思想学部22

<h3>試合③</h3>

「そんなことできるはずがない。」

相手の部長はそう言って笑った。

全くできない訳じゃない。方法はいくつかあるが…。

いいものを選ぼうとすると、限られてくる。

「そうだった。さっきの女子がやってた、自分の都合の悪いところは無視で、いいところを肯定するってやつか。」

僕はそれを聞いてムッとしたが、すぐに返した。

「そう。それをする。」

「2度目だが、肯定なんて、できるはずがない。」

「僕の言うことは普通にとって、都合の悪いことばかりだからな。」

「じゃあ、もう一度、あなたの思想を聞かせてください。」

すると、彼が言った。

「その前に、君の思想を話してくれ。」

「分かりました。」

心の中で思った。

考える時間をということだろう。でも、大丈夫…。どんな時でも肯定できる。

「僕の思想の普通、それは、出過ぎず、その逆になりすぎずの中間を目指すこと。」

「やはり、異なるものを嫌った普通か。」

「君はそう思うのかもしれない。だけど、出過ぎる人は必ず存在する。だから、僕は居てもいいと思うんだ。」

彼は何も言わなかった。続けて僕は言った。

「次はあなたの思想をもう一度お願いします。」

「分かった。

普通の人間とは、管理されるだけの存在。自分では何かを支配することはできない。」

「だからこそ、愚痴を言って、その理不尽を嘆くしかない存在。」

僕は頷いて言う。

「なるほど。

あなたの言う、普通の人間は、範囲が狭いもの。」

「僕の考えてる普通とは違います。だから、考えの相違は起こっていない。」

「なんだと…?」

直後、相手の部活メンバーから負けを言われて、僕の学校の勝ちになった。

終わってすぐにすすむくんの元に向かった。

「勝ったみたいだね」

すすむくんはそう言って僕を見る。

「うん。話し合いは終わってなかったけどね…。」

そう、あのまま続いてたら、どうなるか分からなかった。まだ問題は続いてる…。

「ありがとう。」

彼はそう言った。

「ここで負けても大丈夫だったけど、最後まで頑張ってくれた。

これから、できるだけ長く、色々な人の考えを聞いていこう。」

「うん。僕も人の考えは気になるな」

───────

一方、リベシン高校は、3勝0敗で2回戦目にコマを進める。

ひていは言った。

「楽勝すぎる。こんな感じなら、足引っ張らなければ、全部3勝で終わりだろ。」

「そうですね。大したことないやつらでした。

はい、2回戦以降もどうせこんなかんじでしょう。」


それから、少しして、2回戦が始まった。

「ひていさん、俺が行ってきますよ。」

ひていの後輩は、最初に前へと。

「楽勝だろうな。はやくやろうぜ。」

その直後、目の前が真っ黒になるような感覚を受けた

───────

「凄い…」

僕は思わず声に出して言った。

僕らの部活が3勝0敗で勝ったのだが、その勝ち方が凄かったのだ。

僕の部活から出たのは、みおさん、ふらさん、すすむくんの3人。

相手は1年生の時に偵察に行った、鳥魚(ちょうぎょ)高校。

みんなは決まって、自分たちは、鳥にも、魚にもなれると言った。

それに強い肯定で返したのが3人。

感謝を返される形で勝利したのだ。

お互い、嫌な気持ちにならずの勝敗…。

僕はこれが、すすむくん達の勝利か…と心の中で思った。


遠くで、試合の様子を、黒い影が見ていた。

「肯定…。ここから先の試合どうなるか。

今度は決勝に。」


「次は3回戦か。楽しみだ」

すすむくんはそう言って笑う。

すすむくんのこういうところはずっと変わらない。

僕はそれが嬉しかった。


ところで、きせきさんが、みおさんをつれて何処かへ言った。

すすむくんに聞くと、他の人達を見てみたいらしいと言う。


「みおちゃんありがとう!」

「こちらこそ!まずはどこへ行きますか?」

「実はね!2人で誰かと話したくて…。みおちゃん優しくて、お話聞きたいなって!」

「そうだったんですね!私でよければ是非!」

「ありがとう!」

「率直に聞きます!どうしてそんなに優しいのですか?」

「はい!私、生徒会長になりたくて!みんなのお話に、優しく返すことを心がけたいなって!」

「わぁ!生徒会長凄い!」

「おじいちゃんが校長先生ですから!」

「そうだったんだ!おじいちゃんが校長先生って凄いね!」

それから、2人は色々な話をしながら歩いていた。

すると、突然、きせきが座り込んだ。

「どうしたんですか?」

みおがかけよる。

「誰かとすれ違った気がして…」

後ろを見てみると、どこの学校かの生徒達が向こう歩いている。

「多分、試合が終わったんでしょう!」

みおはそう言って微笑んだ。

「だよね!私たちもそろそろ戻って帰ろう!」

────────

<h3>散歩</h3>

皆さんは散歩についてどう思っているだろうか?

僕は散歩こそ、色々な想像を前へと進ませるものだと思っている。

少し前に、止まると思考は止まり、歩き出すと思考もともに歩き出すという考えを聞いたが、僕はよくそれを実感している。

深い状態になると、熱中して、どんどんと創作も捗っていく。

それが自分にとって最高の時間。

ところで、歩いていると、前から2人の人が歩いてきた。

すれ違う中、僕の耳に話し声が飛び込んでくる。

「さんまん」

僕はそれを聞いて考えた。

もしかしたら、何か、重要なものかもしれない…。

アニメや、漫画でよくあるやつだ。

僕は真剣にそのことについて熟考する。

「さんま」と「ん」にわけられて、「さん」と「まん」にもわけられる…。

だが、考えれば考える程分からなかった。

その後、少し考えたあと、また後で思いつくかもしれないと考えを寝かせておいた。


たまにいくら考えても、思いつかないこともある…。

だけど、こうして散歩している時は、色々な考えが思いつく。

深く考えすぎてる時は思いつかなかったり、逆に何も考えていないと、ふとしたところに落ちてくることだってある。

僕は散歩が好きだ。

今日もアイディアが降ってきた。

家に帰る途中、同級生に会う。

「シソウ、こんにちは!」

「こんにちは。」

僕は早速、今日、思いついたことを言おうとした。

すると、彼女から「あの!」と話す。

「どうしたの?」

「実は、思いついたことがあって…」

「どんなこと?」

「あのね、部活の思想…?あるでしょ。」

「うん。」

「私も思いついたの…。」

彼女は続ける。

「人と関わること…。それが私の思想。楽しい時間だって思うから…。」

「最近、学校でもみんなと仲良くしてたね。いいと思うよ。

馴れ合いって言うやつかな。」

「ナレアイ…?そうかも。私の思想はナレアイ!」

彼女はそう言って喜んだ。

「ところで、シソウの話したいことは?

あるんでしょ。」

「気付いてたんだ。」

「もちろん!あなたと一緒に居て、どのくらいになると思ってるの?」

「トモさん、ありがとう。」

僕はそのまま今日思いついたことを語った。

「考えをあたためること。それがいいと思うんだ」

彼女は頷く。

「自分の考えって言うのも、きっと友達と同じなんだ。深まってない時にオープンにしたり、おざなりにしちゃうと離れて行ってしまう。」

「だからこそ、あたためて…あたため続けて、この考えと付き合って行ったら…」

「きっと…」

彼女は「シソウらしくていいと思うよ」と笑った。

「ありがとう。」

────────

今日は後輩の女の子と、散歩に出かけます。

「みおちゃん、こんにちは!」

「きせき先輩、こんにちは!」

「来てくれてありがとう!」

「こちらこそ、誘ってくれてありがとうございます!」

「今日は沢山話そう!」

「はい!」

みおちゃんは笑顔で言いました。

「みおちゃんはどうして思想学部に入ったの?」

「えっとですね、お姉ちゃんを探してて!」

「お姉ちゃん?」

「はい!中学生の時、仲良くしてくれた先輩です!」

「そうなんだ!見つかったの?」

「まだ…見つかってないです。」

「そうだったんだ…」

「はい…!見つからなくて悲しかったですけど、その時、すすむ先輩が入らないって誘ってくれたんです!」

「わあ!その時に!」

「はい!誘ってくれて嬉しかったのもありますし、家でも部活の名前を聞いてたので!」

みおちゃんはそのまま続けて言った。

「きせき先輩はどうして思想学部に入ったのですか?」

「私は実は、1年生の時は吹奏楽部に居たんだ!記憶喪失で思想学部に入ることにしたの…!」

「前に部活で協力しましたね…。そのことからだったんですか…」

「うん、そうなの…!」

「キセキ先輩の記憶、戻って欲しいです!私にできることがあったら、なんでも言ってください!」

「みおちゃん、ありがとう…」

「あの…。」

「はい、なんでしょう?」

みおちゃんは笑顔で答える。

「昨日の大会の時にね、何か思い出せそうだったの…。」

「え!?ほんとですか?」

「うん…。知ってる人が大会に出てたような…。そんな気がするの…。」

「今日行ってみますか?」

「ううん、大丈夫。大会の時にしか来ないと思うし…。」

「ですよね…。」

「でも、もしかしたら、次の試合にも来るかも…。だから、その時まで待ちたい。」

みおちゃんは笑顔で私の顔を見つめる。

「どうしたの?私の顔に何かついてる?」

「先輩が、私に話してくれて嬉しくて!」

そのまま話は続いて、最後に、もうすぐある生徒会の話になった。

「みおちゃん、生徒会長を目指してるんだ!」

「そうなんですよ!でも…少し待ってみようかなって思ってます!」

2人はその日、散歩しながら楽しく会話したのでした─────────

<h3>過去物語❽</h3>

「はみさん。」

はじめて会った人は、みんな私の事をそう呼ぶ。

「出席をとります。」

小学校の時、先生はそう言って、生徒の名前を呼んで行った。

「はみさん」

そう呼んで、誰も答えなかった。

「あれ、はみさんは欠席かな?」

そして、決まってこういう。

「ごめんごめん、うみさんの漢字読みづらいね。」

同い年の子も、よくはみさんと呼ぶ。

私は人と関わるのが少なくなった。

そのかわり、私は本を読むのが多かった。

誰か1人の人生や、その性格が文章に色濃くでているもの。

私はそれがとても好きだった。

そこには、色々な性格の人がいて、色々な生き方があった。

ある日、私は、思い切って誰かとお話してみようと考える。

だけど、どうしたらいいか分からなかった。自分ってなんだろう?

どんな話し方もすればいいのだろう?

すると、ふと、今まで読んだ本の人の性格が浮かんできた。

そうだ、この人達のように、関わってみよう。

私はそう思った。

だけど…。

「性格思ってたのと、違う。名前の通り、はみ出しものみたい。」

「うみって名前らしいよ。だけど、はじめてみたら、絶対、100%の人が名前間違えるよ。」

そう言って笑われた。

私は人と関わるのが怖くなった。

中学校になっても、名前の間違いは変わらない。

だけど、変わったことが少しあった。

部活、私みたいに、変わったものがあった。

いろいろ部。へんてこな名前。

私はそれをみて嬉しくなった。

なんでも自由にできる部活。

だけど、そこでも、私は浮いていた。

部活中はずっと本を読んでた。

私はその時間がいつもより好き。

自由がコンセプトの部活だったからかもしれない。

だけど…。

1年生の時は私以外、2年生の時、誰もこの部活に入らなかった。

卒業する3年生が、「この部活、はみさんだけになるね」と言って去っていった。

続けていきたい…。そう思ったけど、私にはどうすることもできない。

誰かを誘うなんて事も…。

でも、いいや…。

私一人で、この部室に居よう。

落ち着くから…。

3年生になって、私は放課後、この場所で1人で本を読んでいた。

周りには誰も居なかったけど、寂しくなかった。

本の中に、どんな時でも一緒に居るから…。


ある日、私が本を読み終わると、そこには、1人の女の子が私の顔を見ながらにっこりしてた。

それが、彼女との出会いだった。

この子も変わってる。

私のことをお姉ちゃんってよんだり、話してて思った。

だけど、心を許すことはできなかった。

この子も多分、みんなと同じで…


またある日のこと、1人の女の子が、私を探しに来た。

お姉ちゃんは居ますか?って。

私はすぐに、その女の子を連れて離れた。

歩きながら、女の子は言った「名前の漢字見ました!うみって名前なんですね!」

「とっても可愛くていい名前!」

そう言って微笑んだ。

私もそれにつられて頬にえくぼができる。

「ありがとう。」


その日から、彼女と少しずつ仲がよくなっていった。

自然と、彼女と過ごしてる日々が楽しいと感じるように。

この子と一緒にいると元気になる。

なるべく長く一緒に居たいって…。

だけど、その時、私はもう3年生。

来年は高校生になる。

この子とは一緒に居れないし、更に未来のことも考えなきゃいけない…。

私、これからどうなるんだろう。

もし、仕事につくとしたら、何になるんだろう…?

人のモノマネしてるから、そっちの仕事…。

もっと、違ったことがしたい…。

歩いていると、ある人を見かけた。

とても暗く悩んでいるような女の子の隣に座って、話を聞く同い年くらいの男の子。

女の子は自分の悩みを相談していた。

その時、彼は言った。

「俺は居なくならない。一緒に来ないか?」

女の子の方はとても救われたように、彼の言葉に「はい」と答える。

彼と一緒に居れば…もしかしたら…

私はそう思った。

だけど、あの子の事を思い出す。

一緒の高校に行こうって言ってくれた…。

私はそうしたいけど…。

でも…。

それからまた数日経って、あの子と会った。

私は思い切って言う。

「もうそろそろ、卒業するけど、心残りがあって…。」

「お姉ちゃん、なんでしょう?」

「実は…部活、私が卒業したら、無くなっちゃうかなって…。」

「そこが寂しくて…。」

それも思ってることだけど…本当に言いたいことは…。

すると、彼女は答えた。

「お姉ちゃん、大丈夫だよ!私の友達が一緒に続けてくれるって!」

彼女の笑顔に私は何も言えなかった。

とても純粋で優しい笑顔…。

私はあなたに救われたの…

もし、できることなら…。


高校に入って、あの子とは全く会わなくなった。

だけど、あの男の子と一緒の場所。

何か私の中の変化…。

少しずつ近付いていった

でも、その中で、時々、思い出すことがあった。

あの子のこと…


<h3>名誉挽回</h3>

俺の名はがいぶつ。

ここら辺じゃ有名なリベラルシンク高校。

その兄弟校、考自(こうじ)高校に通う2年生だ。

思想学部に通い、部長をしている。

1年生の時は、とても慕われて、最高の時間を過ごしていた。

だが、冬休みのこと、練習試合でやってきた1人の男に部員全員が見てる前で恥をかかされた。

名前は…すすむ。

しかも、防&剣の会に居た女子にその様子を見られてしまった。

それから今まで、辛酸をなめさせられてきた。

あの時、自分に向けられていた賞賛は消え、部長であるはずの俺に、冷たい目を向けられる。

あの時、練習試合してなかったら、1年生の時のまま、いい日々がおくれていたに違いない…。

そして、最近。

大会があった。練習試合後からまとまっていなかった俺たちの学校は、2回戦目で負けることになる。

相手は、絡繰(からくり)高校。

最初は互角だったが、最後に、俺の番が回ってきて負けてしまった。

また向けられるあの冷たい目に、俺は孤独を感じた。

だが、相手は最後に言う。

3回戦目は快勝だ。練習試合した、あの弱いリベシン高校と。

この学校は兄弟校らしいが、あそこより少し手強かった。

どういうことか…?

俺は心の中で思った。


そして、今日、リベシン高校と交流会があった。

この時しかない。

俺はそう思った。

部員を集めて、更に、リベシンの思想学部も集める。

俺はニヤリと笑った後言った。

「これから、試合をしましょう。」

「もちろん、リベシンの部長さんはしますよね。まさか、逃げはしませんよね。」

俺の学校の部員達は心配そうに見る。

だが、もう俺には後戻りできない。

このまま終わるくらいなら…。

それに、俺がここでリベシンに勝てば、また盛り返せる。

元に戻すんだよ。

可能性はある。からくり高校のやつが、試合で言ってたあの言葉を信じるなら。

リベシンの部長は「分かった」と一言。

 考えていた通りの展開。

ここで俺は…。

「どんな風にするんですか?」

仮面を片手に持った女の子がたずねる。

「試合形式だ。5vs5の。」

味方の部員達はとても驚いていた。

「本当に大丈夫なんですか…?」

自信なさそうな声。

「当然だろう。」

すると、リベシンの1人が言った。

「だけど、俺の後輩が来てない。人数揃ってないぞ。」

前に練習試合に来てた女子も話す。

「前回の試合以降、部活にも来てないね。」

チラリとリベシンの部長と、後輩と言っていた男子を見る。

今度は仮面を持ってる女子も、自分の部活の全員ぐるりと見た。

「試合はできる。勝ち抜きだ。」

「俺が最初に行く。」

「元気なさそうだけど、本当にあなたで大丈夫?」

少し皮肉ったように聞こえた。

「お前らこそ、足引っ張るなよ。」

そして、はじまる。

これに勝てば、俺は元の地位に戻れる。

慕われたあの頃に…。

だが、目の前にあったのは、とても大きな壁だった。

男の口から出てくる言葉、それは全てのみこんでしまうような底なし沼。

言われているのが自分だったら…と思うと、逃げ出してしまいたくなる。

ただ、否定の度を越した、いじめのようにも見えた。

部員は、戻ると俺に謝る。

壁はあついのか…。

1人すらもう手に負えない。

そうか…

俺は心の中でガッカリした。

3人負けを言って、こっちはもうあと2人。

もうダメか…。

俺は心の中で諦めた。

もうあの時は戻ってこない。

太陽がとても暑かった。

すると、俺の気持ちをよそに、部活から、わーっと声があがった。

がせが勝ったのだ。

部員達は労いの言葉をかける。

すると、がせがこっちを向いて歩いてきた。

「すみません。俺はここまでです。あとは任せます…。」

「分かった。あとは任せろ。」

相手から出てきたのは、仮面を持った女子。

しかし、俺を前にして、「私、思想特に無いので負けます」と笑って言った。

そして、じーっとリベシンの部長を見つめる。

「分かった。」

「次は私がいきます。」

リベシンの女子がそう言うと、部長は「俺が行く。久しぶりにしたいんだ。」と。

「分かりました。ご武運を…」

それから、目の前にやってくる。

俺は思った。

今、リベシンの部長を前にしているのだ。

部員たちは、彼を尊敬している。

ここで俺が…。

振り返ってみると、俺を応援する姿があった。

この時間を永遠のものとする。

そして、試合がはじまった。

口を開いたのは、相手から。

「俺の思想は分かっていると思うが否定。君も否定だろう?」

「そうだ!」

そう思いつつも、心の中では動揺していた。何故、関わったこともない俺の思想を知ってるのか…。

「それでは決着しないだろう。だから、今からやるのは、お互いの否定への考えを。」

「分かった。」

「じゃあ、俺から話そう。」

「どんなことにも有益に使えるもの。それが否定だ。」

この人は否定という考えを広く考えている…。

「まぁ、こんなところでいいだろう。君の考えを聞かせてくれ。」

否定について…。そんなこと考えもしなかった。

俺は、ただ、これを道具のようにしか思っていなかった。

黙っていると相手の部長は言う。

「やっぱり、ないのか?」

その言葉が見透かされているような。

俺は思えば、凄いと言われたいから、利用していただけだった。

このまま終わってしまうのか…。

すると、頭の中に、部員たちの姿があった。

応援する姿や、頑張っていたメンバー。

「俺は否定について、人を結ぶものだと思っている」

俺は心の中で思った。

最後まで頑張るか…

──────

結局、勝てなかった。

俺は1人ぼっちか…。

すると、部員たちが、「頑張りましたね」と言った。

「どうして…?」

「一応、部長ですし。」

「見直しました。まぁ、最初のは許しませんけど。」

「また次回、試合優勝目指して頑張りましょう」

なんだろうな…。

求めていたものは得られなかった。だが、心の中で、とても嬉しかった。

「ありがとう。」

その一言が口からもれる


リベシンでは、副部長と部長が話していた。

「試合中の部長、素敵でした。」

「ありがとう。少し時間をくった。」

「結構ねばってましたね。」

「あぁ。あいつを見て思ったんだ。」

「何でしょう…?」

「俺も行かないといけないところがあるだろう。」

彼の何かを決意した目を、副部長は感じていた────

<h3>生徒会選挙</h3>

生徒会の選挙の日がやってきました。

誰が次の生徒会長になるのか。

でも、今回も、前回と同じで自分とは関係ないと思うから…。

と思いつつも、とても気になっていた。

確か、立候補するのは…。

にわのさん、すいぞうくんともう1人…。

ポスターが貼ってあった。

にわのさんは絵が得意な友達に、すいぞうくんは謎のなかまという存在に。

そして、もうひとつ貼ってあった。

校長先生の孫のみおさんだろう。

しかし、そこにあったのは、僕にとって予想外のものだった。

「すすむくん…?」

クラスに行くと、キセキさんが、しずくさんと話していた。

「今回はみおちゃん生徒会長にはならないみたいだよ。」

「えー!そうなんだー!

でも、凄いな…。生徒会長って私とは全く無縁の世界だと思うから。」

僕はすすむくんの元に向かう。

僕を見て彼は言った

「やぁ、あいだくん、どうしたの?」

「ポスター見たんだ。立候補するの?」

「うん。そうだよ。僕の目標は、みんなを幸せにしたいってこと。」

「今のままじゃ、できないと思ったからね。」

ポスターを思い出す。あれは自分1人で作ったものだ。

「でも、誰かいるの…?」

「誰かって?」

「協力してくれる人とか」

「居ないよ。選挙って、協力とかじゃなく、いい人が選ばれるんじゃないの?」

「そうかもしれないけど…」

「大丈夫だよ。僕はいつも通りするだけだから。」

心の中で思った。絶対にないとは分かってるけど…

もし、とうせんしたら…部活はどうするの?

───────

にわのは1人で考え事をしていた。

「にわのさんいつもありがとう!とうせんするのはにわのさんだよ!」

同級生の女の子が笑顔で話しかけた。

「ありがとう…。」

「いつも、みんなに優しいから、みんな見てくれてると思う!」

「それに、すいぞうくんは、生徒会に入る前、言葉はよかったけど…。」

私は、心の中で確かに…と思う。

「だから、にわのさんならきっと大丈夫!」


とは言っても…。今になって思う。私で大丈夫かな…?


それから、時間がやってきた。

一人一人、みんなの前で演説していく。

生徒会長立候補者の番になる。

最初に行くのは、すいぞうくんからだった。

「俺が生徒会長になったら、仲間を優遇する。」

そのまま仲間について話して言った。

その間、私はずっと頭の中で、獅王さんのことを考える。

あの人はこの生徒会長に強い思いを持っていた。

できる限り、よりよくしようって思いがあった。

私は…

そして、順番が回ってくる。

「私は生徒会に所属させて頂いていたにわのです。」

少し不安だった話すにつれて、それらは消えた。

そして、私は、段々、自分の中に入っていった。

どうして、わたしはリーダーになりたかったんだっけ…?

ふと、小学校の頃を思い出す。

初めの頃は何も考えてなかった。

だけど、ある日、出会った男の子がいた。

その子はとても優しい人。

私より2歳年下なのに、どうしてそんなに優しいの?と聞いた。

すると、彼は言う。

分からないけど、尊敬してる人が優しいからかも。って。

もし、できることなら、大人になっても、優しいままで居たいな

彼はそう言った。

確かに優しい人っていいな。

私もその日、彼にあってから、優しい人になりたいと心の中で思うようになった。

その日以降、彼とは会ってない。

でも…優しさが、上手くいかなくて、傷付けてしまった。

そして、今がある…。

相手の気持ちは分からない。

相手のためと思っても、その人を悲しませてしまうこともある。

本当に相手のためを思うなら…

私はそこで、外側に意識がむかった。

話の最後として、私は「言ってもらえれば、できることはします。」と言う。

途中までボーッと話してしまった。

でも、いいや…。

───────

一人の男が、考え事をしていた。

今のところだと、にわのさんにいれることになるだろう。

にわのの後に、最後としてすすむが出てきた。

「思想学部のすすむです。」

「僕が生徒会長になったら、みんなが楽しく幸せに暮らせるようにしたい。」

「それが僕の夢だから」

男は思った。昔、彼に何かを感じたが。

すすむは続ける。

「一人一人が安全で楽しく暮らせる学校。それが僕の理想です。」

男の頭の中に、何かが浮かんできた

そこから、すすむの演説は続いた。

その後、投票の時間になる。

ひなえの元に、獅王がやってきた。

「生徒会長!」

「もう会長じゃないよ。」

「そうでした…。」

「ところで、ひなえさんは誰に投票しますか?」

「もちろん、にわのさんに。獅王さんは?」

「僕は…」

────────