<h3>やっと‥</h3>
そして、ようやく到着した‥。
リアル派が多く住む都市に‥。
近くには家が多く密集し、真ん中に行くに連れて、ビルが立ち並ぶ。
僕は近くに居た人に話しかけた。
「あの、ゲデーさんはどこにいるかわかりますか‥?」
「あなたはどなたですか‥?」
「エビって言います。」
「聞かない名前ですね。どうして会いたいんですか?」
「話したいことがあるんです。」
僕はその女性を見つめる。
「わかりました。」
その人は歩いて、大きなビルが立ち並ぶ方へ。
そして、その中で一番小さいところに立つと僕の方を向いた。
「この一番上におられますよ。今は分かりませんけど‥。」
「ありがとうございます。」
僕とベーアさんは中に入って、階段を上がっていった。
ベーアさんに話しかける。
「ようやく‥。」
「ね。」
「思えば、今まで、沢山運が良かった気がするよ。」
「たしかにね。穏健派、昔の友達、味方してくれる人‥」
「できることなら、このまま走っていきたい‥。」
「うん。できるなら‥そうしたいね‥。」
これからどうなるか分からない‥。
心の中には緊張感があった。
「僕ならできる!」
「あははっ。急にどうしたの?」
「自分を信じたいなって思って‥。」
「そう。いいねっ!」
階段を登り終えた先‥。
一つ部屋があって、僕らはその中に入った。
前にはこちらに背を向けて、一人の男が座っていた。
「シソウ派、来たか。」
左側から、聞いたことのある声が‥。
「ペールさん‥?」
「そうだ。そして、あのお方がリアル派のトップ。」
その人は僕の方を向く。
「私がゲデーだ。君達がシソウ派か?」
「はい、そうです。」
「そうか。話に入る前に一つ、聞きたいことがあるんだ。」
「なんですか?」
「君はシソウの子孫か?」
「いいえ、違います‥。」
「そうか。私はリアルの子孫だ。」
「え‥?」
「正確に言えばリアルの弟の子孫だがな。」
「そうだったんですか‥。」
「あぁ。つまり、私には強い理由がある。」
「君には何か理由があるのか?」
「あります。」
<h3>気持ち</h3>
「それはなんだ?」
「シソウの考えが好きだからです。」
「好きかどうかか‥残念ながら、私にはその概念はない。」
「ご先祖様を信仰するか、しないか。ただそれだけだ。」
「そうですか‥。でも‥」
「お互い、依存しない‥。例えば友人の関係にはなれませんか‥?」
「友人?もうこの世に居ない先祖様と‥か?」
「はい。僕はシソウを信じてる。しかし、逆に、シソウはわがままで自己中な人間だと思うこともある。」
「ただ、苦しまず、創作学を思ってられるんです。それは僕がシソウを友人のように思ってるからだとおもうんです。」
「ふはははっ。面白いことを言うな。先祖様と友人になること、それは考えになかった。」
「しかし、それは不可能なことだ。」
「どうして‥?」
「リアル派は現実を重視する。苦しい事実があったとしても、目をそらさず受け止めなければならない。」
「そうなんだ‥。」
「リアルの弟の言葉、聞いてるか?」
「うん‥。シソウ派に酷い目にあったって‥。」
「それが歴史だ。」
「たとえそうだったとしても‥。それが現実なのかな‥?」
「どういうことだ?」
「苦しいことも創作になり得る‥。ということです。」
「確にそうかもしれない。だが、これを事実でないと言えるのか?」
ゲデーさんはじっと僕を見る。
「シソウとリアルが話し合うずっと前、まだリアルが位を譲られてないときの事。」
「一度、シソウとリアルの父は話し合っていた。」
その話‥聞いたことがある‥。
歴史の授業でも、創作学の授業でも‥。
「その結果は分かってるだろう?」
「シソウは話し合いに失敗した‥。」
「そうだ。それがあって、どうして、その子であるリアルがよしとするのか?」
「そうだよね‥。」
僕は創作学で聞いた、過去を思い出していた。
リアルの父、そして、その前に立つ男‥
「君がシソウくんかな?」
「はい。そうです。」
「リアルと同い年なんだってね。」
シソウは頷く。
「そうか‥。それで、話はなんだったかな。」
このとき、シソウは強く決心していた。
そうメモ帳に書かれている。
<h3>今と過去</h3>
「確にシソウは失敗した。だけど、聞いた話だと、ちゃんと話し合ってた。」
「お互い、相手の考えを完全な悪だと否定せずに。」
「そうだろうな。リアルの父と彼は、この時はじめて会った。」
「そして、彼と最後まで話し合わず、リアルの父は去った。」
「そうだね‥。」
「リアルとシソウの事実は分からない。しかし、流れは分かる。」
「リアルの父は創作に批判的だった。」
「規制に関わっていたことからも分かるだろう。」
「でも‥。たとえ、親がそうだったとしても、子供も同じことを考えてるかは分からない‥。」
「それはそうだ。だが、では何故、リアル派というものができたのか?」
「分からない‥。」
「確定するものはないが、私という、リアル派を受け継いだものがいる。」
「私は幼い頃から、リアル派だった。受け継がれてきたこれを成し遂げる。」
ゲデーさんは言う。
「君の話を聞かせてくれないか。今まで何を得て来た。」
「シソウからもらったものはひとつもありません。」
「一つも?」
「はい。ですが、3つの目に見えないものをもらいました。」
「それはなんだ。」
「一つ目は優しさです。」
僕は深呼吸した。
「これはリアル派も、シソウ派も共通する。お互いに優しさがあった。」
「なるほど。例えばどこだと考える?」
「先祖様の悲しみに共感してること、学問は自分に気付くことでその人に何かを与えてくれる。」
「その二つは優しさだと思うんだ‥。」
「そうか。」
「2つめは平等。学問は能力ありなしはあるが平等だ。」
「君も、みんなも、平等にリアル派でしょう‥?」
「そうだな。学問、リアル派という集団もその2つを持ってる。」
「創作学は要らないではないか。」
「確に必要ないです。だけど、だからこそ必要なんです。」
「3つ目の要素‥それは夢。」
僕は真剣に、ゲデーさんを見た。
すると、直後、ペールさんが僕のそばに。
「夢か、前に俺に言ってたことだろう。」
「はい。そうです。」
「俺達はシソウ派に夢を奪われた。だからこそ、リアル派の夢はシソウ派をしりぞけ、返り咲くことなのだ。」
「ですよね。」
その時、僕の心の中には、光のような何かがふつふつと湧き上がってきていた。
<h3>受け継がれる希望</h3>
「ペール下がっていてくれ。」
「しかし、ゲデーさん‥。」
「この男はここまで来た。考えもある。シソウ派にとって代表の男かもしれない。」
「私には、今、彼と向き合う責任がある。」
「分かりました。」
「悪かったな。話を続けてくれないか。」
「はい。」
「夢、それもリアル派、学問にもあるでしょう。」
「そうだな。ペールの言ってた通り、もう一度過去の世界を取り戻すこと。」
「それがリアル派の夢だ。」
「なら、一緒に行きましょう。」
「なに?」
「夢って言うのはきっと、何かに囚われることじゃないと思うんです。」
「とらわれる‥か。」
「創作は理想を追い求めてもいい。自由なものです。」
「自由はみんなに平等にあります。そして、それは優しさを強くその中に持っている。」
「それが見えない3つのものか?」
「はい、そして、これが今の僕の夢です。」
「リアル派の人と一緒に、理想の未来を作る。お互い悲しまず、自分の進みたいように進める。
僕はそうしたい。」
ゲデーさんはただ一言。
「分かった。」
ペールさんが近付く。「どういうことですか?」
「ペール、悪いな。」
「シソウ派は‥。」
「そうだ。しかし、リアル派としての思いはそれじゃなかっただろう。」
「そうですね。」
二人はそう言って黙った。
「解決したのかな‥?」
「もしかしたら‥。」
ただ、話してる最中、僕は自分の中に何かを感じていた。
あれは何だったんだろうか‥?
────────
「悪いが、帰らせてもらうよ。」
リアルの父はシソウに背を向けた。
そして、去ろうとする途中‥。
シソウは言った。
「僕には夢がある!」
リアルの父は一瞬、足を止める。
「僕、夢について、考えたんです。」
「夢って、きっと、囚われたり、苦しんだりすることじゃないと思うんです。」
「だからこそ、今、楽しくいようって。これから待つ、楽しい未来のために。」
そのままリアルの父は進んで行った
────────
<h3>リアル派の意思</h3>
「シソウ派の男。」
「なんですか?」
「ここまでよく来た。しかし、残念ながら、私にはどうすることもできない。」
「どういうことですか‥?」
「リアル派のトップでありながら、その中心ではない。」
「つまり、私が、リアル派をどうこうすることもできないということだ。」
「リアル派を動かす人が、他に居るってことですか‥?」
「そうだ。」
「それは誰なんですか‥?」
「私は言えない。彼がリアル派、そして、リアルの思想を本当に受け継いだ人間だからだ。」
「え‥!?」
その時、何故か、近くの窓が気になった。
ここから少し遠くのビルの天井に一人が居て、背を向けて去っていく姿が‥。
リアルの思想を受け継いだ人‥。誰なんだろう‥。
その時、一人の友人の顔が、僕の頭の中に一瞬浮かんだ。
「リアル派とシソウ派、どちらも子孫以外の男が代表か。」
「僕は代表じゃないですよ。」
「そうか。では何故、シソウを思う。」
「子供の頃から一緒に過ごした友人だから‥かもしれません。」
「友人か‥。」
「はい。」
「少しリアル派の話をしていいか。」
「いいですよ。」
「リアル派はリアルの弟が作った。」
「そうなんですか?」
「あぁ。リアルではなく、私の先祖がな。」
「では何故‥?」
「私の父、私の祖父もそうだったことだが‥。」
「リアル派内部からはシソウ派を攻めようと、もう一度世界を。とたまに声があがったそうだ。」
「しかし、ずっと動かなかった。今を守ることを優先していたのだ。」
「守ること‥?」
「あぁ、私とペールも、この都市や町を優先し、リアル派の動きにずっと参加してなかった。」
僕は思った。
確に‥。ペールさんたちはみんな町に居たようだった‥。
この都市にも多くの人が‥。
「形式上はシソウ派を‥と言っていたが、実際はどうなってるかペールに聞くばかりで何もしてない。」
「トップとしてあるまじきものだが、こうして受け継がれてきた。」
「そうなんですね。」
「あぁ、そして、友人のことだが‥」
「はい。」
「もし友人と見れていたら、また違った形で彼らを思うことができたのだろうか?」
「分かりません。でも、僕は思います。それはいつでもできるって。」
「そうか。」
<h3>帰り道</h3>
それから少しして、僕とベーアさんは帰ることにした。
「何事もなくて良かったね。」
「うん。だけど、リアル派を引き継いだ人って誰なんだろう‥。」
「誰なんだろうね‥。」
「私、エビなら大丈夫って思ってるから。」
「ありがとう。」
「それで、これからどうするの?」
「まだ考えついてないんだ‥。一旦、ワズィ君達とも会いたいけど‥。」
「確に二人が心配だよね‥。」
「とりあえず、家に戻らないかな。」
「うん、分かった。そうしよう!」
───────
「ペール。」
「何でしょう。」
「悪かったな。いえ、いいんです。」
「元から分かってましたから。」
「矢張り凄いな、君は。」
「ところで、またあらためて確認したいことがあるんだ。」
「はい。何でしょう。」
「現防実衛9は、今、どうなってる。」
「強硬派3人、強硬派だったのが2人、中立1人、穏健派3人です。」
「もしかしたら、元から中立に分類されていたのかもしれません。」
「中立はチェーシャか?」
「はい。」
「学校につとめ、内部から少しずつ変えていく。長い間それを考えていた。」
「凄い女性だよ。」
「そうですね。しかし、どうして続けられていたのでしょうか?」
「それはつまり、リアル派で、受け継がれてきた歴史と違うところがあったのかもしれないな。」
「シソウ派は完全なる悪ではないと‥?」
「さぁ、これから分かることだろう。シソウ派が残るかそれとも、あの男が考える未来になるか。」
「そして、また違った未来になるのか。」
「例えそうだったとしても、私達は変わらないでしょう。」
「そうだな。」
「ペール、君が来る前、一人の男が私の前に来たんだ。」
「そうだったんですか。」
「変わった男だった。少しここに滞在してたようだが‥」
「あの男はなんと言っていたかな。」
───────
一人の女性が、森の中進んで行った。
まわりをぐるりと見て、何かを探している。
すると、ガサッと音がして、その方に向かった。
女性は一言つぶやく。
「やっと見つけましたよ、妖精さん。」
<h3>ワズィくんとの過去</h3>
家に帰る途中、ベーアさんが言った。
「そういえば、懐かしいね。」
「何が?」
「最初に5人で集まったときのこと。」
「たしかにね‥。」
「セーデくんはやっぱり分からないけど‥、みんなで集まれるといいね。」
「うん。」
それから沈黙が続いた。
ベーアさんも何か考えてることがあるのかも‥。
少し僕はワズィくんたちのことを考えた。
───────
授業中、席が近かった男の人がつぶやく。
「シソウ‥。」
僕は思わず、その人に話しかけた。
「シソウに興味があるんですか?」
「まぁ。」
そのときは授業中だったためよく話せなかったが、そこから少しずつ、彼と関わるようになった。
ある日のこと。
「エビくん、創作学やってるの?」
「うん。やってるけど‥。どうしたの?」
「いいや、聞いてみただけなんだけど、よくメモ帳みてるよね。」
「それも何か関係あるの?」
「あぁ、これは‥シソウの日記なんだ。」
「どうしてそれを君が?」
「子供の頃拾って、そのままになってるんだ。」
「そうか。」
「大事なものなんだ。君も何かあるの?」
「君にとってのメモ帳みたいなものかな。あるよ。」
「『王子様との旅』って言うんだけど。」
「絵本だっけ。」
「うん。とても興味があって。」
このとき、彼も創作に興味があるんだと心の中で思った。
それから、また時が経って彼は言った。
「エビくん、良ければ、人を集めて創作者って言うのしないかな?」
「いいね、やりたい!セーデくんとか色々誘って。」
とても楽しい時間が始まる
その時、そう思っていたし、実際に楽しい日々だった
ただ‥。
今、この現状がある。
僕は考えることから離れた。
そして、ベーアさんに言う。
「もう一度、みんなで集まろう。」
「うんっ。」
セーデくんの姿が浮かんだ。
もう一度、みんなで会おうよ───────
<h3>おかえりなさい</h3>
それからようやくの事で、家に到着した。
入る前、ベーアさんが言う。
「そういえば、そろそろ家の主さん帰ってきてもいい頃じゃ‥?」
確かに。彼女はずっと何処へ行ってるんだろう‥?
僕はとりあえず、家のドアをあけた。
すると‥。
中で一人の女性が姿勢よく座っていた。
「あれ‥あなたは‥。」
「お久しぶりです、ベーアさん、エビさん。」
そこに居たのはエーテさんだった。
「どうしてここに?」
「実は‥」
「みんなと別れてから、ワズィくんと途中まで居たんです。」
「そうだったんだ。ワズィくんは?」
「調べたいことがあるっていってました‥。なので、一緒にいれないって‥。」
「なるほど。」
ワズィくんは今、どこにいるんだろう‥。
「一人で居るのは心細かったのでここに来ました‥。でも、迷ってしまって‥。」
「そうだったんだ‥それでここに‥?」
「はい‥。でも、その前に、セーデさんと会ったんです。」
「え‥⁉セーデくんと。彼は何か言ってたの?」
「セーデさんは‥。」
「エーテさん久しぶり。」
「セーデさん!」
「話、色々あるかもしれないけど、ごめん。一つだけ伝えたいことがあるんだ。」
「何ですか‥?」
「みんなこの島に揃って、これから事実を知ることになるかもしれない。」
「事実‥?」
「うん‥。詳しいことは言えないけど。」
「私、今、迷ってて‥。」
「ここに居たら、助けてくれる人が来る。」
「そして、セーデさんは行ってしまいました‥。」
「そうだったんだ‥。」
「はい‥。そして、その場で待ってたら、女性の方が来て‥。」
「ここに連れてきてくれました。」
「もしかしたら、ねのさんかもしれない。用事すんだのかも。」
「ここの主の人‥?」
「うん。でも、ここに居ないみたいだけど。」
「その女性の方は、何かを探してるらしくて‥。私をここに連れてきて、行ってしまいました‥。」
「そうだったんだ‥。」
「はい‥。」
丁度、その時、家のドアが開いた。
その人は入って言った。
「エビさん久しぶりです。」
<h3>変わった少年</h3>
「ねのさん、久しぶりです。」
「この人が‥?」
「うん。」
「ベーアです。よろしくお願いします!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。エビさんのお友達の方ですか?」
「はい、そうです。」
「エビさんにはお世話になってます。」
「僕の方がお世話に‥。ところで、ねのさんはどこに行ってたんですか?」
「妖精さんを探しに!」
「妖精さん‥?見つからなかったんですか?」
「見つかりましたよ。」
そして、家の外に出て、誰かを連れてきた。
「この子が妖精さんですか?」
目の前に居たのは小学生くらいの少年だった。
「はい。」
ねのさんは微笑む。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
彼はとても元気に言った。
「名前はなんていうの?」
「僕はエビって言うんだ。君はなんていうの?」
「僕はゆうって言うんだ。」
もしかして‥。
僕は前に拾ったメモ帳を取り出す。
「これ、もしかして君の?」
「うん。そう!エビが拾ったんだ。」
「これってどういうことなの‥?」
「このメモ帳が明るいってこと!」
少年はそう言って笑った。
心の中で思った。よくわからないな‥。
「とりあえず、メモ帳返すよ。」
「拾ってくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
「あと、僕の大事な人をありがとう。」
「大事な人‥?」
ねのさんのことかな‥。
「そういえば、ねのさん‥。」
「はい、何でしょう。」
「これからどうすればいいのか困ってて‥。」
「そうですか‥。では、妖精さんに聞いてください。」
「え‥?」
「彼なら、あなたがより良い方向に進めるよう、協力してくれるかもしれません。」
ねのさんってこんな人だっけ‥?
そう思いつつも、僕はゆうという少年の元に行った。
「これから、僕、どうすればいいんだろう‥?」
「わからない。」
「そうだよね。」
当たり前の返答‥。
仕方ない、ベーアさんと話し合うか‥。
そう思うと、ゆうくんは言った。
「少しお話を聞かない?」
「お話って?」
「僕の昔話とかいろいろ。すぐに行かないんでしょ?」
「うん、そうだけど‥。」
シソウの事が浮かんだ。
彼は一人一人の過去には、みんな平等に価値があると言った。
「分かった。いいよ。」
「やった!ここじゃなく、外で話そう。」
「いいよ。」
僕は外に出て、ゆうくんの後をついていく。
<h3>歩んできた道の途中で①</h3>
ゆうくんはどんどんと進んでいった。
「どこへ行くの?」
「もうちょっと先に。」
あたりは一面、木。
振り返ると、家が見えなくなってる。
そして、僕は前をみた。
すると、彼は大きな木の前に立ってこちらを見てる。
「ここで話そう!」
「うん、分かった。」
そして、二人でその場に座った。
「まず、聞きたいんだけど、どうしてここに‥?」
「ぼく、木が好きなんだ。」
「そうなんだ。」
心の中で思う。そういう人も居るんだ。
「それで、はなしって‥?」
「うん。それのことなんだけど。」
「昔、友達と冒険してたんだ。」
「冒険‥?」
「うん。こういう森の中だったりをね。七不思議って言うのがあって。」
「そうなんだ。」
小さい頃ってこういう感じが多いのかな‥。
秘密基地を作ったりって、物語の中で聞いたことある‥。
僕はその頃、ずっとメモ帳の中の、シソウと語りあってたな。
「それで七不思議って‥?」
「色々あったんだ。言葉にするのは難しいけど、あの時はとても新鮮で。」
「前に進みたいって足が前に向かってた。」
「そっか。」
「でも、今でも、冒険は沢山してるよ。大切な人とね。」
「僕はずっと子供だから。」
ゆうくんはそう言って笑う。
ずっと子供か‥。
そういえば、シソウが何か言ってたな‥。
僕は少し考え疲れ、ついうとうとして、そのままその場に寝転んだ。
確か‥
好奇心や、子供心は創作にとって重要だ。
シソウはメモ帳の中でそう書いていた。
そして、こう続く。
そう思うきっかけになったのは、一人の少年と出会ってからだ。
彼はある日、僕の前にあらわれた。
悩んでいた僕に対し「ここは不老不死とか、妖精とかが居る世界!」
「悩んだり、悲しんだりばっかりじゃなく、楽しく生きてもいいじゃん!」と。
彼はそう機嫌良さそうに、通りすがっていった。
僕は思った。
悩むばっかりで忘れていたんだよ‥。
創作とは自由な世界。それはとても重要なこと‥。
僕は目をあけた。
すると、あたりは暗くて、夜になってるようだった。
寝てしまったのだろうか‥?
しかし、彼は‥?
僕はその場であたりをみた。