顧問①
とても暗い闇の中、すすむは前へと向かった。
すると、座った男の人が目の前に現れてきた。
彼はそっと「すすむ、久しぶり。」と言う。
すすむは「久しぶり」と返した。
「学校はどうだった?」
すすむはとても元気に、思想学部のことを話す。
すると、男は、この闇よりも暗い表情で、「そうか…」と言った。
「人や、この世界は地獄だ。
すすむも、人と関わることを減らした方がいい。」と。
「大丈夫。未来はいつだって明るいから。」
すすむはそう言って、暗闇を照らすように、光っている雰囲気がかもされる。
「お前はどうして、根拠のない自信があり、明るくいられるのか。」
するとすすむは「これから作っていく」と言った。
──────
学校に着いて、すぐに思想学部のメンバーが集まった。
約束をしていた訳ではないが、絵本を読んで、はやく部活と認められたいと思ってる人も多かったようだ。
しかし、絵本を読まなくて大丈夫になる。
ありがたいことに、青野くんが絵本を見つけ、内容を覚えてきたと言う。
だが、その反面、僕の中では、『真ん中のうさぎ』というタイトルのお話がとても気になっていた。
そこは少し残念なところではある。
しかし、普通の帰宅部学生が来そうな時間だったはずが、僕が思想学部(仮)の中で、1番最後に学校に到着するとは思わなかった。
1人ずつ周りを見渡す。
まず、すすむくん。彼は思想学部を作るからはやく来るだろう。
みちかさんは優しいから、気を使ってはやく来そう。
響音さんは部活やってたから早く来そう。
最後に、青野くん、彼も絵本のことだからはやく学校に来る。
この中での普通とは、本当に普通なのか。偏ってるように感じる…。
僕はそう思って頭を悩ませた。
すると、みちかさんが立って、水道へと向かっていく。
そして、僕の近くを通った瞬間、「大丈夫ですよ」と呟いた。
それになんだか悩みが吹き飛ぶようだった。心の中にみちかさんは優しい…。とだけ残る。
ところで、僕がそれを悩んでいた間に、これからどうするかは決まってしまったようだ。
すすむくんが「よし!頑張るぞ!」と1人で、とても元気そうにしている。
どうやら、職員室にいって、さっき話し合っていたことを実践するようだ。
─────
放課後、すすむは1人で、何か作文用紙のようなものを持って職員室にいった。
僕は外から彼を見ていると、職員室の中に入って、彼はその持っている作文用紙を取り出して大きな声で言う。
「顧問になりたい人は居ませんか?今から、思想学部について語ろうと思います。」
とても大きな声で、平然としてる彼に、担任の先生が、恥ずかしそうにすすむくんを連れてどこかに行きました
「あちゃー…」僕はそう言って、すすむくんの元へと向かいます。
すると、先生は、なんであんなことをしたんだ、場所を考えた方がいいと注意を受けていました。
そして、解放されて、僕の元へとやってきます。
「すすむくんすごいことやるね。」
「そうかな?」
「うん。少なくとも、普通ではなかったと思う。」
「なるほど…。」
すすむくんはそう言うと何かを考えていました。
「職員室で、部活の募集をかけると怒られるんだね。僕は新しいことを知ったよ」
そう言って笑います。
「これからどうするのー?」僕がそう言うと
「それについてだけど、職員室じゃなければいいと思うんだ。」
僕はその時、彼が何を言っているのか分からなかった
───────
その頃、職員室では、先生が戻って来ていた。
「淡手先生。」女性の教師がそう言って近付いてくる。
「伊奈紫先生。」
伊奈紫先生は「変わった生徒さんですね」と笑った。
「えぇ。まさか、あんなことをする生徒がいるなんて。
この先が思いやられます」
「でも、元気なことはいいことじゃないですか。」
「そうですね。」
───────
「そうか…。作戦は失敗だったんだ…」青野くんはそう言って、頭を悩ませていた。
すると、すすむくんは、「大丈夫。まだ方法はあるから。」と言ってとても自信満々だ。
「どんなことをするの?」僕はそう聞くと、彼は「その時になったら分かるよ」と笑っていた。
──────
顧問②
私はあの頃から何も変わっていない。
高校生の頃、討論部に入っていた。今となっては、もう完全に無くなってしまった部活。
しかし、その時、入っていたもの達は、とても今を生きている力強いものだった。
今はどうだろうか。この学校には、あの時の討論部のような力強いもの達はいない。
こうして、学校を清掃しているからこそ見えてくる。
何か活きのいいやつは居ないのか。
そうしていると、あの時の討論部のことが浮かんでくる。
あの頃は良かった────
「今日の議題は厳しさと優しさ、どっちの方が必要か?についてです。」
そういい始まった。
私の敵は、最初から、引退するまでずっと変わらない。そういちだった。
彼は自分のついた方を絶対にまげない、とても強い芯を持った男。
あの男が、厳しさについたので、私は優しさについた。
「今日こそは、俺が勝つ」その頃の私はそう言って、とても燃えていた。
私からはじまる。「優しさが無ければ、苦しむことがずっと行われていたはず!
だからこそ、優しさの方が必要だ!」
すると彼は「厳しさ、それがなければ、人は堕ちていくだけだ。」と。
「厳しさでは人はついていかない。」
「優しさであってもそれは事実。」
「う…」私は核心をつかれたようにそう言った。
「厳しさはその時に応じて変えられるが、優しさは違う。どれだけしても優しさは優しさだ。
なら、臨機応変に対応出来る厳しさの方が必要。」
あの時の私はそうして言われ負けてしまった。
────────
彼に負けたことで、今でも厳しさの方が必要だと思っている。
今ではもうあんなに活発に議論をかわす、生徒は居なくなった。
討論部自体、私とそういちが卒業してからというもの、衰えていき廃部になった。
もう一度あの部活があれば…。
そう思うこともある。しかし、そういちは卒業する前に言った。
討論は無駄だ。と。あの言葉になんだか萎えてしまった。
そうして今がある。
あの一言がなければ、きっと、討論部はもっと繁栄していただろう。
そして、活発な人間だけの世界になっていたろう。
私はガッカリしながら、清掃を続ける。
そういえば、そろそろ放送の時間だ。そこでは、生徒が持ってきたCDなどもながされる。
最近流行っている音楽がどんなものなのか、知ることができる。
特にいいものでは無いが、たまに懐かしい曲もあった。
私はそっと耳をすませる。
しかし、今日はなんだか様子がおかしい。
時間になってもながれない。
これだから若いやつは…。
直後、誰かの声が聞こえてきた。
─今から、思想学部の顧問募集をかけようと思う─
そう言って始まる。
─思想学部、それは多くの考えを話し合い、認め合い、更に飛躍させる最高の部活動です。
多くの考えは、子供の頃に、周りの人、空気を読むなど自分の心でフィルターをかけ、消されてしまいます。
だからこそ、この部活がそれを受け入れ、ともにより良い未来へと進んでいこう。そう考えます。
この中では、あなたはその考えを捨てる必要は無い。
僕はあなたの考えを認める─
放送の主はそう沢山のことを言っていきました。
「こんなやつがまだ居たのか…。」清掃員はそう呟き、掃除用具をその場に置いた
──────
「すすむくん、放送室をのっとって、部活勧誘するとはどういうことですか。」
担任のあわて先生がすすむくんに怒る。
「職員室じゃなければいいんだと思って。」
「そんな訳ないでしょ!もうしないでくださいね。」
「はい、しません!全校生徒に聞こえたと思うので!」
すすむくんはそう言って笑顔でした。
──────
その後、僕はすすむくんのもとへとかけよった。
「すすむくん、破天荒にも程があるよ~!」
そう言うと、「何事もやってみないと分からないから」と笑う。
部活内では、おとねさんが、放送を聞いて、とても恥ずかしかった。と、両手で赤くなった顔を覆う。
すると、青野くんがやってきて、「何はともあれ、これで、顧問の募集は最後だろう。」と言った。
僕はこれじゃあ来ないだろうなと心の中で思う。普通の人がさっきの放送を聞いて、入りたいと思うのは有り得ない。
結局、部活にならなかったか…。
僕はそう言って、天井をあおぐ。彼らと一緒に居たらどうなるか。
最初がどうであれ、それを少し楽しみな自分もいた。
すると、1人の清掃員が僕達の前に現れる。
「放送、聞いてきた。感動したよ。
良かったら私が顧問になろう。」
その時の僕はそれに、とても強い衝撃を受けていたのを覚えている─────
創作
僕の中で、創作はとても大きな役割をはたしている。
刺激的すぎるものはみれないが、優しい世界、理想の世界を作れて、更にそれを共有できる。
物語を通じて、何か新しいことを知れたり、それによって成長を感じています。
僕は学校に通ってる最中、休み時間、食事中など、さまざまな時に、頭の中に今まで見てきた創造を浮かべて、創作している。
この中では、現実を忘れ、とても幸せな時間が送れるから。
苦しさに埋もれるより、こうして何か他のもので気分よく過ごしてる方がいい。
現実逃避と言われても、僕は苦しいことに目を向けてただ苦しいよりも、楽しいことに目を向けてそれを忘れていた方がいいと思うんだ。
僕はそう考えると、また頭の中で、この世界でない存在しない世界で思考をめぐらせた
───────
僕の住む世界。それは少し変わってるかもしれない。
地面は1面水色で、空も全部青く覆われている。
これが当たり前としてる風景。
「おはようございます」
僕がそんなことを考えていると、誰かが挨拶をくれた。
「おはようございます。今日はどこかにお出かけですか?」
この世界ではみんな名前がない。いつの日にか、パタッと消えてしまう身。
「はい。ユニオン川に行ってきます」
「そうですか…。」
──────
ユニオン川は、僕たちにとっては天敵だ。それによって、僕らはどこかへ流されていってしまう。
その先を誰もしらないし、無事であるかも分からない。
空には青い鳥が飛んでいた。
すると、雨がポツンポツンと降ってくる。
僕は雨が余り好きではない。
止んだ後、僕の体は小さくなったり、大きくなっている。
そういえば、あの人は今、どうしてるだろうか?
僕はそうしているうちに、ユニオン川に到着していた。
なんでここに来たのだろうか?
目的もない。
ただ歩いている時に到着したのが、このユニオン川だった。
ユニオン川に行くと言っていた、あの人は今どうしているのだろうか?
しかし、もう会うことはないだろう。
そうして、僕は帰ろうとすると、地面がユニオン川であることに気付かなかった。
──────
あぁ、僕はもう消えてなくなってしまうのか…。
そう思って、そっと目を開けた。
そこには青の世界が広がっていた。
しかし、自然と怖さはない。
落ち着いた気持ちが心の中一杯にあった。
ずっとここに居たのではないか。そうも思えてくる。
上を見上げると青い鳥が居て、前には、青い魚や、人のような影が見える。
そのまま流されていった。
──────
どれくらい経っただろう。
僕は目を覚ますと、そこには変わらない景色があった。
水色の人達が立っていて、話しかけると、彼は「こんにちは」と言う。
「ここはどこですか?」
そう聞くと、彼はわからないと言う。
そうだった…。僕はこの世界の場所を、ユニオン川しか知らなかった。
昨日言ったような気がする。
けれど、記憶が曖昧だ。少し怖さがあった。
ただその事だけ覚えている。
結局、無事だったということは、あの場所に行かなかったのだろう。
多分、これからも行くことはない。
ところで、この世界について話そう。
僕らはウォーターと呼ばれ、ウォーターヒューマン、ウォーターバードなどと分類されている。
それらは濃さで認識され、固有の名前などは存在しない。だからこそ、相手が前にあった事のある人物かはわからない。
お互いの記憶に頼るしか、判別する方法はないのだ。
そんな面倒なこと誰かがするはずがない。
しかし、この現状に甘んじている。ここには固定した何かはなく、曖昧であり、何かが広がっている。
僕は心の中で、それがとても好きだ。
──────
今日のお話はどうだったろうか。頭の中にある、ただの妄想。
しかし、僕にとっては、大切な一コマ。
僕の中にはその大切な何かが、いつもうみだされている。
創作の中では、その時に応じて、自分の考え方を変えられる。とても自由な世界。
それを誰かに見せるのであれば、それは不自由な世界に変わる。
しかし、この自由な世界をただ、作り続けていきたい。
ゴールなんてない。だからこそいいんだ。
ゴールが決まっていれば、そこに向かって、走り続けなければいけない。
それは途中で無くしてもいい。もう一度拾えるなら拾えばいいし、拾えないなら拾わなくていいんです。
ある国の創作が僕にそれを教えてくれた。全体をみれば、マイナスなことが多いそれ。
しかし、しっかりとその中には、何かとても素晴らしいものがあり、僕の心を刺激したんだ…。
いつかは行ってみたい。あの場所へ─────
同じ
そうして、顧問も加わって、思想学部がようやく部活動として不足ないものとなりそうなところだった。
しかし、実際は、すすむくんのしたあの放送の一件から、思想学部は危ない連中との偏見が先生間でもついてしまった。
部活動の部長的な人が、あれでは、僕らもそう見られても仕方ないところはあるのかもしれない。
だが、すすむくんは、それなら、いい印象をつけるんだ。となんだか前向きだった。
いつも変わらず、元気に前向きな彼は、悩みなんてないのではないかと思うほど。
逆に彼になってみたい…。そう思わせてもくる。
なんだか彼を見ると、とても楽しく人生を過ごしてるように感じる。
────────
結局、ここまでか。期待して損したかもしれない。
私はそう考え、たたずんでいた。
そろそろ清掃に戻らないといけない。
すすむと言う生徒、それは過去のそういちに似てると思わせた。
しかし、あの男とは決定的に違うところがある。
それは孤立していないこと。そういちは、1人も友達や、仲のいい人物を作ることはなかった。
そこが決定的に違う。
話し合ってるところを見て、長く続きそうなことを悟り、私は戻ろうとした時だった。
視界に女生徒が入る。
彼女はその話し合いに入るのではなく、ただ、そっとみんなの様子を笑顔で見つめていた。
何をしているのかとたずねようとした時、1人がポケットに入っていたハンカチを地面に落とす。
彼女はそっとそのハンカチを拾い、ついたゴミをそっと払うと、落とした生徒の持ち物の上へと置いた。
私はそれを見て、あの男との討論を思い出した。
彼女に話しかける。
彼女は「はい」と答え、ただ微笑んでいた。
「昔、ある男が、優しさについて語っていた。」
私がただそう言うとなんだか、少し彼女の表情が変わる。
「私も優しさを、ある人から聞きました。」と。
それに少しの驚きがあった。
優しさについて、自分の考えを持つものが居るとは。
「その人はなんて…?」
彼女が言おうとした瞬間、すすむが「これで決まりだ!」と大きな声で言った。
どうやって打開するかの方針が決まったらしい。
その状況に聞けない空気に変わった。
その後、私はただ、彼の話を聞いていた。
それが終わったあと、私は清掃にすぐ戻らなければならなくなる。
彼女にあの話を聞けなかったが、何か得られそうなものがあったのは確か。
私の止まった時間が、今日の出来事により、何か動き出したのかもしれない。
その時の頭の中には、あの時の討論、厳しさと優しさについてが何度もよぎった。
───────
話し合った結果、学校や、先生に思想的な協力をして、思想学部が凄い部活なんだとみんなに知ってもらおうとなった。
すすむくんの後を追おうと思ったが、残された青野くんが気になる。
彼は1人で、放送の時に使った文章を見つめ呟いた。
「もう決まっちゃったな」
そこには悲しさと嬉しそうな気持ちが詰まってる気がしていた。
そして、すすむくんの後をすぐに追う。
すると先におとねさんとみちかさんが到着していた。
クラスの前で立っている。
中では何が起こっているのか、彼女達の後ろからそっとのぞくと、すすむくんがいた。
女の子に何かを話しかけている。
よく見てみると、その子は、思想学部に入らないか聞いてダメだった子。
名前は確か…?
そうしていると、すすむくんが「君の直したい部分は分かってる!」と言いました。
それにとても困っています。
「泣き虫をなおしたいんだろう!僕に任せるんだ!」と。
すると、相手の女の子は泣き出してしまいました。
そうだ…しずくさん…。
すると、クラスのドアの前で見ていたおとねさんが、すすむくんのところまで走っていきました。
「いじめちゃだめ!」
ぷんぷんとすすむくんに言います。
「僕は悪いことしてない!」
「何も頼んでないのに、しようとするのはだめだよ!」
しずくさんはえーんと泣きながら、おとねさんに抱きつきました。
おとねさんはそれにそっと優しく慰めています。
すすむくんはケロッとした表情で、「なるほど、頼んでないことを勝手にするのは良くないことなんだ」と言って頷いていました。
そして、何かメモ帳を取り出して、そこに書き込みます。
───────
結局、今日は、何かできることはなく、アイディアが浮かんだだけだった。
明日は土曜日で、学校はない。
完全に部活と認められるには、もう少し時間がかかりそうだ。
しかし、すすむくんはピンピンしている。
「きっと大丈夫。」
彼はそう言って変わることは無い。
四字熟語で言えば、初志貫徹…。
これからどうなるか、僕は少し楽しみだった─────
間違えたもの①
土曜日になった。
僕は気分転換に散歩に出た時のこと。
偶然、すすむくんと鉢合わせた。
そして確定した。
今日が普通の1日にならないことを。
2人で、あてもなく散歩することになった。
そして、沈黙が続いたので「そういえば、思想学部どうするの?」と聞く。
すると、変わらず、思想学部が学校などに貢献することをみんなに見せると言う。
誰かの思想が人のためになるとは思えないけど…。
僕は心の中でそう思った。
でも、それと同時に、楽しみにも思っていた────
そうして歩いていると、前から、少年が泣きながら走ってくる。
すすむくんは、「何かあった?」とその少年に近寄っていく。
すると、怖いお兄さんに悲しいことをされたと言っていた。
「これは!思想学部の出番だ!」すすむくんはそう言って、僕の方を見た。
ここで、あの子を見捨てるのは、普通の人じゃない。
心の中でそう思うと僕は「分かったよ」とすすむくんについていく。
すると、僕と歳の近そうな男が、子供に何かを話している。
子供達の様子は、何かとても泣きそうだったり、おびえている。
すすむくんはすぐに子供達の前に立った。
男はすすむくんをみて「なんだ。お前?」と聞く。
「僕は通りすがりの高校生さ。」と笑う。
そうして、すすむくんは、何があったのか彼に背を向けて、子供達に聞いていた。
すると、男が言う。「俺がそいつらに夢を聞いた。」
すすむくんは振り返る。
「で、現実を教えてやったんだ。そんな夢なんて叶わないってさ。」
子供達はそれにまた涙を流した。
「そうか、君はそう思うんだね。」
そう言って、「じゃあ、逆に僕はこう思う」と続けた。
「夢は必ず叶う。」
男は馬鹿にしたような顔で「はぁ?」と言う。
すすむくん、そんなことを言って大丈夫なの…?僕は少し不安で一杯になる。
その様子に気づいたのか彼は「大丈夫。思想学部は、誰か、いいや、全ての人の夢を叶えるものであるから。」と。
彼のその言葉になんだか、僕は安心するようだった。
「俺の尊敬する人の言葉をやるよ。」
男はそう言って続けた「大人とは、夢を与えるものだ。」
僕はそれに拍子抜けする。すすむくんのことを肯定してるじゃないか。
すると、すぐに「そして、その夢を壊すのも大人だ」ととても残酷に言ってのける。
彼の表情はなんだか自信に満ち溢れていた
小さい子の前でなんて酷いことを…。僕がそう思うと、すすむくんが前に出てくる。
「そこからまた手を差し伸ばすのも大人。」と言った。
男はそれに気に食わないような表情を浮かべる。
「じゃあ、手を差し伸べてみろよ。」
そして、男は子供の1人を指さして言った。
「こいつは、大人になったら、動物達に囲まれたいと言った。
そんなことはできないだろう。」
すると、「動物という括りだったら、猫でも犬でもいい。更には虫でもいいって事だよね。」とすすむくんは言う。
男は面を食らったように、他の子供達の夢を指摘していった。
しかし、すすむくんは毅然として、それを全て肯定する。
そうしていると、男は子供達の夢を言いきってしまった。
「これで終わりかな?」
すすむくんはなんだか元気そうにそう言う。
「まだだ。」
男は疲れたそぶりを見せながら「俺の将来の夢は、毎日、いいや好きな時に、100万という大金を手に入れることだ。」と。
すると、すすむくんは少し考える。
「どうだ、もう言い返すことはできないだろう」と言ってやったぜと息を荒らげながら、自信にみちた表情になった。
「それなら、紙に100万と書けばいい。」
すすむくんのそれに、「そんなことで満足できる訳ないだろう。」と彼は怒った。
「そうか…じゃあ」
すすむくんはそう言って悩んで、また言おうとした瞬間、彼のポケットから電話の音がなる。
彼は少しの間、その場から離れると、すすむくんの元へ行って、「また今度会う時まで考えておけ」と言った。
そして、最後に「俺の名前は
非低だ。お前の名前は?」と聞く。
「僕はすすむ!」と返す。
「覚えておこう。」と言って男は去っていった。
すると、彼が居なくなった後、彼の周りに沢山の子供が囲んだ。
僕はそれにそうだよな。と頷いた。
誰だって、自分の考えを否定されるよりも、認めてくれたり、肯定された方が嬉しいに決まってる。
「やっぱり、すすむくんは凄いな。」みんなの前で笑顔の彼を見て、僕はそっと呟いた。
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