを見ることだと思う」と。

「頑張り過ぎないでね」

「トモさん優しいね。」

「創作を見たから!」

「なるほど」

すると、そこに、みおさんが入ってきた。

「ところで、さっきのするの?」

そう言って楽しそうに笑う。

「しないよ。」

「どうして?」

「僕ができるのは、アイディアを思いつくことだけだから。行動力はない。」

シソウは下を向いた。

「最初に言った通り、創作って言うのは、無限の可能性がある。」

「それによって多くのことを助け、多くのことを発明する。」

「ただ、そんな創作者にかけているものがあるんだ。それは行動力。」

「どうしても言葉だけになってしまうんだ。」

「そうなんですね!」

「はい。そんな行動力のない人に必要なのは、行動力のある人。」

「そして、行動力のある人に必要なのは色々なアイディアを思いつく人。」

「もちろん、行動力があって、アイディアが思いつく人もいていいと思う。創作でも、どんな存在でも許容しているから」

シソウくんは自分のからに閉じこもりやすい人だと、僕は心の中で思う。

「ところで、シソウくんはどうして話そうと思ったの?」

「言ってませんでしたね。」

シソウくんは1度、トモさんの方を見た。そして話す

「実は…僕達の国では、創作が禁止されています。」

「だからこそ、創作である自分の考えを人に話したい。」

「勿論、実行はしなくていいです。同時に人の考えも聞いてみたい。」

「創作が禁止されてないこの場所だからこそ…できることを…。」

「そうだったんだ…。」

「ここはいいですね。来る前は、こんな面白い部活があるとは考えても見ませんでした。」

「ただ、一緒に創作話し合える仲間ができたらいいなって。」

僕は何もいえなくなった。

「これ以上求めてはいけませんよね…。」

すると、すすむくんが前に出てくる。

「大丈夫!話してくれてとても嬉しい。僕は、こういう風に、皆の考えを聞きたいこともあってこの部活を作ろうと決心した」

「だから、いつでも大歓迎だよ。また聞かせて欲しい。」

「ありがとうございます!」

シソウくんはとても嬉しそう。

心の中で良かったね。と思った。

しかし、創作が禁止されてる国…。色々な場所もあるんだな…と思った。

───────

シソウとトモが家に帰る途中、トモが「おめでとう」と言った。

「ありがとう。トモさんのおかげだよ。」

「私は何もしてないよ」

「部活で言う前に、背中を押してくれた。とても勇気づけられたんだ。」

「そう?」

「うん。また求めてしまうようで悪いんだけど…」

「何かな?」

「良ければ、また思いついた時、話を聞いて欲しいんだ」

「いいよ。」

「ありがとう…」

───────

<h3>昔のこと</h3>

リベシン高校での話。

「もうそろそろ、練習試合がありますね。」

うみは笑顔で、部長に話しかけた。

「そうだな。」

「相手の高校の方、どんな人が居るでしょう。楽しみです。」

2人がそうして話していると、向こうからあゆみがやってくる。

「話しているところ悪いけど、うみちゃん、少し話さない?」

「いいよー!」

「人が少ないところで!」

2人は歩いていった。

「あゆみちゃんの方から呼んでくれるの嬉しいな!なんのお話だろう?」

「それについてなんだけど、1年生の時、昔のこと話してくれたでしょ?」

「うん、したね!」

「今度は私が話そうかなって…。」

「えー!本当?」

「うん。本当!」

「嬉しい!私、あゆみちゃんの話聞きたいな!」

「少し長くなっちゃうけど…。」

────────

子供の頃、こんな話を聞いた。

2匹の動物が居て、片方が嫌なことがあってもう関わらない。

そう言って縁を切った。

でも、仲直りしたい。心の中でそう思ったけど、中々、自分の気持ちに正直になれない。

私はこれを聞いて、お母さんに言った。

友達とずっと一緒にいたい…。

縁が切れるのは嫌だよ…。

そんな時にこんな言葉を私に投げかけてくれた。

「こっちから縁を切らなければ、ずっと友達で居られるよ。」

私はそれを聞いて嬉しくなる。

学校で、友達にこのことを話した。

一番仲のいい、一緒に居たい子に。

「それいいね」って言ってくれた。

だけど…

色々あって縁を切ってしまった。

私はなんであんなことを言ったんだろうって…。

したくないことだったのに…。

私は、謝って仲直りしようって思った。

だけど、態度に距離を感じてしまった。

もう仲良くなれないかもしれないって…。

悲しくて仕方なかった。

もう友達を作るのは辞めようかなって…。

その日から、私は勉強にのめり込んだ。

小学校を卒業して、中学校もずっと。

その間、寂しかった。

これからもずっと、このままなのかな…って思うと…

また友達を作るのも、あの時が浮かんで、同じことになるんじゃないかって…。

そんなの嫌…。

私がいつものように、1人で机に向かっていると、他学校から知らない人がやってきた。

昔の友達のことを話してくる。

だけど、もう今となっては、トラウマになってること。

私は拒絶した。

それから少し経って、同じ学校のある人が私の前に。

「なんですか?」

私がそう言うと彼は言った。

「俺の作った部活に入らないか?」

私の返答は決まっていた

「勉強に専念しようと思ってるので、部活には入りません。」

彼はその言葉に余裕の笑みを浮かべる。

「本当にこのままでいいのかい?」

私はその言葉に固まる。
ずっと悩んでいた事だから…。

このままでいいのかどうか…。

彼は続けて話す

「俺と共に来れば変わる。」

「何がですか…?」

私はか細い声でたずねた

「一緒に来れば、分かることだ。」

「部活よりも勉強しなきゃ…」

「部活中に勉強すればいい。部活としての活動はなしでいいさ。」

「どうして…?」

「マネージャーになれば、部活としての活動はなしでいい。部長になる俺が許可する。」

その後、部活について大体のことを聞く。

「分かりました。」

部活には所属だけしておいた方がいいかもしれない。

前々からそう思ってたし、好条件だから、私は彼の部活に入ることにした。

多分、彼が考えてたのは、人数稼ぎだと思った。

部活に入ってから、私は、活動場所でずっと勉強する。

そんなに変わってないし、これもこれでいいか。

そう思ってたら、練習試合がくまれた。

そういえば、忘れてたけど、入る前に、この部活の名前聞いた事があった。

私は参加したいと話す。

部長はいいと言ってくれた。

偶然、そこが、昔の学校の友達が通う場所だとは思っても見なかった。

でも、もしかしたら、彼の言ってた通り、変わるかもしれない。

過去のこととケジメをつけて私は…

あゆみはそこまで話すと、「うみちゃん、聞いてくれてありがとう」と言った。

「こちらこそ、話してくれてありがとう。」

うみはにっこり微笑みながら、「そんなことがあったんだね」と言った。

「うん、そうなの。話してスッキリした。」

「良かった!」

「うみちゃんって、なんだか話してて落ち着くって言うか…。話せる相手って感じがする!」

「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい」

「また何かお話したいな!良ければ、うみちゃんも聞かせてね!」

「もちろん!また話そうね」

────────

<h3>ある日のリベシン</h3>

男たちは高笑いした。

「レベシン高校だっけ?思ったより弱いな。」

「この程度なら、優勝するのも楽勝だな。」

そう言って、リベシンのメンバーを見る。

「部長も根性ないみたいだし。いいや、俺たちが強すぎるのか。」

「言えてる言えてる。」

なえは彼らを睨んだ。

そこに部長が「悪かったな…」と謝る。

「部長…なんで謝るんですか…?」

「俺の勝手で、なえを利用してしまった。」

「いいんです…。私は部長のためなら…」

すると、そこに、ひていがやってくる。

「あいつらの言ってる通り、使えないよな…。勝てたの俺だけだ。」

偉そうに言った。

「ひてい!」

すると、部長が宥める。

「俺の事はいい。ひていも、言いたいように言えばいいさ。」

部長はひていの目を見つめる。

すると、ひていは目を逸らした。

「でも…。ひていのやり方は…」

「俺は身内ではもめたくないと考えている。」

「部長…」

「だが、もし、部員が苦しんでいるのなら、その時俺に伝えてくれ。」

「分かりました…」

なえは頷く。

すると、向こうから、うみが笑顔でやってくる。

「2人ともどうしたんですか?」

それにひていが言った。

「はみはいつも笑ってるよな。対戦の時もずっと。」

「それが何か?」

笑顔を変えなかった。

ひていは面白くないと、後ろを向く。

「俺の考えに付き合って悪かったな。」

「全然大丈夫ですよ。沢山の話が聞けて楽しかったですし。」

「ところで、部長さん元気がないですね。」

部長の顔を見る

「どうかされたんですか?」

「なんでもない。」

「そうですか。それは良かったです。」

うみはそれ以上は何も言わなかった。

なえは心の中で思う。

もしかして…

2人きりになった時、部長の方から話しかける。
 
「今日の負けは未来への情報になる。」

なえは思い切って聞いた

「話を遮ってすみません…。

元気が無いのって、あの人の事…?」

「元気がなく見えてたのか?」

「はい…。私は部長が心配です…」

「悪かったな。昔からの幼なじみなんだ。」

「最近、どうなんですか?」

「相変わらずだと言ってた。」

「そうなんですか…」

「最近どうなのかは、分からない。」

「敵の手の中に居るんですもんね…。」

「もし、良ければ…」

なえは打ち明ける

「そうだったのか。じゃあ、頼めるか?」

「もちろん。あの子は、やってくれると思う。」

───────

その後、うみとなえが2人になった。

「そういえば、なえちゃん、今日マネージャーさん居ないみたいだけど。」

「休むらしいよ。理由はわかんないけど。」

「そうだったんだ。」

「うん!」

それから少し間があいて、うみが話した。

「学校、少し落ち着いてきたね。」

なえは頷く。

「そろそろ、出かけてみようかなって」

「いいね!どこに行くの?」

「内緒!」

なえは首を傾げる。

「この世界には、色々な人が居て、色々な考えがある…」

「その一つ一つが美しくて綺麗な…例えるならそれは夜空に輝くお星様…」

なえはふふっと笑った。

「うみちゃん変わってるね。」

うみは笑顔でなえを見る。

「でもね、私は全員がいいとは思えないよ。私にとってそれは1人だけだもん…。」

うみは言った

「いいえ…。それだけじゃない。お月様がある。」

「確かに、月も綺麗。私にとってのお月様なのかもね…」

────────

それから数日経って、全宝高校では、騒ぎが起きていた。

「大変です!」

生徒会の人達が集まる部屋へ、1人の1年生がやってくる。

「何があった?」

すいぞうがその生徒の前に立った。

「すごい…大変なものを見てしまったんです…」

「その内容は?」

「鏡を見たら…こんなかっこいい僕の姿があって!」

「それは知らない。で、さっき言ってた問題は?」

「カッコよすぎる僕…。罪な男だな…って。」

結局、相手にされなかった。

生徒会長は戻ってきたすいぞうにたずねる。

「何かあったんですか?」

「いいえ、何もないようです」

「それは良かった。」

「ところで、にわのさんと、すいぞうくんに聞きたい。」

「なんでしょう?」

「今更ではあるが、2人は1年生部活に入ってなかったようだね。どうしてなのかと聞きたくてね」

にわのから言った。

「私は部活に入るよりも、リーダーとして、困ってる人のことを考えたくて」

「運動会では、部活参加の時、暑くて仕方なかったですけど…」

次に、すいぞうが言った。

「俺も似てる。仲間のためだ。」

「そうですか。生徒達のことを考える。そんな2人と共に行動できること。」

「ありがとうございます。」

それから話が止むと、にわのはすいぞうの方を見て言う。

「ところで、運動会休んでたよね。どうしてなの?」

彼はその質問に答えなかった───────

<h3>過去物語❹</h3>

子供の時、ある男と出会った。

とても希望を与えてくれるような。そんな人に。

おかげで俺は夢を持った。

将来、冒険をしたい。色々な場所に行ってみたい。

すぐに、親にこのことを話そうと思った。

親はいつも許してくれた。きっと、この事を話したらいいって言ってくれる。

そんな期待が心にあった。

だが…

親は否定した。

その時はなんでいいって言ってくれなかったのか分からなかった。

ところで、俺の近くの家に、尊敬するお兄さんと、よく関わる幼なじみの女子がいる。

よく関わった。幼なじみにあの事を話すと、「いい夢だと思うよ」言ってくれる。

この2人のおかげで、俺は平静を保っていられた。

名前がコンプレックスだと思っていたら、幼なじみは言う。

「私はとっても好きな名前!」

落ち着かない時は、1番得意なピアニカをきかせてくれた。

だが…

親は2人と関わるのを辞めるように言った。

関わる人は選ぶべき。

それが親の考えだった。

だが、俺は隠れて、2人にあいにいく。

幼なじみは歓迎してくれたが、お兄さんの方は、ある時から、冷たくなった気がした。

それはある一言から

「君は僕を目指さないで欲しい。君は君の道を行って。」 

心の中で、この人みたいになりたい。

そう思っていた。

──────

俺は幼なじみに弱音を言った。

「大人達って、なんで縛り付けるんだろうな」

「そうかな?私はピアニカ弾かせてくれるし、ハッピーだよ!」

「あぁ。急に居なくなるし、したいことを否定したんだよ。」

「前に言ってた…。とても辛かったんだね…。」

「でもな…おかげで、これを何するか決まったんだ」

「え!?なになに?」

とても笑顔で見つめる幼なじみ。

「グループを作るんだ。大人達に負けないように。」

「ぐるーぷ?」

「あぁ。俺みたいに、苦しい思いしてるやつらを助けるんだ。」

「わー!人助けするんだ!」

「あぁ、大人達はいつ、酷い仕打ちをしてくるか分からないから。」

「うんうん…!私には難しくてわかんないな…?」
 
幼なじみは首を傾げる。

「詳しいことはいい。一緒に来てくれるか?」

「もちろん!」

だが、少しして、問題が起こった。

それは中学校1年生の初めごろ。

会を作って少ししてからだった。

「どうした?」

「最近、物忘れが酷くなってて…」

下を向いて幼なじみは続ける。

吹奏楽部に入ったんだけど、中々、覚えられないんだ…。ピアニカ出来ると思ってたけど…」

「そうか。俺みたいに、帰宅部になるか?」

「ううん…。もうちょっと続けてみる。音楽好きだから!」

ある日は、こんなことを呟いた。

「高校に入ったら、ピアニカできるといいな…。」

相変わらず、元通りにはならないまま。

ところで、会のメンバーは順調に集まっていった。

みんな俺と同じく困っていたもの達。

否定を使い、共に行くことを決めた。

人を救うのは、矢張り、否定である。

俺は心の中で強く思った。

しかし、理不尽なことに。

別れたくないものと、別れることになってしまった。

いつも支えてくれた幼なじみ。引っ越すことになったのだ。

相変わらず、記憶力が衰えたまま。

1週間会わないと、俺が誰か一瞬誰か忘れてしまう程だった…。

一緒の高校に行こう。

そう言ったこともあった。だが、「私には厳しいよ…」と断られる。

「じゃあ、俺が一緒に…」

「大丈夫。きっと、またいつか会えるよ!」

俺は諦めきれず、親に頼んで、同じ学校に行こうとした。

だが、ダメだ言われる。

「何故、別れなければいけない。」

いきようのないもどかしさが一杯になった。

────────

高校に入ってから、幼なじみと会うことはなくなる。

皮肉なことに、何事もなく日常が過ぎていった。

会を作ったが、具体的な目標もない。

ただ、否定という武器は、今もこうして役にたっている。

このままでいいのか…?

大人になれば、自由は失われるかもしれない。

今ここで何かをしなければ…

そう思いながらも、時は過ぎていった

しかし、ある日のこと、会のメンバーの1人が、ある男と出会ったと話す。

その男を考えていくうちに、自分の進む方向が決まった。

その時は、幼なじみのことも忘れていた

──────

<h3>変化</h3>

あれから少しして、変わったことがある。

部活へがとくんが来てくれた。

理由は分からないが、部活にも参加してくれてる。

しかし、キセキさんのことを逐一気にしているような気がした。

気のせいかもしれないが。

そして、大きく驚いた事があった。

みおさんが、ここの学校の校長ととても仲良さそうに話している。

学校入学して、そんなに経たず仲良くなれるなんて凄いな。

彼女の社交性に驚かされる。

思えば、部活に入ってくれた時も彼女からだった。

すると、ふと、探し人のことを思い出す。

結局見つかったのかな…?

午後の部活がはじまる。

今日はまた、何かある人は居るかとすすむくんがみんなに聞いていた。

そして、みおさんの前に来た時彼女は話す。

「大丈夫です!私は毎日ラバーダッキングしてるので!」

「ラバーダッキング?」

「はい!あひるさんのおもちゃや、ぬいぐるみさんに今日あったことを話してるんです!」

とても元気そうだ。

直後、後ろから、「あの!」と声がした。

振り返ってみると、そこに、仮面をした女の子が立っている。

「君は!」

僕が名前を言おうとした時、「私はペルソナ・ノングラータです!」と言った。

前言っていた偽名のようなもの。更に長くなってる…。

すると、向こうから、みおさんがやってきた。

「あなたは…もしかして…?」

「すすむくんと話していたんじゃあ?」

僕が呟くと、彼女は「今日はみんな自由行動らしいです!」と言った。

「そうだったんだ。」

「ところで…あなたはお姉ちゃんじゃ…?」

みおさんは、仮面の女の子を見つめて言う。

そして、近付こうとした時「来ないで!」と。

「どうして?」

みおさんがそう言うと「私の目は封印されてる!」と。

「本名ペルソナ・ノングラータ…

その顔に触れてはいけない…」

「この封じられし顔を見ようと言うのなら…」

「分かった!触れない!」

みおさんは続けて言った。

「確かに、お姉ちゃんだったら、そんなことは言わない!」

「声と雰囲気が似てたから同じ人かと思ったけど…」

それは最早、同じ人なのでは…?

心の中で思いつつも、2人とも納得した形になっていた。

「お姉ちゃんだったら、そんな事言わない!先輩、話に割り込んじゃいました」

元気にそう言った。

そういえば、僕には聞きたいことがある。心の中にしまう。

「ペルソナさんどうしてこの学校に?」

「特に理由はないよ。久しぶりに来たかっただけ。」

「そうなんですね。」

「はい!」

仮面越しからも分かる。彼女はいつも笑顔だ。

「そういえば、前のショーの時、居ませんでした?」

「懐かしいことを言いますね。居ましたよ。」

「やっぱり!確か、帰る前、最後に見た気がします。」

すると、みおさんもまじってくる。

「ダイバースショーのことですよね?私も居たー!」

とても嬉しそうに笑う。

「確か、可愛さについて語ってましたね。とても素晴らしいと思います」

「ありがとうございます!」と言ったが、少しペルソナさんの方を見つめている。

「どうかされたんですか?」

「その話し方…やっぱり、知ってる人のような気がして…」

ペルソナさんは急にカタコトになった。

「ワタシ、ソノヒトトハチガウ」

「確かに…お姉ちゃんはカタコトじゃなかった気がする!」

それでいいのだろうか…?

僕は心の中で思った。

「2回疑ってごめんなさい!」

「大丈夫だよ!とっても嬉しいから!」

心の中で何故?と思う。

「そんなにその人と会いたいのね。」

そして、ペルソナさんはみおさんの頭をなでた。

「わーい!」

なんだか2人はとっても嬉しそうだ。

結局、2人はとても近くにいた。

「私、ペルソナさんと一緒に居ると落ち着く!なんでだろう…?」

「それはきっと、みおちゃんがいい子だからっ!」

「わ!ありがとー!」

それから少しして、僕はペルソナさんに聞く。

「そういえば、この学校に来て大丈夫なの?」

「学校休んだから!」

「他校の生徒が来ていいのかなって!」

「なるほど!」

ペルソナさんは頷く。

「この学校は、大丈夫なんだよ!校長先生が優しいから」

みおさんが元気で話す。

「そうなんだ!じゃあ、良かった」

そのままペルソナさんが来た理由は分からず、部活時間は過ぎていった。

帰る時に、ペルソナさんは僕に言った。

「ここに来たのは、人を見たかったから。私の学校以外は、どんな性格の人が居るかって。」

僕は頷く。

「人の性格とかって、その人にしかない特別なものだから。」

「他の学校には行くの?」

「うん。行ったよ。この学校は特に来たかったから」

そして、小さな声で呟く

「私、この学校に…」

その先は聞き取れなかった。

「また来るかも。」 

彼女はそう言って別れた

───────