思想学部38

<h3>それぞれ</h3>

がらんとした部室。

それらを見て、女の子は言った。

「寂しくなっちゃったね‥」

「思想学部はすすむさんを中心としてたからな。」

すると、その中に、ゆめが混ざった。

「寂しいですよね‥。でも、ふら部長、しゅご先輩大丈夫ですよ!」

「またいろんな人が来て楽しくなります!」

「ゆめちゃんありがとう。」

「でも、試合もうないんだろ?」

「そうみたいだよね‥。」

「試合では、いろんな考えの方、自分の気持ちに向き合ってる方沢山いましたね。」

「もうできないと思うと少し残念です。」

「うん。」

「でも、それなら!私達で試合しましょう!」

「それもいいね!」

「はいっ!」

「昔みたいに、お話しよう。」

「結局、話すだけの部活になるのか。」

「楽しいよ!しゅごくんもする?」

「今してるじゃん。」

「確かにそうだった!」

「聞いてるだけならいいよ。」

「ありがとう。」

ふらは微笑んだ。

そこに、姉の姿が浮かんでくる。

「いいんだ。なぜなら‥」

「なぜなら‥?」

「僕はイケメンだから!かっこいい僕は優しいのさ。」

「あー!昔のしゅごくんに戻った。」

「僕はいつも同じイケメンさ!」

「懐かしい。」

人の物語は少しずつ動き出す‥

「懐かしいで言えば、一年のときに居た根性論、部活で準優勝したらしい!」

「えー、すごいね!一緒に活動してた人が上手くいってるの嬉しいな。」

それぞれが今、望む方向へ。

「というか、しゅごくん物知り!」

「だろー!俺はイケメンだからな!」

その先が正解なのか、間違いなのかはわからないけど‥

今日も、わたしたちは楽しく暮らしてる。

ゆめはふふっと笑う。

「私もお話混ぜてください!」

「もちろん、いいよー!」

────────

れんかは家にいた。

そして、一人でノートを書いている。

そこには、“部活、やっぱり入らなくていいや!”と書かれていた。

そして、つぶやく。

「私に、あの部活は向いてなかったかも。」

「それに‥。

部活の時間より、あの人のこと考えてたい!」

「きぼうくん‥大好き!」

すると、試合のことを思い出す。

失うかもしれない‥。

「それは悲しいけど、折角なら、今、沢山関わって後悔なく過ごしたいな!」

そして、電話をとった。

────────

「お兄ちゃん。何してるの?」

「あぁ。ちょっとこれからしたいことをね。」

「普通という職業につきたいとか?

とても気になる。」

「良ければ見せて!」

「いいよ。」

僕はノートを渡す。

「思想を変えるの?」

「うん。今の考えいいとは思ったけど、まだ不十分だと思って。」

「何かあったの?」

「うん。前の試合である人と出会った。」

「そうだったんだ。思想学部、興味あるな~。」

「残念だけど、むりくんが海外行くってことで、試合なくなっちゃったらしいから。」

「そうだったんだ。部活は同じでいいかな‥。

というか、お兄ちゃん情報凄い!」

「気になったことは調べる質だからね。」

「ところで、戻るけど、思想新しいのまた思いついてるの?」

「全然。だけど、今まで考えてたのから、いいのあるって分かったから他にもあると思うんだ。」

「なるほど。でも、少し残念だな。僕は好きだったから。」

「ありがとう。でも、もっといいのあると思うから、もっと好きになれるかも。」

「楽しみにしてる。」

弟はそう言って、ノートを最後の方まで目をとおしていく。

そして、一部に指差しながらたずねてきた。

「これって‥」

「あぁ。卒業したら、宗教に入ろうと思ってて。」

「あまり聞いたことないけど、大丈夫?」

「多分。リベシン高校に居た、せいじくんって人がそこに入信してるらしくて。」

「人も多いみたいだから、大丈夫だと思うよ。」

「大丈夫ならいいんだけど。」

「学校行きながらしようと思ってるし、そんなに熱中しないよ。」

「宗多教!どんな人たちがいるんだろう!」

僕はそうつぶやくと、窓から青い空をみあげた

───────

<h3>ノスタルジー‥?</h3>

私は寝ているときに考えた

何歳の頃だったろう‥。

私の住む近くの公園で、いつも決まった時間に、お話をきかせてくれる大人が居た。

沢山の子供達が集まって楽しそうに聞いてた。

通りすがった時、私は横目で見る。

毎日、飽きないよう、違う物語を話してる。

みんなより年齢高いからはいるのは恥ずかしいけど‥ちょっと気になるな。

私は毎日、そこを通りがかって、お話を少しみるのが日課になった。

でも、ある日、何故だかわからないけど、みんなと一緒にまじってた。

みんなは私を気にせず、お話がはじまるのを待ってる。

私もそこに集中してた。

そして、お話がはじまる。

─────────

むかしむかしあるところに、二人の女の子が居ました。

ここでは仮にヒユさんと、メニさんとおきましょう。

その二人はとても仲良しで、毎日のように、おはなしして暮らしていました。

だけど、走ったり、激しい運動をするような遊びはできませんでした。

なぜなら、ヒユさんは病気で、長くはないとお医者さんに言われていたからです。

だけど、その様子はみせず、いつもメニさんが話すとそれに笑顔で答えます。

メニさんはそれを見ると、とても胸が苦しくなりました。

そんなある日、ヒユさんがお話を聞かせてくれました。

「わたしたちの住むこの村にはね、伝説があるの。」

「どんなものなの?」

「普段、過ごしてたら、絶対に起こらないような不思議。それが何かはわからないんだけど‥。」

「そうなんだ。」

わたしには関係ないこと。メニさんはそう思ってすっかり忘れてしまいました。

またある日のこと、一人の男の子が村に住む人たちに何かを話していました。

「この村には伝説があるんだ。妖精や、色々な生き物が沢山住んでる。」

でも、誰にも相手にされません。

男の子は「本当なんだ。」と言いました。

「その不思議を全部体験した人は永遠に生きられる。」

メニさんはドキッとしました。

もしかしたら、ヒユちゃんも‥?

メニさんはそう思うと、次の日、ヒユさんを連れてでかけました。

「どこへ行くの?」

「不思議なところ。」

────────

私は真剣にその話を聞いてた。

話してる大人の人が真剣に話してたからかもしれない。

だけど、他にも何か‥

私の心の何処かで、そんな気がしてた。

───────

ヒユさんは目をさますと、周りにはメニさんは居ませんでした。

「分かっては居たけどね‥。だけど、また会えるよ。

今度は本当の永遠に。」

そうつぶやいたとき、誰かの声が聞こえてきます。

「誰だ!」

ヒユさんのもとに、その声の主の、男の子が近付いてきます。

「見ない顔。この辺の人じゃないね。」

男の子は不思議そうに、ヒユさんの顔を見ました。

「あなたも、伝説を?」

「うん、そうだよ。」

「じゃあ、二人で一緒に行こう。」

「うん。でも、他にも連れていきたいから、また違う時に行きたいな。」

「分かった。そうしよう。」

その時、ヒユさんは思ったのです。

ようやく‥二人の永遠がおとずれるって。

────────

ここまで話を聞いて、私は思った。

この話、何処かで聞いたことがある。

何処でだっけ‥?

思い出せない。

私は何か‥と、周りの、物語に集中して聞いてる子達を見た。

その中に、一人の女の子がいて、その子がとても気になった。

なんでだろう‥。他にも女の子は数人居る。

なんでこの子が気になるんだろう‥。

私は口が小さく開いてた。

そして、おもわず、「懐かしい‥。」とつぶやく。

それから、私はわれにかえって、物語にもう一度集中した。

────────

ようやくヒユさんはメニさんと会えた。

そして笑顔で言う。

「もう気にするものは何もないね。あの時みたいに、沢山お話しよう。」

「うん。」

そして、二人は永遠の時間を楽しく過ごしたのでした。

 
そこで話は終わった。

途中、違うことに集中して、話を全部聞けてない。

でも、なんでだろう‥?

この気持ち‥。

そんなときに、さっきの気になってた女の子が話しかけてくる。

「お姉ちゃん、お話の最中、私の方見てた?」

「うん‥。なんでだろう‥。あなたのこと、懐かしいって感じたの。」

「そうなんだ。」

女の子は微笑む。

「ところで、お姉ちゃん。」

「なに?」

「会いたい人って‥居る?」

「うん‥いるかも。」

「そう。絶対会えるよ!さっきの物語みたいに。」

丁度、その時、目覚ましがなった。

いつの間にか朝になってたらしい。

いつの間にか寝てしまったのか、昔起こってたことで、考えて寝てなかったのか‥。

ぼんやりとして分からなかった。

あの感覚は本当だったのか、それとも嘘だったのか‥。

分からなかった───────

<h3>過去物語⑩</h3>

「すすむ。」

お母さんはそう言い、僕の顔を見て微笑む。

そこにお父さんもやってきた。

「あんなに小さかったのに、あっという間だな。」

「ですね。」

「これからも少しずつ、育ってくんだろうな。」

「楽しみですね」

「あぁ。」

そして、お父さんはぽんと肩を優しく叩いて言った。

「こうよみたいな大人になれよ。」

その時は明るさがあって‥

家族の雰囲気は明るかった。

うっすらと残る記憶。

その中に、確かに、それがあった。

近くに出かけるときも、笑顔で、楽しそうに過ごしてる。

ときには、自分の最近考えてることなど教えてくれた。

もうほとんど覚えていないけれど‥

確かにその瞬間の記憶は残ってた。

僕の中に、その時が幸せだったと‥残っていたんだ。

それが事実だったか、嘘だったか‥。

それは分からない。

だけど、心のなかに、強く残っていたから‥

きっと真実なのかもしれない。

小学校の低学年のとき、みんなが楽しく遊んでる。

その姿をただ遠くから見てた。

心のなかで、いいなと思った。

僕はその日から、頭の中で、そういう景色を考えるようになる。

だけど、家に帰ると‥。

世界に絶望した声が。

そっとお母さんはそばで、「大丈夫‥。」と声を。

僕は悲しかった。

だけど、それも時が経つに連れ、考えなくなる。

お父さんは毎日のように、そんな気持ちであったから‥

でも、他にもある。

未来に明るい何かを感じていた。

目を閉じるといつも横や、うしろは暗い道で‥。

だけど、前のその先には、太陽のように明るく眩しい道が待っていた。

歩いていきたい。

どうしたら、そこへいけるんだろう‥。

寝る前はよく、それを考えてた。

だけど、時間が経つに連れて、分かって来た気がする。

そこにたどり着くためには‥。

きっと僕が‥


「すすむくん、何を書いてるの?」

同級生の子が、話しかけてきた。

ノートに沢山文字が書かれてる。

「もしかして、勉強?」

「勉強、そうかもしれない!理想の世界を考えてメモってるんだ!」

「え‥?」

驚いていた。

それ以上話しかけて来なかったので、僕は続きを書いていく。

今、自分は明るい世界に居る。

前にずっと、いけなかった世界に。

それから、高校生になった。

昔したかったことが、ほとんど叶う。

そこには嬉しさはなかった。

自分の本当にしたかったのは、もしかしたらそれじゃなかったのかもしれない。

そして、家でも変化があった。

もしかしたら‥

その時、僕の頭の中に、過去の二人のことが浮かんでくる。

僕がしたかったのは‥。

分かったよ。

僕は幸せになろう。

───────

そして、今、僕はみんなと毎日、話をして暮らしてる。

みんなは色々考えてて、それで、時々、最近あったこととか日常の話をする。

とても楽しそうに。

僕の周りも、いつの日からか、変わっていった。

なんでだろう。

退屈なんてないこの日常が‥

僕は好きだった。

今日も、昔から続けてる、ノートに思いついた楽しいことをつける。

心にあったのは幸せな気持ちだった。

もしかしたら‥

僕がずっとこの気持ちだったからかもしれない。

今日も、そして、これからも僕の前には幸せな未来が広がってる。

───────

<h3>卒業式③</h3>

とうとうこの日がやってきた。

みんなとの別れの日‥。

始まったときは、こんなに考えてることとか色々気持ちが変化するなんて思わなかった。

全校生徒の前に、一年生、2年生代表として、みおさんが前に出てくる。

卒業おめでとうございます。など前置きを話すと、本題にはいった。

「私はおじいちゃんがこの学校の校長だったので、入りたいと思ってました。」

「入る前から、来てたんですけど、在学生の先輩方はどんな方達かは知りませんでした。」

「でも、入って一年、2年経って分かったんです。優しい人が多いって‥。」

「分からないことがあったとき教えてくれて、お願いがある時は聞いてくれました‥。」

「温かくて、優しいこの学校。心の底から、入って良かったと思いました。」

「先輩達から貰った、このあたたかさ、優しさ‥。私もこの学校の一員として、繋げていきたいと思いました。」

「今までありがとうございました。皆さんに明るい未来がおとずれること‥願います。」

みおさんは頭を下げて、戻っていった。

次は卒業生代表として、にわのさんが。

それから、どんどん進んでいき、卒業式も後半に差し掛かる。

周りを見ると、中には泣いてる人も居た。

毎年この景色を見てたけど‥。

やっぱり、悲しいよな‥。

そういえばすすむくんとも会えなくなるのか‥。

はじまる前は、あんまり関わりたくないと思ってた。

だけど、いつの間にか、別れるって聞いただけでこんな寂しくなるなんてね‥。

終わった後、少し彼のところに行ってみるか。


前では、卒業式最後として、校長先生が話してる。

「上の学校、社会に行っても、あなた達はあなた達の望む方向へ進んでください。」

「ありがとうございました。」

終わってすぐにすすむくんの元へ向かった。

「すすむくん!」

「あぁ、ぶんたくん。」

「今日で最後だね‥。」

「そうかな?」

「卒業だし、そうだよ。」

「たしかにね。」

「君はみんなと会えるかもしれないけど、僕はもう会えないかもしれないんだ‥。」

「いつでも、僕の家に来てよ。」

「ううん。残念だけど、いけない。」

「どうして?」

「これから僕にはしないといけないことがあるんだ。だから、もう会えない‥。」

「何をするの?」

「それは言えない‥だけど、僕にとって、絶対にしないといけないことだから‥。」

「そうなんだ。」

すすむくんは笑顔で言う。

「君なら絶対できるよ!」

それに笑ってしまう。

「相変わらずだね。君の自信はどこから来るの。」

「分からない。この気持ちが後押しするからかな。」

「そっか。」

君は変わらないな。そう思うと、僕は嬉しかった。

「あと!もし、君がまた来てくれるなら、僕はいつでも歓迎するよ。」

「じゃあ‥僕がやり遂げたら、その時は君のところに行くよ。

みんなでもう一度思想学部をしよう!」

「うん。今度はもっと人が沢山集まるかましれない!」

「それはとても楽しみだね!」

今日、僕は‥すすむくんと未来の話をして別れた。

そこには寂しさより、希望が一杯で‥。

ただ、目の前の世界が明るく見えた──────

<h3>それから</h3>

「すすむくん、すすむくん!」

「しずくさん!何があったの?」

「ある人が、泣くのって、きっとその人がポジティブだから泣くって言ってくれたの!」

「おぉ!」

「私、よく泣いちゃうからとっても嬉しくて!」

「僕も嬉しい!」

二人はわーいと手を上げた。

「ふふふっ。二人を見てるととても微笑ましいです。」

「わー!うみちゃんだー!」

うみはしずくの頭をいい子いい子となでる。

「二人は相変わらずですね。」

「そうかも。うみさん来てくれてありがとう。」

「ここのみんなが楽しい方達ですし、飽きないのです。」

「うん。みんないい人だよね。」

すると、顔を両手で覆って、しくしくとうみは泣き出す。

「ど、どうしたの?」

しずくもそれを見てあたふたして、泣き出してしまう。

「ごめん‥。」

すすむが謝ると、「冗談ですよ」と両手を離す。

「いじわるしてみました。」

「そっか‥良かった。」

ホッとする。

うみもそれを見て、指でそっと涙を拭いながら  

「良かったよ‥」という。

しずくちゃんごめんね。」

「ううん。なにもないなら嬉しいんだ。」

「あらためて思うけど、ここに居るの、いい子ばっかりね。」

「嬉しい‥。」

しずくはグスっと言いながら呟いた。

「みおちゃんが来たいと思うのも分かる気がするよ。」

「みおちゃん!最近来てないね。今はどうしてるんだろう?」

「学校の先生やってるよ。相変わらず他の場所でも、可愛いものしか勝たんって言ってるみたい!」

「そうなんだ!みおちゃんらしいね!」

「そうだね。

ところで、すすむさん。」

「何かな?」

「これから人来るでしょうけど、その前に一つだけ‥」

「はい!」

「シソウさんのこと‥。」

「色々あるみたいですよね。」

「はい。あの‥上手く行くといいですね。」

「ですね。」


あれからどれくらい経っただろうか‥?

色々なことがありすぎて覚えてない。

でも、久しぶりにあったら、彼はどう思うんだろう‥。

僕はみんなが集まってる家にやってきた。

そして、ドアを開ける。

「みんな、久しぶり!」

「ぶんたくん!」

「あいださん‥?」

「すすむくん、うみさんお久しぶりです。」

「めっちゃ懐かしい。」

「だね。色々話したいことがあるんだ‥。新しい仲間ができたこと、考えがうまれたこととか。」

「僕の方も、いろんな人が来てくれるようになって、色んな考えと触れ合ったんだ。話したいことは沢山だよ!」

その日から、みんなとの日常がまた始まった。

新しい考えがうまれたと思ってたけど、前と変わってないって言われちゃったり‥

色々あったけど、新しい仲間を紹介できたり、相変わらずだな‥って思うことが沢山あって、それが嬉しかった

─────────

それから何年もの月日が経った。

「シソウくん、行くの?」

「はい。理想の未来を作りたい。それが僕の夢です‥。」

「話し合えば、きっと分かるはず。これが最初で最後の‥。」

「君ならきっと大丈夫。」

「ありがとうございます。」

すすむはそう言って、シソウをおくりだした。

この世界には多くの考えがある。

それは平等に正しく‥

そして、特別なものなんだ。

また一つ、一緒に今‥そして未来へ歩いてみないかい

─────────