思想学部36

<h3>試合Ⅲ③</h3>

2人は向かい合ったまま、試合は中々始まらなかった。

れんかさんの方から「あの…。」と。

すると、「はい…?」と悲しそうな声で返す。

「はじめますか…?」

「はじめたら、この時間が終わってしまう…。」

相手の表情はとても怯えていた。

「でも…。はじめないと、みんな待ってる。」

「分かりました…。」

「ありがとうございます。私からはじめますね。」

れんかはそう言って続けた。

「私の考えは大切な人!その人はずっとそばに居てくれる。」

そう言った直後、相手の人は、れんかさんを睨む。

れんかさんはそれにとても驚いていた。

「どうしたんですか…?」  

「なんでもないです。次は私が言えばいいんですか…?」

「はい。お願いします。」

「大切な人は失われる。大事にしていたのにね。みんな離れていくんだ。」

全く真逆の考え…。

「どうしてそう思うの…?」

「ルールでは、あなたの説明からでしたよね。」

「そうだったね…ごめん。」

「…。」

「私には大切な人が居る。いつも優しくて、大好きな人。

小学校の頃からね、ずっと」

「私はずっと、あの人と一緒にいられるって思うんだ。」

「これが私の説明!あなたの教えて欲しい。」

「あなたとあわない…。私は大切な人、ものが沢山居て、あった。」

「だけど、みんな離れていった。その中には、この世にもうないものもある。もう二度とあえないの。」

「怖いんだ…。また大切な人が居なくなるの。事故にあったり、病気にかかったり、災害にあったり…。」

「いつそうなるか分からない。」


「それが、あなたの考えなの…?」

「はい。」

「じゃあ、これから話し合いましょう。」

「…。」

「大切な人はきっと大丈夫って…。私は信じてるよ。」

「疑ってしまったら…私は本当にその人のこと愛してないみたいじゃない。」

「私が愛してないって言うんですか?」

「そうじゃないと思うけど…。」

「あなたの大切な人もいずれ、居なくなります。一人ぼっちになるの。」

「ううん。私は大丈夫。一人ぼっちにならないから。」

「どうしてそんなことが言えるのですか?現実は何が起こるか分からない。」

「明日には事故で一人ぼっちになってもおかしくないんです。」

「そして、どうして…どうして…って悲しむんです…。」

「いつもいつも、好きな人は裏切っていくじゃないですか…。」

「ううん。大丈夫。」

「どうしてそんなことが言えるの。あなたは未来を全部知ってるというの。」

「知らないけど…。私は信じてるから。」

「信じれば、裏切られるのがおちです。」

「黒いものと関わって落ちていく、くろいものに手を染める。」

「その人は、私が思った通りのことは言ってくれない…。自分からあわせないと、その人はいいことを言ったって思えないの。」

れんかさんは相手の人の手を握った。

「きっと大丈夫。世界は悲しいことだけじゃない。」

僕はれんかさんの話を聞いてて思った。ゆめさんと似てる。

もしかして、出たいって言ったのは…

そっと、ゆめさんの方を見ると、れんかさんを見守ってる。

えりは思った。

別れの前には、いつも出会いがあった…。

その時は別れることなんて考えなくて…。嬉しい気持ちが一杯だった。

だけど…。

部長と会った時からもそうだった。

どうせ別れてしまう…。

だけど、関わっていくうちに分かった。一緒に居てくれる。

だけど、本当は私のことなんて考えてない…。

相談にはのってくれたけど、高校に入ってからはそう…。

私を一人ぼっちにして…遠くから自分の大切な人だって言って…。

そして…。

それは2年生の頃、ひていって男子が、リベシン高校の部活でうるさくしてるって。

試合の時、私に勝って欲しい。ってお願いしてきた…。

そうすれば、少しは落ち着くだろうって…。

だけど、あたったのは、1年生の誰か。

誰でもいいや…

私はそう思って、今まで頭の中で浮かんでた言葉を、その男の子にぶつけたの…。

すると、彼は怯えだした…。

怖いって…。そして、私の元から離れていった。

彼の言う通り勝った。

だけど、部長が言ったのは違う…。

「少しやり過ぎだったかもしれないな。しかし…」

私は苦しくなった。その後の言葉もほとんど聞こえてこない。

離れていくのが怖くて…。

どうせ、この人も離れていく。

ただ、意外なことに、私は転校することになった。

部長の親が金持ちだった事もあって。

でも、心は変わってなかった。

いずれ、裏切られる…。

みんなみたいに、私の傍から離れていってしまう。

私は孤独が怖かった

──────────

<h3>試合Ⅲ④</h3>

れんかさんは言った。

「きっと大丈夫だから…!」

「悲しくない世界なんて嘘。そんなの本当は存在しない」

「さっきのゆめさんって人の話を聞いて、嘘だと思った。」

「そうかな…。私は共感したよ。好きな人と過ごす時間。とても幸せだって。」

「あなたが失う怖さを知らないからでしょ。」

れんかは子供の頃を思い出した。

居ないよ…。

そう言って悲しむ私。

だけど、そばにいつも居た人が言っていたの。

「この世界に間違いなんてない。」


「私も知ってるよ…。
居なくなると悲しいよね…寂しいし、辛い…」

「私は動物を飼ってたことがあるんだ。」

「そうなんだ。飼ってたってことはもう居ないんだね。」

「うん、だけど、まだ生きてる…。ずっと私の中に…。」

「私はひとりじゃない。大切な人といつもそばに…」

「あなたは…。」

えりは彼女の言葉に少しやられていた。

本当は失う怖さばっかりで、忘れていたものがあったのかもしれない。

そっと、部長の方を見た。

本当は断ることもできた…

彼はもう要らないと言って、私を追い出す人じゃない。

現に今、あの人はそばにいる…。

「でも、私は負ける訳にはいかない。」

えりがそう言うと、れんかは「私の負けです…。」と言った。

小声で「これ以上頑張っても、私の気持ちは届かないと思った…。」と。

すると、えりは「あなたの考え分かるよ。ありがとう。」と言った。

「大切な人はそばに…。

じゃあね。」

そうして2試合目が終わった。

リベシン高校の方では、「頑張ったな。」と励ましいい空気がつくられている。

「すすむくん、どうする…?」

「どこまでいけるか分かんないけど、できる限り頑張ろう。」

「うん。」

そして、向こうでは、3試合目に出る人が決まった。

「あれは…。」

ペルソナさ…じゃなく、うみさん。

「はい、はーい!私が行きます!」

笑顔で出てきたのはみおさん。

「もちろん!」

「がんばりまーす!!」

そして、2人が前に出てきた。

「久しぶりね。」

「お姉ちゃん!」

2人は笑顔で見つめ合う。

「少し…始まる前に話さない?」

「もちろん!」

「1年前も、2敗でここまできた。2戦目は私とみおちゃん。」

「そして、3戦目は…」

「みちかちゃんとあゆみちゃん!」

「2人みたいにお姉ちゃんともっと仲良くなるんだーっ!」

「ふふふっ。みおちゃんは可愛いね。」

「ありがとう!」

「それじゃあ、始めよっか。」

「やったっ!」

「どっちから言う?」

「じゃあ、私からっ!」

「うん。お願い!」

「私の考えはかわいいものしか勝たん!!」

「ふふふっ!それがあなたの特別なものね。」

「そうだよ!お姉ちゃんの大切なもの聞かせて欲しいな!」

「いいよ。」

「私は…一人一人の今まで歩いてきた物語が、特別なものだと思うの。」

「やっぱり、お姉ちゃんは可愛いな…。」

「ありがとう。」

「でもね…。これから、どっちがいい考えか決めなきゃいけないの。」

「それって…つまり…?」

「うん。」

「私、お姉ちゃんの考え好き…。可愛くて特別なものを持ってるって…。

私は思うんだ。」

「私も、私の考えで言うと、あなたの考えは特別なもの…。」

「それに…」

うみの頭の中には、彼女との思い出が浮かんでくる。

笑顔で私に関わってくるあなたの姿…。純粋なその気持ち。

あなたの考え…今でも好きなんだ。

「どうしたの?」

「ううん。なんでもない。さぁ、続きをはじめましょう。」

「分かった。説明するね」

「お願い。」

「世界中には可愛いものが一杯ある。人それぞれが持ってる可愛さ、可愛くて美しいこの世界。」

「私はそれが好きなんだ。」

「そうなんだね。」

「うん。」

「相変わらずだね。」

「お姉ちゃんも!」

「次は私が話すね。」

「うん!」

「あなたの人生も、みんなの人生も、平等に特別なもの。」

「その人の持つ、奥底にあるおもい、気持ちは他の人には共有できない。」

「だからこそ、大切なんだ。」

うみは少し悲しそうな顔をする。

「お姉ちゃん聞かせてくれてありがとう。」

「こちらこそ。」

「うみお姉ちゃんの考え私は好き。」

「でもね、これからどっちがいいか決めなきゃいけないんだ。」

「可愛いがいいか、一人一人が特別か…。」

「もう一つあると思うの!」

「もう一つ?」

「うん。ふたりともいいって…。」

「これは対戦…。そんなことには絶対ならないよ。」

「もし、そうだったとしたら…。私は最後にすること、決めてるよ。」

みおちゃんはそう言って笑う。

私は何故か、一年前のことが浮かんできた。

────────

私はある日の土日、全宝高校に来てた。

なんでだろう…。心のなかでそう思って、ただその場に立っていた。

その時に、先生らしき人が私の前にやってきた。

「どうしたの?」

「あ…なんでもないです。通りすがって。」

「そうなの?さっきからずっとぼーっとしてたみたいだけど。」

「はい。いい学校って思って。」

「ふふっ。学校みただけでわかるの?」

「わかりません。でも、そんな感じがしたんです。」

「そうなんだ。

ところで、あなた学校はどこに通ってるの?」

「私はリベシン高校に。」

「あなたもなんだ。私も高校の時に…」

「そうだったんですか。」

「うん。」

「あの…良ければだけど、一つだけ言っていいかな?」

「勿論です!先輩。」

「先輩か…。ふふっ。」

そう言って続ける。

「人からもらった大切なものは、なるべく、大事にしたいね。」

「ですね!」

<h3>試合Ⅲ⑤</h3>

「あの…!お願いがあるんですけど。」

「どうしたの?」

「この学校にはもう一度来たいなって思ったんです。

学校に居る方たちがどんな方か見たくて。」

「いいと思うよ。校長先生は優しい方だし、きっと大丈夫って言うよ。」

「ありがとうございます!

それで…お願いって言うのはこれからある文化祭のとき、私もお店を開きたいんです。」

「お店って?」

「マスク(仮面)屋です!」

「そう。好きなの?」

「はいっ!」

「分かった。校長先生に聞いてみるね。」

「じゃあ!」

「ちょっと待って。」

「はい。」

「私の名前教えておくね、いなしって言うの。またね、仮面の後輩さん。」

────────

「続けよう。」

「うん、お姉ちゃん!」

「あなたのいう可愛いって何?」

「私が可愛いと直感で思ったもの。」

「それはみんなもそうなの?」

「ううん。今まで話してみて思った。それぞれ可愛いと思うものが違うって。」

「あなたの価値観を押し付けていいの?」

「私は生徒会長になった。

みんなの考えを聞いて、私ののぞむものに近付けていきたい。」

「色んな可愛いがあっていいって…。」

「もしかしたら、それって、お姉ちゃんの言ってたそれぞれ特別なものを持ってるってことなのかも。」

「じゃあ…私の勝ちでいいかな…?」

「ううん。できるなら、二人で肩を並べて歩いていきたい。」

また私の一年前の記憶がよみがえってきた。

文化祭でのこと。

「マスクはいりませんか…?」

だけど、そういうけど、誰も来てくれない。

寂しさはその気持ちじゃなかった。


「じゃあ…可愛くないものはどうするの?

たとえば…私の名前、はみだしもののはみとか。」

みおは笑顔で言う。

「いいえ…。私はお姉ちゃんの名前、そうは思わない。」

「あなたの考えに出てる名前。」

「愛野うみ…。どんな人でも受け入れる…。

それは海みたいに深い優しさ、そして愛なんだと思う。」

「私はお姉ちゃんの名前、大好きなんだ。」

うみはみおに背を向ける。

「ありがとう…。あなたが私の名前を可愛いって言ってくれるのは嬉しい…。」

「だけどね、この試合に私は負けないから…。」

「分かった。」

「え…?」

「私はお姉ちゃんの考えが好きだから、負けてほしくない…。」

「同じ部活のみんなには悪いけど…お姉ちゃんに勝ちを譲ります。」

直後、うみはみおの手を取った。

「みおちゃんの勝ちでいいよ…!」

涙で目元が赤くなっていた。

「え…?」

「私もみおちゃんの事が大好き。友達でいたい…。」

「それに…真剣に向き合った考えには、優劣なんてつけられないよ。」

「うみお姉ちゃん。」

みおはそう言い微笑む。

「みおちゃん。」

二人はそっと手をとりあう。

「また会って一緒にお話しようね。」

「うん!話そうね!」

二人はお互いの部活に戻った。

リベシン高校では、すいぞうがうみの元へ。

「試合、引き分けてくるなんてな。やっぱり、部長に信用されてないやつは…。」

「ごめんね。」

謝っても、みおは笑顔を絶やさなかった。

そこへ部長がやってくる。

「いいじゃないか。3勝で終わらせなければいけないルールなんてない。」

「部長がそういうのなら…。」

「それに…。」

部長はそう言いみおの方を見る。そして呟いた。

「良かったな。」

「次、俺が行ってもいいですか?」

「あぁ、もちろん。」

「俺が決着をつけてきます。」

「任せた。」

そして、すいぞうは先に試合の場へと行った。


それをみて、僕は思う。

「次は彼か…。0勝2敗1引き分け。厳しいな…。」

僕はすすむくんの元へ向かう。

「次は僕が行こうか?」

「うん、いいけど…。」

「すいぞうくんのことは、よく知らないけど頑張るよ。」

やっぱり、彼と対戦することになった。ここは僕が頑張るんだ…。

そう思ってると、後ろから声が聞こえてきた。

「あいだくんごめんね。」

「庭野さん?」

「私が次に行ってもいいかな?」

「僕はいいよ。

ぶんたくんはどうする?」

「庭野さんはどうして行きたいの?」

「相手がすいぞうくんだからって理由…。

この部活に入ったのも、彼と話し合うため。」

「そうだったんですか…。」

「はい。だから、勝ち負けは全然考えてないです。

個人的なことでごめんなさい…。」

「いいんです。次にいって大丈夫ですよ。」

「ありがとうございます。」

庭野さんはすいぞうくんの待つ試合場へ。

「ははは。」

すいぞうくんそう笑いながら言った。

「まさか、あいだじゃなく、庭野がくるとはな。」

「あなたとは話したいと思ってたから。」

「何をだよ。」

「これから分かるよ。」

────────

<h3>あの救われた日のこと</h3>

仲間、それは大切なものだ。

昔から俺の心の中にそれがあった。

小学校のとき、はじめての友達ができる。

嬉しかった。仲間ができた。

絶対仲良くしよう。そう思った。

しかし、うまく行っていたかと思いきやのこと。

ドッジボールをクラスですることになった。

その友達は敵になる。

勝ちたい。おれはそう考え、思い切りボールを投げた。

すると、友達にあたって、やったと思った。

しかし、あたった部分をささえ、とても痛そうにしてる。

その時は心配だったが、後々、何事もなかったのを人から聞いて安心した。

しかし…

それによって亀裂がはいった。

手加減をと。

敵だから、友達だろうと関係ない。

そう思っていたのだが、自分は間違っていたのかもしれないと思うようになった。

仲間は大事なのに…

友達に縁を切られてしまう。

ただ、心のなかには苦しさがあった。

その日から少し友達を作るのを辞める。

友達に言われた事で傷付いたことがあったから。

裏切り者と…。

ただ、時間が経って、俺はまた友達が作りたくなった。

今度は上手くいくかもしれない。

そう思ったからだ。

前は敵だからという理由で、仲間に酷いことをしてしまった。

敵でも、まだ仲間であるなら大事にしよう。

できたのは中学生の頃。

俺は彼がゲームなどで敵に回っても、大事に考えた。

これならきっと大丈夫だ。

とても強い自信があった。

しかし…。


ある日、友達の友達が関わってきた。

その友達と仲良くしてるからと。

だが、俺はその男が好かなかった。

友達との仲をきりさいてくるかもしれない。

俺はその男をおざなりにしたり、ストレスのはけ口にする。

それから、時間が経って、また友達と縁を切られる。

何故…?悔しくして仕方なかった。

仲間を大事することそれを頑張ってきたつもりなのに…

また壊れてしまった。

また言われたのは、裏切られたという言葉。

友達から、裏では酷いことを言ってると愚痴られたそうだ。

友達の友達も大事にするべきなのか…。

ただ、すぐに動き出す元気はなかった。

また失敗するかもしれない。うまく行ってると思ってたら、いつも問題が出てくる。

それが怖くて仕方なかった。


だが、ある日…

俺は出会った。

あの人と。

悩んでる時、声をかけられた。

「何かあったのか?」と…。

「何もない。あんたは誰だ?」

「そうか。ならいいが。」

「名前は言わないでおく。ただ、ともに歩めるものを探してる。」

この男も、仲間を探してるのか。

「なんでだろうな。もしかしたら、名前が嫌いだからかもしれない。」

「あんたもなのか。」

「そうだ。どうやら、君もそうみたいだな。」

2つだけだった‥。

しかし、その時の俺はただ、孤独だった。

「俺はうらぎるって漢字が名前に入ってる。それが嫌なんだ。」

「そうか‥。何かあったのか?」

「うん‥。今まで上手く行かなかったんだ。人間関係が。」

「仲間は大事だ。そう思ってるのに、俺はいつもその仲間を傷付けている。」

「悔しいんだ。なんで上手く行かないんだってさ。

名前のせいのようにも感じてる。」

「そうか、なら、俺と行かないか?」

「仲間になってくれるっていうのか?」

「あぁ。俺は、今、人を集めている。」

「信頼できる仲間を。そして、そのものたちには、絶対に裏切ることはしない。」

「俺もいれてほしい。」

俺の頭の中にもしかしたら‥という気持ちがわく。

今回は前みたいな失敗はしない。

「もちろんだ。さっきは君のことを話してくれてありがとう。

ただ、一つだけ言わせてほしい。」

「なんだ?」

「仲間を重要視しすぎる必要はない。」

「俺は大事にしたいんだ。」

「なるほど、君がそう思うのなら、それ以上はとめない。

これからよろしく。」

「あぁ。よろしく。」

その時から、その男との時間がはじまった。

俺は段々、その男にハマっていく。

友達(仲間)がほしかったのもあるが、長く一緒にいられることが嬉しかった。

しかし、高校は違うところへ入った。

残念だったが、仕方ないと割り切る。

ただ、お願いをされた。

おれは仲間の頼みだからと、遂行することを決めた。

しかし、部活は入りづらい。

遠くから見ていることにした。

なるべく、近くにあれるような‥。

生徒会に入った。

仲間への思いが、この結果を導いたのだろう。

しかし、俺が仲間と思ってるのは、お前たちでなく、あの人とその仲間だけ。

お前たちは敵だ。

その思いがあった。

俺には仲間がいる。

大切な

────────

<h3>試合Ⅲ⑥</h3>

「しかし、俺がいない間にあの学校も変わったな。」

「何が?」

「随分、お前たちの思想学部に毒されたみたいじゃないか。」

「さっき対戦してたやつが生徒会長で、にわのもそう、思想学部に入った。

終わってるな。」

「学校を去ったあなたにどうと言われる筋合いはないと思うよ。」

「それに、私はもう、あの子なら大丈夫、任せられるって信じてるから。」

「どうだかな。自分のことしか考えてないやつが、上手くやれるとは思えねえ。」

「それはどうかしら。」

「そんな話はどうでもいい。さっさと始めようぜ。」

「分かった。」

「俺から言う。仲間を大切にすること。

それが一番大事だ。」

にわのは頷く。

「私の考えは向き合うこと。」


一方、会場では、一人の男が真剣に様子を見ていた。

「失敗だったか‥しかし、まだ可能性はある。すいぞうなら‥。」

そして、ふと、会場を見渡す。

一人の男の前でとまる。

「あれは‥知ってる。弟のやつか‥。」

「そうだ‥いい事を思いついた。」

男は「はははっ。」と小さく笑うと彼の方へあるき出した。


「元生徒会長か‥。」

男は昔のことを思い出す。

三回戦目、試合は見てなかったが、他の人に話は聞いた。


「あなた、考えはないらしいね。」

「あぁ。ないよ。」

「分かった。私だけ話すよ。」

「もうないかな?」

相手は何も言わなかった。

それから、同じ学校の人に止められ、彼女の勝ちになったらしい。

どんなことを言ってたのか聞けなかった‥。

すると、一人の男が話しかけてきた。

「久しぶりだな。」

「その声‥。」

「ひていだよ。覚えてるだろ?」

「うん。覚えてる最低なやつだった。」

「酷いなあ。これを聞いても、俺が最低なやつだって言えるか?」

「話は聞かないよ。君の話は信用できないから。」

そのまま行こうとすると、ひていは話す。

「お前のお姉ちゃんのこと、守りたくないのか?」

「なんの話?」

「はははっ。部長に騙されてるんだよ。」

「はっきり教えて。」

「俺があいつをいじめてた理由は、部長に命令されてだ。」

しかし、それ以上は聞かず、そのまま行ってしまう。

ひていはつぶやく。

「楽しくなってきたなあ。」


「次は説明か。まぁ、言わずもがなだが、仲間を大事にできねえやつはダメだ。」

「にわの、今度はお前の説明を頼む。」

「あなたの説明はそれだけでいいのね?」

「あぁ。」

「私は困ってる人と向き合う。一人一人。」

「本当にできるのかよ。」

「全員だったらできないかも‥。だから、私の中にその基準は決めてる。」

「そうか。にわののことに興味はない。俺に勝ちを譲ったほうがいいんじゃないか?」

「これから話し合うのに、自信がないの?」

「は?」

「どんな理由があっても、私には、今、あなたと話さないといけないといけないことがあるから。」

「それが思想学部に入った理由でもあるから。」

「なんだよ、それ。」

「じゃあ、率直に聞くね。どうして生徒会に入ったの?」

「仲間のためだ。」

「仲間って、あなた達の思想学部?」

「あぁ、そうだよ。仲間はお前たちじゃなく、リベシンの思想学部だ。」

「生徒会に入る前、仲間って言ってたよね。あれもそうなの?」

「当たり前じゃないか。昔のこと言ってなんなんだよ。」

「いいえ、ただ知りたかっただけ。」

「しかし、なんでお前とか、かわいいとか言ってたやつが生徒会長になれて、おれがなれなかったんだよ。」

「意味が分からねえ。」

「その質問に答えるね、あなたの言葉は良かった。」

「当たり前だろ。お前らより絶対いいことを言ってる。」

「だけど、それだけじゃきっとダメなの。

気持ちだけじゃ。」

「何が必要だって言うんだ」

「それを実行しようとする行動。自分でも本当にしたいって、心の底から思わなきゃいけない。」

「言葉だけじゃなく、きっと頑張ってるって姿を見てはじめてあなたなら任せられるって思ってくれるんだと思う。」 

「だから、私は行動する。今、あなたと向き合う。」

「なんなんだよ‥お前は。生徒会長だったからって偉そうに言うなよ。」

「偉そうに見えたなら、ごめんなさい。」

「こんなことで謝るようなら、にわのは、生徒会長に向かなかったんじゃないか。」

「そうかもね。でも、いい。私は優しいリーダーでありたいと思ってたから‥」

「私の求めてたものは手に入った。」

「そんなことを話したいと思ってきたのか?」

「ううん。これから話すよ。ごめんね、長くなってしまって。」

「いいから、話してくれ。」

「すいぞうくん、苦しんでいない?」

「苦しむ、なんのことだよ。」