与えること①

<h3>生まれた意味</h3>

僕は小さい頃に、妖精を見たことがある。

ふわふわと浮かんで、僕の目の前に居た。

そして、はっきりと覚えてる。

その妖精さんが僕に言ったこと。

「あなたはみんなに希望を与えるために生まれてきました。」

それを告げたあと、妖精さんは僕の前からパッと居なくなった。


それから時が経ったある日、僕はメモ帳を拾ってくる。

そこには、何かの学問の用語や、その説明などびっしり書いてあった。

僕はそのメモ帳が気になって仕方なかった。

持ち主は現れなかったので、一時的に、僕が持つことになる。

そして、中学校になるまで、よく読み返してた。

中には、見慣れない言語も書かれてたので、海外の人なのかもしれない。

もし、困ってるなら、かえしたいという気持ちがあった。

でも、何故か僕は、それがあることで、誰かを救えるような‥そんな気がしていた

───────

「こうよ。」

「せらさん。」

「呼び捨てでいいのに。」

「ところで、覚えてるよ。あなたが言ったこと。」

こうよは私のことを見つめる。

妖精さんに、あなたの夢は?って聞かれて、みんなが平等に幸せであることって言った。」

「うん。本当にあったか‥それは分からないけど‥信じてる。」

「こうよ‥。それは絶対にあったよ。」

「あのとき、聞いてくれてありがとう。覚えててくれたんだ。」

「いいえ、いいの。私にとって、それは大事な話だったから‥。」

こうよには、夢がある‥。

お兄さんには否定されてるけど‥。

みんなに希望を与えたい‥。それは小さい頃からあった、かわらない夢。


私はいつも、こうよと一緒に学校に通う。

すれ違った人で、元気ない人が居ると色々つぶやく。

「きっと、大丈夫」だったり‥明るい言葉。

彼の言葉は自然と、人を元気づける。

彼はこれを自分の生まれた意味だって言ってた。

みんなを笑顔にすること‥。

人を救うこと‥。

学校では、あんまり関われないから、遠くから見てた。

彼の周りには人が沢山集まってる。

もしかしたら、優しい気持ち、真面目な思いが‥人を引き付けるのかもね。

こうよはみんなの前で言った。

「未来はいつも明るい!」

────────


<h3>こうよと友達</h3>

こうよとよく関わるお友達が居る。

名前は倉屋(くらや)くん。彼はこうよのこと、上の名前で呼ぶ。

「せとうくん、こんにちは。」

「くらやくん!」

私は思った。やっぱり、世等光与(せとうこうよ)って名前いいな。

こうよくんらしい。

お父さん、お母さんはとっても‥。

すると、くらやくんは言った。

「今日、最悪だったよ‥。登校中、カラス見たり、犬に吠えられたり‥。」

「そうだったんだ。僕は好きだな‥。」

「何が?」

「カラスと元気な犬さ!でも、くらやくんがそれを悲しいことと捉えるなら、きっとこれからいいことあるよ!」

「やっぱり、ポジティブだな‥。なんでそんなに‥。」

こうよは優しく笑った。

そこを遮るように、私が入っていく。

「二人とも!」

「せらさん、何かあった?」

「ゲームがしたいなって!」

「楽しそうだね!くらやくんもどうかな?」

「僕はいいよ‥。見てる‥。」

「こうよ!じゃんけん勝負しましょ!」

「なるほど、いいよ!」

「でも、ノートを使ってするの。」

「ノートを?」

「うん、じゃんけんの手を書くの!」

「それで勝ったほうが勝ち!私は絶対に負けないよ!」

「わかった!しようか。」

「ありがとう。まずは私が書くね。」

私は“グー”と書いた。

「次はこうよが書いて!」

「わかった。」

こうよは“チョキ”を書く。

「こうよ優しい‥でもね‥。」

すると、くらやくんがやってくる。

「僕もやる。」

「あ‥わかった!私とくらやくんでしよう。」

私は今度は“パー”と書く。

すると、くらやくんは下に“チョキ”と書いた。

「これで勝ちだろう?」

「ううん。」

私はその下に“グー”を書いた。

「これで引き分けっ!」

「私は負けないよっ!平和的でしょ?」

くらやくんは背中を向ける。

こうよのじゃんけんの手の下にも、パーを書く。

「こうよも引き分けね!」

「せらさんも優しいね。」

くらやくんは言った。

「確かに、後出し、2回出しちゃいけないルール言ってなかった。」

「私も思ったよ!これね、友達に教えてもらったんだ!」

「平和的で好きなの!」

私は微笑んだ。

<h3>ライバル‥?</h3>

それから、放課後のこと。

こうよと私はいつも通り、一緒に帰ることに。  

「嬉しいな!」

「せらさん。」

優しく微笑む。


帰路、二人の男が話していた。

「お前って弱いよな。すぐに泣くし。」

グスリ。と言われた男は泣き出した。 

「男で泣くやつって、人間としてどうかと思うわ。」

すると、そこに、一人の男が現れる。

通り過ぎようとしたとき、その人は言った。

「泣くものは、人間として最高だ。なくものは強い。」

「なんだと。俺の否定をするのか?」

「僕は否定していない。ただ、自分の考えを肯定しただけだ。」

「もしかしてだが、自分の考えに自信がないのか?」

舌打ちして去っていった。

言われていた男は「ありがとうございます。」と感謝する。

「僕は邪魔しただけだ。」

「でも、助けられて‥。あなたの名前は‥?」

「にせいだ。覚える必要はない。」

そしてその場を去っていく

    
私達は公園にいきました。

こうよはいつも小さい子達に言います。

「未来は明るい!」って。

それから、それぞれ夢について肯定して‥

みんなにありがとうって言われてました。

そして、最後に、「未来はいつも明るい!」と笑います。

だけど‥。

「未来は真っ暗だ。」

私達はその人の方を向きました。

「未来はいつも暗い。そうだろう?」

「確かにそうかもしれない。」

「え‥?」

私はびっくりする。

「だからこそ、明るい月がとてもきれいに見える!」

男の人は意外そうな顔をしていた。

「名前はなんと言う?」

「ぼくはこうよ。君は?」

「にせいです。」

「ところでこうよさん。法律についてどう思いますか?」

「守ることかな?」

「僕は犯罪をおかすことが正しいことだと思ってるんですけど。」

「もし、法律の中に、人に希望を与えてはいけない。があったら、僕は破ってしまうと思うな。」

そう言って笑う。

私は思った。

こうよは変わらないな。

「なるほど。その考えもありますね。」

「こうよさん。あなたの名前を覚えておきます。」

にせいは思った。

ばけのかわをはいでやる。と。


その後、こうよと私は楽しく会話して帰りました

<h3>家でのこと</h3>

こうよは家では家族によく思われてない。

おかしな考えをもってるって。

もしかしたら‥味方は私だけかも‥。

今日もこうよは少し悪く言われて部屋に帰った。

私は心配で「大丈夫‥?」と聞く。

「うん、大丈夫だよ。」

いつもの優しい笑顔‥。

逆に私が元気づけられちゃったかも。


にせいは誰かと電話していた。

「あいつらとはどうなってる?」

「前から変わってないよ‥。もう辞めた方がいいのかなって‥。」

「あいつらが原因で辞めるのか?」

「あいつらが間違ってるとするなら、君は正しいってことだ。」

「何故、あいつらが存在して良くて、こっちは存在しちゃいけないんだ?逆でも同じことだ。」

「なんで君はそんなに僕のために‥。友達だから?」

「俺には友達はいない。ただ、おかしなことにおかしいと思うだけだ。」

会話が止まって、にせいは切り出す。

「今日な、犯罪はいいことだって言ったんだ。」

「え?悪いことじゃないの‥」

「本当にそうか?」

「うん‥」

「ミステリものでは犯罪が横行している。主人公がもはや、犯罪者である作品すらもあるんだ。」

「その世界では、犯罪という行為が正解になることもある。」

「でも‥僕は悪いことだと思うな‥。」

「そうか、ならそれでいい。」

「うん‥」

「ただ、僕は言いたい。白か黒か決まったとき、白の悪が許され、黒はただ悪として攻撃される。」

「そんな暴挙が許せない。」

「ごめんね、何言ってるかわからないよ‥。」

「ただ、それが僕の、君を正しいと思う理由の一つだ。」

「ありがとう‥。」

にせいはそれから少し話して、電話を切った。

 

「こうよ、何してるの?」

「今日のこと、日記に書いたり、メモ帳読んだりしてるんだ。」

「メモ帳‥?あの、難しい用語が沢山あるもののこと?」

「うん。僕はこのメモ帳、誰かのためになると思うんだ。」

「見せて!」

「いいよ!」

そこにはやっぱり、よくわからない用語が沢山あった。

ホーソン効果、メアリーの部屋、フットインザドア‥。

下に説明がそれぞれ書かれてある。

<h3>勝ち続ける</h3>

僕の名前は真家(しんか)、勝ち続ける男!

今、通っている中学校の同学年では、全勝をあげた。

僕に勝てない相手はない。

ここまで来るのにとても長い時間を必要とした。

思い返せば大変な日々‥。

しんかの頭の中に、あの頃のことが沢山浮かんでくる。

まず、僕は学問を頑張った。

テストでそこそこ平均以上に入ると、次は、運動を頑張る。

そして、その2つで、自分より上の人を探した。

それで見つけた人に勝つために、新しい趣味を作った。

ボードゲームなどの娯楽、ものづくり、いろいろなことに手を付け、その人に挑んでいく。

はじめてやることに得意な状態で挑むこともあったため、その中の多くの人には勝てた。

しかし‥

一人だけ手強い相手がいた‥。習い事を沢山してて、色々な経験のある人物‥。

何度も何度も挑んでも勝てなかった‥。

しかし、情報を探していくうちに勝ち筋が見える。

だけど‥

やったことないからしないと言われてしまう。

一旦、それを諦め、できることから伸ばせそうなものを頑張ることにした。

そして‥

ようやく勝利を掴んだのだった。

最後はとても大変だった‥。

3年生だけど、宿題忘れたり、テストで悪い点を取ったりした‥

だけど、得られたものは大きい。

「次は1年生に勝負を挑もう!」

そう思って、僕は1年生の教室に行った。

しかし‥

はじめて話しかけた人で、僕は一番になることを挫折した。

その時のこと‥。僕は頭に浮かべる。

彼は「勝ちを譲ります。」と言う。

それが僕にとって、無性にくやしかった。

「どうして?負けるのが怖い。」

「うん、怖いと思ってるかもしれない。」

「だけど、それと同時に、君に勝って欲しいと思ってるから。」

彼の言ってることがよく分からない。

僕は自分の話をした。

「今まで、同学年の人全員に何かしら勝ってきた。手段は選ばないで、ときには武器を作り。」

すると、彼は言った。

「頑張ってるんだね!」

そう言って爽やかに笑う。

なんだかその時、彼と同じところで、勝ちたいと思った。


そして、今がある‥

僕には彼を超えることはできないし、向いてない気がした。

「自分の道を進むか‥」

そうつぶやいて、全ての人達に何かしらのところで勝つ目標をたてて歩き出した───────

<h3>悪</h3>

「悪って何だと思いますか?」

とある学校の授業中、先生はその答えのない問いを生徒に投げかけた。

一人の生徒が手を上げる。

「にせいくん。」

そう呼ばれ、その生徒は立ち上がった。

「人にものを教えることだと思います。」

先生は落ち着いている。

「それはどういうことでしょうか?」

「勉強とはそれが絶対的に正しいという前提で、それを取り込まなければいけない。」

「間違いが含んでいたとしても、現時点で正しければ正しいことになる。」

「つまり、間違いか正解か分からないのに教えてる。それが“悪”だということですか?」

「そうです。」

「なるほど、そんな考え方もできるのかもしれませんね」

そして授業が終わった。


にせいの周りに数人の同級生が集まった。

「にせい凄いな、先生にあんなこと言えるなんて。」

「確かに勉強って面倒くさいもんな。」

すると、にせいは立ち上がる。

「君達と一緒にしないでほしい。」

「え‥?」

「勉強が面倒くさいとは思ってない。“正しい”か“正しくない”かに着目して言っただけだ。」

「にせいって友達居ないよな‥。」

そう言って同級生の子達はにせいの元を離れていく。

心の中で思う。

友達は作らないのではない、絶対に一人であると心に決めているだけだ。

すると、また違った子が彼の元にいった。

「すごいね、にせいくんは。」

「策取(さくしゅ)くんか。」

「うん。教えるって、もしかして‥?」

「そのつもりはなかったよ。だけど、もしかしたらそうなのかも。」

「ありがとう‥。考えてくれてるのは嬉しいけど‥」

「別に君のためじゃないよ。僕が勝手にしたいと思ってるから。」

「にせいくんは優しいね。」

すると、にせいはその場を立つ。

「どこへ行くの?」

「一人で少し考えたいんだ。」


それから人のいない校舎裏に行くと、空を見上げる。

悪とは何か‥。

悪や、正義。

その2つはよく語られている。

しかし、それがどんなものなのかきっと誰も知らない。

「自分がもし、悪ならば‥。

わかりやすく向かい合っていくだけだ。」

そうつぶやいて、教室に戻った───────

<h3>楽しい楽しい時間</h3>

「こうよくん、せらちゃん!」

女の子が笑顔で、二人の元へ来た。

「ゆうほちゃん、どうしたの?」

「今日は二人と遊びたいなって思って!」

「私はいいよ!」

「僕も大丈夫だよ。」

「やったー!」

「何して遊ぶの?」

「せらちゃん内緒だよ!」

シーッと人差し指を口の前に。

「こうよくん、ノートでじゃんけんしよー!」

私は「あ‥それっ‥!」と言いかける。

しかし、そのまま始まった。

じゃんけんで、ゆうほちゃんが書いた後にこうよが手を書く。

ゆうほちゃんは“グー”を書いた。

こうよはそれに続いて、“パー”を。

すると、ゆうほちゃんは“チョキ”を書く。

「これで引き分けなの!」

「確かに、平和的だね!」

「でしょー!えへへっ、楽しいー!」

私はこうよを見て思った。

相変わらず、優しいな‥。

「気持ちよくうまくいった!二人とも、もっと遊ぼー!」

こうよは「もちろん。」と。

「せらちゃんも参加して楽しいことしたい!」

「何をするの?」

「えっと‥。そっくりさん!」

「何かな‥?」

「真似する遊び!私が思いついたの!とりあえずしよー!」

「うん、分かった!」

私とこうよは一緒に見てた。

「まずね、消しゴムを用意して、みんなで指をのせるの!」

「わかった。」

私とこうよは一緒の消しゴムに指をのせる。

「それで、消しゴムが動いた方向に居た人はそっち側にあるものからモノマネしないとなのっ!」

「なるほど!」

「やってみよー!」

消しゴムが私の方に動いた。

「真似するもの探してくるね‥。」

筆箱が出てて、猫ちゃんのストラップがあった。

「にゃ」

少し照れながら言う。

「せらちゃん可愛い!」

「ありがとう‥。」

それからも続いて、何故かこうよに多かった。

もしかしたら、わたしを守ってくれたのかも‥。

心の中でありがとうと呟いた。

終わってこうよは言った。

「ゆうほさん色々遊び考えていいね。」

「えへへっ。思いつくと嬉しくて楽しいんだ!」

「今日は楽しかった、二人とも遊んでくれてありがとー!」

ゆうほちゃんはとても嬉しそうに私達のもとを後にする

──────

<h3>三人!</h3>

私は時々、こうよ以外も見る。

クラスには色々な人が居て、意識してなくても耳に入ってくるから。

今日も数人の声が‥


「とびくん、あがるくん。困ったことがある‥。」

「何があった、しょうじんくん!」

「折りたたみ傘をなくして‥。」

「なんだって‥」

とびは思った。

折りたたみ傘をまた次もなくし続け、世界で一番に‥。

「大丈夫、僕は折りたたみ傘忘れ王になっても、君と一緒に居るよ!」

「なんの事‥?」

「それで、折りたたみ傘のことなんだけど、忘れたところになくて‥」

あがるくんが言った。

「良ければどこにあるか当てようか?」

「え、分かるの?」

「僕は10回に2回、予感があたるから。」

「そうだったね。でも、これって予感なの‥?」

「うわー!」

「どうしたあがるくん!もしかして、空から降ってくるってこと?」

「そうじゃないんだ、しょうじくん。どこに傘があるか、予感がした。」

「え、ほんとう?」

「うん。しかも、10回に2回の確率で。」

「つまり、5回に1回の確率ってこと?」

「ううん。5回だと、全部起こらない可能性があるんだ」

「10回であれば3回こえたこと、1回以下になったことない。」

「それは凄いね。じゃあ、あがるくんを信じるよ。」

「それがいい。しょうじんくん良かったじゃないか。これで見つかる。」

「うん。ありがとう、二人とも。」

それから3人は何処かへ行った。

それは昼休みのこと‥。

まだ終わってないけど、クラスに戻ってきた。

「せらちゃん、話そー!」

「いいよ。」

ゆうほちゃんはよく、話しかけてくれる。

私はよく一人だから‥

この子が来るとちょっと落ち着く。

「クラス、色々な人がいるね。」

「わぁー!分かるー!せらちゃん優しいし。」

「色々な人が居ていいなって思うの!」

「いいよねー!」

同じ人も安心していい、こうよなら、その話もするかもね。

「ところで、ゆうほちゃんは何かあった?」

「うん。最近、新しい遊びを思いついたの!」

「また違う時に、3人でしない?」

「いいよ!しよっ!」

<h3>人気者</h3>

こうよは人気者。

同学年、年齢も関係なく、彼の周りに集まってくる。

みんなと、何をしてるのだろう‥?

私は気になり、彼のそばを通り過ぎて、話を聞いたことがある。

そこで、こうよに、何か相談をしていたようだった。

そして、いつものように明るく言葉をかける。

何か目に見えるものをくれたり、その相談が解決することはなかった。

だけど、彼に話した人達は、とても嬉しそうにしてて‥

安心してて‥。


こうよは人を明るくさせる。

もちろん、彼のそばには暗い人も居るけれど、その人を否定せず喜ぶの。

小さい頃のこと、もしかしたら、本当にそうなのかもしれない‥。

でも‥。

私は思った。

あなたはそうは見えないよ‥。

彼自身も嬉しそうで、毎日が楽しそう。

その姿が、私にはとても嬉しかった。

こうよのことが好きだからもあるけれど‥。

帰りの時間も、彼に話しかける人が多かった。

私はいつも一緒に帰ってるから、こうよをじーっと見てた。

「こうよお兄ちゃん、話があるんだけど!」

そうして数人の子供達がよってくる。

いつものように‥

真剣に話を聞くこうよ。

たまに頷いて、自分の事のように一人一人を、そしてその話を愛してる‥。

もしかしたら、彼に引き寄せられるのかもね。

小さいコミュニティだけど、彼は彼なりに精一杯頑張ってる‥。

私はそう思うんだ‥。

もしかしたら、私にだけ教えてくれたあのことが関係してるのかもしれない。

でも、やっぱり、私はこうよの笑顔を‥。

遠くからでも見ると、落ち着くし、嬉しい気持ちになるんだっ。

こうよはみんなとの話を終えると、私の元に走ってきた。

「せらさん、いつも待ってくれてありがとう。」

「こちらこそありがとう。」

帰りはいつも話を聞いてくれるし、こうよ自身も色々話してくれる。

楽しい時間。私にとって人気者のこうよ‥。

誰かに憎まれることはないだろうな‥。


私はこうよと一緒に暮らしてる。

他にも一緒に居るけれど、彼と出会えて良かったって思うんだ────────

<h3>ルサンチマン</h3>

「せとうくん、君のメモ帳見せてもらったことあるよね。」

「うん。どうしたの?」

ルサンチマンって用語が書いてあった。意味は弱いものが強いものに抱く負の感情。」

「そういう用語があったんだ。」

「うん。君はこの用語、どう思う?」

「用語は分からない‥だけど、どんな人にも優しいところがあると思うよ。」

「やっぱり、君はポジティブだな。」

くらやとせとうが別れたとき、一人の男が、せとうを見ていた。

そして、思う。

うらやましい、にくい‥と。

せとうは勉強もスポーツも平均的、僕の方が少しできる。

それにせとうはいつも相手と勝負しない。

勝ちを譲ると言って。

そんな弱いやつなのに、いつもあの男の周りには人が集まる。

相談に来たりもするんだ。僕の方が能力が上だからいいこと言えるのに。

だけど、僕の周りには、決まった人ばかり。

理不尽だ…。

そして、思った。

本人と話そう。


休み時間、せとうを呼び出す。

「なんの用かな?」

そう言って笑う。

「いつも人に優しくして、何か裏があるんじゃないのか?」

「憎まれっ子世にって言うし。」

「裏はあるよ。みんなが望む未来に進んでほしい。」

「顔色伺いか。君は偽善者だね。」

「偽善者?」

「そうだよ。君は偽善者だ!」

直接言ってやった。そう思った。

「うん。そうかもしれない。」

僕はその返答に驚く。

「一つだけ、君にお願いしたいことがあるんだ。」

「なんだよ。」

「僕にはいくらでも偽善者と言っていい。だけど、他の人には言わないで欲しいんだ。」

予想外の事だらけで、驚きで一杯だった。

「僕に伝えたいことがあったら、言ってほしい。」

「いや、もうないよ…。」

「そう。話に誘ってくれてありがとう。君にいいことが起こること、それを願うよ。」

僕は何も言わず、せとうの前を去った。

話してみたら、案外悪いやつじゃないのかも。

僕に対して、無視することなく、誰とも変わらず接した。

僕の中から、うらやましいとか思う気持ちがどこかに居なくなった

──────────