思想学部34

<h3>試合Ⅱ①</h3>

3回戦目を突破し、準決勝に駒を進めた。

「頑張ったね!」など声が飛び交う中、1人だけ、くらくなってた。

すすむくんが、しゅごくんによって「僕は頑張ったと思うよ。」と話しかける。

しかし、「過去は変えられないんだ。一度してしまったものは取り返しがつかない。」と言った。

なんで、彼はそこまで、おもいつめてるんだろう…?


顧問の先生はみんなを集めた。

「みんな、頑張ったね。ここまで来れたのは、みんながしっかりと考えを一人一人持ってるからだと思う。」

「でも、おごらず、自分のペースでこれからもがんばりましょう!」

そう言って、みんなの背中を押した。

はじまる前、1人の男がやってくる。

「君、全宝高校の生徒?」

「はい。そうですけど。あなたは?」

「次に君たちがあたる高校と試合した、注告(ちゅうこく)高校のものです。」

「何の用ですか?」

「語説(ごせつ)高校、一人一人が完成した思想を持ってる。とても強いです。」

「なるほど…。」

「僕らは3勝0敗で負けました。」

「ちなみに、なんでそれを言ったの?」

「次、棄権した方がいいですよ。」

「え!?」

「あの学校は今回、確実に優勝する。話してみて分かったんです。」

その時はごめんと謝った。

彼が言ったのは、ただ強いからなのか…?

何か酷いことされると言うのか…?

思えば、相手は3勝0敗の無敗で全て勝ち上がってきてる…。

それから、全宝高校の思想学部全員で、試合に向かった。

相手は全身白い衣類で身を隠している。


遠くで、5人の男たちが会話をしていた。

「今は試合が始まってる頃。」

「どうなるだろうか?」

「あの場に立つ5人は、私達に勝ったものたちだ。」

「そして、私達にないものを持っている。きっと、より良い方向に進めてくれることだろう。」

────────

5人は白い衣類をはずす。

すると、そこから、5人の女性が現れた。

「女性だったんだ。」

思わず、驚いた。

恐ろしい5人の男たちが、どんどん相手を倒していったのかと…。

しかし、さっきの人が言っていた、あの理由は何なのだろう…?

すすむくんが「最初は誰が行く?」と話していた。

「僕が行く。」

そう言ったのは、しゅごくんだった。

大丈夫だろうか…?

さっき…。

すすむくんは何も言わず、「分かった。応援してる」と。

「絶対に勝つ。」

そう呟くと、試合の場へ。

その最中、1つ前の試合のことが頭に浮かんでいた。

2勝0敗で、次に勝てば準決勝に進める。

その時も「僕が行く。」と言った。

しかし、中々、相手の方は決まってないよう。

内部で少しもめているようだった。

「俺が行く。」

「君はだめだよ。2試合目、相手の酷いことを言ったじゃないか…。」

「しかし、勝てた事実があるだろ。」

部員達は出ることを、否定していた。

「そこまでして勝ちたくない…」

だが、それらを振り払い、その男は出ていく。

「主催者に、あいつらは全員棄権するらしい。あとは俺1人だけでやる。」

そう言った。

「君が相手?誰でもいいけど。」

「あぁ。俺が相手だ。」

「僕から話すよ。僕の思想は、大切な人を守ること。

君の思想は?」

すると、彼は笑いだした。

「思想なんてある訳ないだろ。勝てればそれでいいんだ。」

「な…!?」

「大切な人を守るだって?本当にできると思ってんのか?」

「出来るさ。」

だが、相手は余裕を見せ、笑って言う。

「それが考えってことは、昔、守れなかったことがあるんじゃないか?」

「何が言いたいんだ…。」

「図星だな。昔、守れなかったやつが、本当に守れると思ってんのか?」

「うるさい。」

「お前は失敗したんだ。更に傷付けたんだよ。大切な人ってやつをよ。」

それを聞いて、急にあたまが痛くなった。

同じ部活の人が、よってきて負けになる。

僕は守れなかったのか…?そう呟いた時、そばに生徒会長をつとめていた人が居た。

「守れないことは誰にだってあるよ…。」

「だけど、守りたいって…その気持ちがまだあるなら、きっと守れる。私はそう信じてるよ。」

そのまま、対戦に向かっていった。

試合を見ていなかったから、どうなったか分からない。

もしかしたら、守りたいという気持ちが勝ったのかもしれない。

「あなたが相手ですか?」

「うん。僕が相手。」

「私は世人愛(せじんあい)と言います。あなたは?」

「名前はしゅご。」

「ありがとうございます。では、早速、はじめましょうか。」

「分かった。」

「どちらから言いますか?」

「じゃあ、ぼくが言う。」

「分かりました。」

「僕の思想は大切な人を守りたいということ!」

────────

<h3>試合Ⅱ②</h3>

「なるほど。私の第一印象では、いい考えだと思います。」

「君の考えを教えて。」

「分かりました。

私の考え…それは、相手に対する愛、優しさが大事だと言うことです。」

「そうなんだ。」

「はい。次に行きましょうか。」

「分かった。僕の考えの説明をする。」

「家族、自分、その他の大切な人達。それは誰しも必ず居る。」

「居ないと思っていても、気付かないだけで居るんだ。」

あいはそっと頷いた。

「その人達を守れずに、何が守れると言う。僕はこれこそが1番大事な考えだと思う。」

「分かりました。」

「私の考えの説明をしましょう。」

「相手を愛すること、優しくあること。人と接する上でとても大事なことです。」

「友達であろうと、知らない誰かであろうと適度な両者を…。ここまでにしておきましょう。」

「次は、お互いに否定するか、肯定するかか。」

しゅごがそう言うと、あいは首をふった。

「どういうこと?」

「私はあなたの考えを聞いて、肯定も、否定もしないと決めました。」

「君の負けでいいってことか?」

「いいえ。」

ただその一言以上は何も言わない。

語説高校のメンバーが呟いた。

「あいさんの考えの1つが出ましたか。」

「これは少し長くなるかもしれませんね…。」


「何も言わないんじゃ、進まないじゃないか。」

「分かりました。では少し。

あなたの1番大切な人は誰ですか?」

すると、しゅごの頭の中に、1人の女性の姿が浮かんでくる。

「お姉ちゃん。」

「その人をあなたはどうしたいんですか?」

「守りたいんだよ。」

「守るとは何から?」

ひていから…かなしませるやつらから…心の中で強く思う。

「そして、あなたは本当に守れるのですか?」

守れなかった過去が浮かび上がってくる。

何度も何度も誰かに傷付けられてきたんだ…。

「僕じゃ…守れないよ…。」

弱気になった彼を見て、あいは驚いていた。

「でも…何度だって守るんだ。手を差し伸べてきたら僕はその手を握る。」

「少しでも元気な姿が見えたら…それが僕の幸せだから。」

しゅごの頭の中に、昔の、笑顔の姉の姿が浮かんでくる。

「そうですか…。あなたの勝ちです。」

それに味方の高校のメンバーは驚いていた。

「ごめんなさい。」

「大丈夫です。私達は、勝ち負けを決めにきたのではありませんから。」


「私が行きます!」

みおさんが元気にそう言って、すすむくんはOKを出した。

それから、次の試合が始まる。

「私の名前は正事真気(しょうじまき)と言います。あなたは?」

「私はみおっていいます!」

「そうですか。」

「はい!」

「では、早速、お互いの思想を話し合いましょう。」

「了解です!」

「私の思想は、欲にとらわれず、自分のやるべきことをすること。」

「なるほど!」

「あなたの考えを教えてください。」

「はい、分かりました!」

「私は可愛いものが世界に一杯あること!可愛いものしか勝たん!!」

「可愛いもの?」

「はい、そうです!」

「とりあえず、聞くのは後にして、お互い説明しましょう。」

「分かりました!」

「はじめます。」

「自分にはしなければいけないことがある。それなのに、欲に囚われできないでいるのは良くないことです。」

「少しでもすすむべき方向にいくため、欲には制限を加えなければいけません。」

「更には、利益になるからといって、自分の道を踏み外してはいけない。

本当に叶えたい目的は、違う何かで壊してはいけないです。」

「うんうん!」

みおさんはそう言って頷いた。

「すみません。話しすぎました。」

「全然全然!まきさんの考えが聞けて嬉しかったですよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

まきさんの様子に微笑む。

「ふふふ。」

「今度は私が言いますね。」

「分かりました。お願いします。」

「一人一人必ず、可愛いものを持ってる。世界には美しいものが一杯あるの。」

「隠れてしまってることもあるけど…ちゃんと見つけてあげたい。そして、可愛いって思うの!」

「何故、そう思うのですか?」

「可愛いものが大好きだからっ!」

「そうですか。分かりました。」

「では、続きをはじめましょう。」

「分かった!」

「あなたの考えと、私の考え、違うところがあります。」

「そうだったかな?」

「はい。欲に制限をかけるところです。あなたの考えでは、欲が暴走してしまう。」

「なるほど…。」

「そして、可愛さには、飽きが必ずくる。要らないものは捨て、新しいものを永遠と求め続けるのですか?」

「ふふふっ!」

みおさんは笑った。

「どうしたんですか?」

「あなたの言う通りかもしれない。だけどね、私はしたいことがあるんだ。」

「それは何ですか?」

────────

<h3>試合Ⅱ③</h3>

みおさんはそっと、まきさんに近付いた。

そして、両手で彼女の手を優しく握る。

「あなたも可愛いところを持ってる。

真面目なところとか。」

「私はね、隠れてしまってる可愛いもの、それをちゃんと見てあげたいって思うんだ。」

「心の中の可愛いところ、その人の性格、仕草色々あるけど。」

ぬいぐるみさんは可愛いものが傍にあるって教えてくれる。だから、私は、世界中を可愛いもので一杯にしたい。」

まきさんはその話に夢中になっていた。

そして、ハッとする。

「少しボーッとしてました…。すみません。」

「ううん。大丈夫だよ!」

「ありがとうございます。

あなたは、ぬいぐるみで一杯にしたいのですね。」

「はい!」

「みんなが欲しいと思ってるのですか?」

「それも考えたよ。みんなの話を聞いて、理想に近付けるの!」

「分かりました。あなたのすること、それはみんなの笑顔なのですね。」

「自分の考えを無理に押し付けようとせず、話し合って、より良い方向へと考えていく。」

まきさんは目を閉じて言った。

「考えの面では、私は納得しました。この勝負はあなたの勝ちです。」

そして、自分の学校のメンバーの元へと戻っていく。

「ありがとう!あなたの考えもいいと思った!

お互い頑張ろうね。」

その声に、彼女は、1度立ち止まり、みおさんの方へお辞儀をした。

「ふふふっ!」

みおさんは笑顔で戻ってくる。

「みおちゃん凄い!」

「ふらちゃん!私は相手の人もふらちゃんやみんなも凄いと思うの!
 
いつもありがとう。」

「ふふふ!」

「ふふふ!」

2人はそう笑顔で見つめあった。

その後、ふらさんはすすむくんのところへ行く。

「次は私が出たいです!」

「分かった!応援してるよ!」

「ありがとうございます!」

そして、向かう前、最後にゆめさんのところへ。

「行ってくるね!」

「はい!行ってらっしゃい!ふらお姉ちゃん。」


相手のメンバーは少し話し合っていた。

「どうしますか?

次に負けたら、試合、終わってしまいますよ。」

その中心に居た、まみは口を開いた。

「それでもいいのです。私たちは5人に託されました。

本当だったら、この試合に出るはずであった5人に。」

「彼らは言いました。本当に重要なのは、勝利ではないと。」

「自分達にはないもの、それが私たちにはあると…。」

「彼らがどう考えていても、私たちは自分の信じるものを進むだけです。この先に任せましょう。」

「分かりました。」

「それに、彼らが求めた勝利による目的。自らの考えを多くに広めること。」

「それは自分の考えを信じていないことです。本当に大事な考えというのはきっと…」

「まみさんは自分の考えとも友達なのですね。」

「そうかもしれませんね。

最後まで楽しみましょう。」


「儀楽麗夢(ぎらくれいむ)です。」

「ふらです!」

「あなたの考えから教えてください。」

「分かりました!私の考えは、相手のいいところを見つめて後押しすることです!」

僕は心の中で思う。彼女の考えが、前と少し変わってる。

みんなそれぞれ変化しようとしてるんだと…。

れいむさんは頷いて言った。

「なるほど。ありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそ!」

「私の考えを言います。うけつぐこと。」

「うけつぐこと…ですか?」

「はい。うけつぐことです。」

「どんな考えなんでしょう!気になります!」

「ありがとうございます。でも、あなたの方から説明してください。」

「そうでしたね!私の考えは前のみおちゃんと少し似てます!」

「人の考えや、夢には、それぞれいいところがある。私はそれを見つけて後押ししたいんです!」

「なるほど。私はいいと思いますよ。」

「わー嬉しいです!」

「ただ…」

「どうしたんですか?」

「次は私が言う番です。」

「そうですね!楽しみです!」

「さっき言った、うけつぐこと。それは…。」

「昔あった人の考えなど、この世に存在する残していったもの。それらを本当の意味でうけつぐことです。」

「本当の意味で…?」

ふらさんは首をかしげた。

「はい。」

「その中には間違いや、苦しめてしまうものも含まれています。」

「それがあるから捨ててしまうのではなく、理想を取り出し、より良い方向へと進んでいく。」

「本当の意味で引き継いで行くということだと思ってます。」

「そうなんですね…。

上手くは言えないですけど…昔の人も大事にして、今のことも大事にする。」

「それって誰も傷付けなくていいと思います!」

「そのためには、優しさ。それが必要だと思ってます。多くのことから、理想の未来を作っていくんです。」

「過去の希望を…私達は受け継いだ。」

<h3>試合Ⅱ④</h3>

「れいむさん、あなたの考えを見つけたのですか?」

「そうかもしれません。」

「お疲れ様です。」

そのまま戻る最中、少し後ろを向いた。

すると、5人の男達が立っているように感じた。

あなた達の考え、少し連れていきますよ。

そう心の中でつぶやく。


ふらさんが戻ってきた。

「ごめんなさい。相手の方がとてもキラキラしてて…」

「大丈夫!行ってくれてありがとう。」

「こちらこそ、出してくれて、ありがとうございます。」


僕は心の中で思った。

2勝1敗か…。今日はじめての負け。

ただの1敗が、どんどんその後の負けに繋がって行く可能性がある。

ここでとめなきゃいけない。

そう思って僕はすすむくんの元へ。

「次、僕が行かせて欲しい。」

「うん。分かった!」

「ありがとう。」

少し心の中で、彼女達の傾向がつかめてきた気がする。

相手の考えがいいかどうか、それが勝ちを譲る基準になってる。

彼女たちより優れているかよりも、ただ、考えが認められればいい。

僕ならきっと、可能性がある。


「豊明知世(ほうめいちよ)です。」

「ぶんたです!」

「よろしくお願いします。」

「こちらこそ!」

「私の考えから言います。知識を持つこと。それが大事です。」

僕は心の中で、彼女の考えに否定的だった。

「僕の考えは、普通であることです。」

「そうなんですね。」

「次は私の考えの説明をしましょう。

知識があること。それはどんな時でも、自分の助けになります。」

「でも、その知識によって、苦しめられることもあると思うけど…。

例えばデマとか。」

「それなら、こう考えてはどうでしょう?それがデマだと分かる知識があること。」

「そんなとんちみたいな…。」

「私はあなたの批判にいくらでも付き合いますよ。」

彼女はそう言って笑う。

「なんでもないです。僕の考えを話します。」

「はい。お願いします。」

「全体として、偏りを無くすこと。それが僕の考えるところの普通です。」

「偏りを無くすことですか?」

「はい。とても凄い能力があったとしても、逆にできないところがあればそれは全体として中立的ということになります。」

「この普通を自分の意思で目指すこと。それが僕の考える普通です。」

「そうですか。

それで、話は終わりですか?」

「じゃあ、もう一つだけ。偏りはそれを肯定しすぎると、更に悪くなってしまいます。だからこそ、逆の要素が必要になる。」

「言ってることは変わりませんが、これが普通を目指すという考え方です。」

僕は心の中で少し自信があった。前の感じから、受け入れてくれるだろうと。

しかし…。

「あなたは自分の考えていること。それが実行できますか?」

「できると思ってるよ。」

「では、実際にここで見せてください。」

「え…!?」

さっきまで、それは求められなかった。

当たり前のこと過ぎたが、相手が違う…。人が変われば、考えることも違うか…。

「できないです…。」

「あなたは本当に自分の考えを、大切な人のように大事にしていないのですか?」

「ずっと考えてきたことだから…大事にしてると思う…。」

「では、何故、ここで実際にすることができないんですか?」

ドキッとした。思えば、1年生の頃、自分の考えを捨てて新しい考えにうつった。

長い間付き合っていた考えを捨て寄り良い方に、乗り換えたのだ。

だから、この考えには思い入れもない。

何も喋れずにいた。

すると彼女は話す。

「本当は勝ち負けだけを気にして、道具のように思ってるんじゃないですか?」

「そんなことはないと思う…。」

「では、考えに対する愛を見せてください。実際に行動で。」

「僕の負けです…。」

思えば、ちゃんと考えられてなかった…。自分の考えについて…。

思いついたからそれでいい。どこか心の中でそう思ってたのかもしれない…。

しよう、しようと思って出来なかったんだ。

「名前はちよさんだっけ…?」

すると、彼女は笑顔で言った。

「いいえ、本当は無戯(むぎ)って名前で、それは姉の名前です。」

「え!?」

「私の考えの話も、あなたのことを言ったのも適当です。」

驚きで声が出なかった。

「ただ、頑張ってください。」

そう言って、手を振る。

「ありがとう。」


すすむくんの元に戻った。

「ごめんね。2勝2敗になった。」

「大丈夫。勝ち負けは大事じゃないから。」

「色々な考えがあったね。これなら、最後、勝っても、負けてもくいがない。」

すすむくんは明るかった。

最後は彼が出るのか…。

これがやりたいと思ってたからね…。それもそうか…。

すると、直後、1人の女の子が立ち上がった。

「あの!最後、私出ていいですか?」

<h3>試合Ⅱ⑤</h3>

「もちろんいいよ。」

すすむくんは即答した。

「え?本当にいいの。」

「うん。出たいと思うなら、出て欲しいと思うんだ。」

ゆめさんは笑顔で言った。

「ありがとうございます。」

すると、そばに、ふらさんが近付いていく。

そして、小さい声で、「あなたなら大丈夫。」と呟いた。

「いつもありがとう。お姉ちゃん。」

そして、彼女は試合の場所に向かった。

「最後はあなたですか。」

「はい!」

「優しい方ですね。」

「ありがとうございます。」

「お名前はなんて言いますか?」

「ゆめです!」

「そうですか、可愛いお名前。親御さんはいい名前をつけてくださいましたね。」

「ありがとうございます!あの!名前はなんですか?」

「あ…。忘れてましたね。

私は誠情真実(せいじょうまみ)です。部長をしてます。」

「まみさんもいい名前ですね!」

「とても優しくて…。出会えて良かったと思います。」

まみさんはにっこり微笑む。

「ちょっとはやいかもしれませんが、試合を…始めますか?」

「もちろん。楽しみです!」

「私も楽しみです。」

僕は2人を見ていられなかった。

自分が勝ってれば、決勝に行けた。自分が過去に…。

すると、そっとすすむくんが肩を叩いた。

「君が良ければだけど…。一緒に最後までみないかな?」

心の中でそうだよな…と思った。

「分かったよ。」

「私の考えは、友達を大事にすること…。」

「特に大事にする要素として真実を正直に話すこと、約束を守ることです。」

「話してくれてありがとうございます。」

そう言ってぺこりと頭を下げる。

「大丈夫ですよ。あなたの考えの説明を、聞かせてもらえませんか?」

「はい!」

「人には…。美しいものを美しいと思う力がある。」

「感動は笑顔を呼ぶ。そして、笑顔は連鎖するんです。どんな生き物でもきっと…。」

「私たちは、喜びや、悲しみをわかちあえる。」

「今まで私は…周りの人に支えられて生きてきました。」

「そう…。みんなが優しくしてくれて、気持ちが深まった考え。」

「それが私の感情論…。」

「強く優しい気持ちは…いつまでも残り続ける。私はそう信じてます。」

「ありがとうございます…。この試合、降りさせてもらいます。」

それで試合は終わった。

「良かったのですか?」

「はい。相手の方、5人の考え…それぞれが理想を求め、自分なりに真剣に出したもの。」

「そして、最後のあの方の考え…共感することが沢山あったのです。」

「そうでしたか。」

「はい。あいさん、まきさん、れいむさん、ほうめいさん。」

「あなた達がそばに居てくれたから…私はここにあるんです。」

「こちらこそ、ありがとうございます。私もとても楽しい旅でした。」

人は喜びをわかちあえる…。ゆめさん、私もそう思いますよ。

────────

「ゆめちゃん!」 

そう言って、ふらさんは彼女のことを抱きしめた。

「お姉ちゃん。」

「ゆめちゃん、お疲れ様!」

「いつも支えてくれてありがとう。」

「私の方こそ、いつもありがとう。」

「お姉ちゃんや、そばにいてくれてる友達がいつも支えてくれてたから…。」

「ここまで私は考えを持っていられた。」

2人はそのまま嬉しそうに話をしていた。

「これでまた、決勝か…。」

「すすむくんどうしたの?」

「あぁ…ぶんたくん。分からないけど。色んな考えの人が居たなって。」

「確かにそうだね。」

「ぶんたくん、良ければだけど…。」

「どうしたの?」

「1つお願いがあるんだ。未来のことになっちゃうけど。」

「え…?」

「次回の試合、僕のかわりに、君が出て欲しいんだ。」

「どうして?」

「みんなの考え…見てたいんだ。」

「それでも、僕は構わないけど。」

「ありがとう。」

「もう1つの理由を言ってしまうけど…もう肯定しなくてもいい気がしたんだ。」

「みんなそれぞれ、自分の考えに自信を持って、相手の考えも肯定する。特にさっきの試合は思ったから。」

「そうだったんだ。」

「嬉しいんだ…。」

「すすむくん、良かったね。」

「うん。ぶんたくん、ありがとう。」


少し前のこと…。

「準決勝も3勝0敗でしたね。」

「あぁ。ここまで来れたのはみんなのおかげだ。ありがとう。」

「そして…最後の決勝は語説高校か、あの高校か…。」

「どちらになるでしょう?」

「多分、あいつが、上がってくるだろうな。」

部長は心の中で、すすむと言った。

「ただ…。」

部長はそう言って、副部長の前へ。

「なえさん。大丈夫か?」

「あ…はい。私は大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。」

「それならいいんだが。」

すると、すいぞうがやってくる。

「ずっと休んでるな。何かあったのか?」

「仲間は大事だ。言ってみろ。」

「ううん。なんでもないの…。すいぞうくんも心配してくれてありがとう…。」

ただ、終始、副部長はどこか元気がなかった。

「次は一番最初に出るから…大丈夫…。」

───────