過去からの手紙⑥

<h3>やっと‥</h3>

そして、ようやく到着した‥。

リアル派が多く住む都市に‥。

近くには家が多く密集し、真ん中に行くに連れて、ビルが立ち並ぶ。

僕は近くに居た人に話しかけた。

「あの、ゲデーさんはどこにいるかわかりますか‥?」

「あなたはどなたですか‥?」

「エビって言います。」

「聞かない名前ですね。どうして会いたいんですか?」

「話したいことがあるんです。」

僕はその女性を見つめる。

「わかりました。」

その人は歩いて、大きなビルが立ち並ぶ方へ。

そして、その中で一番小さいところに立つと僕の方を向いた。

「この一番上におられますよ。今は分かりませんけど‥。」

「ありがとうございます。」

僕とベーアさんは中に入って、階段を上がっていった。

ベーアさんに話しかける。

「ようやく‥。」

「ね。」

「思えば、今まで、沢山運が良かった気がするよ。」

「たしかにね。穏健派、昔の友達、味方してくれる人‥」

「できることなら、このまま走っていきたい‥。」

「うん。できるなら‥そうしたいね‥。」

これからどうなるか分からない‥。

心の中には緊張感があった。

「僕ならできる!」

「あははっ。急にどうしたの?」

「自分を信じたいなって思って‥。」

「そう。いいねっ!」


階段を登り終えた先‥。

一つ部屋があって、僕らはその中に入った。

前にはこちらに背を向けて、一人の男が座っていた。

「シソウ派、来たか。」

左側から、聞いたことのある声が‥。

「ペールさん‥?」

「そうだ。そして、あのお方がリアル派のトップ。」


その人は僕の方を向く。

「私がゲデーだ。君達がシソウ派か?」

「はい、そうです。」

「そうか。話に入る前に一つ、聞きたいことがあるんだ。」
 
「なんですか?」

「君はシソウの子孫か?」

「いいえ、違います‥。」

「そうか。私はリアルの子孫だ。」

「え‥?」

「正確に言えばリアルの弟の子孫だがな。」

「そうだったんですか‥。」

「あぁ。つまり、私には強い理由がある。」

「君には何か理由があるのか?」

「あります。」

<h3>気持ち</h3>

「それはなんだ?」

「シソウの考えが好きだからです。」

「好きかどうかか‥残念ながら、私にはその概念はない。」

「ご先祖様を信仰するか、しないか。ただそれだけだ。」

「そうですか‥。でも‥」

「お互い、依存しない‥。例えば友人の関係にはなれませんか‥?」

「友人?もうこの世に居ない先祖様と‥か?」

「はい。僕はシソウを信じてる。しかし、逆に、シソウはわがままで自己中な人間だと思うこともある。」

「ただ、苦しまず、創作学を思ってられるんです。それは僕がシソウを友人のように思ってるからだとおもうんです。」

「ふはははっ。面白いことを言うな。先祖様と友人になること、それは考えになかった。」

「しかし、それは不可能なことだ。」

「どうして‥?」

「リアル派は現実を重視する。苦しい事実があったとしても、目をそらさず受け止めなければならない。」

「そうなんだ‥。」

「リアルの弟の言葉、聞いてるか?」

「うん‥。シソウ派に酷い目にあったって‥。」

「それが歴史だ。」

「たとえそうだったとしても‥。それが現実なのかな‥?」

「どういうことだ?」

「苦しいことも創作になり得る‥。ということです。」

「確にそうかもしれない。だが、これを事実でないと言えるのか?」

ゲデーさんはじっと僕を見る。

「シソウとリアルが話し合うずっと前、まだリアルが位を譲られてないときの事。」

「一度、シソウとリアルの父は話し合っていた。」

その話‥聞いたことがある‥。

歴史の授業でも、創作学の授業でも‥。

「その結果は分かってるだろう?」

「シソウは話し合いに失敗した‥。」

「そうだ。それがあって、どうして、その子であるリアルがよしとするのか?」

「そうだよね‥。」

僕は創作学で聞いた、過去を思い出していた。


リアルの父、そして、その前に立つ男‥

「君がシソウくんかな?」

「はい。そうです。」

「リアルと同い年なんだってね。」

シソウは頷く。

「そうか‥。それで、話はなんだったかな。」

このとき、シソウは強く決心していた。

そうメモ帳に書かれている。

<h3>今と過去</h3>

「確にシソウは失敗した。だけど、聞いた話だと、ちゃんと話し合ってた。」

「お互い、相手の考えを完全な悪だと否定せずに。」

「そうだろうな。リアルの父と彼は、この時はじめて会った。」

「そして、彼と最後まで話し合わず、リアルの父は去った。」

「そうだね‥。」

「リアルとシソウの事実は分からない。しかし、流れは分かる。」

「リアルの父は創作に批判的だった。」

「規制に関わっていたことからも分かるだろう。」

「でも‥。たとえ、親がそうだったとしても、子供も同じことを考えてるかは分からない‥。」

「それはそうだ。だが、では何故、リアル派というものができたのか?」

「分からない‥。」

「確定するものはないが、私という、リアル派を受け継いだものがいる。」

「私は幼い頃から、リアル派だった。受け継がれてきたこれを成し遂げる。」

ゲデーさんは言う。

「君の話を聞かせてくれないか。今まで何を得て来た。」

「シソウからもらったものはひとつもありません。」

「一つも?」

「はい。ですが、3つの目に見えないものをもらいました。」

「それはなんだ。」

「一つ目は優しさです。」

僕は深呼吸した。

「これはリアル派も、シソウ派も共通する。お互いに優しさがあった。」

「なるほど。例えばどこだと考える?」

「先祖様の悲しみに共感してること、学問は自分に気付くことでその人に何かを与えてくれる。」

「その二つは優しさだと思うんだ‥。」

「そうか。」

「2つめは平等。学問は能力ありなしはあるが平等だ。」

「君も、みんなも、平等にリアル派でしょう‥?」

「そうだな。学問、リアル派という集団もその2つを持ってる。」

「創作学は要らないではないか。」

「確に必要ないです。だけど、だからこそ必要なんです。」

「3つ目の要素‥それは夢。」

僕は真剣に、ゲデーさんを見た。

すると、直後、ペールさんが僕のそばに。

「夢か、前に俺に言ってたことだろう。」

「はい。そうです。」

「俺達はシソウ派に夢を奪われた。だからこそ、リアル派の夢はシソウ派をしりぞけ、返り咲くことなのだ。」

「ですよね。」

その時、僕の心の中には、光のような何かがふつふつと湧き上がってきていた。

<h3>受け継がれる希望</h3>

「ペール下がっていてくれ。」

「しかし、ゲデーさん‥。」

「この男はここまで来た。考えもある。シソウ派にとって代表の男かもしれない。」

「私には、今、彼と向き合う責任がある。」

「分かりました。」

「悪かったな。話を続けてくれないか。」

「はい。」

「夢、それもリアル派、学問にもあるでしょう。」

「そうだな。ペールの言ってた通り、もう一度過去の世界を取り戻すこと。」

「それがリアル派の夢だ。」

「なら、一緒に行きましょう。」
 
「なに?」

「夢って言うのはきっと、何かに囚われることじゃないと思うんです。」

「とらわれる‥か。」

「創作は理想を追い求めてもいい。自由なものです。」

「自由はみんなに平等にあります。そして、それは優しさを強くその中に持っている。」

「それが見えない3つのものか?」

「はい、そして、これが今の僕の夢です。」

「リアル派の人と一緒に、理想の未来を作る。お互い悲しまず、自分の進みたいように進める。

僕はそうしたい。」  

ゲデーさんはただ一言。

「分かった。」

ペールさんが近付く。「どういうことですか?」

「ペール、悪いな。」

「シソウ派は‥。」

「そうだ。しかし、リアル派としての思いはそれじゃなかっただろう。」

「そうですね。」

二人はそう言って黙った。

「解決したのかな‥?」

「もしかしたら‥。」

ただ、話してる最中、僕は自分の中に何かを感じていた。

あれは何だったんだろうか‥?

────────

「悪いが、帰らせてもらうよ。」   

リアルの父はシソウに背を向けた。

そして、去ろうとする途中‥。

シソウは言った。

「僕には夢がある!」

リアルの父は一瞬、足を止める。 

「僕、夢について、考えたんです。」

「夢って、きっと、囚われたり、苦しんだりすることじゃないと思うんです。」

「だからこそ、今、楽しくいようって。これから待つ、楽しい未来のために。」

そのままリアルの父は進んで行った

────────

<h3>リアル派の意思</h3>

「シソウ派の男。」

「なんですか?」

「ここまでよく来た。しかし、残念ながら、私にはどうすることもできない。」

「どういうことですか‥?」

「リアル派のトップでありながら、その中心ではない。」

「つまり、私が、リアル派をどうこうすることもできないということだ。」

「リアル派を動かす人が、他に居るってことですか‥?」

「そうだ。」

「それは誰なんですか‥?」

「私は言えない。彼がリアル派、そして、リアルの思想を本当に受け継いだ人間だからだ。」

「え‥!?」

その時、何故か、近くの窓が気になった。

ここから少し遠くのビルの天井に一人が居て、背を向けて去っていく姿が‥。

リアルの思想を受け継いだ人‥。誰なんだろう‥。

その時、一人の友人の顔が、僕の頭の中に一瞬浮かんだ。

「リアル派とシソウ派、どちらも子孫以外の男が代表か。」

「僕は代表じゃないですよ。」

「そうか。では何故、シソウを思う。」

「子供の頃から一緒に過ごした友人だから‥かもしれません。」

「友人か‥。」

「はい。」

「少しリアル派の話をしていいか。」

「いいですよ。」

「リアル派はリアルの弟が作った。」

「そうなんですか?」

「あぁ。リアルではなく、私の先祖がな。」

「では何故‥?」

「私の父、私の祖父もそうだったことだが‥。」

「リアル派内部からはシソウ派を攻めようと、もう一度世界を。とたまに声があがったそうだ。」

「しかし、ずっと動かなかった。今を守ることを優先していたのだ。」

「守ること‥?」

「あぁ、私とペールも、この都市や町を優先し、リアル派の動きにずっと参加してなかった。」

僕は思った。

確に‥。ペールさんたちはみんな町に居たようだった‥。

この都市にも多くの人が‥。

「形式上はシソウ派を‥と言っていたが、実際はどうなってるかペールに聞くばかりで何もしてない。」

「トップとしてあるまじきものだが、こうして受け継がれてきた。」

「そうなんですね。」

「あぁ、そして、友人のことだが‥」

「はい。」

「もし友人と見れていたら、また違った形で彼らを思うことができたのだろうか?」

「分かりません。でも、僕は思います。それはいつでもできるって。」

「そうか。」

<h3>帰り道</h3>

それから少しして、僕とベーアさんは帰ることにした。

「何事もなくて良かったね。」

「うん。だけど、リアル派を引き継いだ人って誰なんだろう‥。」

「誰なんだろうね‥。」

「私、エビなら大丈夫って思ってるから。」

「ありがとう。」

「それで、これからどうするの?」

「まだ考えついてないんだ‥。一旦、ワズィ君達とも会いたいけど‥。」

「確に二人が心配だよね‥。」

「とりあえず、家に戻らないかな。」

「うん、分かった。そうしよう!」


───────

「ペール。」

「何でしょう。」

「悪かったな。いえ、いいんです。」

「元から分かってましたから。」

「矢張り凄いな、君は。」

「ところで、またあらためて確認したいことがあるんだ。」

「はい。何でしょう。」

「現防実衛9は、今、どうなってる。」

「強硬派3人、強硬派だったのが2人、中立1人、穏健派3人です。」

「もしかしたら、元から中立に分類されていたのかもしれません。」

「中立はチェーシャか?」

「はい。」

「学校につとめ、内部から少しずつ変えていく。長い間それを考えていた。」

「凄い女性だよ。」

「そうですね。しかし、どうして続けられていたのでしょうか?」

「それはつまり、リアル派で、受け継がれてきた歴史と違うところがあったのかもしれないな。」

「シソウ派は完全なる悪ではないと‥?」
 
「さぁ、これから分かることだろう。シソウ派が残るかそれとも、あの男が考える未来になるか。」

「そして、また違った未来になるのか。」

「例えそうだったとしても、私達は変わらないでしょう。」

「そうだな。」

「ペール、君が来る前、一人の男が私の前に来たんだ。」

「そうだったんですか。」

「変わった男だった。少しここに滞在してたようだが‥」
 
「あの男はなんと言っていたかな。」

───────

一人の女性が、森の中進んで行った。
 
まわりをぐるりと見て、何かを探している。

すると、ガサッと音がして、その方に向かった。

女性は一言つぶやく。

「やっと見つけましたよ、妖精さん。」

<h3>ワズィくんとの過去</h3>

家に帰る途中、ベーアさんが言った。

「そういえば、懐かしいね。」

「何が?」

「最初に5人で集まったときのこと。」

「たしかにね‥。」

「セーデくんはやっぱり分からないけど‥、みんなで集まれるといいね。」

「うん。」

それから沈黙が続いた。

ベーアさんも何か考えてることがあるのかも‥。

少し僕はワズィくんたちのことを考えた。

───────

授業中、席が近かった男の人がつぶやく。

「シソウ‥。」

僕は思わず、その人に話しかけた。

「シソウに興味があるんですか?」

「まぁ。」

そのときは授業中だったためよく話せなかったが、そこから少しずつ、彼と関わるようになった。

ある日のこと。

「エビくん、創作学やってるの?」

「うん。やってるけど‥。どうしたの?」

「いいや、聞いてみただけなんだけど、よくメモ帳みてるよね。」

「それも何か関係あるの?」

「あぁ、これは‥シソウの日記なんだ。」

「どうしてそれを君が?」

「子供の頃拾って、そのままになってるんだ。」

「そうか。」

「大事なものなんだ。君も何かあるの?」

「君にとってのメモ帳みたいなものかな。あるよ。」

「『王子様との旅』って言うんだけど。」

「絵本だっけ。」

「うん。とても興味があって。」

このとき、彼も創作に興味があるんだと心の中で思った。


それから、また時が経って彼は言った。

「エビくん、良ければ、人を集めて創作者って言うのしないかな?」

「いいね、やりたい!セーデくんとか色々誘って。」

とても楽しい時間が始まる

その時、そう思っていたし、実際に楽しい日々だった

ただ‥。

今、この現状がある。

僕は考えることから離れた。

そして、ベーアさんに言う。

「もう一度、みんなで集まろう。」

「うんっ。」

セーデくんの姿が浮かんだ。

もう一度、みんなで会おうよ───────

<h3>おかえりなさい</h3>

それからようやくの事で、家に到着した。

入る前、ベーアさんが言う。

「そういえば、そろそろ家の主さん帰ってきてもいい頃じゃ‥?」

確かに。彼女はずっと何処へ行ってるんだろう‥?

僕はとりあえず、家のドアをあけた。

すると‥。

中で一人の女性が姿勢よく座っていた。

「あれ‥あなたは‥。」

「お久しぶりです、ベーアさん、エビさん。」

そこに居たのはエーテさんだった。

「どうしてここに?」

「実は‥」

「みんなと別れてから、ワズィくんと途中まで居たんです。」

「そうだったんだ。ワズィくんは?」

「調べたいことがあるっていってました‥。なので、一緒にいれないって‥。」

「なるほど。」

ワズィくんは今、どこにいるんだろう‥。

「一人で居るのは心細かったのでここに来ました‥。でも、迷ってしまって‥。」

「そうだったんだ‥それでここに‥?」

「はい‥。でも、その前に、セーデさんと会ったんです。」

「え‥⁉セーデくんと。彼は何か言ってたの?」

「セーデさんは‥。」


「エーテさん久しぶり。」

「セーデさん!」

「話、色々あるかもしれないけど、ごめん。一つだけ伝えたいことがあるんだ。」

「何ですか‥?」

「みんなこの島に揃って、これから事実を知ることになるかもしれない。」

「事実‥?」

「うん‥。詳しいことは言えないけど。」

「私、今、迷ってて‥。」

「ここに居たら、助けてくれる人が来る。」


「そして、セーデさんは行ってしまいました‥。」

「そうだったんだ‥。」

「はい‥。そして、その場で待ってたら、女性の方が来て‥。」

「ここに連れてきてくれました。」

「もしかしたら、ねのさんかもしれない。用事すんだのかも。」

「ここの主の人‥?」

「うん。でも、ここに居ないみたいだけど。」

「その女性の方は、何かを探してるらしくて‥。私をここに連れてきて、行ってしまいました‥。」

「そうだったんだ‥。」

「はい‥。」

丁度、その時、家のドアが開いた。

その人は入って言った。

「エビさん久しぶりです。」

<h3>変わった少年</h3>

「ねのさん、久しぶりです。」 

「この人が‥?」

「うん。」 

「ベーアです。よろしくお願いします!」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。エビさんのお友達の方ですか?」

「はい、そうです。」

「エビさんにはお世話になってます。」

「僕の方がお世話に‥。ところで、ねのさんはどこに行ってたんですか?」

妖精さんを探しに!」

妖精さん‥?見つからなかったんですか?」

「見つかりましたよ。」

そして、家の外に出て、誰かを連れてきた。

「この子が妖精さんですか?」

目の前に居たのは小学生くらいの少年だった。

「はい。」

ねのさんは微笑む。

「こんにちは。」

「こんにちは。」

彼はとても元気に言った。

「名前はなんていうの?」

「僕はエビって言うんだ。君はなんていうの?」

「僕はゆうって言うんだ。」

もしかして‥。

僕は前に拾ったメモ帳を取り出す。

「これ、もしかして君の?」

「うん。そう!エビが拾ったんだ。」

「これってどういうことなの‥?」

「このメモ帳が明るいってこと!」

少年はそう言って笑った。

心の中で思った。よくわからないな‥。

「とりあえず、メモ帳返すよ。」

「拾ってくれてありがとう。」

「どういたしまして。」

「あと、僕の大事な人をありがとう。」

「大事な人‥?」

ねのさんのことかな‥。

「そういえば、ねのさん‥。」

「はい、何でしょう。」

「これからどうすればいいのか困ってて‥。」

「そうですか‥。では、妖精さんに聞いてください。」

「え‥?」

「彼なら、あなたがより良い方向に進めるよう、協力してくれるかもしれません。」

ねのさんってこんな人だっけ‥?

そう思いつつも、僕はゆうという少年の元に行った。

「これから、僕、どうすればいいんだろう‥?」

「わからない。」

「そうだよね。」

当たり前の返答‥。

仕方ない、ベーアさんと話し合うか‥。

そう思うと、ゆうくんは言った。

「少しお話を聞かない?」

「お話って?」

「僕の昔話とかいろいろ。すぐに行かないんでしょ?」

「うん、そうだけど‥。」

シソウの事が浮かんだ。

彼は一人一人の過去には、みんな平等に価値があると言った。

「分かった。いいよ。」

「やった!ここじゃなく、外で話そう。」

「いいよ。」

僕は外に出て、ゆうくんの後をついていく。

<h3>歩んできた道の途中で①</h3>

ゆうくんはどんどんと進んでいった。

「どこへ行くの?」

「もうちょっと先に。」

あたりは一面、木。

振り返ると、家が見えなくなってる。

そして、僕は前をみた。

すると、彼は大きな木の前に立ってこちらを見てる。

「ここで話そう!」

「うん、分かった。」

そして、二人でその場に座った。

「まず、聞きたいんだけど、どうしてここに‥?」

「ぼく、木が好きなんだ。」

「そうなんだ。」

心の中で思う。そういう人も居るんだ。

「それで、はなしって‥?」

「うん。それのことなんだけど。」

「昔、友達と冒険してたんだ。」

「冒険‥?」

「うん。こういう森の中だったりをね。七不思議って言うのがあって。」

「そうなんだ。」

小さい頃ってこういう感じが多いのかな‥。

秘密基地を作ったりって、物語の中で聞いたことある‥。

僕はその頃、ずっとメモ帳の中の、シソウと語りあってたな。

「それで七不思議って‥?」

「色々あったんだ。言葉にするのは難しいけど、あの時はとても新鮮で。」

「前に進みたいって足が前に向かってた。」

「そっか。」

「でも、今でも、冒険は沢山してるよ。大切な人とね。」

「僕はずっと子供だから。」

ゆうくんはそう言って笑う。

ずっと子供か‥。

そういえば、シソウが何か言ってたな‥。

僕は少し考え疲れ、ついうとうとして、そのままその場に寝転んだ。

確か‥

好奇心や、子供心は創作にとって重要だ。

シソウはメモ帳の中でそう書いていた。

そして、こう続く。

そう思うきっかけになったのは、一人の少年と出会ってからだ。

彼はある日、僕の前にあらわれた。

悩んでいた僕に対し「ここは不老不死とか、妖精とかが居る世界!」

「悩んだり、悲しんだりばっかりじゃなく、楽しく生きてもいいじゃん!」と。

彼はそう機嫌良さそうに、通りすがっていった。

僕は思った。

悩むばっかりで忘れていたんだよ‥。

創作とは自由な世界。それはとても重要なこと‥。

僕は目をあけた。

すると、あたりは暗くて、夜になってるようだった。

寝てしまったのだろうか‥?

しかし、彼は‥?

僕はその場であたりをみた。