<h3>過去物語9</h3>
ある日から私の周りは変わった。
みんなはどう考えてるんだろう…。仲良くしたら…また。
そうはなりたくない。
昔、教えてくれた言葉が、私の中にあった。
そこから私の行動が始まったんだ。
「なうちゃん、遊ぼー。」
「ちょっとまって!先生のところに出さないと。」
「あの!」
「どうしたの?」
「私がかわりに先生に出します!」
「えー。いいの?ありがとう。」
そして、その子は「もう遊べるよ!」と友達の元へ、走っていく。
相手が喜ぶこと、それがきっと優しさ!
他の子が喜んでるところを見て、心の中で嬉しかった。
だけど…
「用があるから、かわりにしてくれる?」
そう言って、頼む人達…。
毎日、忙しくなった。
心が苦しくなる…。これが優しさなのかな…?
その時、ふと思い出す。
昔からメモをつけてたこと。
久しぶりに見てみると、そこには、友達の言葉が書いてあった。
…ずっと友達でいられる。
私はまだ…。
他のところに行くと、悲しかった時のことも書いてある。
そういえば、知らない人に優しくなりたいって言ってたんだった。
いつの間にか、なんで自分がそうなりたいのか忘れてた…。
そうだったな…。
やさしくなるためのこと。
みえないところから、そーっとひとのためになることをする。
そう書かれてた。
振り返ってみると私は…。
ちょっと優しさを変えてみようかな…。
それから、私は色々試してみた。
上手くいったこともあったけど、寂しさは増していった。
そして、上級生になった頃のこと。
私はよく座って、人を観察するようになってた。
みんなが見えて、困ってる人には助けるために必要なことが。
友達同士が話してるところは、楽しそうな雰囲気に私も混じってる感覚になれる。
でも、たまに…。
心の中で寂しいな…って気持ちになる。
休み時間のそんな時、座ってる人を見てみると、私と…もう1人だけ居た。
夢中になって何かを書いてる。
思えば休み時間はいつもそう。
私は心の中で話しかけた。
もしかして、あなたも1人なの?
そのまま見てると、その男の子は、筆箱を下に落とした。
でも、気付かずに、ノートに夢中になってる。
私はそっとその子に近付いた。
そして、邪魔にならないよう、そっと筆箱を机の上に置いた。
心の中で呟く。
ありがとう。
それから、私は高校生になった。
いつも通りで、変わらない。
だけど、その中にも…。
「思想学部に入って欲しいんだ!」
あなただったんだ…。久しぶり。
心の中でありがとう。と言った。
「はい。いいですよ。」
ちょっとした再会や…ちょっとした嬉しいことがある。
────────
それからまた時が経った。
昔に会った人達は、今、何をしてるんだろう。
優しさについて教えてくれた人…。
優しい風が吹いた。
1人の男が呟いた。
「自分のできることはした。これからどうするか…。」
「しかし、中学校の頃か…懐かしいな。
あの男の上の名前、なんだったかな…。」
どんな風に過ごしてるのか分からない…。
だけど、楽しく平和に暮らしてたらいいな。
「みちかちゃん…?」
「あゆみちゃん、なんでもないよ!」
「ふふ。良かった!」
「またお話しよ!」
「うん。沢山しよー!」
私の周りはあれから少し変わった。
私の終わりと始まり。
───────
<h3>試合前の休息</h3>
これは、夏休みのある日のこと。
弟の様子がいつもとおかしかった。
「お姉ちゃん。」
「どうしたの?」
「話があるんだよ。」
「話って?いつものカッコイイとか。」
「ううん。そうじゃなくて真剣な。」
「何か…。前もそうだった気がするけど。」
真剣にみつめる弟に、私は「何…?」と聞いた。
「最近何かあった?」
「え…?最近。特に何も無いけど…。」
「それならいいんだけど。何かあったら言って。」
「うん。ありがとう。」
私はふと思い出す。
「そういえば、試合どうだった?」
「決勝まで行ったよ。」
「そうなんだ。じゃあ、最後あたるね。」
「うん。」
「しゅごもでるの?」
「僕の役目はここまでだから。」
「あぁ…。前に言ったことしてるんだ。」
「昔、言わなかったかな。」
「そうね…。」
弟の言葉にドキリとする。
「もう一度、言いたいんだ。」
「え…?」
「困ったことがあったら助けるよ。家族だからとかじゃなく、僕自身が、家族のことが好きだから。」
そう言って、弟はその場を離れた。
「あなたはそうだったね…。」
頭の中に過去のことが浮かんでくる。
「お姉ちゃん!」そう言って笑顔でかけてきた。
そういえば、私が虐められてた時も…自分をカッコイイって言わなかったな…。
もしかしてあなたは…。
そう思うと、部長のことが浮かんでくる。
ちゃんと向き合わないとね…。
「お兄ちゃんどうしたの…?」
そう言った弟は僕を見て焦っていた。
それも、仕方ない。僕は前の試合から向き合うことを決めたのだ。
自分の大切な考えと…。
そして、今、ストーブと扇風機を同時に使ってる。
「でも、これはおかしいかも。」
2つとも消した。
「どうしようかな…。」
色々試してみるのがきっと近道!
「やってみよう。」
そう呟いた。
「よく分からないけど、応援してる!」
「ありがとう。」
それから数日、同じ時間に、違う学校で2人の男女が待ち合わせをしていた。
「久しぶり!」
「あぁ。来てくれてありがとう。」
「すすむくん!」
「おとねさん。」
─────────
「ゆめりちゃん。」
「そう呼ぶのは、きせきだけだ。」
「ふふふっ!」
むりはその様子に、何も言わず彼女を見てた。
「どうしたの?」
「なんでもない。今日は最後に会いたくなったんだ。」
「最後…?」
「あぁ。試合前にな…。それが終わったあとはもう会えないかもしれないし。」
「今日、久しぶりに2人で会えた…。また会えるよ!」
「そうだといいな。」
「大丈夫!」
きせきはそっと両手を繋いだ。
「やさしい手。私たちは繋がってる。」
そう微笑む。
「一つお願いしていいか…?」
むりは続けて言った。
「試合が終わったあと、もし、きせきの元へ行くことがあったのなら…。」
「また話さないか?」
「もちろん!話そう!」
「ありがとう。」
─────────
「すすむくん!話って何かな?」
「前に言ってた事なんだけど。」
「?」
「ところで、もうすぐで試合が始まるね。」
「そうだね!みんな色々な考えがあっていいなって思ったんだ。」
「そうだね。」
「試合が終わったら、部活を辞めて、その後また卒業が待ってる。」
「うん…。」
しずくは寂しそうに下を向く。
「僕は少し考えてる事があるんだ。」
しずくはすすむの顔をみる。
「良ければ、卒業後も一緒に、色々なこと考えないかな?」
「色々なことを考えるって…?」
「みんなで、部活みたいなことをする!仲間を集めて!」
「おぉ!」
「他の学校の人だろうと、歳が離れてたって誰でも来たい人は来ていいみたいな!」
「いいね…。」
「良ければ一緒に来ないかな?」
「はい!」
すすむが手を伸ばすと、その手をしずくは握った
───────
そして…色々な人達の気持ちが動きながら、時は近付いていった。
「明日が最後だ。ここまで来れたこと、感謝する。」
「部長…!」
リベシンの部員達は部長を囲む。
しかし、副部長は少し下を向きながら、考え事をしていた。
すいぞうは話す。
「そういえば、あの1年生はどうする?」
「好きにしてもらえばいい。」
「部長がそう言うなら。」
部長はそう言いながら、少し副部長の様子を見ていた。
そして、部活時間が終わり、帰る時のことだった。
一人の女の子が、彼らの元に現れる。
「こんにちはー!」
「あぁ。きせきじゃないか。」
「ゆめりちゃん!」
「何しに来たんだ?」
「懐かしいこと。」
ふふふっと笑って、持っていた袋の中からピアニカを取り出す。
「良かったら、きいて欲しくて!」
「そうか…懐かしいな。」
そして、部長は言った。
「帰りたいものは帰っていい。」
だが、すいぞうたちは「部長がきくなら…」と言って一緒に残る。
副部長は「私も…聴きたい」と影から言った。
そして、はじまる。
懐かしい音…。
ただ、部長にとってはそれが幸せな時間だった。
みみをその音楽の方へよせる。
そして終わった。
きせきは「きいてくれてありがとう」ぺこりと頭を下げる。
すると、むりは「ありがとう」と小さく言ったのだった
────────
<h3>試合Ⅲ①</h3>
3年生、最後の試合の時がやってきた。
思想学部は今日で終わりか…。
少し寂しさがありながら、頑張りたい気持ちがあった。
「全宝高校の思想学部じゃないか。」
そう言い誰かが、笑いながらやってきた。
この声…聞いたことがある。
「まぁ、知ってたんだけどなあ。」
生徒会に居た…すいぞうくん。
「どうしてここに…?」
「俺はリベシン高校の思想学部だからな。」
「お前の名前は確か、あいだぶんただったな。」
「うん。そうだけど…。」
「知ってるぜ。一人一人、調べてんだよな。ノートに書いて。」
「どうしてそれを…?」
「俺の情報網さ。」
「すいぞうくん!」
後ろからにわのさんがそう言った。
「なんでここにいる?」
とても驚いてるようだ。
「あなたが思想学部に入ったって聞いて、私もはいったの。」
「ははは。そうか、そうだったか。」
そう言って、リベシンの元へ戻っていく。
「大丈夫だった?」
そう言い、僕の方を心配そうに見つめる。
「はい!大丈夫です。」
「良かった…。」
彼女は優しい人だ。
しかし…何故か分からないが、今回、僕とすいぞうくん対戦することになりそうだ…。
すいぞうくんには僕のこと沢山知られてるようで、僕の方は逆に知らない。
とても不利…。
「すいぞう。話してきたのか?」
「はい。一応、1年と半年通って学校でしたから。」
部長は小さく頷く。
「今日も3勝0敗で終わりましょう。」
「勝とう。」
「最初なんだけど、誰が行きたいかな?」
「はい!私が行きたいです。」
そういったのは、ゆめさんだった。
前回、初対戦で、悪い状況から彼女のおかげで勝った。
「分かった。」
「ありがとうございます!」
ゆめの頭の中に、前日のことが浮かぶ。
─────────
「遂に、明日だね。」
「ですね!お姉ちゃん!」
「ふふっ。そう言われると、本当の妹のように感じるよー。」
「大好きな人がお姉ちゃん。嬉しいです。」
「ありがとう。」
そう2人は、お互い体を預けあった。
「明日、でるの?」
「分かりません。」
「私は出ないと決めてる…。でも、もし、ゆめちゃんが出るのなら…。」
「はい…。」
「あなたは…あなたの道を頑張って…。」
「はい!」
「ふふふっ!」
「ふふっ!」
「あなたならきっと大丈夫!」
────────
頑張るよ、お姉ちゃん。
そう心の中で思いながら、ふらの方をみる。
ふらも心の中で応援しながら、彼女の方を見ていた。
リベシンでは、すいぞうと部長が話していた。
「あの1年、最後対戦してたって言ってたな。」
「そうでしたね。中々厄介相手かもしれません。ここは俺がいきましょうか?」
すると、後ろから弱い声で「あの…。私が行きたいです」と。
2人は後ろを向いた。
そこには、副部長が。
「最初に出るって言ってたな。出るか?」
「はい…。出させてください…。」
「分かった。」
「え?待ってくださいよ。」
すいぞうは部長に抗議した。
「最近の副部長じゃ、きっと、勝てない。話し合いもできないじゃないか。」
「本当か?」
副部長の方を見て聞いた。
「いいえ…。勝ちます。」
そう言って、相変わらず、元気なさそうにゆめのいる試合場へ。
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします…。」
副部長の頭の中には、部長の姿がずっとあった。
なんでだろう…。ひていの話なんて、信じてないのに…。
そうだったらどうしようって思ってるんだ…。
人なんて信じられないって、少し思ったことがあるからかな…。
部長は優しかった。
だけど、あの人が何を思ってるのか…。
それは分からない。
少し前に、きせきさんの姿があった。
私は諦めようとしてるの…?私と彼は絶対一緒になれない。
「大丈夫ですか?」
その声にハッとした。
副部長の目の前には、ゆめが居て、とても心配そうに見てる。
「ボーッとしてた…ごめんね。」
「大丈夫なら良かったです。」
濁りのない笑顔…。きっとこの子は、今が充実してるんだろうな…。
「私から話しますね。」
「分かった…。」
「私の考えは、感情論。
次はあなたのこと、教えてください!」
副部長はそっと微笑んだ。
「あなたの考えは知ってたよ。今から言うこと、あなたと似てるかもね。」
「楽しみです!」
「私の考えは好きな人へのおもい…。それはとても強いの。」
「わぁ!なんか、ロマンチックですね。」
「ありがとう…。」
「これから、一緒に話すのが楽しみです。」
「うん。話そう…。」
「その前に、説明しますね!」
「相手が喜んでるところを見ると、私も嬉しくなる。」
ゆめの頭の中で、友達の女の子が笑顔で話しかけてくる映像が浮かぶ。
それを聞いた副部長の近くに、部長の姿が現れた。
どこか嬉しそう。
それに副部長は複雑な気持ちだったが、1つの感情があった。
<h3>試合Ⅲ②</h3>
ゆめはそっと、また口を開いた。
「苦しい時は悲しくなる…。」
ゆめのそばに、友達の男の子が現れる。
とても悲しそうで、ゆめも悲しい表情になった。
副部長のもとに現れたのは、部長の姿じゃなかった。
そこにあったのは…自分の姿。
とても苦しくて、悲しくて元気を失った自分。
それをそっと、遠くから見つめる人が居た。
弟だった。
どこか少し悲しそう。
その直後、ゆめは言う。
「そう…。感情は連鎖する…。」
「人の純粋な、心からの嬉しい気持ちは連鎖するの。
人を幸せにして、優しい思いの強さは未来に繋がる…私はそう信じてる。」
「これが私の感情論。」
副部長はそのゆめの真剣な眼の眩しさにやられてしまった。
「次は、あなたのことを教えてください。」
ゆめがそう言うと、小声で「分かった」と。
この子がどれだけ眩しくみえても…私にはおもいがある。
気付かないところで、支えてくれた人、そして、部長。
「好きな人へのおもい。それは裏切らない。」
ゆめはそっと頷いた。
「悲しませようなんて思わない、自分中心にもならない。
ただ、あの人とそばにいられること。」
「それがとても幸せなの。」
「他の人になんて悪く言われても、私はあの人を見てきたから…。
ずっと…。」
「嫌いになれない。心から好きだって思うから…。悲しくても、この気持ちには嘘はつけないんだ…。」
今日は弟はこの場に居ない。
しかし、副部長のそばに、彼女を見て嬉しそうにしている姿が彼女の頭に浮かんでいた。
「ありがとう。私、変わるから。もう大丈夫だよ。」
副部長がゆめの方を見ると涙を流していた。
「どうしたの…?」
「あなたの感情…全部は分からないですけど、伝わった気がして…。」
「それだけ、その人に強いおもいを持ってるんですね。」
「ふふ。あなたって凄いね…。」
心の中で、この子には勝てないと思ったの…。
自分の考えに真剣。
ごめんなさい。部長。頑張ろうと思ってたけど…。
「あなたの勝ちです。」
「え…?」
「あなたの考え、とてもいいと思ったから。」
ゆめさんはそう微笑んだ。
「あなたの方が良かったよ…。どうして…」
「たとえ、そうだったとしても、私はあなたが勝って欲しいと思ったの。
部活の人には申し訳ないけど…私の気持ちで。」
「本当に感動したんだ…あなたの、大切な人への…思い。」
ゆめの頭の中に、ふらや、友達の姿が浮かぶ。
「最後まで凄いな…。」
「ありがとうございます。良ければ名前を…教えて貰えませんか?」
「私は3年生の、なえ。あなたのこと知ってるけど、改めて聞こうかな。
名前はなんて言うの?」
「ゆめです。」
「そう…。」
「さっきは夢中で、敬語忘れてごめんなさい。」
「ううん。いいの…。あなたの話、とても良かったよ。」
「こちらこそ。なえ先輩のお話、とても感動しました。」
「ありがとう…。またね。」
お互い、自分の部活へと戻っていく。
「頑張ったな。」
部長はそう言って、副部長を迎えた。
「ありがとうございます…。部長に謝らないといけないことがあります。」
「なんだ?」
「私は…少し、あなたを疑ってしまった。」
「いいんだ。それは、俺に至らないところがあったってだけだ。」
「いいえ…部長には、そんなところありません…。」
すると、すいぞうがやってくる。
「一戦目、勝てたようですね。この調子で、全部勝ちましょう。」
「あぁ。そうだな。
なえは休んでていい。」
「はい…ありがとうございます。」
「次は誰が行きますか?俺が行ってもいいですよ。」
「私が…いきます。」
「あぁ。恵流(えり)さんか。」
「さっきの試合を見て、出たくなりました。」
「分かった。すいぞうはどうする?」
「あぁ…。もちろん、えりは仲間だから、先に出ていいと思います。」
「ありがとうございます。」
「ごめんなさい。」
みんなの前でゆめさんは謝った。
すすむくんは「気にすることはないよ!」と笑顔。
「ふらお姉ちゃんもごめんなさい。」
「ううん。私はいいの…。あなたの思う通りに頑張って欲しかったから。」
「ありがとうございます…。」
すすむくんはうんうんと頷いた。
そして、ゆめさんとすれ違いで、れんかさんがやってくる。
れんかは心の中で思った。
さっきの見てたら…私も…。
「先輩達…。次、私でてもいいですか?」
「うん。いいよ!他に出たい人が居なければ。」
「ありがとうございます。」
それから、続けて言った。
「あの…最近出てなくてごめんなさい。」
「ううん。いいんだ。こうして、来てくれただけでも嬉しい。」
それから、出たい人はいなそうだったので、れんかさんが次に出ることになった。
<h3>あの孤独な日のこと</h3>
どうして…どうして…?
私はずっとそう思ってた。
童話を読んでた時のこと、大好きなキャラクターが居て、次のページを開くのが嬉しかった。
だけど…ページをめくり終えると、そのキャラクターは綺麗に居なくなってしまう。
ただ、寂しさが残った。
人形を買っても、いつの日にかボロボロになって私の前から居なくなる。
動物もそう。いつも私の元を離れてどこかへ離れていってしまう。
寂しい…寂しい…。わたしは一人ぼっちなんだ…。
ただ、苦しくてしかたなかった。
学校へ行くと、友達ができる。
うれしいな…そう思っていた。
だけど…転校したり、クラスが変わったり友達はどんどん私の前から離れていった。
私はただ、寂しくて仕方ない。
いつも、どこかへいってしまう。
わりきろうとしたけどできない。できたときでも、その少しした後に、私の前から何かが居なくなってしまう。
どうして…どうして…?
最後におとずれたのは、おばあちゃんの死だった。
心の中で、何も感情がわいてこなかった…。
悲しくて…驚いて…。私の周りに居た人達は居なくなってしまう。
私は一人ぼっち。
これから、誰かと出会っても、いつか今みたいに一人ぼっちに戻ってしまう。
いや…いや…。
どうして私の前から居なくなってしまうの…?
そこから、人と関わるのが怖くなった。
誰かは私を見て言う。
「とても暗くて怖い…。関わりたくない。」って。
あははっ。それでいいの。
私と関わらなければ、ずっといられるんだよ。
ただ、孤独だった。
誰かと関わって、相手に悪いことをしてしまうのが嫌だった。
そのうち、私の周りから、ものがなくなっていく。
寂しい…。
そう思って外を歩いた…。
ある日の冬のこと。
あたりは一面、雪が降り積もっていた。
いずれ、この雪たちも、居なくなってしまう。
寒さではない震え、悲しさが湧いてくる。
「居なくならないで…。」
そう呟いた時、彼が私の前に現れた。
「何かあったか?」
「いいえ…何も無いです…。」
「それなら良かった。」
「あの…。」
「どうかしたのか?」
「私は怖いですか…?」
「いいや。もし、そうだったら、俺は君と話さないだろう。」
「そうですか…。」
彼は少し立ち止まっていた。
「あの…。」
「どうした?」
「どうしてそこにいるんですか…?」
「気になったからだ。俺が居ると、邪魔か?」
「いいえ。でも…」
「でも?」
「私に周りに居る人は…みんな居なくなってしまう…。
人だけじゃなく、ものも、生き物も。」
「そうか。」
「あなたもきっと居なくなる…。私の前から…。」
「じゃあ、こう言っておこう。俺は居なくならない。」
彼はそう断言する。ビックリしたけど…。
嘘のように感じていた。
「それを証明する。」
彼はそう言って、その日は帰って行った。
春になって、出かける。
やっぱり、雪はどこにもなくなっていた。
こんなに花が咲いているのに、どうして寂しいって思うのだろう。
そして、いつの間にか、私は前に彼とあった場所についていた。
あたりをみると、ベンチがあって、誰かが座っている。
何か勉強しながら…。
そして、私の方を見ると、立ち上がって言う。
「久しぶりだな。」
「あなたは冬の時の…。」
「あぁ。そうだよ。俺は居なくならない。」
それから、彼は、いつも同じ時間にそのベンチに座って勉強していた。
私は嬉しかった。いつも、私の傍からみんな居なくなってしまうから…。
その日から、彼と話すようになった。色々な話を聞いてくれた。
ただ、嬉しかったの…。寂しかった日々は嘘のよう…。
でも…。
学校は彼と違うところに行くことになった。
寂しい…だけど、彼は居なくならないって言った。
だから…きっと…。
高校生になってからも、彼と時々会う。
学校では一人ぼっちだったけど、その会う時間がとても嬉しかった。
ある日、彼は、部活を作ることを言う。
思想学部っていう部活を…。
段々、他の学校でもそれができて、この学校でも、集まってきた。
私はその部活に入った。
ただ、そこで、私は浮く。
暗すぎるって理由でさけられ、活動には来なくていいって。
あぁ…やっぱり、私の周りから離れていくんだって。
自分はひとりぼっちなんだって…。
それに手を伸ばして助けてくれるように、彼は私の前に現れた。
そして、一つお願いをする。
私の通ってる学校にいる、大切な親戚のこと、頼むって…。
私のことを思ってくれてるようで嬉しかった…。あなたなら、大切なものを任せられるって言われてるようで…
私は遠くから見守っていた。
ただ、時におとずれる寂しさがこう言うの。
どうして…どうして…って。