<h3>試合③</h3>
「そんなことできるはずがない。」
相手の部長はそう言って笑った。
全くできない訳じゃない。方法はいくつかあるが…。
いいものを選ぼうとすると、限られてくる。
「そうだった。さっきの女子がやってた、自分の都合の悪いところは無視で、いいところを肯定するってやつか。」
僕はそれを聞いてムッとしたが、すぐに返した。
「そう。それをする。」
「2度目だが、肯定なんて、できるはずがない。」
「僕の言うことは普通にとって、都合の悪いことばかりだからな。」
「じゃあ、もう一度、あなたの思想を聞かせてください。」
すると、彼が言った。
「その前に、君の思想を話してくれ。」
「分かりました。」
心の中で思った。
考える時間をということだろう。でも、大丈夫…。どんな時でも肯定できる。
「僕の思想の普通、それは、出過ぎず、その逆になりすぎずの中間を目指すこと。」
「やはり、異なるものを嫌った普通か。」
「君はそう思うのかもしれない。だけど、出過ぎる人は必ず存在する。だから、僕は居てもいいと思うんだ。」
彼は何も言わなかった。続けて僕は言った。
「次はあなたの思想をもう一度お願いします。」
「分かった。
普通の人間とは、管理されるだけの存在。自分では何かを支配することはできない。」
「だからこそ、愚痴を言って、その理不尽を嘆くしかない存在。」
僕は頷いて言う。
「なるほど。
あなたの言う、普通の人間は、範囲が狭いもの。」
「僕の考えてる普通とは違います。だから、考えの相違は起こっていない。」
「なんだと…?」
直後、相手の部活メンバーから負けを言われて、僕の学校の勝ちになった。
終わってすぐにすすむくんの元に向かった。
「勝ったみたいだね」
すすむくんはそう言って僕を見る。
「うん。話し合いは終わってなかったけどね…。」
そう、あのまま続いてたら、どうなるか分からなかった。まだ問題は続いてる…。
「ありがとう。」
彼はそう言った。
「ここで負けても大丈夫だったけど、最後まで頑張ってくれた。
これから、できるだけ長く、色々な人の考えを聞いていこう。」
「うん。僕も人の考えは気になるな」
───────
一方、リベシン高校は、3勝0敗で2回戦目にコマを進める。
ひていは言った。
「楽勝すぎる。こんな感じなら、足引っ張らなければ、全部3勝で終わりだろ。」
「そうですね。大したことないやつらでした。
はい、2回戦以降もどうせこんなかんじでしょう。」
それから、少しして、2回戦が始まった。
「ひていさん、俺が行ってきますよ。」
ひていの後輩は、最初に前へと。
「楽勝だろうな。はやくやろうぜ。」
その直後、目の前が真っ黒になるような感覚を受けた
───────
「凄い…」
僕は思わず声に出して言った。
僕らの部活が3勝0敗で勝ったのだが、その勝ち方が凄かったのだ。
僕の部活から出たのは、みおさん、ふらさん、すすむくんの3人。
相手は1年生の時に偵察に行った、鳥魚(ちょうぎょ)高校。
みんなは決まって、自分たちは、鳥にも、魚にもなれると言った。
それに強い肯定で返したのが3人。
感謝を返される形で勝利したのだ。
お互い、嫌な気持ちにならずの勝敗…。
僕はこれが、すすむくん達の勝利か…と心の中で思った。
遠くで、試合の様子を、黒い影が見ていた。
「肯定…。ここから先の試合どうなるか。
今度は決勝に。」
「次は3回戦か。楽しみだ」
すすむくんはそう言って笑う。
すすむくんのこういうところはずっと変わらない。
僕はそれが嬉しかった。
ところで、きせきさんが、みおさんをつれて何処かへ言った。
すすむくんに聞くと、他の人達を見てみたいらしいと言う。
「みおちゃんありがとう!」
「こちらこそ!まずはどこへ行きますか?」
「実はね!2人で誰かと話したくて…。みおちゃん優しくて、お話聞きたいなって!」
「そうだったんですね!私でよければ是非!」
「ありがとう!」
「率直に聞きます!どうしてそんなに優しいのですか?」
「はい!私、生徒会長になりたくて!みんなのお話に、優しく返すことを心がけたいなって!」
「わぁ!生徒会長凄い!」
「おじいちゃんが校長先生ですから!」
「そうだったんだ!おじいちゃんが校長先生って凄いね!」
それから、2人は色々な話をしながら歩いていた。
すると、突然、きせきが座り込んだ。
「どうしたんですか?」
みおがかけよる。
「誰かとすれ違った気がして…」
後ろを見てみると、どこの学校かの生徒達が向こう歩いている。
「多分、試合が終わったんでしょう!」
みおはそう言って微笑んだ。
「だよね!私たちもそろそろ戻って帰ろう!」
────────
<h3>散歩</h3>
皆さんは散歩についてどう思っているだろうか?
僕は散歩こそ、色々な想像を前へと進ませるものだと思っている。
少し前に、止まると思考は止まり、歩き出すと思考もともに歩き出すという考えを聞いたが、僕はよくそれを実感している。
深い状態になると、熱中して、どんどんと創作も捗っていく。
それが自分にとって最高の時間。
ところで、歩いていると、前から2人の人が歩いてきた。
すれ違う中、僕の耳に話し声が飛び込んでくる。
「さんまん」
僕はそれを聞いて考えた。
もしかしたら、何か、重要なものかもしれない…。
アニメや、漫画でよくあるやつだ。
僕は真剣にそのことについて熟考する。
「さんま」と「ん」にわけられて、「さん」と「まん」にもわけられる…。
だが、考えれば考える程分からなかった。
その後、少し考えたあと、また後で思いつくかもしれないと考えを寝かせておいた。
たまにいくら考えても、思いつかないこともある…。
だけど、こうして散歩している時は、色々な考えが思いつく。
深く考えすぎてる時は思いつかなかったり、逆に何も考えていないと、ふとしたところに落ちてくることだってある。
僕は散歩が好きだ。
今日もアイディアが降ってきた。
家に帰る途中、同級生に会う。
「シソウ、こんにちは!」
「こんにちは。」
僕は早速、今日、思いついたことを言おうとした。
すると、彼女から「あの!」と話す。
「どうしたの?」
「実は、思いついたことがあって…」
「どんなこと?」
「あのね、部活の思想…?あるでしょ。」
「うん。」
「私も思いついたの…。」
彼女は続ける。
「人と関わること…。それが私の思想。楽しい時間だって思うから…。」
「最近、学校でもみんなと仲良くしてたね。いいと思うよ。
馴れ合いって言うやつかな。」
「ナレアイ…?そうかも。私の思想はナレアイ!」
彼女はそう言って喜んだ。
「ところで、シソウの話したいことは?
あるんでしょ。」
「気付いてたんだ。」
「もちろん!あなたと一緒に居て、どのくらいになると思ってるの?」
「トモさん、ありがとう。」
僕はそのまま今日思いついたことを語った。
「考えをあたためること。それがいいと思うんだ」
彼女は頷く。
「自分の考えって言うのも、きっと友達と同じなんだ。深まってない時にオープンにしたり、おざなりにしちゃうと離れて行ってしまう。」
「だからこそ、あたためて…あたため続けて、この考えと付き合って行ったら…」
「きっと…」
彼女は「シソウらしくていいと思うよ」と笑った。
「ありがとう。」
────────
今日は後輩の女の子と、散歩に出かけます。
「みおちゃん、こんにちは!」
「きせき先輩、こんにちは!」
「来てくれてありがとう!」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとうございます!」
「今日は沢山話そう!」
「はい!」
みおちゃんは笑顔で言いました。
「みおちゃんはどうして思想学部に入ったの?」
「えっとですね、お姉ちゃんを探してて!」
「お姉ちゃん?」
「はい!中学生の時、仲良くしてくれた先輩です!」
「そうなんだ!見つかったの?」
「まだ…見つかってないです。」
「そうだったんだ…」
「はい…!見つからなくて悲しかったですけど、その時、すすむ先輩が入らないって誘ってくれたんです!」
「わあ!その時に!」
「はい!誘ってくれて嬉しかったのもありますし、家でも部活の名前を聞いてたので!」
みおちゃんはそのまま続けて言った。
「きせき先輩はどうして思想学部に入ったのですか?」
「私は実は、1年生の時は吹奏楽部に居たんだ!記憶喪失で思想学部に入ることにしたの…!」
「前に部活で協力しましたね…。そのことからだったんですか…」
「うん、そうなの…!」
「キセキ先輩の記憶、戻って欲しいです!私にできることがあったら、なんでも言ってください!」
「みおちゃん、ありがとう…」
「あの…。」
「はい、なんでしょう?」
みおちゃんは笑顔で答える。
「昨日の大会の時にね、何か思い出せそうだったの…。」
「え!?ほんとですか?」
「うん…。知ってる人が大会に出てたような…。そんな気がするの…。」
「今日行ってみますか?」
「ううん、大丈夫。大会の時にしか来ないと思うし…。」
「ですよね…。」
「でも、もしかしたら、次の試合にも来るかも…。だから、その時まで待ちたい。」
みおちゃんは笑顔で私の顔を見つめる。
「どうしたの?私の顔に何かついてる?」
「先輩が、私に話してくれて嬉しくて!」
そのまま話は続いて、最後に、もうすぐある生徒会の話になった。
「みおちゃん、生徒会長を目指してるんだ!」
「そうなんですよ!でも…少し待ってみようかなって思ってます!」
2人はその日、散歩しながら楽しく会話したのでした─────────
<h3>過去物語❽</h3>
「はみさん。」
はじめて会った人は、みんな私の事をそう呼ぶ。
「出席をとります。」
小学校の時、先生はそう言って、生徒の名前を呼んで行った。
「はみさん」
そう呼んで、誰も答えなかった。
「あれ、はみさんは欠席かな?」
そして、決まってこういう。
「ごめんごめん、うみさんの漢字読みづらいね。」
同い年の子も、よくはみさんと呼ぶ。
私は人と関わるのが少なくなった。
そのかわり、私は本を読むのが多かった。
誰か1人の人生や、その性格が文章に色濃くでているもの。
私はそれがとても好きだった。
そこには、色々な性格の人がいて、色々な生き方があった。
ある日、私は、思い切って誰かとお話してみようと考える。
だけど、どうしたらいいか分からなかった。自分ってなんだろう?
どんな話し方もすればいいのだろう?
すると、ふと、今まで読んだ本の人の性格が浮かんできた。
そうだ、この人達のように、関わってみよう。
私はそう思った。
だけど…。
「性格思ってたのと、違う。名前の通り、はみ出しものみたい。」
「うみって名前らしいよ。だけど、はじめてみたら、絶対、100%の人が名前間違えるよ。」
そう言って笑われた。
私は人と関わるのが怖くなった。
中学校になっても、名前の間違いは変わらない。
だけど、変わったことが少しあった。
部活、私みたいに、変わったものがあった。
いろいろ部。へんてこな名前。
私はそれをみて嬉しくなった。
なんでも自由にできる部活。
だけど、そこでも、私は浮いていた。
部活中はずっと本を読んでた。
私はその時間がいつもより好き。
自由がコンセプトの部活だったからかもしれない。
だけど…。
1年生の時は私以外、2年生の時、誰もこの部活に入らなかった。
卒業する3年生が、「この部活、はみさんだけになるね」と言って去っていった。
続けていきたい…。そう思ったけど、私にはどうすることもできない。
誰かを誘うなんて事も…。
でも、いいや…。
私一人で、この部室に居よう。
落ち着くから…。
3年生になって、私は放課後、この場所で1人で本を読んでいた。
周りには誰も居なかったけど、寂しくなかった。
本の中に、どんな時でも一緒に居るから…。
ある日、私が本を読み終わると、そこには、1人の女の子が私の顔を見ながらにっこりしてた。
それが、彼女との出会いだった。
この子も変わってる。
私のことをお姉ちゃんってよんだり、話してて思った。
だけど、心を許すことはできなかった。
この子も多分、みんなと同じで…
またある日のこと、1人の女の子が、私を探しに来た。
お姉ちゃんは居ますか?って。
私はすぐに、その女の子を連れて離れた。
歩きながら、女の子は言った「名前の漢字見ました!うみって名前なんですね!」
「とっても可愛くていい名前!」
そう言って微笑んだ。
私もそれにつられて頬にえくぼができる。
「ありがとう。」
その日から、彼女と少しずつ仲がよくなっていった。
自然と、彼女と過ごしてる日々が楽しいと感じるように。
この子と一緒にいると元気になる。
なるべく長く一緒に居たいって…。
だけど、その時、私はもう3年生。
来年は高校生になる。
この子とは一緒に居れないし、更に未来のことも考えなきゃいけない…。
私、これからどうなるんだろう。
もし、仕事につくとしたら、何になるんだろう…?
人のモノマネしてるから、そっちの仕事…。
もっと、違ったことがしたい…。
歩いていると、ある人を見かけた。
とても暗く悩んでいるような女の子の隣に座って、話を聞く同い年くらいの男の子。
女の子は自分の悩みを相談していた。
その時、彼は言った。
「俺は居なくならない。一緒に来ないか?」
女の子の方はとても救われたように、彼の言葉に「はい」と答える。
彼と一緒に居れば…もしかしたら…
私はそう思った。
だけど、あの子の事を思い出す。
一緒の高校に行こうって言ってくれた…。
私はそうしたいけど…。
でも…。
それからまた数日経って、あの子と会った。
私は思い切って言う。
「もうそろそろ、卒業するけど、心残りがあって…。」
「お姉ちゃん、なんでしょう?」
「実は…部活、私が卒業したら、無くなっちゃうかなって…。」
「そこが寂しくて…。」
それも思ってることだけど…本当に言いたいことは…。
すると、彼女は答えた。
「お姉ちゃん、大丈夫だよ!私の友達が一緒に続けてくれるって!」
彼女の笑顔に私は何も言えなかった。
とても純粋で優しい笑顔…。
私はあなたに救われたの…
もし、できることなら…。
高校に入って、あの子とは全く会わなくなった。
だけど、あの男の子と一緒の場所。
何か私の中の変化…。
少しずつ近付いていった
でも、その中で、時々、思い出すことがあった。
あの子のこと…
<h3>名誉挽回</h3>
俺の名はがいぶつ。
ここら辺じゃ有名なリベラルシンク高校。
その兄弟校、考自(こうじ)高校に通う2年生だ。
思想学部に通い、部長をしている。
1年生の時は、とても慕われて、最高の時間を過ごしていた。
だが、冬休みのこと、練習試合でやってきた1人の男に部員全員が見てる前で恥をかかされた。
名前は…すすむ。
しかも、防&剣の会に居た女子にその様子を見られてしまった。
それから今まで、辛酸をなめさせられてきた。
あの時、自分に向けられていた賞賛は消え、部長であるはずの俺に、冷たい目を向けられる。
あの時、練習試合してなかったら、1年生の時のまま、いい日々がおくれていたに違いない…。
そして、最近。
大会があった。練習試合後からまとまっていなかった俺たちの学校は、2回戦目で負けることになる。
相手は、絡繰(からくり)高校。
最初は互角だったが、最後に、俺の番が回ってきて負けてしまった。
また向けられるあの冷たい目に、俺は孤独を感じた。
だが、相手は最後に言う。
3回戦目は快勝だ。練習試合した、あの弱いリベシン高校と。
この学校は兄弟校らしいが、あそこより少し手強かった。
どういうことか…?
俺は心の中で思った。
そして、今日、リベシン高校と交流会があった。
この時しかない。
俺はそう思った。
部員を集めて、更に、リベシンの思想学部も集める。
俺はニヤリと笑った後言った。
「これから、試合をしましょう。」
「もちろん、リベシンの部長さんはしますよね。まさか、逃げはしませんよね。」
俺の学校の部員達は心配そうに見る。
だが、もう俺には後戻りできない。
このまま終わるくらいなら…。
それに、俺がここでリベシンに勝てば、また盛り返せる。
元に戻すんだよ。
可能性はある。からくり高校のやつが、試合で言ってたあの言葉を信じるなら。
リベシンの部長は「分かった」と一言。
考えていた通りの展開。
ここで俺は…。
「どんな風にするんですか?」
仮面を片手に持った女の子がたずねる。
「試合形式だ。5vs5の。」
味方の部員達はとても驚いていた。
「本当に大丈夫なんですか…?」
自信なさそうな声。
「当然だろう。」
すると、リベシンの1人が言った。
「だけど、俺の後輩が来てない。人数揃ってないぞ。」
前に練習試合に来てた女子も話す。
「前回の試合以降、部活にも来てないね。」
チラリとリベシンの部長と、後輩と言っていた男子を見る。
今度は仮面を持ってる女子も、自分の部活の全員ぐるりと見た。
「試合はできる。勝ち抜きだ。」
「俺が最初に行く。」
「元気なさそうだけど、本当にあなたで大丈夫?」
少し皮肉ったように聞こえた。
「お前らこそ、足引っ張るなよ。」
そして、はじまる。
これに勝てば、俺は元の地位に戻れる。
慕われたあの頃に…。
だが、目の前にあったのは、とても大きな壁だった。
男の口から出てくる言葉、それは全てのみこんでしまうような底なし沼。
言われているのが自分だったら…と思うと、逃げ出してしまいたくなる。
ただ、否定の度を越した、いじめのようにも見えた。
部員は、戻ると俺に謝る。
壁はあついのか…。
1人すらもう手に負えない。
そうか…
俺は心の中でガッカリした。
3人負けを言って、こっちはもうあと2人。
もうダメか…。
俺は心の中で諦めた。
もうあの時は戻ってこない。
太陽がとても暑かった。
すると、俺の気持ちをよそに、部活から、わーっと声があがった。
がせが勝ったのだ。
部員達は労いの言葉をかける。
すると、がせがこっちを向いて歩いてきた。
「すみません。俺はここまでです。あとは任せます…。」
「分かった。あとは任せろ。」
相手から出てきたのは、仮面を持った女子。
しかし、俺を前にして、「私、思想特に無いので負けます」と笑って言った。
そして、じーっとリベシンの部長を見つめる。
「分かった。」
「次は私がいきます。」
リベシンの女子がそう言うと、部長は「俺が行く。久しぶりにしたいんだ。」と。
「分かりました。ご武運を…」
それから、目の前にやってくる。
俺は思った。
今、リベシンの部長を前にしているのだ。
部員たちは、彼を尊敬している。
ここで俺が…。
振り返ってみると、俺を応援する姿があった。
この時間を永遠のものとする。
そして、試合がはじまった。
口を開いたのは、相手から。
「俺の思想は分かっていると思うが否定。君も否定だろう?」
「そうだ!」
そう思いつつも、心の中では動揺していた。何故、関わったこともない俺の思想を知ってるのか…。
「それでは決着しないだろう。だから、今からやるのは、お互いの否定への考えを。」
「分かった。」
「じゃあ、俺から話そう。」
「どんなことにも有益に使えるもの。それが否定だ。」
この人は否定という考えを広く考えている…。
「まぁ、こんなところでいいだろう。君の考えを聞かせてくれ。」
否定について…。そんなこと考えもしなかった。
俺は、ただ、これを道具のようにしか思っていなかった。
黙っていると相手の部長は言う。
「やっぱり、ないのか?」
その言葉が見透かされているような。
俺は思えば、凄いと言われたいから、利用していただけだった。
このまま終わってしまうのか…。
すると、頭の中に、部員たちの姿があった。
応援する姿や、頑張っていたメンバー。
「俺は否定について、人を結ぶものだと思っている」
俺は心の中で思った。
最後まで頑張るか…
──────
結局、勝てなかった。
俺は1人ぼっちか…。
すると、部員たちが、「頑張りましたね」と言った。
「どうして…?」
「一応、部長ですし。」
「見直しました。まぁ、最初のは許しませんけど。」
「また次回、試合優勝目指して頑張りましょう」
なんだろうな…。
求めていたものは得られなかった。だが、心の中で、とても嬉しかった。
「ありがとう。」
その一言が口からもれる
リベシンでは、副部長と部長が話していた。
「試合中の部長、素敵でした。」
「ありがとう。少し時間をくった。」
「結構ねばってましたね。」
「あぁ。あいつを見て思ったんだ。」
「何でしょう…?」
「俺も行かないといけないところがあるだろう。」
彼の何かを決意した目を、副部長は感じていた────
<h3>生徒会選挙</h3>
生徒会の選挙の日がやってきました。
誰が次の生徒会長になるのか。
でも、今回も、前回と同じで自分とは関係ないと思うから…。
と思いつつも、とても気になっていた。
確か、立候補するのは…。
にわのさん、すいぞうくんともう1人…。
ポスターが貼ってあった。
にわのさんは絵が得意な友達に、すいぞうくんは謎のなかまという存在に。
そして、もうひとつ貼ってあった。
校長先生の孫のみおさんだろう。
しかし、そこにあったのは、僕にとって予想外のものだった。
「すすむくん…?」
クラスに行くと、キセキさんが、しずくさんと話していた。
「今回はみおちゃん生徒会長にはならないみたいだよ。」
「えー!そうなんだー!
でも、凄いな…。生徒会長って私とは全く無縁の世界だと思うから。」
僕はすすむくんの元に向かう。
僕を見て彼は言った
「やぁ、あいだくん、どうしたの?」
「ポスター見たんだ。立候補するの?」
「うん。そうだよ。僕の目標は、みんなを幸せにしたいってこと。」
「今のままじゃ、できないと思ったからね。」
ポスターを思い出す。あれは自分1人で作ったものだ。
「でも、誰かいるの…?」
「誰かって?」
「協力してくれる人とか」
「居ないよ。選挙って、協力とかじゃなく、いい人が選ばれるんじゃないの?」
「そうかもしれないけど…」
「大丈夫だよ。僕はいつも通りするだけだから。」
心の中で思った。絶対にないとは分かってるけど…
もし、とうせんしたら…部活はどうするの?
───────
にわのは1人で考え事をしていた。
「にわのさんいつもありがとう!とうせんするのはにわのさんだよ!」
同級生の女の子が笑顔で話しかけた。
「ありがとう…。」
「いつも、みんなに優しいから、みんな見てくれてると思う!」
「それに、すいぞうくんは、生徒会に入る前、言葉はよかったけど…。」
私は、心の中で確かに…と思う。
「だから、にわのさんならきっと大丈夫!」
とは言っても…。今になって思う。私で大丈夫かな…?
それから、時間がやってきた。
一人一人、みんなの前で演説していく。
生徒会長立候補者の番になる。
最初に行くのは、すいぞうくんからだった。
「俺が生徒会長になったら、仲間を優遇する。」
そのまま仲間について話して言った。
その間、私はずっと頭の中で、獅王さんのことを考える。
あの人はこの生徒会長に強い思いを持っていた。
できる限り、よりよくしようって思いがあった。
私は…
そして、順番が回ってくる。
「私は生徒会に所属させて頂いていたにわのです。」
少し不安だった話すにつれて、それらは消えた。
そして、私は、段々、自分の中に入っていった。
どうして、わたしはリーダーになりたかったんだっけ…?
ふと、小学校の頃を思い出す。
初めの頃は何も考えてなかった。
だけど、ある日、出会った男の子がいた。
その子はとても優しい人。
私より2歳年下なのに、どうしてそんなに優しいの?と聞いた。
すると、彼は言う。
分からないけど、尊敬してる人が優しいからかも。って。
もし、できることなら、大人になっても、優しいままで居たいな
彼はそう言った。
確かに優しい人っていいな。
私もその日、彼にあってから、優しい人になりたいと心の中で思うようになった。
その日以降、彼とは会ってない。
でも…優しさが、上手くいかなくて、傷付けてしまった。
そして、今がある…。
相手の気持ちは分からない。
相手のためと思っても、その人を悲しませてしまうこともある。
本当に相手のためを思うなら…
私はそこで、外側に意識がむかった。
話の最後として、私は「言ってもらえれば、できることはします。」と言う。
途中までボーッと話してしまった。
でも、いいや…。
───────
一人の男が、考え事をしていた。
今のところだと、にわのさんにいれることになるだろう。
にわのの後に、最後としてすすむが出てきた。
「思想学部のすすむです。」
「僕が生徒会長になったら、みんなが楽しく幸せに暮らせるようにしたい。」
「それが僕の夢だから」
男は思った。昔、彼に何かを感じたが。
すすむは続ける。
「一人一人が安全で楽しく暮らせる学校。それが僕の理想です。」
男の頭の中に、何かが浮かんできた
そこから、すすむの演説は続いた。
その後、投票の時間になる。
ひなえの元に、獅王がやってきた。
「生徒会長!」
「もう会長じゃないよ。」
「そうでした…。」
「ところで、ひなえさんは誰に投票しますか?」
「もちろん、にわのさんに。獅王さんは?」
「僕は…」
────────