過去からの手紙④

<h3>道の途中で</h3>

「ゲデーさん久しぶりです。」

「あぁ、ペールか。今、現防実衛9はどうなってる。」

「私含め5人が強硬派、1人が中立派、3人が穏健派です。」

「そうか。戦況はどうなってる。」

「上々です。国も、大学も、リアル派で浸食しつつあると。」

「これでご先祖様が望んでいた世界にもう一度戻れますね。」

「どうだろうな。しかし、ペール、いつも感謝している。」

「いえいえ、私はゲデーさんを、そしてご先祖様を尊敬しているので。」

「もう一度、取り戻そう。」

「はい。」

───────

僕とベーアさんが歩いて向かう途中のこと。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん。」

小学生くらいの女の子が座っていた。

ベーアさんは女の子に近付いていく。

「どうしたの、迷子?」

「わかんない。」

「親御さんは?」

「居ないよ!」

何故かその子はとても元気に言った。

近付いてよく見てみると‥

「どこかであった気が‥。」

「お兄ちゃんこんにちは。」

「こんにちは。」

「ねぇねぇ!二人とも。お話を聞いて!」

ベーアさんは「うん。いいよ」と微笑んだ。


むかしむかし、あるところに一人の男の子がいました。

その子はキラキラした世界に住んでます。

いつも眩しくて、太陽みたいにあたたかい世界。

男の子は毎日が幸せでした。

その子の周りにほしいものも沢山集まっていきます。

全部が全部、男の子にとって大切なものでした。

みんなに平等にそれはあって‥。

とても大事で‥。

女の子はそこまで話すと謝った。「ごめんなさい。もう思いつかない。」

「ううん。いいの。あなたが考えたの?」

「お兄ちゃんがね、昔、物語を書いてて。」

「私は見様見真似でね。」

「いいね。それはきっと、あなたの大切なもの‥。」

「お姉ちゃん、ありがとう!」

女の子の笑顔を見て、ベーアさんはそっと微笑んだ。

「お兄ちゃんより長く生きてないから本当のことは分からないの‥。」

「でもね、嬉しい!」

僕は心の中で思った。長く生きてるとは言っても、一年とかそのくらいだろう。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんまたね!」

女の子はそう言って走っていった。

「大丈夫なの‥?」

「うん、お兄ちゃんが近くで待ってるの!」

─────

<h3>変化</h3>

「ベーアさんは優しいね」

「え‥?」

「さっき、あの子に。」

「あぁ、それね‥。」

「創作学の考え方で好きだった。想像ってとても大事ってこと。」

「私が創作学がいいなって思う理由‥それなんだ。」

「なるほど。」

「みんなが楽しくいろいろなことを考えられたらなって。」

彼女はそう言って笑った。

そうだった‥。メモ帳にも書いてある。

こうして生きてると、あらためて知るんだな‥。


ちつさんが言ってた場所に到着した。

目の前には大きな建物がある。

「ここにちつさんが言ってた‥?」

「そうかも‥。」

僕たちが進もうとすると、中から一人の男が出てきた。

「見ない顔ですね。何の用ですか?」

「現防実衛の方に会いにきました。話し合いたくて。」

「ボスに用が。しかし、今は出かけていません。」

「そうですか‥。」

聞いてたより、危なくなさそう‥。

「今日、明日には帰ってくるでしょう。」

「ところで、何の話があると言うんですか?」

「シソウ派について話し合いたい。」

「まさか、あなたはシソウ派の?」

「そうです。」

勇気を出して言ったが、彼は特に驚く素振りを見せなかった。

「過激派と聞いたんですけど、何もしないんですね?」

「過激派?

確かに私達はリアル派の中でも、活発に動いてる方だ。」

「しかし、それはあくまで“話し合い”についてであり、実際に会うことで解決しようとしてる。」

「なるほど‥。」

最初にあったディフくんみたいな感じかな‥。

「あなたもボスと話し合えば、リアル派に属することとなるでしょう。」

僕は現防実衛の一人が帰ってくるまで、ベーアさんと待つことにした。

「どんな人かな‥?」

「分からない‥だけど、いい人だったらいいよね。」

「うん‥。そうだね‥。」

「思えば僕はリアル派がしてきたことについて、言葉でしか聞いたことがなかった。」

「創作者狩りがあるとか‥。」

「確かに‥。私も実際に見たことはないよ‥。」

つまり、想像だけで、判断していた‥。

自由な想像を許されていたはずが、自らの手でその自由さを‥。

そして、決意した。

彼らのことをちゃんと知りたい。

<h3>焦る心</h3>

僕はそれから、ベーアさんと話したりメモ帳を見たり時間を過ごしていると‥

現防実衛9が集まると聞いていた建物が何やら騒がしくなった。

「帰ってきたのかな‥?」

「多分‥行ってみよう。」

向かうと今度は大勢の人に囲まれた。

「見ない顔だな。何者だ?」

ベーアさんは僕の後ろで怯えている。

「旅のものです‥。」

今はまずい‥そう思った僕は大事なことを言えなかった。

すると、前に話していた男が出てくる。

「その二人はシソウ派です。
現防実衛9に会いたいと言っていました。」

「シソウ派だって‥何故ここに?」

「つまり、ボスに‥?」

驚き話す声が‥。

「そうでしたよね?」

笑いながら男は僕を見る。

「そう。僕はシソウ派。リアル派の人達とわかり合うためにここに来た。」

「わかり合う?そんなことができるとでも。」

すると、「何をしている?」と。その声に男達は口を閉じた。

ただ、僕はその声を‥昔に1度、聞いたことがある‥。

「ボス。この男、シソウ派です。」

手をさして言った。

「そうか。」

ボスと呼ばれる男が僕の前にやってきた。

「君は‥?」

その時、セーデくんの顔が頭をよぎる。

「久しぶりだな。エビよ。」

「君はユヴェくん‥?」

ベーアさんは小さな声で話しかけた。

「知ってる人なの‥?」

「うん、大学時代に‥。」

そうだ‥。彼は創作学の授業をとっていたが、ほとんど出なかった。

紹介されなければ、僕も彼のことを知ることはなかっただろう‥。

しかし‥

「どうして君が‥?」

「リアル派に居るってことか?」

「うん‥。」

「昔から僕はリアル派だった。エビと出会う前からな。」

「それじゃあ‥。」

僕の心の中に嫌な予感がした‥。

「何はどうあれ、これから話し合うんだろう?」

「うん‥だけど、ちょっと待ってほしい‥。」

「いいだろう。いつするかはエビに任せよう。」

「ありがとう‥。」

「ただ、一つだけ聞かせてほしい。」

「何を?」

「セーデくんは今どうしてる‥?生きてるの‥?」

「どうだろうな。まぁ、話がすんだら教えるさ。」

「うん‥わかった‥。」

それから、時間と場所を決めて、あらためて二人で話し合おうとなった。

<h3>昔の友達</h3>

帰る最中のこと。

「ベーアさん、巻き込んでごめん‥。」

「ううん。大丈夫‥。二人で話すって言ってたから‥その時、家で待ってるね‥。」

「わかった。ありがとう。」

「ううん。いいの。」

「ところで、ユヴェさんだけど‥。」

「うん‥。」

「昔のこと、教えて欲しいの‥。」

「分かった。」


セーデくんと出会って間もない頃を思い出した。

「今日は紹介したい友達が居るんだ。」

後ろから彼が出てくる。

「よろしく。」

「こちらこそ、よろしく。」

「彼はユヴェくん。そして、こっちがエビくんって言うんだ。」

「ユヴェくんは僕と同じで、創作学に興味があって。」

「付き合いも結構長いんだ。」

仲良くなれそう。僕は心の中で思った。

「セーデくんから、話を聞いてたよ。」

「創作学がとても好きなんだよね。」

「うん。」

「どんなところが好きなの?」

「なんだろう、考えの自由を許してくれるってところかな‥。ユヴェくんは?」

「言葉で言い表すのは難しいかもしれない。」

その時はそういう捉え方もあるんだろうな‥

そう思った。

ただ、仲良くなれそう‥そうは思っても、関わる時間が少なかった。

創作学の授業の時、彼が居たのは最初だけ。

ずっと顔を出さなかった。

ある日、気になった時があって、セーデくんに聞いた。

すると彼は言う。

「彼も色々あるんだと思う。」

ただ、それだけを言ってた。

たまにすれ違って話すことはあったが、それ以上深まることはなかった。


「そうなんだ‥。」

悲しい声でベーアさんは頷く。

「セーデくんに紹介してもらったんだね‥?」

「うん。彼とは仲が良かったみたいだから。」

「今、どうしてるんだろうね‥。」

「分からない‥。無事であることを願うしか‥。」

「そうだよね‥。」

「でも、エビ、教えてくれてありがとう。」

「ユヴェくんって創作学に興味があったんでしょ‥?
もしかしたら、味方になってもらえるかも‥。」

「そうだったらいいね。ベーアさんありがとう。」

そうして話してるうちに、家に到着した。

<h3>過去、そして未来との会話</h3>

家について、僕はいつの間にか、メモ帳を開いていた。

ハッとして顔をあげる。

習慣化してる。

このメモ帳はシソウのもの。

そして、ここにはシソウの過去、希望、創作学についてや、ルールなど様々なことが書かれてる。

からしたらきっとどうでもいいようなことなのに、僕はこんなふうに何度も何度も読み返した。

「まぁ、いいか。」

僕はまたメモ帳を読んだ。

そして‥。

1ページに止まった。

そこに書かれていたもの‥。

そうだ‥僕は‥。


創作規制が緩和されたが、依然として、創作に対する偏見が残ってる。

色々考えてはいた。

しかし‥

行動には移せなかった。僕自身が行動力のある人間ではなかったから‥。

時間が経って、また留学場に行くことになった。

そこにあったのは‥

高校のときと変わらない何かがあった‥。

そこで僕は今まで考えていたことを話した。

彼らはそれを肯定したり、新しい考えを教えてくれたり‥。

いつもそうなんだ‥。


改めて読み返してみると、僕はシソウ‥そして、創作学が好きなんだって思った。

このメモ帳は僕にとって、沢山のことを教えてくれるもの。

ずっと、変わらず、そこにあり続ける大切なもの‥。

そして、僕はその場で呟いた。

「連れて行くよ。」

僕は立ち上がる。

そして、ベーアさんの元に。

「行くの?」

「うん。僕は彼と話し合う。」

そう‥例え、悲しい過去があったとしても‥。

理想の未来を信じるから‥。

ベーアさんは言った。

「あなたなら大丈夫。」

僕は家を発った。

ここから少し長い道のり。

しかし、創作をしてる僕にとって、それはとても幸せな時間。

シソウもそうだったように、沢山の物語が浮かんでくる。

時には悲しい物語もあり、とても楽しい物語もあって‥。

僕は前に足を出した。

ただ、進んでいく

───────

到着した。

ユヴェくんは僕に近付いてくる。

「来たか。」

「うん。」

「ここには前も言ったとおり、僕の仲間は来ない。」

「つまり、エビと僕、二人だけの話し合いの場ということだ。」

「分かった。」

「じゃあ、始めようか。」

<h3>何故‥?</h3>

「僕は子供の頃からリアル派だった。」

「え‥?」

「祖父も親も全員がリアル派。」

「そうだったんだ。」

「その僕を、シソウ派に引き込めるか?」

「シソウ派に引き込む‥?」

「そのために話し合うんだろう?」

「僕はわかり合うために‥」

「そんなことできるはずないだろう。」

「どうして‥?」

「エビ、君は知ってるはずだ。学校で歴史を学んでるのならな。」

「シソウ派のせいでリアル派が国を追い出された‥?」

「そうだ。」

「でも、戻れるんじゃないの‥?君も学校の生徒だったよね。」

「いいや、僕は生徒じゃなかった。チェーシャ先生に頼んで数度、学校に行かせてもらっていただけだ。」

「そうだったんだ‥。」

「でも、セーデくんのことは‥?彼も創作学が好きだって。」

彼は一瞬、目を逸した。

「生きてるかもわからないんだろう?そんな男の話を出すなよ。」

「ごめん‥。」

「質問は終わりか?」

「うん‥。」

「エビ、これから君を、リアル派に引き込むことにしよう。」

「何をするの‥?」

「事実に基づく話し合いによって。」

彼は口を開く。

「シソウが言った、学問とは自己中な生き物だと。」

「自分に気付いてもらわないと、人に道具や、一つの真実を教えてはくれない。」

「シソウはこうとも言ってる。」

「学問はその過程が楽しめれば、いい友人になれる。」

「現実は地獄、頭の中は天国。シソウはこうとも言ってる。」

「もし、その天国をより良いものとできるなら、それに伴い地獄も天国に変わる。」

「言葉には意味はない。とシソウは言った。」

「そこに含まれる意味だったり、抽象的なそれらが大事なものであるから‥シソウはそうとも言ってる。」

「そうか。シソウのことをよく知ってるようだな。」

「どれだけ話し合っても無駄だということは分かった。」

「子供からずっと、シソウとメモ帳の中で繋がってきたから‥。」

「そうか、それは僕も同じだ。リアル派に囲まれ生きてきた。」

「学問こそ、正しく。創作は不完全なるもの。」

「それが人を救いはしない。」

「何かあったの‥?」

<h3>今まで</h3>

子供の時‥。

「僕の代で、リアル派は終わりにしようと思う。」

と言った。

周りの者はとても驚いていた。

「それはどういうことですか?」

「先祖様の無念をはらす。シソウ派を無くし、リアル派の世界をもう一度‥。」

称賛の声が巻き起こる。

僕は子供の頃、そう決めた。

しかし‥

それから10年経ち、何事もなく時間が過ぎた。

そして僕は例の国に向かう。

最初は、周りの者たちがよくないと否定した。

チェーシャさん伝手で、少しだけ学校体験できる。

しかし、敵地にいくこと。そう簡単に納得するはずもなかった。

しかも、過去にあんなことがあったなら、なおさら‥

「学校には味方がいる。」

「チェーシャさんでしょう?それだけでは‥」

「いいや、他にも同い年のリアル派の仲間がいる。」


今日になるまで、長い時間が過ぎる。

行動する気力は少し薄れてしまった。

しかし、まだだ‥。

過去に何があろうと、僕は昔決めたことを成し遂げる。

シソウ派の学問をするのはそのためだ。

───────

大学に行き、授業が始まった。

「まずはじめに、創作学とは、自由な学問です。」

学問が自由‥?

決まったことを理解する。

それが学問じゃないのか。

「あなた達が考えること全てに価値があります。それはなんであろうと平等に。」

そんな訳がない‥。

僕は授業を最後まで聞かずに退出した。

あれは学問じゃない。

それから、チェーシャさんの元に行った。

「今日はありがとうございます。」

「どうでしたか?」

「自分にはあわなかった。ほとんど聞かずに席を立ちました。」

「そうでしたか。他にも授業はあるので、創作学以外も良ければ参加してみてください。」

「はい。機会があれば‥」

それから時が経ち、他の授業にも参加した。

そして、気付いたことがある。

シソウ派の考えに毒されているのは、“創作学”だけだということ。

つまり、変えるとすれば創作学。ただその一つだけ。

この事実を知れたこと。

僕は心の中に喜びがこみ上げた。

もう一度、リアル派の世界を‥。

その時、一人の男が話しかけてきた。

<h3>変わらない真実</h3>

「君、ユヴェくんだよね?」

この男、見たことがある‥

名前は確か‥

「エビ。」

「そう、僕はエビ。久しぶり。」

「最近、創作学の授業出てないみたいだけど、何かあったの?」

「色々あって。」

「そうなんだ。」

「うん。ところで、エビ。」

「何?」

「創作学は楽しいか?」

「うん。とっても。昔から好きだったから。」

「そうか。」

「ユヴェくんもいつでも一緒に学ぼう!」

「気が向いたら‥。」

────────

「ふっ。何もない。」

「子供の時から悪だと思っていた考え。」

「何が自由、何が平等だ。君たちはただ、抽象的な言葉で逃げているだけだろう。」

僕はユヴェくんの言葉に頷く。

「僕は知っている。その自由が人にとっては自由でなく、その平等が他にとっては平等でないことを。」

「そうかもしれない‥。だけど、だからこそ、変わらないものだと思うんだ。」

「変わらないもの‥?」

「その人にとっての自由、その人にとっての平等。それらはあっていい。」

「いくつも存在していいと思うんだよ。人それぞれの考えは特別なもの‥。」

「それもシソウの言葉か?」

「うん。」

「君はシソウが好きなんだな。」

「あぁ、そうだよ。」

「俺もリアル派が好きだ。
学問もそう。だからこそ、変えなければいけない。」

「僕も変えたい。」

「なんだと‥?」

「シソウ派とリアル派平等な関係に‥」

「そんなことできないだろ。」

「そうかもしれない。だけど、やりたいんだ。」

「誰も悲しまなくてよくて、平等に楽しく自分の道へ進んでいける。そんな世界に。」

「君は‥。」

一瞬、エビと誰かの姿が重なった。

その男は手を差し伸べた。

「ともに作っていきたいんだ。」


「分かった。エビ、君は進みたい方に進めばいい。」

「え‥?」

「僕はもう、君をリアル派に入れようなんて思わない。ただ、今までのことを辞めるつもりもない。」

「つまり、成り行きに任せる。」

「分かったよ。」

「そして、リアル派のトップに、エビのことを伝えておく。」

「うん‥。」

「それから最後に教えておこう。セーデは生きている。」

「え‥?」

嬉しいはずが、僕の中に複雑な気持ちがあった。

<h3>行こう!</h3>

僕はベーアさんの待つ家に帰った。

「エビ、おかえりなさい。」

「ただいま。」

とても安心した表情で僕を見る。

「無事だったんだね。良かった。」


それから、起こったことを彼女に話した。

「そうだったんだ‥。」

「うん。」

「でも、セーデくん無事って良かったね。」

「そこは安心した。」

「ユヴェくんのこと、残念だったね‥。」

「彼がリアル派を好きって思う気持ち、大事だから、僕は嬉しいんだ。」

「そう‥。でも、ユヴェくん伝えるんでしょ‥?」

「確かに‥。ここには居られないかも‥。」

「出かけよっか。」

「うん。だけど、ベーアさんはここに居てもいいんだよ。」

「大丈夫。私が思ってるのは、シソウ派のこと。できる限り協力したいんだ。」

「ありがとう‥。ただ、危険になったら逃げて欲しい。」

リアル派と関わってきた感じだと、その心配はなさそうだけど‥。

「うん、分かった。エビもそのときは逃げて!」

「そうする!」

それから、二人でまたどこかへ旅立った。

「どこに行く?」

「えっと‥。今まで町とか、村とか、人の集まる場所に行ってなかったから」

「そういう場所に行きたいなって。」

「それなら場所覚えてるよ!」

「ありがとう!そこに行こう!」

「分かった!」

僕はベーアさんのあとをついていった。

「名前はえる町だって。」

「そうなんだ。」

「どんなところかな。」

「わからない。」

「こんなときは‥創作じゃない?」

「確かに!ベーアさんはどんな町だと思う?」

「私はね、えるといえばエール!」

「みんなお互い応援しあってる町みたいな!」

「おぉー。いいね。」

「ふふっ。ありがとー。エビはどんな町だと思う?」

「僕は‥やっぱり、国にあったような町が多いんじゃないかなって。」

「それもあるよね。」

「ごめん。今、考えられる気分じゃなくて‥。」

「ううん。こちらこそごめんね。」

「創作学好きなのに考えられないのは‥。」

「それも創作だよっ。」

ベーアさんはニコッと笑う。

「確かにそうだったね。」

僕は心の中で強く思った。

ありがとうと‥

「行こっか!」

「うん!」

<h3>もう一人</h3>

道の途中、ベーアさんはたずねた。

「ね!思ったんだけど。」

「どうしたの?」

「エーテさんとはいつ知り合ったの?」

「いつかは忘れちゃったけど、彼女もセーデくんが紹介してくれたんだ。」


セーデくんがやってきて言った。

「また紹介したい人が居るんだ。」

「いつもありがとう。」

セーデくんの後ろから、一人の女性が出てくる。

「この人はエーテさん。」

「よろしくお願いします!」

「こちらこそ!」

「創作学はあんまり知らないらしいんだけど、歴史や、神話に興味があるらしくて。」

「歴史と神話に?創作にとても良さそう!」

「はいっ!」


「そんな感じだったんだね。」

「うん。それから話すようになって。いい人だなって。」

「確かにエーテさんはいい人だよね。」

「前に私がお話したときにね。」


「こんにちは、エーテさん。」

「こんにちは、ベーアさん」

ぬいぐるみを抱きしめてる。

「何してたの?」
 
「友達と遊んでたんです。紹介しますね。」

「この子、友達のクマさんです。」

口を動かさないように「よろしくまくま。」と言う。

「うん‥。よろしくね、くまさん。」


「と言うようなことがあったの。」
 
「そうだったんだ。」

「そういえば、エーテさん、ワズィくんとも親交あったよね。」

「確かに。別れるとき、一緒に出て行ったから、もしかしたら一緒に居るのかも。」

「二人とも何してるのかな‥。」

「ね。」

そして、沈黙がながれる。

「ワズィくんのことなんだけど‥」

「懐かしいね。彼が誘ってくれたんだ。」

「うん。ワズィくんだけじゃなく、エーテさんも創作学してなかったよね。」

「うん。だけど、二人と一緒にいる時、想像力があって凄いなって思うこと多かったよ。」

「そうなんだ。」

「特にエーテさんはね、神話と歴史とかそれらの物語を交えてとても面白い話をしてた。」

「たしかにね。ワズィくんも、例の物語とか、色々使ってたね。」

「逆に‥そう考えると、創作学って必要なのかなって‥。」

とても悲しそうな顔をする。

「わからない。だけど、僕は必要だと思うよ。」

「悲しいとき、支えてくれるのって、今、自分が持ってないものじゃないかな?」